Justice中章Ⅱ:蠢き轟く脅威と去り逝く者達   作:斬刄

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2023年最後の投稿となります。
【これまでの〜】は無理そうなので、またまとまってから投稿する予定です。


決戦編開始前の悪天候

11月30日

海鳴市 中丘町

 

その日の天気予報は、大雨だった。

夜になっても全く降むこともなく、家の中でも聞こえるほどの豪雨となっていった。

 

テレビのニュースには、洪水警報の注意喚起が放映されている。

川や海辺に近づくのは危険だとのお知らせを聞いている少女、八神はやては窓越しに外の様子を見てがっかりとしていた。

 

「雨、中々止まへんなー。

シグナムだけが、まだ外に出てるんやけど…大丈夫やろか」

「今さっき、もうすぐ帰るって連絡がありましたから大丈夫ですよ」

「そうか。そやったら、安心や」

 

雷も鳴り、天気が悪いことに深くため息をいている。

シャマルは残りの洗濯物を部屋に干していく。

はやては、窓をぼんやりと見ていると男の人影を見ていた。

 

「ん?何やろ、あれ…」

 

近くにいるザフィーラは狼モードで寛ぐ体制をとり、ヴィータはテレビを見たままで気づかない。はやてはずっと、窓越しに見えている男の姿を目を細くして凝視する。

 

まず夜の豪雨の中でたった一人、傘をさしてない。フラフラと雨に打たれながら、右手で壁伝いに移動しつつ、左腕で腹を抱えて歩いていく。

 

(変やなー?何してるんやろ…?)

 

家の中から外を見ても、雨粒が窓に酷く散っているせいでぼやけてよく見えていない。

目を凝らして、細める。

彼は何かに足を躓いたのか、その場で倒れてしまった。

 

「大変やっ…⁉︎シャマル、ヴィータ!

家の前で人が倒れとる!」

 

驚いたはやてはシャマルとヴィータを呼び、は傘を持って外へ出る。家の前にはツンツン頭のした一人の男子高校生が地べたに倒れ込んでいた。近くで見ると衣服は出血で汚れ、身体も動けそうにもない。

い致命傷ではなかったものの、豪雨と流血のせいで体温は急激に低くなり、顔が青白くなっている。

 

身体は弱っており、立てる力はもう無かった。

 

「意識は微かにあるみてーだけど、かなり冷てぇし…このままだと」

「早く家に入れて、すぐ緊急病院に連絡せんと。どないしよっ…血を流し過ぎとる。

このままやと、救急車が来て間に合うかも分からへんし」

「はやてちゃん。

私に、その人の怪我を見せてもらえますか?」

 

少年が瀕死になっていることに、はやては少し慌てる。たとえ救急車を呼んだとしても、この出血じゃ来たとしても間に合うかどうかすら不安だった。

 

体はかなり冷たくなっており、顔色も悪くなっている。

 

「クラーレヴィント、お願い」

 

治癒魔法で当麻の腹部を治療していく。彼女が触れると冷たく震えている身体が、段々と弱っているのを実感した。

 

「…これで大丈夫です、なんとか治療できました。ザフィーラ」

「心得た」

 

ザフィーラが彼の身体を軽々と持ち、家へ連れ帰る。汚れた服を洗いに出し、ザフィーラの服を少年に着させる。大きいサイズではあるが、今ある男性の服はザフィーラの物しかなかった。

「すぐに傷も塞いで、病院に連絡…はしなくても大丈夫。血は出てたけど…長時間流してたわけじゃないみたい。

致命傷でも無ければ、その患部も魔法で修復してる。

 

ただ起きてもすぐに動けないと思うから、起きたらしばらくは安静にするように言っておきますね」

「良かったっ。でも、さっきの怪我…一体何があったんやろ」

 

 

治癒魔法のおかげで撃たれた傷跡は塞がれていた。早期に治療したことで、出血多量で死ぬこともなく一命を取り留めている。

 

『みんな聞こえる?ちょっと彼の傷のことで大事な話したいことがあるの』

『…シャマル。傷のことは黙っていたが、一体何かあったのか?』

 

シャマルが彼を掛け布団で寝かせている最中に念話をする。ザフィーラは怪我を間近で見ていたことから、シャマルが嘘をついていたことを知っていた。

 

『はやてちゃんには言うべきか困ってて…治療してた箇所が彼の腹部なのだけれど、銃痕が残ってたの』

『おい、それって…撃たれたってことかよ。

一体誰なんだよ、そんな酷ぇことしたの』

 

シャマルが暗い顔をして彼の傷を報告すると、彼女以外の全員が驚く。高校生と同じくらいの男性が、この平穏な街で銃撃され、負傷したのか。

 

撃たれた箇所を回復魔法で元通りにしたが、今のところ彼の意識がまだ目覚めていない。

シャマルの沈んだ顔にも一同納得し、静まりかえる。

 

「…そやな、今は寝かせたほうがええな。

事情を聞くのは後からの方がええやろ。

みんな…ウチが面倒事を持ち込んですまんかったな」

「は、はやては何も悪くねぇって!」

「あのまま放置しても、結局大事になっていたかもしれませんし…」

 

家の前で倒れる人がいるのも、はやての性格上放っておくわけにもいかなかった。気まずい空気で静まり返ったとき、玄関のドアが開いた。

 

「ただいま帰りました」

「あ!お帰り、シグナム。

雨大丈夫やった?」

 

