Justice中章Ⅱ:蠢き轟く脅威と去り逝く者達   作:斬刄

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2話無人島防衛戦

「お前ら、緊急事態だ。

この無人島に何十人かやってきている」

 

偵察を終えたランサーが寺へ早急に戻り、全員に報告する。一人、二人なら漂流者で済む話だが、大勢で押し掛けてきている。

 

「艦娘はいたの?」

「あぁいたな、奥に進んできている」

「つっ…⁉︎」

「目的がある上に、この無人島に遥々やってきたって表情だったからな。着陸してすぐに重たそうな武装している時点で、ありゃ敵だろ。

 

艦娘もいたが、鎧をつけた連中もぞろぞろといるぜ」

 

ランサーはそう返答した。

無人島ならばある程度の軽装だけで問題ないのに、戦闘になることが理解した上で態々武装をしている。

 

 

「き、きっと…鎮守府を抜け出した私達を…始末しに来たんだ。そうじゃ無かったらここまで来ないわよっ…!

私が連れていったことも、加賀達の転移もバレたんだ」

「鎧というのは?艦娘絡みなら憲兵も一緒にいると思いますが」

 

この無人島を特定し、遥々ここまでやってきたと怯えていた。五十鈴単独で姉妹艦の名取、長良の二人を連れてきており、その情報が大本営にバレたと思っていた。

しかし、バレたのならば憲兵が疾走した艦娘を探り、大本営側の艦娘と一緒に捕らえるはずなのに連れてきたのは鎧の兵士達がいたこと。

 

どちらにせよ、彼らは自分の身を守る為に森の中に入るのならばまだしも、島に上陸して調べるわけでもなければ、何の躊躇いもなく奥まで進んでいく。

 

「で、結局どうすんだ?グズグズしてたら囲まれちまうぞ」

「そうなんですが…この無人島を出ても、他にアテのある場所がありません」

「む、無理よっ…私達、鎮守府から出てやっと辿り着いたのがこの無人島だって言うのに。

海に出ても燃料切れで追いつかれるに決まってるじゃない‼︎」

 

五十鈴がそう叫ぶのも無理はなかった。

鎮守府からやってきた艦娘であるならば、十分な備えを持ち合わせた上でやってくる。

対して妖精がいない榛名達は資材を用意してくれるいなければ、艤装を修理することもできない。

 

桜達は強力な魔術・英霊の力で逃げきれても、武器も体力も万全ではない艦娘達には限度がある

 

「…ランサー、この島に来た人数はどれくらいですか?」

「ざっと60人くらいだったが…正輝達が来るまでの間、ここにいる俺達で寺を死守すんのか?マスターが良いなら、俺はそれでも構わねぇが」

「看病しなくちゃいけない人もいます。

逃げ出すのは…」

「全員で脱出するのは難しそうですね」

「なら、決まりだな」

 

この無人島を出ず、守ることに徹する。

正輝達が救援としてやって来るまでの間、自分達の力でどうにかすることとなった。

 

*****

 

島にに上陸した敵の軍勢は、山を登り、寺の階段に登ってきている。

海辺にはランサーが向かい、寺の門にはアサシンが立ち塞がった。

 

「随分と大人数で寺参り…と言う感じではなさそうだな」

「私達に用があるのはこの無人島で生き残っている者全員、貴方もその内の一人です。貴方のような人間の意見なんてどうでも良い。

命が惜しくないなら同行してくれますか?

あと、寺の中も価値のある物は差し押させます」

「断る、と言えば武器を向けるのだろう」

 

艦娘達が大砲を、黒甲冑達は持っている槍を向けた。

話し合う気は毛頭なく強行手段で利用できる物・人材を、攫い攫い、そして戦力にする。

 

「通りたければ、押し通れ」

 

彼らはそのまま階段を登っていくと、アサシンは鞘から長い刀を抜き、鎧の人が持っていた槍を真っ二つにする。

 

「や、槍がっ真っ二つに」

(何も見えなかった…⁉︎いつの間にか奴の手に刀を持っていたってことだけしか)

「つっ…!突撃ぃ‼︎」

 

侍の剣技を見抜けなかった相手に、数だけでは易々と突破させてはくれない。

敵が強いことが分かっていても彼らに後退は許されず、侍一人に多勢で特攻を仕掛けるのだった。

 

*****

 

