《レイナーレ視点》
12/5 9:15
合流場所のバス停へと徒歩で向かう準備をする。レイナーレ達は旅館のチェックアウトを済ませる前に、まずさやかが正輝と念話できる範囲に入っているか確認していた。
「おーい、正輝との念話が繋がったよー。
10時に合流するってさ」
「…やっと合流できるのね、私達も行きましょうか。準備は出来てるの?」
「昨日と同じ天気なら、まぁ大丈夫だと思うよ」
さやかがそう自慢げに言い、全員チェックアウトを済ませてホテルを出る。今日の寒波は特に寒く凍え、戦う準備は出来てても外は異様に寒かったことで震えている。
「寒い…あぁ、もうっ寒いって…!
今日こんなに寒いなんて聞いてないよ!」
「だから言ったのに…本当に大丈夫なの?
もう少しで合流するんだから頑張りなさい。
これを渡すから」
「あ、カイロ…買ってくれてたんだ。
レイナーレさん、ありがとう」
吐息は白くなっており、さやかは寒い寒いと呟きながら身体がぶるぶると震わせて歩いている。レイナーレは言ったそばから何やってるのかという目をしつつと、コンビニで買ったカイロを渡す。
士郎も八江も防寒着をちゃんと着ており、ランサーは多少薄着でも平気だった。
「おい、そろそろ合流地点のバス停が見えるぞ」
旅館から約束した合流地点まで、もう距離は目と鼻の先。そこから徒歩で歩き、フェイトの家近くにあるバス停がレイナーレ達には見えた。
しかし、
《マスター、三人の魔導士が近づいてきております》
「…え?」
さやかの持つデバイスから警告が発せられたと同時に結界が出現、見えない壁により道を遮られる。やっと合流して安息つけれると思ったのに、この時だけさやかは寒さではなく、涙目になりながらも怒りで震えている。
「ああああぁっもうこんな時にぃぃぃっ!
一体誰なんだよもぉぉぉっ‼︎」
「…この結界、魔力で形成されている。
これなら壊せそうだな」
結界を解除か破壊しなければ、通行することはできない。正輝達との合流一歩手前で邪魔され、さやかは寒さに悶えながらも、半泣きで叫ばずにはいられなかった。
士郎は、ため息をつきながらも
「すぐにでも壊しなさい、このままだと襲われるわよ…」
「てっきり人が少ない深夜に襲うのかと思ってたけれど…ただ破壊するにも、何重にも貼られて時間がかかりそうだし。
さっきまで魔物とか機体とか出てきた時の結界とはまた違うな…一体誰が」
「あれ、なんか飛んでるっス…」
ミッテルトが空を見上げ、指を指していた。
結界が張られているこの状況下で、さやかのデバイスが警告した通り、レイナーレ達の元へ飛んでいる。
彼らは、飛んできている鉄球と共にレイナーレ達の方へ急落下しつつ向かってきた。
「え、ちょっと待って…まさかこのままこっちに突っ込んでくる気っ⁉︎嘘でしょ⁉︎」
「はぁぁっ!」
まず5.6球程の鉄球が、全員に突っ込んでくる。レイナーレは右手に光の槍を出現させ、同時に左手で全員に光の壁の補助効果を付与していく。
飛んできた鉄球の威力を軽減させていく。
「あぁもうっ…!無人戦闘機じゃないけど…こんな朝っぱらから襲ってくるなんて」
シグナムはレイナーレが魔力を発さずに、手から武器を取り出したことに少し反応するが、それでもレヴァンティンのカードリッジをリロードしつつ抜刀する。
「紫電一閃!」
(いや、本当に誰っ⁉︎)
さやかの前に出ていたレイナーレが咄嗟の判断で光の槍を取り出し、攻撃を防ぐ。続いて、一匹とハンマーを持っている
「グラーフアイゼン!」
「ておぁぁぁっ‼︎」
さやかはハンマーを刀で守りつつ、もう片方を水分身を出現させて
レイナーレとミッテルトの掌から光の槍を出現させて3人に投げつけるが、すぐ上空へ回避される。
シグナムは、レイナーレ達二人にも少し驚いていた。
「ち、ちょっと!