シグナムの衣服と髪は少し雨に濡れており、残念そうな顔にしていた。その様子だと、家に入る前に豪雨で上半身が濡れている。

 

「豪雨だったので…服を着替えて来ます。

その少年は?」

「家の前で倒れていたんや。話は着替えてからにしよ、そのままやと風邪引くから」

「分かりました」

 

シグナムは、替えの服に着替えるために更衣室に入る。狙われる理由なのかとはやて家全員が疑っているが、今の彼は話せる状態ではなかった。

ソファに寝転がし、掛け布団をかけさせている。

 

『シグナム、後で大事な話がある』

『…何かあったのか?』

『さっき主人が怪我をした少年を家に入れたことについてだ。

詳しいことは、別の場所で話そう』

 

話すのはシグナムが着替えてから、あの少年のことについて話すこととなるだろう。

 

別の部屋のドアが開くと、金髪の髪と青いシャツをきた少年がリビングへ来た。彼はトレーを持ち、その上に飲食を終えたお椀とコップが置かれていた。

 

「あ、リンク君。

綺羅さんの様子は?」

「うーん…まだ体調は優れないみたい。

でも胃薬は飲んだし、おかゆも食べれたよ」

「ほうか…悪いことしたなぁ。綺羅さんも昨晩にシャマルのカレーを食べてたら気分悪くなったゆーて寝転んどったし。

 

綺羅さんが失神して倒れた時は、大慌てやったなぁ」

「シャマルが料理下手なの、全く知らなかったもんな」

「私がいつも買い出しに行ってたから、料理もできるんじゃないかと…下手でも良いから食べてみたいって」

「一口であの有様だ。

でも2日、3日になったら流石に治るだろ」

 

トゥーンリンクは綺羅の仲間ではあるが、正式な仲間というわけではなく彼女に誘われてはやての面倒を見るよう指示されていた。

前日にシャマルのご飯を食事し、体調不良で寝込んでしまっている。

 

「約束の近日やなくて良かった。友達と会う約束で体調崩したら…どないしよって思ってたし」

「12月9日には、ご友人と会う約束ですよね」

「1人がいつもウチのこと嫁っていつも突っかかる子で、もう一人はその子を諌めとる。

伽奈ちゃんから電話が来て、いつもの場所で会いたいって。こうして連絡するのも1年半ぶりや…ほんまに久しぶりなんよ」

 

銀髪オッドアイの男と、赤い髪のした女の子が一緒に写真で写っていた。幼少の頃に仲良くなり、背景には図書館が写っている。

別れる際の記念として撮っていた。

 

その写真は、今でもはやての机の上にある。

 

「二人とも、元気にしとるかな…楽しみやわー。

リンクくんも、いつも綺羅さんの看病とウチの家事を手伝ってくれてありがとな」

「うん、何か手伝ってほしいことがあったら言って!綺羅さんにははやてちゃんの助力をしてあげてって言われてるから」

 

トゥーンリンクが元気よく胸を張って綺羅の看病し、綺羅自身もはやての家で看病されるとは思ってもない。

 

守護騎士四人の目的と知らず、深く散策せず純粋にはやての家族を助けるということだけで動いている。

 

彼は、快くはやてのお手伝いに精を出している。

 

「ほんなら明日、新しく家で寝込んどる男の人と綺羅さんを看病することになるけどええか?」

「うん、いいよ!でもはやてちゃんは今日からずっと綺羅さんの看病してたし、明日は午後から気分転換に図書館へ行っても良いから。

朝と夜に手伝ってもらいたいけどいい?」

「ほんまに、ええの?それやったら助かるで。

リンク君がここにおって、ウチも助かるんや」

「アタシらが用事で外に出てる間、ずっとはやてのことも見てくれてるもんな。

頼りにしてるぜ」

 

はやて家の野外には雨に濡れたブラックロックシューター達が見張りをしている。綺羅の命令か、或いは別の誰かに攻撃していなければ彼女

達4人は微動だに動かない。

家近くにいた上条当麻のことを報告することも可能だったが、再起不能になりかけている彼に害がないと判断して無視していた。

 

綺羅の命令は、『許可なく八神はやて及び守護騎士への攻撃を禁止する。彼女らに干渉した相手がいる場合も、例外ではない。

守護騎士の蒐集については、序盤までは様子見する。

後から助力し、闇の書を完成させること。

それ以外でピンチになった時に、牽制して撤退させるよう仕向ける。しつこく追ってきて、主人ことはやての危機に瀕したら始末すること』

というものだ。

 

四人は刃向かったところで脅威ではない上条当麻のことを報告せず、綺羅の命令通りのことにただ従うだけ。

綺羅の船にいる【マト達】と繋がりはされておらず、感情は殆ど機能していなかった。

 

(なんで、こんなことになったのっ…準備しようとしてたのに、まだ気分が。

闇の書は必ず完成させないといけないのにっ。

完成させた暁には…黄色ロープにあの人を絶対に甦らせる。

 

今はこんな状態だけど、復活した時はどんな手を使ってでもっ…‼︎)

 

ー彼女の配下達は動けても言われた指示だけしか動かず、肝心の彼女自身はお腹を壊したことで全く動けなかった。

彼女は、話がまともにできる状態ではない。

 

 

ーーーーーしかも、怪我をした少年が【上条当麻】だと言うことを彼女はまだ知らない。

その少年もまた、家にいるのがはやて達だけではなく誠司を殺した綺羅もまた住んでいることも全く知らないのだから。

 

 

この話は、決戦編が開始される2日前のことである。

 

 

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