作戦通りランサーは海辺の周りに駆け込んだところ、彼らは発見次第襲いかかって来た。

しかし、

 

(呆気ねぇ…それどころか、戦う意思が感じられない)

 

ランサーのスキル、矢避けの加護で艦娘の砲撃は当たらない。黒い鎧をつけている彼らの攻撃は素人同然の槍捌きでは全く相手にならなかった。

それどころか、ランサーが近くの敵を薙ぎ払っただけで、すぐ再起不能になる。

手加減しているのに、余りに突破が容易だった。

 

「あー止めだ。他の連中にこの無人島から今すぐ出てけって連絡しろ。

俺達もこの島から侵入する奴を追い出すだけで、本気で襲いに来たのなら始末するつもりだったからな。

 

ここへ来た目的だけ教えて、大人しくこの島から出ていけば手出ししねぇよ」

 

変身が解除された学生達はランサーに怯えている。

艦娘達も青い顔のまま、答えづらい反応をしていた。

 

「き、強制…」

「あ?」

「強制契約させられたんです。

ここにいるみんな、被害者です」

 

彼らは武装を解除し、手を挙げて降伏した。

この島へ上陸するよう、強制的にこの島を捜索するよう指示されていた。

彼らは、この島を慎重に調べることもせず、奥へ奥へと進んでいる。

 

「…被害者ってどういうことだ?攻めてきたんじゃないのか?」

「各鎮守府と、それ以外の存命している艦娘達を襲撃して、深海棲艦と艦娘及び妖精を無理矢理船に入れるように…命じられました。

 

逆らったら…みんなっ」

 

そう返答した艦娘の皮膚は鳥肌が立っており、顔が青白くなっている。

ランサーがため息をついて槍を収めると、戦闘態勢に入っていた彼らは緊張の糸が取れたかのように立てなくなってしまう。

座り込む者もいれば、膝と両手を地面につけてゼイゼイと喘息気味に呼吸する者もいる。

 

「うっ…お、ええっ…うぷっっっっうぇぇっ」

「お、おいおい。大丈夫なのかよ?」

 

中には武装していた一人が変身を解くと、過度なストレスに耐えきれず両手を口で押さえ、吐き気を催す。

艦娘はともかく、命を賭けた戦いなんて無縁なごく一般的な民間人まで適当に力を渡して闘いに放り込まれている。

 

(ハァ…ったく、ひでぇことしやがる)

 

そんな彼らを見てランサーは不愉快だと感じている。特に戦いが素人な人達を、無理矢理勧誘して戦場に放り投げられた。

武器も防御しか扱えず殺されるという恐怖に足がすくんでいる時点で、何かと察しはしていた。

艦娘も傷だらけ、万全の状態ではない。

戦うこともままならない彼らに、こんな非道な指示した奴が全く以って気に入らなかった。

 

「で、一体誰に命じられた」

「それは…正義側の」

 

返事を聞く前に鎌を持った大男が襲い、会話を遮る。避けた先には魔法陣が展開され、地面が隆起するも、着地してすぐにまた移動する。

「…チッ、今度は何だ?」

ランサー本人が最速のサーヴァントの一人であり、次の行動に転じるのも早かったことから、隆起による岩で貫かれる前に、避けることに成功した。

 

「分かってはいたが、やはり彼らでは力不足だったか。

 

いつ我々に気づいた?」

「この程度の気配に気付けなきゃ、英霊なんてやってねぇよ。アンタ達が何者かは知らねぇが、そこの二人からは殺気を感じたぜ」

 

大男の背後には杖を持った兵士達が構えている。戦わされた市民とは違い、この三人が戦い慣れをしているのは見て理解した。

 

「また次から次へと…変わった連中が上陸してやがんな。こいつらの仲間か?」

「利害関係、といったところか。俺の方は生け捕りできない強敵なら、手短に始末しろとの指示でな。

 

殺さないようにしてるみたいだが、彼らを見逃しても無駄だ。

立場の低い連中は生きて帰っても地獄、進んでも地獄。むしろ殺してもらった方が楽になる連中もいるだろう」

「立場の低い?あぁ…薄々感じたが要するにおめーら仲間同士で差別してんのかよ?

