「···かの茅場先生が最強と認めた君なら」
「無理だよ!GGOのトップ勢は人外魔境なんだぞ!知らないのか!?」
「人外魔境?」
「そうだよ。てか菊岡さん、あんた肝心のGGOの最強決定戦バレット・オブ・バレッツの本戦動画を見てないのか?」
「見て···ないけど···」
俺、桐ヶ谷和人は呆れるしかなかった。ちょっと調べれば直ぐに出てくるくらいなのに···
「丁度いいから見てみろよ。見ればアンタも自分がどれだけの無茶振りを言っていたか分かる」
「···じゃあ、ちょっと失礼して」
そう言って菊岡は、プライベート用らしき端末を出して操作し始めた。待っている間に俺も追加の注文を行う。
そして数十分後、引き攣った顔を上げた菊岡に俺はお替りのケーキを食べながら言ってやった。
「どうだった?」
「···これ、チートツールとか使ってない?」
「それは無いってアンタも分かっているだろ?」
ザ・シードには簡易版とはいえカーディナルが実装されている。故に仮想世界に干渉するチートツールは直ぐに探知されるのだ。ドラッグも、繊細な動きや超長距離狙撃は薬をやっていては逆に出来ない芸当な為有り得ない。つまり···
「プレイヤースキルとVR適正で、彼らは人外レベルの戦いを可能としているんだよ」
正直、彼らがあの頃のアインクラッドに、もっと言うなら攻略組に居てくれればと思ってしまった事もあったくらいだ。
その後、なんだかんだあって結局依頼を受ける事になった。決して高額な報酬に吊られた訳じゃない。
「そうだ。キリトくんにもう一つ聞きたいことがあったんだ」
「なんだよ」
「マフティー・ナビーユ・エリンって聞いたことないかい?」
「マフティー・ナビーユ・エリン?」
聞いたことが無いな······有名なプレイヤーかなんかか?
「SAO事件発生一時間前、SAOの話題で盛り上がっていた多くの掲示板である書き込みがあったんだ。『SAOは危険だ!ログインしてはいけない!』ってね」
「っ!?」
···なんだよ、それ······
「それからSAO事件の緊急ニュースが流れるまで、同一人物のものらしき似たような書き込みが上げられててね。殆どの人は取り合わなかったみたいだよ。でもほんの一握りだったけど、その必死さからかログインを控えた人もいたんだ」
「···本当にそんな書き込みが······」
「ああ。そしてその警告の書き込みに救われた人々は彼、または彼女の事をこう言った」
マフティー・ナビーユ・エリン
正当なる預言者の王
「それと、さっき見た動画の書き込みの中にマフティー・ナビーユ・エリンをキャラネームにしたプレイヤーの事に関して書いてあった」
「なっ!?」
「どうやら第一回大会の優勝者らしいね。はてさて、これは偶然かそれとも···」
俺は頭が真っ白になった。もし本当なら、どうやって茅場晶彦の計画を知ったのか? どうしてもっと違う方法を取らなかったのか? なぜ、GGOをプレイ──仮想世界に潜り続けているのか?
「せっかくGGOをプレイするんだ。出来たら彼と会って見てはどうだい?」
菊岡には菊岡の目的があるのだろう。だが、俺は促されるまま頷いてしまっていた。
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夢を見た
少年が見た事があるヘッドギアから手を離し、恐怖の表情を浮かべている光景を
夢を見た
少年が電話口で何かを叫びながら訴えかけ、最後は涙を流しながら受話器を叩き付けている光景を
夢を見た
少年がパソコンで何かを打ち込んでいる光景を
夢を見た
少年がテレビの前で崩れ落ちている光景を
夢を見た
「···無様だな、凶兆を感じ取れるだけで何も出来やしない」
「正当なる預言者の王か······大仰で滑稽な名だな。俺にピッタリだ」
「ガンゲイル・オンライン、か」
「もう逃げない!俺はこの名をこの世界で叫び続ける!」
「俺自身の弱さを、このマフティー・ナビーユ・エリンが粛清する!」
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「これが、彼の過去···」
眠りから覚めると同時に、こんな言葉が口からこぼれた。これが、マフティー・ナビーユ・エリンの原点。優輝が彼自身の弱さを粛清する為に作った、もう一人の自分。
でも、今はそれを乗り越えている。うんうん、自分の弱さを受け入れて前に進んでいる。多分、椿さんのお陰。
少し前に、私は優輝と一緒にある人達と会った。あの事件に巻き込まれた郵便局で働いていた女性とその娘さんだった。私は感謝された。「助けてくれてありがとう」と言われた。
優輝は言った。「詩乃は確かに人を殺した。でも同時に命を救ったんだ」って。だから向き合う事にした。罪も弱さも私の一部だから。
多分、私にしてくれた様な事を、優輝は椿さんにして貰ったんじゃないかしら? あの日家に帰った時に椿さんニヤニヤしながら優輝を見てたし。
それから私は現実世界もGGOも充実している。優輝と同じ学校に転入して成績優秀者になったし、前回のBoBも準優勝だった。
後、優輝との距離も近くなった。私の
今の私達の関係を言葉で表すなら、恋人以上夫婦未満だろうか? 毎晩同じベッドで寝ているけど、そういう事はしていない。それ以前に心と心を触れ合う事で、お互い満たされているからだろう。今すぐ子供が欲しい訳でもないし、そもそも私達はまだ学生だ。それにまだこうやって二人っきりで過ごしたい。子供が出来たらこういう時間は中々取れないだろうし。
さあ、そろそろ起きましょう。今日も明るい一日が始まるのだから。
もう一話挟んで死銃編です。お楽しみに。
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