3人ともアタシばっかり狙ってくるんだけど、コイツらに恨まれることしたっけ⁉︎」
「知らない、わよっ‼︎何かしたんじゃないの⁉︎」
「こんな連中知らないって⁉︎」
三人が、さやかを集中的に狙ってくる。さやかの大型魔力反応を探知し、彼らはレイナーレ達に攻撃を仕掛けてきている。
シグナムを押し返したが、防御した光の槍は今にも折れかけそうな状態になっていた。
「狙います!」
「俺も加勢す「貴方は結界を破壊することに集中しなさい!八江って子もいるでしょうが!」あ、あぁっ…」
「失敗したか…ヴィータ!ザフィーラ!」
不知火は大砲で支援攻撃し、士郎ももう片方の手で剣を投げようとしたがレイナーレが一喝されて手を止めた。対して、奇襲に失敗したことでシグナム達は魔法で空に浮遊して身を引く。
大砲の弾は、すぐに急上昇したせいで三人とも当たらなかった。
「あの野郎…昨日の魔法少女といい、加減してたっつーのに、無傷かよっ…⁉︎
どうなってんだこの街は‼︎」
「…魔導士と、その一緒にいる者達もどうやら只者では無いようだな。
あの槍、魔法の類ではなかった。
全く魔力が感じられない」
「あのさ…会ってすらないアンタ達に襲われるような事を、何もしてない筈だと思うけど。
何者なの?」
ランサーは青タイツの戦闘服に切り替え、ゲイボルグの矛先を三人に向けていた。ヴィータの飛ばした全ての鉄球は、槍捌きで真っ二つにされている。
(こいつら、もしかして正輝が電話で言っていた4人組…なの?一人、足りないわね)
「お前達こそ何者だ。魔導士の魔法とは違う…他にも何が別の力を使っているように見えたが」
「質問を質問で返さないで。理由も言わず、いきなり私達に襲いかかってくるなん…っ⁉︎」
お互い腹の探り合いをしようとしたが、上空から赤い光が灯されているのに気づいたレイナーレは、士郎達が巻き込まれないように堕天使の羽を広げて浮遊する。
リフレクターを展開し、赤い光から放たれる砲撃を防いだ。
「おい⁉︎
すぐにやって来るなんて聞いてねーぞ‼︎」
「黒い翼っ…?まさか、青い子の使い魔か?
それに、あの砲撃は」
『あークソっ‼︎能天気に話してる最中だったから絶対当たるなーって思ったのに‼︎
さっきのは確実に直撃コースだろうが!』
シグナム含めて襲ってきたヴィータ、ザフィーラの2人も彼女の背中に生えた黒い翼を見て驚いた反応をする。
「あーっ‼︎あれだよあれっ!
昨日、私が説明した飛んでる機体!
さっきのようなビームを飛ばしたりして、私の魔法で作ってた水分身を倒したの!」
さやかの水分身がやられたのも、レイナーレに向けて射出された赤い粒子を飛ばした正体は、ハドロン砲だった。両腕にビーム砲を兼ね備えられているガレスを2機用意している。
「えぇ…レイナーレ姉様、どうするんスかこれ。しかも堕天使の翼まで出しちゃったからには」
「仕方ないわ。ビームを撃ってきた機体もそうだけど、見た事のない機体まであるのよ…もう力を出し惜しみするのは不味いと思ったもの。
相手が強敵なら、素性なんて隠してられないわ」
(家に着くまで出会った無人機は、どれも地上を徘徊してたり、屋上で待ち構えて狙撃しようとしていたけれど…コイツらは特殊みたいね)
『あー、あーああー…マイクチェック、マイクチェック。おい、そこにいるシグナムことピンク騎士、聞こえる?
黒髪の堕天使はボクが相手するから、君は3人で残りを倒してよ。それと、金髪の堕天使と、青い子ともう一人…赤毛の男に隠れてる小さい女の子は丁重に扱えよ』
「だ、堕天使…?
