豪華武装客船アメノトリフネ。
船内には一流のレストランに演劇が楽しめるシアター、プールや様々なアミューズメント施設、高級スパまで完備。更には乗客の安全を守るための武装も備えており、極め付けは複数のオブジェクト運搬して簡単な整備をするための機能もある、テクノロジー大国と呼ばれる日本ならではの多くの機能を一つにした、今回の旅行のために建造された船。
ビッグ・シルエット・ツアー。
四機のオブジェクトによって護衛された世界で最も安全な旅行として知られ、戦争の代名詞であるオブジェクトを近くで見られるということで、毎年様々な国から参加の申し込みが来ている。しかし国家機密の塊であるオブジェクトを調べようとするスパイを近づけないために、主催した企業が厳選した者達しか参加することができない。
そして今年のビッグ・シルエット・ツアーには高度育成高等学校の一年の生徒一同も参加しており、その中には竜治も当然含まれているのだが……。
「むなしい……」
竜治は自身のオブジェクト「かみなりぐも」のコックピットの中で呟いた。
竜治のオブジェクト「かみなりぐも」は今回の旅行で豪華客船を護衛する四機のオブジェクトの一機で、当然ながら竜治は船が航行中の間はオブジェクトに乗って操作をしなければならない。夕方からは船も止まりオブジェクトのエリート達も自由時間となるのだが、それまで周囲を警戒しながら普段の戦闘とは比べ物にならないくらいの低速で移動をして、豪華客船で乗客達が楽しそうに遊んでいるのを見せられるのは中々に苦痛であった。
豪華客船の方に視線を向けると、学校の生徒達が他の乗客に混じって豪華客船の施設を堪能しており、「かみなりぐも」のモニターが同じクラスの櫛田がプールで遊んでいたり、須藤達が一流レストランに入って行く姿をご親切にズームで見せてくれて、それがたださえ低かった竜治のテンションを更に低くした。
「いや、わかってるよ? オレは『特待生』だから、会社からのめいれいがあれば、そっちを優先しないといけないことくらい。だけどこれはちょっと……ん?」
死んだ魚のような目となって愚痴を言う竜治だったが、そこで彼は豪華客船の通路で綾小路を発見する。綾小路は戸惑いと怒りが混じった複雑な表情を浮かべており、彼の視線の先には一機のオブジェクトの姿があった。
そのオブジェクトは、機体の右側に横の長さだけなら本体よりも大きな、巨大な四門の砲身を束ねたガトリングガンみたいな武装を装備していて、竜治はその特異な形状を見てオブジェクトのコードネームを初めとする情報を思い出す。
「あれは……『いなずま』か」
第二世代型オブジェクト「いなずま」。
下位安定式プラズマ砲の運用に特化したオブジェクトで、主砲は機体の右側にある回転連射型下位安定式プラズマ砲。一度発射する度に特殊ガスと膨大な量の電力を充填しなければならない下位安定式プラズマ砲を、一門の砲で撃っている間に他の砲が特殊ガスと電力を充填することで、絶え間無く撃ち続けることができる強力なオブジェクトである。
そして「いなずま」を建造して所有している企業の名は「綾小路財閥」。綾小路が忌み嫌っている実の父親の企業であった。
「このりょこう……何もなければいいんだけど」
竜治は「いなずま」を見てため息混じりに呟いた。
【いなずま】
全長…80M(本体は50M)
最高速度…時速420キロ
装甲…2センチ厚×600層
用途…対オブジェクト撃退兵器
分類…水陸両用第二世代
運用者…綾小路財閥
仕様…エアクッション式推進システム
主砲…回転連射型下位安定式プラズマ砲
副砲…下位安定式プラズマ砲、特殊ガス弾発射装置
コードネーム…いなずま(下位安定式プラズマ砲の運用に特化した機体であることから。「正統王国」でのコードネームは「サンダーリボルバー」)
メインカラーリング…緑