ようこそ「エリート」、実力至上主義の教室へ   作:兵庫人

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頼み

 高度育成高等学校に入学してから一週間が経った。ほとんどの新入生達が新しい学校生活に慣れ始めてきたが、竜治はそれどころではなく自分の中で不安が増していくのを感じていた。

 

(なんなんだ、このがっこうは? 本当に、にほんでも有数の名門校なのか?)

 

 授業の内容はエリートになるための教育を受けた竜治からすれば信じられないくらいの低レベル。

 

 いや、それはまだいい。専門的な知識や技術は大学に進学したり、会社に入社してから学ぶことができる。

 

 しかし学校の教師のほとんどが生徒を指導する姿勢が「緩く」、生徒達が授業中に不真面目な態度をとっても叱ろうとしない。そのせいでDクラスでは毎日数名の遅刻欠席は当たり前、授業中に居眠りをしたり携帯端面を使う生徒が多くいる。

 

(じつはここはがっこうではなく、なにか特別なしせつだったりするのか?)

 

 竜治は正統王国では実力はあるが正義感が強すぎたり性格に難がある問題の多い軍人を、戦闘も何もない島に押し込めて飼い殺しにして自主退役に追い込むこという噂を思い出す。そして自分が過去に気づかないうちに問題を起こし、噂と似たような状況に送られたかもと一瞬考えたが、すぐに首を横に振って否定する。

 

(いや、それはさすがに考えすぎか……。でも、いまの状況はよくないな)

 

 竜治の予想ではやはり来月も十万プライベートポイントが支給される可能性は限りなく低い。

 

 恐らくは生徒達の授業態度等から支給されるプライベートポイントの額が増減されるのだろう。更に言えば、そのプライベートポイントの増減はクラス全体の連帯責任になると竜治は睨んでいた。

 

 どの職場でも一人ではなくグループで仕事をする場合、一人の人間が問題を起こせばそれはグループ全体の問題となり評価を落とすからだ。

 

(げつまつには電気をうったプライベートポイントがはいってくる。それでもいくらかわからないから、クラスの生活態度をあらためて、プライベートポイントの支給学をへらさないようにしたほうがいい。そのためには……)

 

 そこまで考えた竜治は同じクラスにいる二人の生徒の顔を思い浮かべた。

 

 

 

「ふたりとも、急によびだしてすまなかった」

 

 その日の放課後。竜治は学校の敷地内にある喫茶店の中で二人のクラスメイトにそう言った。

 

「いや、気にしていないよ」

 

「そうだよ。それにしても雨田君は私達に話しかけるなんて初めてじゃない?」

 

 竜治が呼んだのは平田と櫛田で、二人は笑顔を浮かべて言葉を返してくれた。

 

「それで雨田君? 僕達に話があるって一体なんだい?」

 

 首を傾げて聞いてくる平田に、竜治は早速本題に入ることにした。

 

「……プライベートポイントのことだ。ふたりはプライベートポイントが、本当にまいつき10万しきゅうされると思うか?」

 

「え? それってどういうこと? 先生は毎月十万ポイント支給してくれるって言ってなかった?」

 

 竜治の言葉に今度は櫛田が首を傾げるが、それに竜治は首を横に振ってみせた。

 

「オレが聞いたのは、まいつき1日にプライベートポイントを支給するというせつめいだけだ。入学式にオレは|せんせいに、10万ポイントがもらえるのかとしつもんしたが、せんせいはポイントをしきゅうするとしかいっていなかった。……おぼえていないか?」

 

「そういえば……」

 

「うん。雨田君、茶柱先生にそんな質問していたね」

 

 言われて平田と櫛田も、入学式の日に竜治が茶柱に質問をしていたことを思い出す。

 

「ほんとうにまいつき10万ポイントがしきゅうされるなら、最初からそういうはずだ。それにもし、まいつき10万ポイント、10万円がもらえるとしたらがっこうはDクラスだけでまいつき400万円、いちねんで4800万円しはらうことになる。……いくらなんでも|ふしぜんすぎると思わないか?」

 

「……それで、雨田君はどう考えているんだい?」

 

 竜治の言葉を聞いているうちに平田と櫛田は不安を覚え、平田が恐る恐る竜治に質問をする。

 

「オレはまいつき10万ポイントがしきゅうされることはないと思っている。おそらく、授業態度とかでしきゅうされるポイントが増減されるはず。そしてそれはクラスぜんたいの連帯責任となる可能性がたかい」

 

『『………』』

 

 平田と櫛田はDクラスの日頃の授業態度を思い出し、竜治の言った通りなら来月からの生活が苦しくなることを予想して顔色を悪くしていく。それを見た竜治は二人が自分の話を信じてくれたと分かると、二人を呼び出した理由を口にする。

 

「ふたりにこの話しをしたのは、クラスメイトたちに授業態度をあらためるように言ってほしいからだ。ふたりはクラスでも友人がおおいし、オレよりも話しをきいてもらえるはずだ」

 

 竜治は一週間Dクラスを見て、ここにいる平田と櫛田の二人がクラスの中心だと感じた。二人とも入学から一週間でクラスのほとんどと知り合いになっていて人望も厚く、クラス全体で動くならこの二人の協力が必要だと思ったのだ。

 

「うん。分かった僕の方からもそれとなく皆に言ってみるよ。雨田君の話は……もしかしたら本当かもしれない」

 

「私も。今の話が本当だったら皆困るからね」

 

 平田と櫛田は真剣な表情となって頷き、それに竜治は小さく頭を下げて礼を言う。

 

「ヒラタくん、クシダさん、ありがとう。……オレは、オレのことばを信じて、協力してくれたあいてには、必ずれいをする」

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