んだよそれ、使い魔じゃねーのか?」
ガレスだけではなく、神虎とバージヴァルも出現する。機体から1stはボイス越しに声の高低を調節し、シグナム達に助力するよう伝えた。
(3人を同時に相手にさせるのは、流石に不味いわね…)
「…彼らの詮索は、終わってからだ。
黒髪の堕天使とやらは奴に任せよう、他は綺羅と彼女の仲間に任せる。
まず私達3人で、あの青い子を囲んで叩く。
確実に蒐集するぞ」
「それにしたってロボット共やヘリを操ったり、アタシ達に指示送ってる奴さ…なんかあの仮面の二人組のことまで知ってるようだったし。
また聞きてーことが増えたけど…最優先で闇の書のページを増やさなくちゃな」
シグナムは堕天使の存在に戸惑いながらも、1stに馬鹿にされたようなあだ名を呼ばれて嫌な顔をしつつ、堕天使相手を浮遊している無人機達を操っている彼に任せたられた。
これで三組に分断され、襲われているさやかを助けに行こうにも元へ近づく事ができなくなる。
*****
《上空》
レイナーレは光の槍を出現させ、神虎に向かって投げつける。
しかし、投げた槍は両腕のスラッシュハーケンを回転させ、貫かれる事なく弾かれて消えた。
『あぁ無駄だよ。
今ここに集っている僕の無人機戦闘達には、堕天使対策に光属性の耐性が備わっている。
武器破壊も装甲も、貫くことは容易じゃなくなった。
街の奥まで進めたのは褒めておくけど、こんな風に単純な対策さえしてれば全然大したことはないねぇ。こんな噛ませみたいな奴を、どうして3rdが仲間にしたのか理解に苦しむよ。
それに…こうしてあの子達の目的を知ってもらえたのなら、僕らに協力してもらえるかな。
戦って怪我をするより幾分マシかと思うんだけど』
「どういう事?何が目的なのかしら?」
(怒りに身を任せちゃダメね…私一人だけで突破が無理なら、なんとか時間稼ぎするしかないわ)
脆弱だと見下していることに、レイナーレは目を細ませる。怒りを抑えてはいるものの、彼らの企みを探る為に質問していく。
『さやかちゃんには、ほんのちょっぴり3人に魔力を蒐集してもらうよう支援してくれれば良いんだよ。勿論、僕だって少女相手に蒐集するのは心苦しいって思ってる。少年とか、大人の男性女性だったら全然構わないけどさ。
あの子が苦しい思いをして、魔法を吸い取られて暫くは動けないって考えると心が痛むんだよ。
でも僕らにとっては必要な事で、殺す訳じゃないのも本当のことなんだ。あの3人に協力してもらえたら、僕の顔を立てて綺羅に引き下げるよう交渉するからさ。
その戦力じゃ勝ち目なんて絶対にないよ?』
「馬鹿馬鹿しいわ…引き下がるのは、あくまで【蒐集してもらった美樹さやかには手出ししないように立てる】ってだけ。
殺すわけじゃないから安心してなんて、私達が大人しく引いてくれた方があなたにとって都合がいいからでしょ?
…私達を助けるなんて微塵も感じられないわ」
『へぇ?どうしてそう思うわけなんだ?
僕だって心までは鬼って訳じゃないのに』
「さやかって子の少女達に対しては過敏に反応して、それ以外は心底どうでも良いのでしょ。この街全体に張り巡らせている無人機が、何よりの証拠よ。
口約束だけで適当に事を済ませて、用が済んだら気に入った人以外も生かすのなら初めから殺傷可能な無人機やら罠なんて張らないわ。
約束もなかった事にして煙に巻いて、私達を騙しても損する事は何一つないもの」
単純に目的達成までの手間が省けるだけで、それ以外のことは1stにとって、どうでも良いと考えている。彼が持ちかけた交渉の話自体、要約すれば『どんなに頑張っても勝ち目ないから、仲間を売って命乞いしろ』を言っているようなもの。
レイナーレ達側からしても、抵抗せず大人しく殺されろという事を承諾するわけがなかった。
「…ここにいるさやかと八江のような少女以外はどうなろうと、貴方の心は全く痛まないことぐらい予想がつくわ」
『…勿体無いなぁ。君らが僕の提案に乗っかってくれれば、こんな手間は省けたのに』
「こんな大部隊連れてきておいて、望み通りのことをしたら見逃すなんて…絶対にあり得ないわよ。
そもそも貴方があの3人の目的を知っていたとしても、私達に本当のことを言うとは限らないもの。
信用できるわけないでしょ」
『…あーもう良いや、お前と話しても時間の無駄だった。
僕の交渉に応じてくれないなら、さやかちゃんと金髪の堕天使、もう一人の子供以外の全員は始末するよ。
たった君一人で、どこまで足掻けるかなぁ?』
(ほんと随分と得意げに…舐めて勝ち誇っているのは、私一人を相手にしているからでしょうね)
レイナーレを呆れながらも笑う1stは、勝ち確定の戦いで嘲笑っている。目の前にいる無人機を倒したところで、また増援を呼んでくるのは目に見えている。
