Justice中章Ⅱ:蠢き轟く脅威と去り逝く者達   作:斬刄

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3話思慮分別(レイナーレ・士郎ルート)

 

12/3 8:30 ビル屋上

 

 

「これで、全員起きたみたいだな」

「ふぅ…結構寛いじゃったね」

 

レイナーレ達一同は、全員起き上がっていく。

 

レイナーレとランサーの二人は一番早く起き、偵察も兼ねて近くのコンビニに向かい人数分の弁当を買いに行っている。子供を狙わないさやかと不知火に行かせた方が無人機に襲われることなく安全に買いに行けるが、警官に職質されかねないことも考えて行かせなかった。

残りのメンバーは携帯を持っている人は電源をつけて、正輝に連絡が繋がるかを確認していた。

 

不知火は携帯を所持しておらず、体育座りでみんなが操作しているのをボーッと眺めている。

 

「やっぱりダメっす…」

「……本当にゼロの言う通りになったな。

他のみんなも一緒みたいだし」

 

八江がミッテルトの携帯を横から見ていくが、ゼロが言った通りに1stの能力によって電話やメールによる連絡ができないようにされている。

 

「…俺達の連絡を盗聴してくるかと思ってたけど、連絡手段そのものを絶ってくるなんてな」

 

これで正義側に所属している者を対象に携帯も繋がることはできなくなっている。連絡をするにも、さやかの念話を頼りに動くしかなかった。

 

「待たせたな。近くのコンビニで人数分の弁当、買っておいたぞ」

「どれが好みが分からないから、適当に取りなさい」

 

青のシャツの格好になっているランサーと私服のレイナーレ、不知火の3人がレジ袋を持ちつつ、袋から弁当を取り出していく。取り出した弁当はそぼろ、幕の内、カレーと様々な物を用意して地面に置いた。

円で囲んで、弁当を食べながら話していく。

 

「それで、バス停にはどうやって行くんだ?

地図は貰ったけど、街から目的地に辿り着くまでだと遠くなるんじゃないのか?」

「ここからは無人機も私達を襲ってくるでしょ。戦力だと心許なくて難しいのは、他のみんなもそう思ってるよね」

「一誠とアーシアのことは、もう十分守ったわ。寧ろ感謝して貰いたいくらいよ」

「…二人とも、無事だと良いけど」

「もう気遣う余裕はしないっすよ…もうあんな心臓に悪い場面は懲り懲りっす」

 

少しレイナーレは昨日のことで考え事をしながらも弁当を食べる箸を止めて、口を開いた。

 

「それと…一誠とアーシアに会ったこと、麻紀のことなのだけど、暫くの間はここのメンバーだけ黙っておきましょう。

 

この揉め事が終わってからか、やむ終えない事情で話すまでは他言無用よ」

「えっ…言わなくて大丈夫なの⁉︎」

「正輝に黙ってて良いのか?」

「…電話の時に正輝に何もなかったことを嘘ついて関与したこと、逃したことも言うつもり?

 

 

あの時黙ってたのは私達が戻って報告したところで、今の正輝は絶対にパンクしているからよ。

…余計混乱させるだけだわ」

 

同盟を組んだ正輝の姉と竹成の二人がまだ来ていないのなら、余計正輝の頭を抱えるのは目に見えている。

 

「あの二人とはもう会うこともないもの…お互い、その方が絶対に良いって思ってる」

「今更言うのもなんだけど、本当に放っておいて良いのか?

あいつらには行くあてだって」

「さぁね。野垂れ死ぬか…適当に誰かが拾ってくれるんじゃないの?

それに、時空管理局っていう組織ってあったでしょ。少なくとも面識もあったんだから、二人の保護くらいはしてくれるんじゃないの?

私達だって、敵の懐に入っているんだから心配してる余裕なんてない。

敵がリアス達だけじゃないってことも」

「敵がリアス達だけだったら、こんなに悩む事は無かったのにな。もう面倒臭いことに…いや、そうだな。もうなってるんだったな」

 

仲間だったはずの一誠が逃げ出し、記憶改竄によって追放された事も。街に無人機が配備されている以外にも、レイナーレ達は状況が完全に把握しきれていない。

 

 

「もしかしたら最悪結界を解除させて…海鳴市全域を戦場にしても構わないんじゃないのかしら」

「流石に大袈裟過ぎないか?