この馬鹿げた指示を送った奴は…いいや、アンタらが会話を遮ったせいで正義側しか聞いてなかったけど、その親玉が指示を送ったってことだよな?」

 

大男は、少し黙っていた。何と答えれば良いかと考えているが、瞳を閉じてから返答する。

 

「…想像に任せる」

「あぁ、そうかい!」

 

答えを聞いたランサーは大男に急接近し、懐に入って心臓部位を貫かんと動く。

その男を確実に仕留めれば、残りの魔法使いの兵士を近接攻撃で倒せば良いだけ。

 

指揮系統になっているのはその男のみ。

しかし、命の危機を察知したのか反射的に持っていた大鎌で凌ぐ。

 

「手短に殺るつもりだったんだが、少しはやるみてぇだな。弱っているところに来たってことは、助けるつもりで」

「下手なことを喋るのは不味いから助けに行けとな。救う義理はない」

 

この男と二人の兵士達もまた親玉の指揮下で動いている。彼らが弱って情報を漏らさせないよう増援に来たのは確かだが、命を救うわけではなかった。

 

「そうかよ、ならここに来た以上殺される覚悟も当然出来てるってことでいいんだよな?」

「無論、死にたくなければこの戦場にいない。

弱っているこいつらは例外だがな」

長々と話している最中に、転移陣が展開される。

ランサーと目の前の三人だけではなく、倒れている彼らにも転移される準備ができていた。

 

 

「時間か。この無人島にいる者全員が、決戦の地へと転移されるだろう。その見事な槍捌きと素早さ…侮れない強さを持ち合わせていると実感した。

 

我が名は、黒獅子ラルゴ。

再び相まみえる時があれば、こちらも全力で相手するとしよう」

「おい、決戦の地に転移ってのはどういうこ…何にも聞けずに行っちまいやがった。

寺にいるマスターと嬢ちゃんらは大丈夫なんだろうな?

 

仕方ねぇ、ちょっくら行っ」

 

そう呟きながら、転移陣が発動する前に残りの時間で寺に移動しようと移動するが、そう決める前には転移される。

 

ーもう砂浜には、誰もいない。

 

*****

 

寺の正門では既に戦闘が開始した。門がダメだという情報が出回ると、別働隊が裏道から寺の中へ入って行く。

 

正門はアサシンが守っても、その外壁を守りきれなかったら拠点は瓦解する。ライダーと桜だけではなく、榛名達も艤装を展開して移動する。

あらかじめ寺の両側には大きな壁を作って塞いでおり、寺の裏側のみ防ぐこととなった。

 

敵には人数の差で負けてはいるが、無気力の有無で差は大きく開いている。ただ命令に従って動くだけで、この場で指揮して全員を統治する者が誰一人いない。

何かに怯えており、まるで強迫観念で戦わされているように思えていた。

 

自棄になって登ろうとすれば、艦娘の砲撃とライダーの蹴りで転落していく。もう彼らは登るのを諦め、戦う気力どころか正気を失っていた。

聞いていた話と違うと作戦を投げて逃げ出し、戦うのが怖いからと戦闘拒否をして降りていく。

「桜、何か様子がおかしいと思いませんか」

「…ライダーもそう思う?」

「彼らにこの寺を、本気で攻め落とす気があるのかと」

 

彼らに全くの戦意が感じられない。

このまま臆して引き下がってくれれば、苦難なく正輝達と合流してゆっくりと今後の話を進める事ができる。

 

「攻める気がないのでしたら、深追いは必要ないですし…このまま追い払うだけで問題ないと思います」

「その通りですね。

寧ろそうしてもらった方が、こちらも」

 

しかし、それを許さない仲間がいた。

 

「…」

「お、おいっ、何やってんだ!」

 

その中の一人、五十鈴は無言で銃口を向けつつ、狙いを定めて砲撃しようとする。

無抵抗な彼らの背中を狙って殺そうとしたところを、摩耶に止められる。

 

「やめてよ!狙いが定められないじゃない!

今ここで仕留めないと、躊躇してたらアタシ達が殺されるのよ⁉︎」

「おまっ…躊躇も何も戦意のない人をこれ以上追撃する必要はねーだろ!」

「最初は提督に足蹴りにされて、不要な五十鈴は何も廃棄されてきた!

