Justice中章Ⅱ:蠢き轟く脅威と去り逝く者達   作:斬刄

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決戦編前
1話帰りを待つ者達の元へ


第四次聖杯戦争の激戦が終わり、正輝、アーチャー、杏子が自分の船へと帰っていく。

 

「ただいまー!

三人とも何とか生きて帰ってこれたぞー!」

 

変に弄って故障していた転移装置も、正輝達が奮闘している間に士郎達の手で修理されている。

 

「うん、おかえり。こっちも慌しかったよ」

「まぁそうだろうな〜」

 

まず或が転移装置の近くで、お迎えで待っていた。やっと三人が帰ってきたかって顔で苦笑している。

 

「で、この船の転移機能は修復してるの?」

「士郎さんが何とかしてくれたからね」

「あー…ならアイツにはお礼を言っとかないとな」

 

そう言うと、正輝の携帯から着信音が鳴る。

取り出して画面を確認すると、メールでは無人島での転移先による不具合が解消されたと連絡が来た。

そのタイミングに、浜風がやって来る。

 

「…やっと、連絡が来たか」

「あ、お疲れ様です。正輝さん」

 

艦これに介入し、事件を解決させたときに連れて帰る機能がメンテナンス中で操作できず、連れて行くにしても一人しか入れることができなかった。

今となっては、そのメンテが解除されて複数人船へ入れることができるようになっている。

 

 

「っし、これで桜達の元に船を入れることができるな」

「あの…私以外の艦娘達はどうするのですか?

そこは折り入って相談だな。この世界にまだ滞在したいって事にもなるかもしれねーし。

 

でも…不知火はランサーとサーヴァント契約してるから確定だな」

 

令呪を持っている不知火を察するに大本営以外の色んな所から狙われても可笑しくない。

正輝側の都合で巻き込まれたとはいえ、殺者の楽園と提督が手を組むという事態もあった。

 

寺にいる艦娘も船に入れるなら、慎重に考えなければならない。先に入った浜風も、他の艦娘を入れるのかは気になっていた。

 

「前に俺が介入した艦これの世界にな。無人島に桜達が待ってるから、そろそろ船に連れて帰る。

 

船でちょっと休むし、少ししてから介入するよ。まぁ艦娘については無人島についてからでもまた考えて…なんだ?」

二人の話を遮るかのように電話が鳴る。

『どうした?』

『大至急、無人島に来て下さい。

大勢の敵に襲撃されてます』

『…え?敵って艦娘?楽園の連中?それとも俺と同盟の二人以外の正義側?』

『…その申し上げにくいのですが、艦娘もいるのですが…とにかく来て下さい。

出来れば、生捕にできる人をお願いします』

 

電話に出るとライダーから来て欲しいとの連絡だったが、敵が何なのかよく分からないとの曖昧な言葉に正輝は首を傾げている。

「なんでこんな急にっ…というか艦娘もってどーゆうこと?

 

浜風、秋瀬…士郎達とマミ、さやか、ほむら、翼、平坂を呼んでくれ。

無人島にいる桜達が危ない…今から助けに行く。

浜風もついて来い。

 

 

杏子とアーチャーの二人も、帰って早々悪いが…いけるか?」

「ったりめーだ」

「了解した。マスター」

 

桜達の増援として助けに向かう士郎・凛チームと正輝のシャドー同様に水分身を用いることで数の暴力を対応できるさやか、洗脳で敵の意識を翻弄する黄泉。

リボン・影縫いで敵の動きを止めるマミと翼で生捕にする。

結界で他勢の敵戦力を結界や幻の魔法で分断可能な杏子。

 

 

以上の8名を連れて無人島に介入することとなる。

 

 

ーーー正輝達が帰ってきて早々、船で休む余裕は与えてくれなかった。

 

*****

 

ヒトフタマルマル(12:00)

一方、無人島では桜達が呑気に暮らしていた。

 

提督と楽園のリーダーによる事件が起きて以来、無人島にいる艦娘達は音沙汰もなく平和に生活している。

 

「…ここに泊まって、もう2週間ですか」

 

加賀はそう呟いた。前までいた鎮守府から離れ、赤城と共にこの無人島へと辿り着いている。

 

「い、いつもありがと…」

「五十鈴さんもお昼になると思うので、そろそろ食べたほうがいいですよ」

 

