ようこそ「エリート」、実力至上主義の教室へ   作:兵庫人

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「資本企業」らしいやり方

(とんでもないことになったな……)

 

 特別試験の開始でいきなり出された特殊ルール。竜治と坂柳、そして二人がそれぞれ選んだ十人の生徒達だけ、高級ホテル並のベースゾーンの建物を使用できると聞くと、Dクラスは騒然となった。

 

 Dクラスの生徒のほとんどが竜治に自分を選んでほしいと言い出し、今では同じクラスメイト同士で言い合いまで起こっている。平田と櫛田が何とか騒ぎを収めようとしているが、それでもクラスメイト達が落ち着く気配はなく、竜治はそれを見て内心で呆れていた。

 

(そんなに無人島でのサバイバルがいやだったら、リタイアして船にもどればいいのに……)

 

 ビッグ・シルエット・ツアーの護衛もしている竜治は、自分達の乗って来た豪華客船がこの無人島の近くのルートを進んでいることを知っていた。多分だが、この特別試験は仮病などを使えばすぐにリタイアできて、その後は他の生徒達が試験を終えるまで豪華客船で自由に過ごせるのだろう。

 

 しかしクラスメイト達がそれをしないのは、リタイアすれば試験専用のポイントが減少して夏休み以降のクラスポイントが上がらず、学校生活が改善されないと分かっているからだろう。だからクラスメイト達は試験をリタイアしようとせず、竜治に選んでもらおうと必死なのだ。

 

 目先のことしか考えず、自分の要求だけを口にするクラスメイト達に少しずつうんざりしてきて竜治だったが、すぐにその考えを捨てた。彼がこの学校に入学したのは、同学年の人間と行動して協力し合う能力を伸ばすためで、竜治にこの試験を諦める理由はなかった。

 

(……ようは、サバイバルせいかつをしなくてすんで、試験専用ポイントを少しでもおおくてにいれて、後はほかのクラスとの差をちぢめればいいんだよな?)

 

 自分の中でこの試験に目標を定めた竜治は、それを達成するための手段を考えるべく、情報を集めることにする。

 

「ちょっといいか?」

 

『『………!?』』

 

 竜治が手を挙げて発言をすると、それまで言い合っていたクラスメイト全員が黙って彼の方を見た。しかし竜治はそれらの視線を無視して、この特別試験のマニュアルを持っている平田に話しかける。

 

「まだオレをふくめてここにいる全員、この特別試験のきほんルールをしらない。ヒラタくん、よかったら説明してくれないか?」

 

「え? ああ、そうだね」

 

 平田はクラスメイト達を落ち着かせる機会ができたと思わず笑みを浮かべると、急いでマニュアルを開いて特別試験のルールを説明していく。そのルールは簡単にまとめると、次のようなものだった。

 

 

・この島は各企業が使用するオブジェクトのベースゾーンであり、環境を汚染したり設備を破壊する行為をしたらマイナス20ポイント。

 

・午前と午後八時の二回ある点呼に遅れた場合、1人につきマイナス5ポイント。

 

・他クラスへの暴力、略奪行為、器物破損を行なった場合、そのクラスは即失格となり対象者のプライベートポイントを全て没収。

 

・各クラスはリーダーを一人決めて、リーダーは正当な理由がなければ変更することはできない。

 

・島の各所にはスポットと呼ばれる箇所がいくつか設けられていて、各クラスのリーダーに与えられる専用のキーカードを使うことで、八時間占有する事ができる。ただしキーカードを使用できるのはリーダーとなった人物のみである。

 

・占有したスポットを使用できるのは占有したクラスのみで、他が占有しているスポットを許可なく使用した場合は50ポイントのペナルティを受ける。

 

・スポットを一度占有する毎に試験専用のポイントが1ポイント加算される。ただしポイントが加算されるのは試験終了時のみである。

 

・七日目の最終日、点呼のタイミングで他のクラスのリーダーを言い当てる権利が与えられる。

 

・他のクラスのリーダーを的中させることが出来れば、的中させたクラス一つにつき50ポイントを与えられ、逆にリーダーを間違えれば50ポイント失う。

 

・他のクラスにリーダーを言い当てられたクラスは、そのクラスに50ポイントを支払わなければならない上、それまでスポットを占有したことで得たポイントを失う。

 

 

(なるほどな。このしけんにはポイントを稼ぐほうほうがあって、恐らくこれがしけんの鍵になるはず……)

 

 平田から特別試験の基本ルールを聞いた竜治の中で、今回の試験でどのように動くのかが決まった。

 

(ここは……『資本企業』らしくうごくとしよう)

 

 竜治は心の中で呟くと自分に注目するクラスメイト達を無視して、離れたところで様子を伺っていた茶柱に話しかける。

 

「せんせい。オレの携帯端末を少しのあいだ、かえしてくれませんか」

 

「? 別に構わないが」

 

 この特別試験で生徒達の携帯端末は、試験開始と同時にクラスの担任に預けられている。茶葉から自分の携帯端末を受け取った竜治は、いつもよりやや大きな声でクラスメイト達に話しかける。

 

「ちょっとオレのはなしを聞いてくれ。とつぜんだけどオレと『賭け』をしないか?」

 

「賭け?」

 

 綾小路の言葉に一つ頷いてから竜治はクラスメイト達に提案をする。

 

「みんなは無人島でサバイバルはしたくないと言う。だけどベースゾーンをつかえるのはオレいがいに10人だけ。……だからのこりの29人はここで『リタイア』してもらえないか?」

 

『『………!?』』

 

 突然の竜治の提案にクラスメイト達だけでなく、話を聞いていた茶葉までもが目を丸くする。しかし彼はそれに構わず言葉を続ける。

 

「そしてオレは、ほかの10人の生徒とスポットをせんゆうしたり、他のクラスのリーダーをしらべてポイントを稼ぎたいとおもう」

 

「……それで? さっきの賭けってどういう意味なんだ?」

 

 ほとんどのクラスメイト達が絶句する中、綾小路が聞くと竜治は先程言った賭けの内容を持ち出す。

 

「いま言ったオレのやりかたで、もしDクラスのポイントが1番じゃなかったら、オレはクラスメイト全員に5まんポイントを渡す」

 

「五万!? それもクラス全員に!? ふざけてんの? そんなのできるはずが…………………………エッ?」

 

 竜治の言葉に長く伸ばした金髪をポニーテールにした女子生徒、軽井沢が食ってかかろうとしたが、竜治が眼前に突き出した携帯端末の画面を見て呆けた声を出す。そして携帯端末の画面には竜治の現在持っているプライベートポイントが表示されていた。

 

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「さ、三百五十万!? おま、お前! こんな大金どうしたんだよ!?」

 

「オレが『特待生』なのはしっているだろ? それで稼いだ」

 

『『………!?』』

 

 同じく携帯端末の画面を見て悲鳴のような声を上げる池に竜治が何でもないように答えると、クラスメイト全員が畏怖するような目を彼に向けた。

 

「そして、オレといっしょにベースゾーンを拠点としてスポットのせんゆうや、クラスのリーダーの調査をしてくれた10人には、Dクラスが1番になってもならなくても、ついかで更に5まんポイントを渡す」

 

 そこまで言って竜治がクラスメイト達を見ると、信じられないといった表情で彼を見るDクラスの生徒達は、気圧されたのか誰も口を開こうとはしなかった。

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