アンタだって殺者の楽園っていうよく分かんない連中の都合で姉妹艦を魔改造されて!」

「ふ、二人ともいがみ合うのはやめ」

 

そのとき、一発の砲撃が鳴り響く。

 

変身を解除して逃げ惑う彼らを、艦娘らは殺害した。平然とした顔で、彼女達は死にたくなければ無力な彼らに進めと命じる。

 

「だ、誰か助「さっさと進め、この人間風情が」ごめ、なさい…」

「いやぁぁぁぁぁっ!」

 

言う事を聞かないと今度は拳や蹴りで、奮起させる。さっきまで止めようとした朝潮もいがみ合っていた摩耶と五十鈴ですら漠然としたまま額から汗が流れ、その方向を見ている。

 

「お、おい。あいつら味方じゃ無かったのかよ…何の迷いも躊躇なく撃って、暴力で従わせて」

「うそ…私達が逆の立場になったら、彼女達みたいにあぁなってしまうの…」

「これじゃあまるで…人類を脅かしている深海棲艦のやってることと何も変わらない」

 

提督や憲兵への迫害、自滅行為スレスレの強行突破の作戦、鎮守府内での環境の悪さと理由は様々だが襲って来た艦娘の大半は人間によって心を病み、そして嫌悪している。

 

『砲撃は威嚇射撃にしておいてよ。懲らしめるのも良いけど、死んだら勿体無いじゃないか。

彼らには被害者役の出演をしてもらうんだから』

 

艦娘が人間を痛めつけている時に、ポケットに入れていた携帯が鳴っている。彼女が暴行をやめて電話に出ると、男の人が叱っていた。

遠くにいる桜達には、全く聞こえない。

突然、携帯の音が鳴ったと同時に艦娘全員が暴行をやめて指示を聞いているのを眺めていた。

 

 

そんな時、正輝の転移時間に守り切ったことで士郎と凛が迎えに来た。

「無事か桜っ!」

「先輩、姉さんも!」

 

正輝達が寺に転移し、桜達の加勢に向かう。

彼らの声のする方に摩耶達は顔を向けるが、冷静ではない。まだ正輝の仲間を紹介していないのだから、敵が味方か分からない彼女らは武器を構えていた。

 

「ちょっと、アンタ達誰だよ!」

「武器を下ろしてくれっ‼︎

俺の仲間だ、敵じゃない!」

「気持ちはわかりますが、落ち着いて下さい」

「浜風…戻ってきたのね」

 

正輝が前に出て、攻撃しないよう声を上げる。

本当なら船に入れる云々の話をしてから、船内の仲間について落ち着いて話すつもりだったが、今の緊迫状態だと正常な思考ができない。

襲撃されている以上、警戒を解けないのも重々理解している。

だから、彼女らを抑えるために浜風を連れてきた。

 

「平坂はこの寺を襲ってきた人達を洗脳、動ける奴を暫く眠らせとけ!」

「はい、任されました‼︎」

 

早速、平坂に指示し、催眠で眠らせるよう口頭で伝える。

疲労で身動きが取れない人は事情を聞くようにする。

 

(にしたって、あの連中が腰につけていた…まさか)

 

地面には彼らが腰につけていたベルトが転がっており、既に先程の戦いで破損している。

彼はその壊れたベルトを拾い、投影開始していくと、信じられない結果に目を見開いた。

 

 

「はぁ⁉︎おい…なんだこれはっ⁉︎」

 

信じられるわけがなかった。

この力が悪用されていると竹成知れば間違いなく憤慨すると。

 

 

ーー魔術で解析した結果が、そのベルトが仮面ライダーの力と似ていることに。

しかも、その力には制限が施されてなかった。

 

さっきまでそのベルトを使って戦っていた学生の男を捕まえ、彼らに力を差し出した相手か誰かを尋問した。

 

「おいお前っ!一体誰にこの力を譲渡した‼︎」

「た、助けてくれ!俺達は戦わされて!」

「良いからさっさと答えろ!この力が存在する世界の出身地で生きて手にしたか、うちの先輩くらいじゃないと貰えない代物だ!

 

そうじゃ無かったら神様絡みの譲渡か、その力を掌握している奴がいるんだろう!

 

でもな、一番気がかりなのはこの力を大勢が持っているって事が問題なんだよ!

一体どう言うことか説明しろっ‼︎

それともこの状況を正義側の神が易々と許容してんのか⁉︎」

「な、何だよいきなり急に⁉︎

そんなの知らねぇよ⁉︎

知るわけないだろ⁉︎

制服を着た女の子…艦娘って連中が、その子の持ってたカバンの中に渡されたもので戦ってくれって言われただけなんだよ!