実行したら表沙汰になって大々的にニュースで取り上げられるだろ。

そもそも、そんなこと正輝以外の他の人達だって止める。

上条達だって絶対させないに」

「…眷属ですらあんな感じだったのに、当麻達が無事だって保証がどこにあるの?

堕天使だけじゃない、悪魔にだって記憶操作ができるのだから強引な方法で表沙汰にさせないでしょ」

「そう言えばそうだったな…」

麻紀に逆らったことで、一誠と同じように追われる立場になっている。士郎は暗雲な気持ちになりつつも、当麻達のことも何できない。

 

「…上条さん達、本当に大丈夫なんだろ」

「そうだな…」

 

今までの麻紀とは全くかけ離れたことをしていることに、士郎は無事を祈るしかなかった。

 

「…食べ終えたら、移動しますか?」

「そうね」

「昨晩、ゼロが止めてたあの無人機達を…今度は正輝達と合流するまでは戦わないといけないのか」

 

こうして全員がビルを出て、路地裏からオフィス街に移動する。

久野のカメラやセンサーが外見で判断してるなら市民に紛れつつ、変装して戦闘を回避することもできただろう。

 

そんな誤魔化しでは通用しないのだから、進むにも戦うのは避けられない。

 

「…続々と出てきたわね」

「敵のお出ましか」

 

感知したか、結界が展開される。

久野の持つNMF(ナイトメアフレーム)と無人の戦闘ヘリが出現し、レイナーレ達を行手を阻んだ。

 

「避けろっ!」

 

まず、サザーランドとグラスゴーが前に出て、スラッシュハーケンを飛ばす。八江をさやかが抱え、それ以外は各々の武器を手に取りつつ回避する。

 

「ランサー!」

「へっ、任せな」

 

不知火の指示にランサーは青タイツの格好と赤槍を出現させ、無人機が撃ってくる弾を軽々と走って回避する。タレットによる背後からの狙撃も、矢避けの加護で躱していく。

 

「ま、数だけは多いみてぇだな」

 

銃撃を仕掛ける前にランサーが突撃し、槍で銃器を破壊する。

 

「沈めっ!」

「ウチも反撃するよっ!」

 

不知火は大砲を展開し、戦闘ヘリに街に配置されたタレットに狙いを定めて砲弾を命中する。続いてミッテルトが光の槍を投擲し、線香花火の如く前方に針を散りばめさせる。さやかは水分身で無人機を水浸しにさせ、故障にしようとする。

しかし、

 

「やっぱりっ…ゼロの言う通り、水云々以前に私達の攻撃が効いてない?」

「そうみたいですね」

 

三人の攻撃は、無傷だった。

無人機達が不知火やミッテルト、さやかに攻撃しなかったが、攻撃自体が当たっても無傷になる代わりに、3人の攻撃が無人機達に対して全く通らなかった。現に士郎とランサー、レイナーレの三人だけが集中的に狙われている。

 

 

今度は小型のドローンが数機出現し、ランサーと士郎に自爆特攻を仕掛けた。

 

投影開始(トレース・オン)っーー工程完了、全投影待機。

 

停止解凍、全投影連続層写‼︎」

 

士郎はレイナーレの注意通りに宝具の投影を控えつつ、無名の短剣を飛ばして破壊する。戦闘ヘリを破壊し、ドローンを近づけさせないようにする。

 

後方にいたドローンは方向転換し、ランサーの方へ飛ぶ。槍の連続突きは全て命中し、爆発は不発のまま破壊された。

残りのドローンを薙ぎ払い、別方向へ飛ばすと戦車やサザーランドに衝突。

近くにいた機体も含めて爆発した。

 

その一方で、レイナーレは苦戦を強いられている。グロースターとヴィンセント、ナイトポリスの3機に囲まれ、光の壁を展開して身を守っていた。

 

光の槍を投擲し、まずグロースターを破壊しようとするが、前に出たナイトポリスの盾で防がれてしまう。もう一度槍を作り、今度は投げて爆破させたが3機とも傷一つ付かない。

 

レイナーレの光の槍が効かないのは、光属性の耐性が組み込まれていた。

 

「飛行してるのもいるわねっ。

槍もそんなに効かないし、厄介ねっ…!」

「今助けに行く!」

 

