ようこそ「エリート」、実力至上主義の教室へ   作:兵庫人

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悪趣味な試験

「ベースゾーンの使用許可って、どういうこと?」

 

「ちょっとまって」

 

 櫛田からの疑問に竜治はファイルを読みながら答える。

 

「このしまにあるベースゾーンはほんらい立入禁止エリアで、もし入って5ふん以内にでていかなかったら、その生徒は試験失格となって船にもどされる上に試験専用の300ポイントから50ポイントひかれるらしい」

 

「試験失格にマイナス50ポイントって、ちょっと厳しすぎないか?」

 

 竜治の説明にDクラスの生徒の一人が言うが、竜治は特に厳しくないと思っていた。

 

 オブジェクトのベースゾーンは軍にとって最も重要な場所であり、無断で侵入しようとする者がいれば問答無用で銃殺されても文句は言えないだろう。しかしクラスメイト怖がらせたくない竜治はその事は言わず、説明を続けることにした。

 

「だけどオブジェクトのエリートと戦術オペレーターのオレとアリス、そしてオレとアリスがそれぞれえらんだ10人の生徒は、じゆうにベースゾーンを使ってもいいみたいだ」

 

 そこまで言って竜治はファイルのあるページを開いてそれをクラスメイト達に見せる。彼が開いたページはベースゾーンにある建物の内部の写真で、この島に来るまで乗っていた豪華客船には及ばないが、ちょっとした高級ホテル並の設備が揃っていた。

 

 軍の設備なのに慰安系の設備が揃っているのは、完全PMC(民間軍事会社)制で会社の側面が色濃く出ている「資本企業」軍ならではだろう。

 

「うわっ!? スッゲェ! ベースゾーンって軍の施設じゃねぇの? まるでホテルじゃん!」

 

「こんな所に泊まれるだなんて最高!」

 

「だよな! 無人島でサバイバルなんて言われた時はどうしようかと思ったけど、これなら楽勝だよな!」

 

 竜治からベースゾーンの建物の写真を見せられたクラスメイト達のテンションが一気に上がる。しかし……。

 

 

「ベースゾーンを使えるのは、雨田君を含めた十一人だけでしょう?」

 

 

『『……………!?』』

 

 堀北の冷水を浴びせるような声に、クラスメイト達ははっとした表情となって凍りつく。堀北はそんなクラスメイト達を冷めた目で見た後、竜治に視線を向ける。

 

「それで? 特殊ルールはそれだけなの?」

 

「……いいや。さいごにベースゾーンの使用権はオレとアリスの意思でとりけせて、1ど使用権をとりけされた人には、もう1ど使用権をあたえることはできないとある」

 

『『……………!』』

 

 竜治の言葉にクラスメイト達は青い顔となって無人島に目を向ける。

 

 ベースゾーンを利用できるのは、堀北の言った通り竜治と彼が選んだ十人だけで、その数はクラスの四分の一。残りの四分の三は他のクラスの生徒達と同じく無人島で一週間サバイバルをしなくてはならない。

 

 仮に竜治に選ばれてベースゾーンを利用できたとしても、途中で使用権を取り消されたらサバイバル生活に逆戻りで、一度文明の恩恵を受けてから無人島に放り込まれるのは数日間と言っても現代人にはかなりの苦痛となるはずだ。

 

 そこまで考えが至ったDクラスの生徒達は、一斉に必死な表情で竜治の元に詰め寄った。

 

「あ、雨田! 俺達友達だよな!? 頼む! ベースゾーンに入れてくれ!」

 

「ちょっと男子! 私達が先よ!」

 

「お願い雨田君! 私を選んで! 無人島でサバイバルなんてマジで無理だって!」

 

「ズルいぞ、お前ら! なあ、雨田! この学校のことだからこの試験、まだ何があるか分からないだろ!? 俺だったらきっと力になれると思うから、だから俺を……!」

 

「………!?」

 

 一斉に話しかけてくるクラスメイト達に気圧されながら竜治はこの特殊ルールの本当の意味を理解した。

 

 竜治は最初、この特殊ルールはオブジェクトに深く関わっている自分と坂柳を保護する救済処置だと思っていた。しかし実際は単なる救済処置ではなく、自分達を対象とした「試験」でもあったのだ。

 

 すなわち「自分にとって必要な者、そうでない者を区別できるか否か。そして他者を切り捨てれるか否か」という試験。

 

 そのあまりにも「資本企業」らしく、同時にこの学校らしい試験内容に、竜治は内心で一つ舌打ちする。

 

(まったく……。悪趣味なしけんだ……)

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