こっちだって何も知らないんだよぉぉっ‼︎」

(神様以外の他の奴から力を施されているだと⁉︎

だとしても、渡すにもこんな大人数に力を譲渡なんてしたら。

んなバカな話が…)

 

能力に制限が掛けられている一般の転生者よりも、転生者以外の縛りのない民間人や他の種族達を強制的に船へ勧誘し、力を与えてぶつけさせる手段も例外ではなく一つの方法でもある。

 

この方法なら規約に違反しておらず、神に問い合わせてもやり方そのものはルール違反はしていないと門前払いされるだけ。

 

ルール的にはセーフだが、仮に転生者以外の人物がライダーの力の力を与えたとしても怪物と関係しているところがある。

 

そのライダー世界に介入して得たのか、その世界で能力の譲渡に長けている人にでも気に入ってもらったか。

 

だが、この莫大な人数分の力を集めるのにも大量の時間がかかる。そして譲渡する者がいるとしてライダーの力を無差別に与えることがどれだけ危険なことかぐらい流石に分かると。

そうでなければ、ただでさえ様々な世界に介入しているのだから他の神も看過できないと動いている。

 

しかし、大勢に使われているこの現状を神は許していた。その力で蹂躙しても構わないと、黙認している。

 

(それで敵の怪物まで無尽蔵に出現したら最悪…敵組織を倒す以前に世界が滅びかねないんぞ⁉︎)

 

殺者の楽園が蹂躙する前に、ライダー達の敵怪物が大量に出現して蹂躙する未来しかない。

敵組織の数の暴力よりも、大いなる力に振り回されて自滅する方が早期にやってきてしまう。

 

仮面ライダーの力以外で例えるなら魔術も危険な代物であり、その力を大勢の民間人に公にするようなもの。その力も下手に扱えば危険だってことぐらい凛や未熟だった頃の士郎ですら分かる。

 

「…アサシン、もう終わったのですか。

正門で襲ってきた彼らを始末しなかったのですね」

「寺を守れとは言われたが、命までは奪えとは誰も言わてはいない。

私の好きなようにした」

アサシンも正門から寺の中へ戻っており、大した怪我もしていない。刀も、血で汚れておらず誰一人殺していない。

 

「案ずるな、暫くは動けん。

あやつらの動きはまるで命じられて戦っているように見えた。

強い意思が感じられん、まるで機械のようだ」

「あぁうん…まぁいい。

再起不能にさせたってことでいいんだな。

それじゃあマミは拘束魔法、翼は影縫いで残っている連中を動けないようにしとけ。

コイツらに聞きたいことが山程あるが、事が済んでからだ」

「ええ、分かったわ」

「承知した」

敵は戦う気力を失い、立つ力すら持てない。

正輝達が彼らを取り押さえ、一人一人追って説明を聞くこともなる。

無人島を調査したこと、何が目的で武装していたのか、誰の指揮下で動いているのか。

 

「無事、俺達がここへ救援に来れた以上、襲撃にきた連中もここを突破するのは」

 

敵は艦娘と仮面ライダーの力を得た一般市民だけではない。

 

ーー正輝達は譜歌・譜術の能力を知らないのだから。

 

マミが黄色のリボンで拘束をかけようとしたその時、女の歌声が聞こえる。その声を耳にした者達に強烈な睡魔が襲い、寺内にいた殆どが躓く。

 

(何だこの歌っ…急に眠気が⁉︎)

「ちょっ、何よこれっ…!」

「聞いちゃダメだ…俺達の意識を」

「眠気が…」

 

動けないのは正輝だけではない、艦娘達や士郎達、手傷を負った艦娘や仮面ライダーを身につけていた人達にも術をかけている。

 

「無事ですか、みなさん」

「セイバーっ…お前は大丈夫なのか?」

 

その歌の影響を受けてないセイバーは嶺からもらったアイテム『核鳥ソーダ』を使用して睡眠状態を回復する。

正輝達に使用したことで、朦朧としていた意識が復活した。

 

「ありがとう…にしても何なんだあの攻撃は」

「恐らく歌を用いることで意識を阻害し、強制的に気絶させる術です。

 

ライダーも私と同様、対魔力のお陰で凌げています」

「てことは、少なくともこれ魔力の類ってことだよな…ってか士郎達も眠りかける前に既に使用したのか」

歌が終わったと同時に今度は何人もの兵士達が寺の周りに転移され、登っていく。

倒れている彼らを救出し、それ以外は腰につけた剣を抜いて構えている。

 

「あぁぁっもう次から次へとっ…眠気を誘う攻撃をしてくるわ、敵も増援がやってくるわ…しかも俺達の知らない連中がぞろぞろと、ってなんだこいつら」

(襲ってこないだと?今になって倒れてる連中を助けてる…どういうことだ?)