攻撃があまり通用せず、空中に逃げようとした所に罠として設置されたケイオス爆雷が作動。

 

レイナーレの頭上から2、3個出現して、針を飛ばす。さやかの水分身が、身を挺してレイナーレを庇って助けた。

 

分身自体には罠と敵機体が反応し、連射していく。

 

「アタシがフォローするから、罠のことは気にせず戦って!」

「助かるわっ!」

 

 

グロースターは槍を振り回し、ナイトポリスは乱射し続ける。

空にいるヴィンセントも、分身達が撹乱して身動きが取れない。さやかが水分身達で陽動し。その間にレイナーレは光の槍の伸張を伸ばしつつ、矛先をより鋭くさせる。

 

「これなら、どうっ‼︎」

 

光属性の耐性であまり効かないのならと、力押しでナイトポリスとグロースターを貫く。ヴィンセントは水分身で一斉に畳みかけ、士郎の弓がヒビに突き刺さったと同時に壊れた幻想で爆破した。

 

「おう、やるじゃねぇか。

この調子で次に進むぞ」

 

こうして街を移動する度に無人機が襲いかかり、オフィス街を出て、目印のバス停へと向かう。八江は常にさやかかミッテルトに抱えられて避難しつつ、ランサーとレイナーレが前線、士郎が温存して戦い続けていた。

 

*****

 

12/4 18:30 公園近く

 

「…俺達のいる場所がここなら、フェイト達の家近くにあるバス停まではもう少しだ。

次の日にはなんとか合流できそうかもな」

「なんか、波乱の2日だったね」

「フラグになりそうだから…そういうのは到着してから言ったほうがいいっスよ。

 

言ったそばから敵が出てきたら、ほんっと洒落にならないし」

 

さやかの言葉に、ミッテルトがツッコむ。

昨日は単に寝ただけで、完全に疲労が取れたわけではない。ずっと戦ってヘトヘトになりながらも、士郎達は街の中を移動していた。

 

「…あとは正輝に連絡が取れたら良いんだけど」

「止めておいた方が良いわよ。気づかれたら、さっきよりも多勢で来るかもしれないのだから…」

 

ランサーは平気な顔をしつつまだ戦える感じだったが、それ以外は疲れた顔をしている。艦娘と堕天使でも、長いこと移動するとなると気が滅入っていた。

 

敵との接触で何度も結界が張られ、元に戻っての繰り返しが発生し、それでも前に進もうとしている。

 

「八江ちゃん、大丈夫?」

「はい…なんとか」

 

特に子供の八江には、無人戦闘機以外にも誰かに襲われることに気が立って殆ど元気がなかった。

 

「…ちょっとお金確認するから、海鳴市の地図見せなさい」

「あぁ、分かったよ」

 

歩きながらも士郎は地図を取り出し、レイナーレが財布を見て予備金を確認する。二人が話しているのを気になったランサーが、二人に声かけて聞くと、まぁ良いんじゃねぇのと言って容認した。

 

「みんな、足を止めて聞いてくれ」

「え、何?」

 

士郎が止めるように、声をかけた。

 

「近くのビジネスホテルで泊まりましょう。合流場所には近づいてはいるけど、今日中に無理して到着するのは余計危険よ」

「…え、ウチらって泊まるお金は持ってるの?」

「無いんだったら、ホテルに泊まるなんて提案はしないわ…お金の管理が凛・士郎だけじゃなくて私にも正輝に管理を任されてたから、人数分は泊まれる。

 

今日くらい、お金を使ってゆっくりしても問題なさそうだし、緊急事態なのだから正輝も納得してくれると思うの。

それでも釈然としなかったら、士郎が顔を立ててくれるし、もしホテル代でお金かかり過ぎたら…その時は凛と正輝の説得をよろしく頼むわね?」

「この状況を話したら、遠坂だって納得してくれる」

「え、まじ?