だが、神器や宝具のような切り札を何も持ち合わせてない。
(ミッテルトが光の槍を閃光花火みたいに散らせるのなら、私は特殊な光の鉄壁と異常屈折で錯覚させる。
…ただ問題は、その小細工がコイツに通用できるかどうか)
『取り敢えず、身体の一部分は消し飛ばしてもらうよ?』
久野はその奥にいたガレス一機に指示し、ハドロン砲を発射させる。しかし、
『…はぁ⁉︎なんだよそれっ⁉︎』
レイナーレに撃ったハドロン砲は跳ね返され、ガレスの機体を中破させた。
【ミラーコート】
対特殊攻撃における光属性の反射技。
物理攻撃を防御する光の壁・リフレクターと違い、敵の特殊遠距離攻撃を反射させる。
「…残念ね。これで、もうさっきのビーム砲を迂闊に撃てないわよ?」
『こんな姑息な技まで覚えていたなんて。それとも君らが光の槍で刺したり投げることしか能が無いから、正輝が覚えるように指示してたのかなぁ?』
「無人機を自動操作させて、高みの見物きめてる貴方に言われたくないわ。さっき大したことないって言って私達を馬鹿にしたことが、自分に返ってきただけでしょ」
実弾ならミラーコートは反射できないが、対面している無人機に搭載しているのはハドロン砲のみ。1stの発言に、レイナーレを少しイラつくのを抑えながらも挑発を挑発で返していく。
(さっきの反射で青い機体だけが自滅してくれれば問題なかったのだけれど…)
『へー、でもそれってさ?』
神虎は腰にある剣を取り出し、パージヴァルは回転させてランス状にしていく。
2機は接近戦に切り替え、レイナーレに近づこうとする。ハドロン砲と天愕覇王重粒子砲のようなビーム砲を封じたからといって、倒せなければ何の意味もない。
強力な機体を前にこの逆境を覆せる方法は持ち合わせておらず、不利な状況に変わりない。さっきの反射で神虎を撃破すればなんとかなったが、先程の緊急強制転移によって回避されている。
「なっ…⁉︎」
『ビーム砲を使わなければ良いだけだし、不利な状況に変わりない。
アサルトライフルのような実弾とか、神虎のMVSとかで良いんだからさ。
そもそもの話、君ら堕天使達が持つ力の源が光なんだから、封殺すれば攻撃も防御もできないんじゃないの?
今度は光耐性を止めて、吸収できるようにした。魔剣こと
(小細工以前に、私達堕天使の対策を…⁉︎)
堕天使は武器を形成する光が源なのだから、それを封られれば後はもう背中の翼で飛ぶことしか何もできない。
『あぁそれと…君らの顔を見て、少し思い出したよ。君といがみ合ってた長髪の赤髪女とその取り巻きの悪魔達が前日の夜にこの街の上で飛んでてさ。赤鎧の奴は中々に面倒だったけど、それ以外がピンチになったら日和ってたんだ。
上空から街を見下ろして何かを探していたかは知らないけど、よりにもよって僕の
上空にいたソイツらは、マジに格好の的だったよ』
(長髪の赤髪…コイツ、グレモリー家の娘と眷属とも戦ってたのね。
まだ得意げに自慢してるし、私のことをいつでも消せるって感じで勝ち誇ってる…)
レイナーレは自衛のために、なんとか槍の原型を留めるために小さくさせて持つ。
それを機体に投げつけたところで機体を貫くことはできないことも、光の力が微弱な状態で争った所で勝てないことは理解した。
あくまで、防御する為に両手で構える。
『光の出力を抑えて槍を短くても、意味なんて全然ないのに…そんな武器で一体どこまで戦えるのかな?』
「…それで、私をどうするつもりなの?」
『僕の要望に全く応じてくれないし、かと言って君をここで殺してしまったら守護騎士達も、はやてちゃんの未来を汚しただろって言及されるからしないよ。
だからまぁ、まず君を人質にして他の仲間達を動けないように…』
1stが得意げに話をしている最中に、不視界から飛んできた10本の剣がパージヴァル含めた無人機に首元に刺さる。
刺さった剣は大爆発を起こし、周囲の無人機をドミノ倒しのように巻き込んでいく。
『な、なんだっ…⁉︎』
時間をかけて性能を明かす1stの傲慢さが、既に正輝達の救援に駆けつけていることに気づかなかった。
(私だけだったら勝ち目は薄いことくらい分かる…だから時間稼ぎの為に有頂天な貴方との下らない自慢話に付き合ったのよ)
『まさか、もう正輝達が来やがったのか…幾ら何でも早すぎだろ‼︎』
「…来てくれるって、思ってたわ」
剣を飛ばした方向には正輝、響、浜風の3人が既に結界内に入り、守護騎士達を相手に戦っている。結界に入った正輝は、レイナーレを助ける為にシャドーを10体出現させ、気配遮断で隠れつつ偽・螺旋剣を一斉に射出、壊れた幻想でパージヴァル含む無人戦闘機達を破壊した。