正輝達と同じように敵も加勢に来たのかと思っていたが、今度は撤退しようとしている。今になって戦わされた連中を助け、正輝達が生け捕りにしないよう下がっている。

 

「それで、どうするかね?

動ける者で攻めることは可能だが」

「深追いはしない。まずは仲間の回復と、寺を守ることを優先しよう」

 

アーチャーがこのまま追撃を提案するが、あの歌で仲間の殆どが強烈な睡魔に襲われたばかりだからすぐには動けない者もいる。

 

増援で助けに来た兵士達は仮面ライダーの力を纏わされた市民よりも、命を擲ってでも戦う覚悟が備わっている。寺から離れるように移動し、後方へ下がっていく。

 

しかし、また新たな異変が全員に生じる。

(ちょっ⁉︎転移陣⁉︎連絡も来てない上に、強制転移って一体何の冗談だ⁉︎)

「今度は何⁉︎」

 

今度は、一人一人に転移陣が展開されていく。

いきなり地面が光りだし、どこかに転送する準備が施されていた。

 

正輝があまり驚かなかったのは試練編の時に時空管理局の話に響が割って入った際、邪魔だった彼女を携帯を使って強制転移させているため、強制転移がどういうものかを知っているからだ。

 

この島にいる対象者全員に転移陣がかけられ、

着信音が鳴り、画面を確認すると神という表示されている。

 

『ワシじゃ。皆強制転移させられそうじゃな』

「一体これはどういうことだ⁉︎

あの仮面ライダーの力や転移のことも俺達何も知らされてないんだぞ…‼︎」

『いや知らん知らん。全員を強制転移させるなんてこと初めてなんじゃが…これは罠なのかのぅ?』

「転移されるのは、私達だけでは無さそうです」

 

襲ってきた敵達もそのまま転移されていく。

意識のある人は怯えて、転移で拠点に帰ることを拒んでいる。

「も、もう時間切れなの⁉︎

せめて一人だけでも」

「まだ俺は戦えます!だから」

「いや、戻りたくない!また戻っても閉じ込められ」

脅していた艦娘ですら青ざめ、転移する事を拒む。何の成果も得られないまま無人島に上陸し、ボロボロになっている。

 

画面が切り替わり、神の次は船にいる仲間達から連絡が来ている。

 

「今度は何だ!」

『ミッテルトっス!急に転移装置が始動して…船の中にいるウチらも転移されるみたいでみんなパニックになってるから急いで戻ってきて!

とゆうよりも、突然装置が暴走してるみたいで何とかしないとかなりヤバいってゆーか…』

「おい…おいおい、ちょっと待てよ。

それじゃあ…」

『が、外部からの攻撃じゃ、まさかそんなっ…』

(外部からの攻撃って、こんな事初めてだぞ⁉︎)

 

ロープといった第三者側の陣営が出てくることもあったが、今まで船に直接仕掛けてくるなんて事は一度も無い。

 

転移装置が故障し、ついさっきまで修理が終えたのに暴走したというのは不可解だった。

 

(修理したのに、また暴走ってどういうことだ⁉︎

ただでさえ転移される世界のこともまだ分からないっていうのに…もし仲間全員がバラバラに転移っていう最悪な事態になったら。

いくらなんでもそれは不味いだろ⁉︎)

「おい神様!もう悠長に連絡してる場合じゃない!

さっさと強制転移と暴走してる装置をどうにかしろ!

下手したら全滅するかもしれないんだぞ‼︎」

『わ、分かっとるわいっ今すぐに』

 

神がそう言い切る前に転移は完了し、無人島には誰一人取り残される事はない。

一同、強制転移によって別世界へと飛ばされてしまった。

 




各船に配置された転移装置には、こう表示されていた。



魔法少女リリカルなのはA's

決戦編

開幕


大きな戦いの火蓋が、切って落とされる。
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