やったぁぁ!お風呂に入れるーっ‼︎」

「ウチも疲れたぁっ…足重いし、ほんとダルかった」

「…貴方達二人は、そんなに戦ってないでしょ」

疲れ顔だったさやかとミッテルトは歓喜へと変り、レイナーレは二人に呆れていた。

昨日のように野宿することなく、ちゃんとした宿泊所に泊まれることに喜ぶ。

 

 

*****

 

12/4 18:30 ホテル

 

早速ホテルのメインロビーに入り、レイナーレと士郎の二人がチェックインの手続きをする。ミッテルトはやっと休めると楽観的になっているが、さやかは嬉しい反面、心配そうに念話をする。

 

『あの、レイナーレさん。もう入ってから言うのも何だけどさ…良かったの?だって私達のことを監視カメラで見られたりでもしたら』

『それこそ、ホテルで待ち伏せされて襲撃を受けてるわ』

『ご、ごめん…気になってて。

それなら、お言葉に甘えて休むよ』

 

さやかは気まずそうになり、受付から二つの鍵を受け取った。レイナーレは鍵を士郎に渡し、エレベーターに乗る。

 

同じ4階と隣同士の部屋に決まり、部屋割りはレイナーレ・ミッテルト、士郎・ランサー・不知火・さやか・八江の二部屋に分け、一泊2日で泊まることになった。

 

*****

 

12/4 20:00 4階 

 

士郎はドアを2回ノックし、レイナーレがドアを開ける。

 

「…入って良いか?」

「どうぞ。もう風呂は済ませたわ」

「いや、風呂は済ませたって…ちゃんとした格好をしてもらわないと」

「いざとなればあの戦闘服に切り替えれるわ」

 

レイナーレの格好はバスローブを着ており、士郎を部屋に入れる。

 

「そういう問題じゃ…もう良いか。

ミッテルトは一緒じゃないのか?」

「さやかと八江ちゃんのところに行くって言って、遊びに行ってるわよ」

 

士郎は目のやり場に困り、戸惑いながらも諦めた。

 

「ホテルに入るのすら危なかっただろうし、活動的に動くのも館内の監視カメラで見られたりでもしたら」

「それ、さやかにも念話で聞かれたわよ。

予約しようと入る際に、とっくにホテル前で待ち構えられて襲撃を受けてるって返答したわよ。

 

港に着いてからずっと逃げて戦っての繰り返しばっかりで、みんな疲れが溜まってる…貴方も、私も、全員が滅入ってるわ。

今やらないで、いつガス抜きするのよ。

また野宿なんてしたら、全員のフラストレーションが貯まるわよ。

 

特に私の顔を立ててもミッテルトなんかかなり抑圧されて、爆発しかけていたんだもの。ここまで辿り着いたのも、さやかと不知火は無人機の陽動に協力してくれた功労者なんだから。

八江って子を庇いながら戦うのだって、その子以外が倒れたら守りようがないでしょ?

私だって体を労りたかったし」

「それは分かるけど。もし結界が作動して、道通りだけじゃなくホテルの中に襲いかかってきたら」

「なったらなったで、なるようになるしかないわ。ホテル泊まるのだって、疲弊して会ったにしても待ち伏せされるかもしれないでしょ?

 

元々、辿り着くのだってグレモリーの娘達に出会ったせいで遠回りするしかなくなったんじゃない。

 

それで、ここに来た用事って何なの?」

 

最初の判断が早ければ、リアス達と接触する前に立ち去る事ぐらいはできただろう。アーシアは生き残り、一誠は神羅に始末されることになるが、転移されたばかりのレイナーレ達にとっては彼らの内情など知った事ではない。

 

「あぁ、正輝達との合流のことで話がしたかったんだ」

「…その話は明日の朝にしなさいよ。私達にできることなんて回復に専念して、次の日の朝に万全の策を考えるしかないわ」

「そんなに呑気で良いのか?」

「今日できることは、早く寝て休むことよ」

レイナーレが呆れながら、士郎に言う。

 

「私達は麻紀の内情を知って、それでも正輝達の元へ辿り着けれるかどうかも分からない…下手をしたら、この中の誰かが死ぬかもしれなかったのよ。

 

八江って子が側にいたことと、ゼロが私達を助けてもらってなかったら、少なくとも私が挟み撃ちの形で撃ち殺されて死んでいたわ。

或いはお人好しの誰かが庇って瀕死になってた可能性だってあったかもしれない。

私達は都合良く無事に逃げ切れたの」

 

麻紀が人質で使った子供を連れてきてしまったとはいえ都合良く無人機が助けたことも、ゼロによる支援のおかげでこうして運良く生き残っている。

 

