ようこそ「エリート」、実力至上主義の教室へ   作:兵庫人

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制裁

 アマダデンキの店の入り口には「出張整備につき従業員が外出しています」という看板がかけられていた。

 

 しかし企業テロに協力している裏切り者の従業員が店内にいることを知っている竜治は、看板を無視して雨田電機関連の施設に使用されているセキリュティを解除するマスターキーで扉を開けて店内に入る。店内ではスピーカーからコマーシャルの歌や音楽が聴こえてくるが、注意深く観察すれば店の奥から人の気配が感じられた。

 

 竜治が腰のポケットに入れてあるものの感触を確認してから店の奥へ進もうとすると、一人の男が店の奥から慌てて出てきた。

 

「い、いらっしゃいませ! す、すみません。今帰って来たばかりでして」

 

 店の奥から出てきて見え見えの嘘をつきながら愛想笑いを浮かべる中年の男。彼こそが企業テロに協力した裏切り者であり、中年の男がアマダデンキの社員の制服を着ているのを見て、竜治は自分の怒りが一段階上がったのが理解できた。

 

「あ、あの……? それで何の御用でしょうか?」

 

「じしゅ」

 

 中年の男の言葉に竜治は自分の要求を短く伝える。

 

「は? それは一体……?」

 

「おまえが企業テロに協力したこと分かっている。……じしゅすれば、アマダデンキの株もさがらないし、おまえの罪もすこしはかるくなると思う。だからじしゅしろ」

 

「………!?」

 

 竜治の言葉に中年の男は顔を瞬時に白くして凍りついたように動きを止めるが、やがてぎこちない動きで口を開く。

 

「は、は……。な、何のことでしょうか?」

 

「……」

 

「っ!? お、おい!」

 

 引き攣った笑みで誤魔化そうとする中年の男だが、竜治はそれに付き合おうとせず、素早い動きで中年の男を振り切り店内に入っていく。そして店の奥にある倉庫に行くと、そこには学校の制服を着た女生徒が床に眠っており、彼はその女生徒に見覚えがあった。

 

「サクラさん……」

 

 佐倉愛里。

 

 竜治と同じ一年D組の女生徒で、同級生達には知られていないが「雫」という名でネットアイドルをしていて、それが原因で今回の事件に巻き込まれたのであった。

 

「……よかった。ねむっているだけか」

 

「雫ちゃんから離れろぉ!」

 

 竜治が佐倉の首に手を当てて無事を確認していると、中年の男が血走った目で襲いかかってきた。しかし竜治はそれを予想していたのかポケットに入れていたもの、自室に飾っていた拳銃タイプのモデルガンを取り出すと、その銃口を中年の男へ向けてためらうことなく引き金を引いた。

 

 パシュ! パシュ!

 

「ぎゃあああっ!?」

 

 モデルガンの引き金を竜治が引いた瞬間、中年の男の両足から小さな穴が空いて血が噴き出し、突然の激痛に中年の男が悲鳴を上げて床にのたうち回る。そんな中年の男に竜治は冷たい目を向けて言う。

 

「あんしんしろ。弾は植物素材をつかった自然分解するもので、からだに害はない」

 

 竜治の部屋に飾ってあるモデルガンはそのほとんどが単なる観賞用だが、一部には改造したモーターなどを内蔵して至近距離なら人を殺傷できる威力を持っている。日本はこの世界で唯一、一般人の銃器の所持を禁じている国であり、その学校で万が一のことが起こった時に備えて彼は改造モデルガンを用意していたのだった。

 

「痛い! 痛いぃっ! 何で俺がこんな目にぃ!?」

 

「なんでじゃねぇよ」

 

 パシュ! パシュ!

 

「ああああああっ!?」

 

 床にのたうち回りながら泣き言を言う中年の男に、竜治がモデルガンの引き金を二回引くと、中年の男の尻に穴が二つ空いて更なる悲鳴が上がる。

 

「ストーカーにゆうかいは立派なはんざいだ。しかもサクラさんは『おきゃくさま』なんだろ? おきゃくさまに被害をだすなんて、人としてもアマダデンキのしゃいんとしても失格だ」

 

 見れば佐倉の側にはピンク色のデジカメが落ちていた。調べた結果、佐倉は最近壊れたデジカメの修理をこの店に頼んでおり、彼女は今日デジカメの修理が完了したという連絡を受けて店に来たところを眠らされたのである。

 

「な、何が失格だ! 俺は! 俺は雫ちゃんとの愛を貫いただけ……!」

 

 パシュ!

 

「おぎゃああっ!」

 

 中年の言葉の途中で竜治がモデルガンの引き金を引き、中年の男の言葉が悲鳴に変わる。尻の穴を一つ増やした中年は、痛みのあまり失禁して股間を濡らし、それを汚物を見るような目で見ながら竜治は口を開く。

 

「だまれ。おまえが愛とかほざくな。こんどはその舌にかざあなを空けてやろうか……ん?」

 

 そこまで言って竜治が中年の男にモデルガンを持っていない方の手を伸ばそうとした時、店内に中年の男を捕らえに来た学校の警備員達がやって来た。

 

「……ざんねん。まぁ、ここは仕方がないか」

 

 竜治は中年の男を学校の警備員達に任せることにすると、自分は未だに意識を取り戻さない佐倉の介抱をすることにした。

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