ベースゾーンでの竜治と堀北との会話から数十分後。竜治達は二人一組になって島にあるスポットを探していた。
竜治とペアを組んだのは櫛田で、彼女は森の中を歩きながら竜治に話しかける。
「Aクラスの人達も協力してくれて良かったね、雨田君」
櫛田の言う通り、あの後坂柳がDクラスが集めた食糧を分けることを条件に自分と一緒にベースゾーンへ来たAクラスの生徒達を貸してくれて、今は橋本達も島のスポットを探しているのだった。
「でも坂柳さん。どうして協力してくれたんだろ? Dクラスが一番になったら自分のAクラスも困ることになるのに」
「クシダさんは、Aクラスがいま2つに割れていることはしっている?」
首を傾げる櫛田に竜治が話しかける。
「Aクラスが二つに? どういうこと?」
「これはアリスとハシモトくんからきいた話なんだけど、Aクラスはアリスをリーダーとするグループと、カツラギくんってひとをリーダーとするグループに別れているらしい。そしていま、ベースゾーンに入れなかったAクラスの生徒達をまとめているのはカツラギくん。……もし、この試験でAクラスがDクラス、またはべつのクラスに負けたらどうなると思う?」
「えっと……。どうなるのかな?」
竜治の質問の答えが見つからず櫛田が聞くと、竜治は自分の考えを口にする。
「おそらくはカツラギくんの『株』が大暴落する。ベースゾーンにはいれなかったAクラスの生徒達は、とうぜん厳しいサバイバルをたえているんだけど、それはそうすればAクラスが勝利できるとしんじているから。もしこれで負けたら、Aクラスの生徒達は自分達のどりょくが無駄だったとかんがえて、怒りをカツラギくんに向けるだろう」
「そうなったら、頼れるリーダーは坂柳さんだけになるね」
櫛田の言葉に竜治は頷く。
「ああ。おそらくそれがアリスの狙いなんだろう。結果次第ではAクラスとほかのクラスの差がおおきく縮まるだろうけど、必要経費とかんがえているんだろうな」
竜治が自分のパートナーである坂柳の考えを予測していると、それを聞いていた櫛田が感心したような目を彼に向ける。
「ふえ〜……。やっぱり雨田君と坂柳さんって凄いね……。オブジェクトのエリートとオペレーターってだけでも凄いのに、こうして色々考えて皆をまとめているし。……私、偉そうな人とか立場が偉い人とかって大ッッッ嫌いなんだけど、雨田君や坂柳さんくらいになると嫌いになる前に感心しちゃうよ」
「お、おおう……。クシダさん、いきなりすごいこと言わなかった?」
突然の櫛田の発言に竜治が若干引いて言うと、櫛田は彼に向けて笑みを浮かべた。
「それだけ雨田君を信用して、凄いと思っているってことだよ。……それに引き換え堀北の奴……!」
そこまで言うと櫛田はその場で立ち止まって俯くと小声で呟く。
「いつも偉そうな態度だけど、この島に来てからは特にそう……! 雨田君が何か言うたびにいちいち文句を言いやがって。それだったら自分で何か案を出せっての……! まあ、結局何も考えがなくて雨田君に従うしかないのはいい気味なんだけどね……」
「あー……。クシダさん? ホリキタさんにふまんがあるのは分かったから、そろそろ行こうか?」
俯きながら黒い面を出して呟く櫛田を見ていた竜治だったが、このままではらちがあかないと考えると、強引に話を切り上げてスポットの調査を再開した。そしてそれからしばらく森を歩くと、竜治と櫛田は滝がある場所を見つけ、そこには学校の生徒達が野営のための拠点を作っていた。
「かれらは?」
「多分、Bクラスの皆だね」
「うん。そうだよ」
竜治と櫛田の呟きに答えたのは、髪を長く伸ばした明るい笑顔が特徴的な女学生だった。