「…そんな顔してまだ、私の判断であの二人を生かしたことが気になってるの?」

「いや、そのっ…」

「顔に出てる」

「ご、ごめん。

 

なぁ…何で一誠達を生かすようなことにしたんだ?ミッテルトだって納得してなかったろ?」

 

レイナーレが憂鬱そうに士郎を見つめ、開けていたカーテンを閉じつつ身の回りの片付けをしながら質問していく。

 

「そうね…折角だから、当ててみて頂戴?」

「あ、当てるって…それじゃあ二人が不遇だったから同情して情けをかけたとかなのか?」

「違う」

「なら、麻紀達に狙われていたから俺達とあの二人で分断させて敢えて泳がせたとか?」

「少し違うわ」

 

レイナーレは目を逸らし、瞳を閉じてため息をつく。もし彼女が利己的で考えていたのだとしたら後者は当っていたかもしれなかったが、反応からして期待外れの回答に呆れていた。

 

「もういいわ。聞いた私がバカだった…」

「俺もレイナーレ達が思いつくとしたらそれくらいしかないんじゃないと思うだろ?

それじゃあ、レイナーレはあの時何がしたかったんだ?」

 

士郎は納得してない様子で、レイナーレに疑問を投げた。片付けを終えた彼女は席に座り、紅茶を少し飲む。

 

「…正輝からはある程度私とミッテルトのことを知らされてるんでしょ?私がアーシアの神器を引き抜くのに失敗して、仲間二人も殺されたことも」

「それはまぁ…あいつらと敵対してるって事は俺達も知ってるけど」

 

 

悪魔と堕天使における敵対意識と、見下した連中を見返すためにアーシアの持つ神器を奪ってたこと。しかし、儀式を始める前に襲撃されたことでアーシアの神器を奪うことは失敗した。

 

正輝が責任持ってレイナーレ達を保護し、それが原因で同じ正義側同士との抗争となり、守られてる事に肩身が狭い思いをしていた事も。

 

「…少なくとも、あの場で私を襲う機会はいつでもあったわ。それでも側にいたランサーって人が刺してたかもしれなかったけれど」

「…アイツも、俺達がここにいるってことがバレたなら始末した方が良いって言ってたし」

「逆も然りよ。八江って子供が私か一誠のどちらかが殺したことを見て…その現場を見られたら、彼とその女の子は確実に重度のパニックを引き起こす。

ただでさえ情緒不安定な上に、二人の子供まで事故といっても手にかけようとしてたのだから。

 

暴れたとなると、麻紀達に気付かれるでしょ?」

「…それなら、あの二人に同情したってのはあながち間違いなかったんじゃ」

「たとえ殺したとして、終わった後にあの状況通りの事が明るみになったら、どうなるかことぐらい分かるでしょ。

 

確実に揉めるに決まってるわ」

 

レイナーレは殺した後のことをちゃんと考え、配慮していた。対して、ミッテルトは殺す事を優先させていたが、今までのことがあってか野放しにしてはいけないと警鐘を鳴らしていた。

 

「不遇だったから同情したってのは違うわよ。確かにアーシアには謝ったから同情したって風に見えていたのでしょうけど…少なくとも貴方達にも私達のことで迷惑をかけてたからね」

「迷惑って俺達にか…?それは、正輝がレイナーレ達を入れても良いって判断をしたからで」

「知ってるわ。正輝はリアス達を引き入れた麻紀と敵対するって分かってたから、船に入れた。

そもそもの話、私達が船に乗っていなければリアス達と敵対する必要はなかった。麻紀と正輝の価値基準が相反してたとしても、敵意を以って戦うことも。

 

私達が正輝に助けられたとしても、心のどこかで少しは人間を見下してたこともね」

「レイナーレとミッテルトが見下してたのは…俺と遠坂や、まどか達と響達に対してもか?

それはっ、当初はそんな気はしてたけど」

「えぇ…でも絶対に口には出すことなんてなかった。横柄な態度なんてしたら、助けてもらった正輝だけじゃなくてセイバー、アーチャーの三人に警告されていたのだから」

 

アーシアの神器奪取までの改心のない態度で のまま触れ合おうとするなら、正輝は心底幻滅して二人を見限っていた。至高の堕天使になるために、アーシアの神器を奪うのが不可能なら船の掌握して力を得ようなんてことをすれば既に消されていた。

達成したとしても、憤慨した彼の姉が二人を消しかけるだろう。

 

「でも…やっぱりさっき言ったようにレイナーレ達が船に連れて行かなかったとしても…正輝と麻紀の意見が合わないのなら。

結局、アイツらと揉めるのは時間の問題だっただろ」

「些細な喧嘩をしたところで、敵組織を討伐するって目的は一緒なのよ。命の奪い合いをするような一線を超えようとしたら、貴方達のような暴走を止めなきゃいけない仲介役が必要でしょ?