ご飯を炊きつつ、野菜を炒めていく。

朝潮と摩耶、榛名の三人は家事を手伝っているが、五十鈴の方は一応姉妹艦の二人が付いてブレーキ役になってるお陰で、桜達や正輝に対する警戒も薄れていた。

 

「ただいま帰りました」

「おう、三匹も釣れたぜ。

魚の方はまたいつものところに置いておけばいいか?」

「ええ、お願いしますね」

 

アロハシャツを着ているランサーとワンピースを来ている不知火が寺に帰ってきた。二人とも外では釣りをしており、彼が持っている青いバケツの中には活きのいい魚が飛び跳ねている。

 

「釣りのついでに、見回りはしていたのか?」

「あっ…」

「あー、そういやぁそうだったな」

「二人とも、魚を運ぶのに忘れてましたね」

 

見回りは、この無人島にもし誰かが流れ着いているか確認すること。短期間とはいえ、誰かがこの島に上陸する限らないからという理由。アサシンは寺の門番を、ライダーとランサーの交代で朝昼晩と見回りをしている。

 

無害の一般人もしくは被害に遭った艦娘が流れつけば事情を聞きつつ暫くの間は寺に入れるが、外敵ならば再起不能にしつつ武器を没収、捕獲してから襲った理由を聞くのだった。

 

「なら俺一人でちょっくら偵察してくるわ」

「あ、それなら私は代わりに魚の下処理をしておきますね」

「おう、助かる」

 

不知火はバケツを待ち、調理場の近くに置いておく。

彼女は餌と釣り道具を片付け、魚の飛び散らせている水で衣服が濡れないようエプロンを着る。暴れている魚の調理する為に教えられた通りの下処理をしていく。

 

「不知火さんも、最近はランサーさんとの関係が良好ですし」

「いつも釣りに付き合ってますからね」

 

 

【この時はまだ、何人か無人島生活に終わりが来るのも、何十人もの人数が漂流してとは思ってなかった】

 

 

*****

 

ランサーは寺から出て、降りた先にある高台へと向かっていく。そこから海沿い付近を確認し、誰か無人島に流れていないか見渡す。アーチャーのように鷹の目を持ち合わせていないが、英霊の身であるため少なくとも常人よりは目が良い。

 

 

「…何だ、ありゃあ?」

 

高台から監視すると目が死んでいる艦娘達が海上を移動し、各海辺と海岸に上陸していく。彼女達はポケットから取り出した端末で操作すると、錠前とベルトをつけた学生と民間人が転移され、黒い槍兵へと変身していく。

 

特に一番人数の多いメンバーには長い髪の気の強そうな女の人が杖を持って後衛におり、顔を兜で覆う黒い軽装を纏った兵士達も転移されている。

 

無人島の奥に前進している光景を凝視していくうちに、彼らが無人島の捜索を開始し、中央に集まろうと移動する。

 

武装している彼らの様子から察するに、友好的のようには全く見えなかった。

 

「チッ…こりゃ戻って報告しねーとかなり不味いな」

 

もし赤城達が噂で話した通り『麻紀と彼の配下』ならば、接触した時点で必ず敵として襲ってくる。もし彼らが寺の所まで探りに入ろうとするなら、たとえ正輝達と関わりがなくとも見つけた相手は戦力増強の為に取り押さえ、再起不能にして船に連れて行こうとするだろう。

 

そして、気掛かりなのは正義側のリーダーでもない少女達が、持っている端末で何人か転移させたことだ。

 

(にしても何かの見間違いか…?船とやらで仲間を転移させれるのって正輝のようなリーダー格じゃなきゃダメだって聞いたが)

 

ランサーは、とても嫌な予感がしていた。

彼らが無人島に上陸し、際限なく人数を増やされたりでもしたら、寺から脱出することもできずに逃げ場のない状況へと追い込まれてしまう。

 

(もし連中があの正義側っていうのなら、あんな人数を続々と転移させることが出来てんだ?

 

ま、詳しく探るのは合流してから考えるしかねぇな)

 

危険を感じたランサーは、このことを桜達に報告するために寺へと帰っていく。

この島にやってきて敵が何を企んでいるのかよりも、報告してその後の事についてどうするのか考えなければならない。

 

ー正輝達の援軍が来るまで、この寺を守衛していくか。

或いは全員で、この島で隠れるか。

 

 


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