ようこそ「エリート」、実力至上主義の教室へ   作:兵庫人

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報告

「……というわけだ」

 

 ストーカー目的のために企業テロに協力をした従業員を学校の警備員に引き渡してから数時間後、竜治は自室に集まった者達に自分が何をしていたのか説明した。

 

 現在竜治の部屋にいるのは、竜治と今回の事件の被害者である佐倉、綾小路と櫛田、そして坂柳とその付き添いで来た橋本と神室に鬼頭の合計八人。竜治の説明を聞いて櫛田が驚いた顔となって佐倉に話しかける。

 

「そんなことがあったなんて……。佐倉ちゃん、気づかなくてゴメンね。大丈夫だった?」

 

「は、はい。雨田君が助けてくれたから大丈夫です」

 

 佐倉は人と話すのがそれ程慣れていないのか、自分の心配をしてくる櫛田に少しためらい気味に返事をする。その様子を見ると、とても彼女がネットアイドルをしているとは思えなかった。

 

「だけど雨田? お前が佐倉を助けたのは分かったけど、何で彼女をここに連れてきたんだ?」

 

「……それは、かのじょがこれからオレ達といっしょに行動するからだ」

 

 竜治が佐倉をここまで連れ来た理由を言うと、坂柳が更に詳しく説明をする。

 

「今回の件は末端の社員とは言え雨田電機の不祥事です。ですから佐倉さんが助けられた後、雨田電機は彼女本人とご家族に謝罪すると、彼女に専属の戦場アイドルにならないかと提案をしたのです」

 

「戦場アイドル!? そんなのストーカーに狙われるより危ないじゃない!」

 

 坂柳の言葉に神室が焦った顔となって言うと、それに竜治が首を横に振る。

 

「大丈夫だ。戦場アイドルといっても、あんぜんな基地やオブジェクトの側でさつえいをして、おわったらすぐに帰るからずっと安全だ」

 

「竜治君の言う通りです。それに佐倉さんが雨田電機専属のアイドルになれば、社員を守るという名目で彼女と彼女の家族を守る人員を送れますから」

 

 竜治の言葉に続いた坂柳の説明に、当事者である佐倉を含めたこの場にいる全員が納得した表情となる。つまり戦場アイドルというのは佐倉への謝罪として護衛をするための名目というわけだ。

 

「でも私としては佐倉さんには期待しているのですよ? 調べてみましたら、ネットアイドルの雫は個人で活動しているアマチュアながらプロ並の人気があり、ブログの再生数が情報同盟のアイドルエリートを上回ったこともあるとか」

 

『『……………!?』』

 

「え? そ、そんなことは……」

 

 笑みを浮かべながら坂柳が言うと、綾小路達が驚いた顔で佐倉に注目して、注目された佐倉が赤くなった顔を下に向ける。

 

「とにかく。そんなわけでサクラさんはオレ達といっしょに行動することになった。……サクラさん、これからよろしく」

 

「は、はい! こちらこそ、お願いします!」

 

 竜治が頭を下げて言うと佐倉も慌てて頭を下げる。

 

 こうして佐倉、ネットアイドル雫は雨田電機のオブジェクト「かみなりぐも」の活動を宣伝する戦場アイドルになり、それを見た正統王国の不良軍人二人が鼻息を荒くし、情報同盟のアイドルエリートが戦慄の表情となったのだが、それはまた別の話。

 

「……それでそっちは? スドウくんはどうなったんだ?」

 

 佐倉の話がひと段落つくと、竜治は今日行われたDクラスとCクラスの審議について綾小路と櫛田に聞く。

 

「うん。それはバッチリ。須藤君はお咎め無しで終わったよ」

 

「雨田からもらった二つのデータが役に立ったな」

 

 竜治の質問に櫛田と綾小路が揃って頷く。

 

 DクラスとCクラスの審議の場で、綾小路は竜治から貰った二つのデータを、その場にいる全員に見せた。

 

 一つは特別棟での須藤とCクラスの生徒達が騒ぎを落とした時の映像データ。そしてもう一つは、騒ぎの後にCクラスの生徒達が、特別棟とは別の場所である人物と会っていた映像データだった。

 

 Cクラスの生徒達が会っていたのは、同じCクラスに所属しているクラスのリーダーと言える生徒で、Cクラスの生徒達はリーダーに上手く須藤を挑発して手を出させたことを報告していた。

 

 これにより今回の騒ぎはCクラスが先に仕掛けた計画的な行動だと分かったのだが、須藤が命令されていたとはいえ一切抵抗をしなかったCクラスの生徒達に過剰な暴力を振るったのも確かなので、両者共に厳重注意という結果で審議は終わったのである。

 

「そうか。それはよかった……」

 

 綾小路と櫛田の話を聞き、ようやく肩の荷が降りたといった表情で竜治が呟くと、そこに坂柳が話しかけてきた。

 

「お疲れ様です、竜治君。またすぐ大変になりますから、ゆっくり休んでおいてくださいね」

 

「? どういうことだ? しばらくはしごとの予定なんてないはずだけど?」

 

 竜治が怪訝な表情となって坂柳に聞くと、彼女は今気づいたという顔となる。

 

「そういえば竜治君にはまだ言っていませんでしたね。竜治君は『ビッグ・シルエット・ツアー』について知っていますか?」

 

 ビッグ・シルエット・ツアーとは資本企業……というか日本が一年に一度主催する豪華旅行のことであり、豪華客船を四機のオブジェクトで護衛しながら旅行をすると言う、世界で最も安全で旅行として知られている。この話題性から世界中の富豪や貴族がビッグ・シルエット・ツアーの参加を望んでいるのだが、「ある理由」により日本が選んで招待した者達しか参加できず、それが更にこの旅行を有名にしていた。

 

「ああ、それはしっているけど、オレと何のかんけいがあるんだ?」

 

「今年のビッグ・シルエット・ツアーに参加するのは高度育成高等学校の一年生徒に決まり、そして護衛するオブジェクトの一機に『かみなりぐも」が選ばれました」

 

『『…………………!?』』

 

 坂柳が言葉に部屋にいる全員が驚き絶句した。

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