 

でも結局、協力とか利害の一致をするどころか…互いに憎み合う形になってしまった。

そして、私達が船にいて、襲われたことで正輝の怒りを買った。彼が麻紀達全員を本気で潰そうと動いたことと、リアスと眷属が口先だけしか何もしてくれなかった無能な麻紀を裏切ったことも。

 

 

それらを踏まえて、今に至るわ…大元の原因は至高の堕天使として力を欲していた私が、事の始まりだったの」

「…」

「私も、ミッテルトも堕天使だから、今まで堕天使としての勤めとして殺してきたのが、勝てる相手だからって調子に乗って見下していただけ…自分の力を過大評価してたのだから尚更よね。

 

…リアス達に消された方が、正輝と彼が連れてきた仲間にまでこんな苦悩を背負わせることもなったかもしれないわ」

「ちょっと待ってくれっ⁉︎

アイツはそんなこと絶対に思ってない!

船にいるみんなだって‼︎」

「取り返しのつかない事になったら、本当にそう言い切れるの?」

 

レイナーレ達に加担した敵だということで、一誠達はまどか達や響達にも飛び火していたかもしれない。彼女らにも襲撃され、被害を受けてしまったのなら彼らと敵対しているレイナーレ達にも怒りの矛先を向けられることになる。

 

さっきの兵藤一誠の生殺与奪の件も、本当に判断を見誤れば正輝と響以外にも、仲間内で揉める可能性は無いとは限らない。

 

「またグレモリー家が画策して私達を嵌めようとしてたのなら、あの場で二人を殺さなきゃいけなかった。

 

でも、そうじゃなかったから逃したの」

「…アーシアに謝ったのは?」

「半分は私の利己的な事であの子を利用していたこと…もう半分はあの子が許す許さないにしても、私自身が侮蔑して嘲笑っていた頃のままだと前へ進めないから。

 

 

助けてくれた正輝が、最悪私達だけでも味方になる為に。

だから、あの子に謝ったの」

「……そうか、そういう事だったんだな」

 

あの状況を思い返すと色々考えてたんだなと、士郎は頷く。

 

どうしてレイナーレが敵だった二人を見逃したのかを。ミッテルトも終始一誠達を許せなかったが、それでもレイナーレの言うことを聞き、かつ見損なうことはなかった。

 

「こういうのもなんだけど…さ。

俺からは船に入ってから成長してると思うよ、二人とも…少し、理解はしたよ」

「正輝があの場にいたら、真っ先に殺してたかもしれなかったわ。そうなったら、もう私だけじゃ止めようがないわ」

 

その言葉に、試練編の時に見せた正輝の憤慨した表情を想像すると、士郎も苦い顔をしつつ同意する。まぁアイツならやるかもしれないと。

蘇生の機能があったとしても、試練編でレイナーレやミッテルトの不意を狙って殺した。

特に加害者だった一誠に対しては、事情があっても聞く耳持たないだろう。

 

 

「それと、死んでも良いなんて絶対に言っちゃダメだからな…特に正輝には」

「分かってる」

 

レイナーレはコップの取っ手を手に取り、少し口にする。

 

 

「話が長かったわね…紅茶、少し冷めちゃった」

「ごめん。それ、温めるのか?」

「アイスティーにするから良いわ」

 

レイナーレは立ち上がると冷蔵庫の氷を取り出し、紅茶の中に入れつつ時間を見る。既に10時に回っており、寝る時間になっていた。

 

「…そろそろミッテルトもこっちの部屋に戻ってくるでしょうし。

飲み切ったら、もう寝るつもりよ。

正輝達との合流に成功するとは限らないから、貴方達も早めに寝なさいよ」

「そうだな」

 

士郎は部屋を出て行く前に、レイナーレの方を見る。

 

 

「そのさ…正輝は、自分のことについて俺達に話すことはそんなにしないからさ。隠し事も多いし、俺達にも分からない事だってあるけど…正輝だって2人を信頼した上で側近にしたんだ。

 

理解者がいてくれて良かったと思ってるよ」

「そう…彼がそう思ってくれてるなら」

 

そう言って士郎は、部屋を出てようと扉のドアノブに手を伸ばした。

 

「…おやすみ」

「えぇ、おやすみなさい」

 

 

*****

 

さやか・ミッテルト・八江・不知火・ランサーは士郎達が話している間に少し遊んでいる。

 

「そっか…訳もわからず、気づいたら船に入れられたんだね」

「お母さん、お姉ちゃん…」

「ちーっす。レイナーレ姉様から許可もらって遊びに来たって…え、何事?」

八江が何故麻紀の船に入れられたかを聞き、盾代わりにされた挙句、訳の分からない見知らぬ世界へ転移され、泣きそうになっていた。

 

「もう嫌だよっ…」

「…ティッシュ取ってきます」

鼻水を啜り、目の周りが赤くなっていた。ミッテルトも泣いていた八江を見て、来たばかりで状況が良くわかってない。

 

不知火は八江にティッシュ箱を手渡し、八江は軽く頭を下げて受け取る。

 

「えーっと…そうだ!

テレビだけじゃつまらないだろうし、ホテルの人に貸してもらったんだー!

士郎さんに投影魔術で作ったら、魔力を無駄に使わせるなって怒られそうだし。

せっかくだからみんなで遊ぼうよ!

ランサーさんも来て!

八江ちゃんもいっしょにやろう!」

「…え、トランプっすか?

別に良いけど、10時までっすよ」

「俺はブラックジャックのディーラーくらいなら、参加してもいいぜ」

 

さやかの提案を聞いてぞろぞろと集まるが、八江はまだ暗い気持ちになっている。

 

「今は、したくない…」

「八江ちゃんは見るだけで良いよ?

そんな気分じゃないだろうし、参加したい時は言ってね」

「うん…」

 

八江は体育座りしつつ、3人が遊んでいるのを眺めていた。

 

 

7並べ(一回)

 

ミッテルト「ちょっ出せない!

2のハート出してないの誰っすか⁉︎」(脱落)

不知火「…さやかさん、目が泳いでる」

ミッテルト「なら絶対さやかっスよね⁉︎」

真っ白になっているさやか「アタシ、モウ出セナイ」(脱落)

ミッテルト「え?じゃあ誰が」

不知火(何も言わずに2のハートを出す)

さやか「不知火ちゃん⁉︎」

ミッテルト「あ、生き返った」

 

 

7並べ(2回目)

 

さやか「…5のダイヤ、隠してるでしょ」

ミッテルト「ウチ持ってないよ」

不知火「私も持ってません」

さやか「嘘つけ!

誰も持ってないこと無いでしょ!」脱落

ミッテルト「ソッスねー(そう言って5のダイヤを出す)」

さやか「やっぱり持ってたじゃん⁉︎」

 

 

ブラックジャック(1・2回)

 

ランサー「おう、それじゃあカードを配るからな」

不知火「あっ…」

さやか「あー引くんじゃなかったね不知火さん…それじゃ、あたしは引いて。

あ、超えちゃったよ」

ミッテルト「アッハハハ!これでウチとさやか以外は全員自滅してるっす!そのままキープしとけば良かったのに、17留めてるウチの一人勝t…」

ランサー「19だ」

ミッテルト「なんでえぇぇぇぇっ⁉︎」

 

2回戦目

 

八江「じ、19」

ミッテルト「ウチは20で!」

さやか「あたしは、17でキープ!」

ランサー「21っと」

ミッテルト・さやか「ちょっとランサー(さん)、強すぎるって‼︎」

八江「ふふっ…」

 

一・二回ともオーダーをしているランサーの一人勝ちで終わった。遊んでいるのを見て、暗い表情だった八江が少し笑っていた。

 

「…八江ちゃんも、一緒にしたい?

それともまだ眺めとく?」

「ちょっとだけなら…やりたい」

 

 

さやかがもう一度誘い、八江も参加して楽しむ。前にやっていた修学旅行と同じ気分のままトランプで盛り上がり、寝る時間までは呑気に楽しく遊んでいたのだった。

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