3話海鳴市?(正輝ルート)
「つっ…ん、ここって公園か?
それにしたって見覚えがあるような…」
景色を見て、そう呟いたのは正輝だった。
無人島にて強制転移され、到着した先は見渡すと、そこには滑り台とブランコといった子供用の遊具が置かれてある。
「もしかして…最初にフェイト達と出会った場所に転移された?」
「そうみたいですね」
「おおっ、セイバーっ⁉︎
いつの間にいたのかよ」
正輝の真後ろにセイバーが立っており、声に気づいて振り向いた。
「転移されたのは私だけではありません」
「あのセイバーさん、ここって」
「二人とも何か心当たりでもあるのか?
アタシらは全く知らないんだけど」
船に待機していた響とクリスも、同様に転移されている。正輝と同行していた浜風も、急に見知らぬ場所に転移されておどおどしていた。
「まだ船の存在や殺者の楽園すら知らない…最初にセイバーと介入してたのが、この場所だ」
「フェイトちゃん達とも出会ったんですか?」
「あぁ、出会ったよ。
泊めてもらう為にはジュエルシード集めに協力してたし、そん時のフェイトは母親のプレシアとはまだ和解してなかったしな」
(帰ってきたなら、フェイトへの家にも行けるな)
懐かしい場所に辿り着いたのか、セイバーが教えてくれたおかげで正輝は少し安心していた。
クリスと響は前に来たことはあるものの、浜風だけがいきなり知らない場所に転移されたことで、オドオドと辺りを見渡している。
「その…私と正輝さん、セイバーさんはあの無人島で戦っていたはずですよね?」
「確かに戦っていたよ。だが、あの強制転移によって…無理矢理この世界へと介入させられることになったわけだ。
他のみんなもどうなってるか、まだ確認できてねぇが…それは、これからだな」
そう言って正輝は、携帯を開く。
正輝から仲間として登録されいる以上、まず船にいるかどうかも分かる。もし全員が何処かに強制転移されたのなら、船には誰もいないはずだと。
(ちゃんと神も仕事はしてるみたいだな…まーた連絡取れないけど)
「船に残っている人もいるが、俺達みたいに転移された人もいる」
「そうですか…」
正輝が確認し、船の人員を確認する。
詳細を開き、船にいないメンバーを確認すると
衛宮士郎、遠坂凛、アーチャー、レイナーレ、ミッテルト、鹿目まどか、暁美ほむら、美樹さやか、巴マミ、風鳴翼、天羽奏。
約11人の強制転移により行方が分からなくなっている。無人島にいた残りもどこに転移されたか、まだ確認ができていない。
「うわっ、試練編までのメンバー全員かよ…それ以降仲間にしたのは船にいるんだな」
「では…士郎達も」
「何度も俺の船に転移するよう操作してるけどエラーで戻れないし、神とも連絡は取れないし。
ほんっと、どうしたもんか」
誰が強制転移されたかは分かったが、次にどう分断されたかが問題だった。無人島の人達が、既に何人か船に転送されているかもしれないと。
「でも街灯以外周りが真っ暗すぎないか…?
どんなホラーゲームだこれ。
それとも深夜の時間帯にでも転移されたのか。
にしたって暗すぎて先がよく見えないんだが…」
「正輝さん。上を見てください…月がありません」
「あ、ほんとだ。
浜風ちゃん、よく分かったね!」
「…通りで辺りが暗いわけだ。
てゆーか何で月がないんだ?」
浜風の言う通り、月が出ていない。
そのせいか、街を照らすものは街灯だけであり、街全体を探すにも灯りを辿りながらでないと分からない。
「俺は周りをシャドーで散策させる。
携帯を持っている3人は船に連絡取れるか確認しといてくれ。
ライトも渡しておくから、確認できたら公園の周辺を散策すること。
いいな?」
そう言い、投影魔術で作成した懐中電灯を四人に渡す。
正輝はシャドーが帰ってくるまでの間は公園に留まり、四人は渡された電灯を付けつつ電話をしながら確認していた。
なるべく奥の方へ調べる際は、目印がわかるよう正輝にランタンを貰い、
数分後、シャドーが帰還し情報を確認する。翠屋に小学校、フェイトとなのはの家、至る所を探しても人のいる気配が全くしなかった。
『全く人が見当たりません。該当する人物だけではなく、マスター含む4名以外の生存反応がありませんでした』
「おかしいな…なのはとフェイト達がいないどころか、民間人が見当たらない。
どういうことだ?」
「何処かに避難したんじゃねーのか?」
「いや…避難した形跡が全くない。仮に避難するにしたって、ここまで綺麗に部屋を出たってなると逆に不自然過ぎる」
(全市民が用意周到にこの海鳴市から出て行いける余裕があったのか?
普通避難って危険が迫った時に部屋が荒れていてもおかしくない。
しかも水道も出て、電気も通って、ガスもちゃんも使えている。
そもそも人がいないのに何でライフラインが繋がってんだ?災害があるわけでも無いみたいだし、逃げ出す理由が一体何処にあるんだ?)
建物にもブレーカーのスイッチと電力を入れればエレベーターもエスカレーターも起動する。
民家も、学校も、都会ビルも、コンビニやスーパーまでの至る場所が海鳴市を再現させていた。
まるで、正輝達が来る前までは誰かが生活していたかのように。
「まさか人だけ姿を消した神隠し…」
「人が完全にいなくなったら、ライフラインも機能しねーだろ」
『マスター。可能な限り散策しましたが、この街の建物は真新しく、そこに住んでいる痕跡もございません』
「おいおいマジかよ…えぇ」
少し考え、何かこの街について変わっていることがあるか索敵することを閃いた。
「えーっと…それなら、人以外で…何か不自然な箇所があれば連絡を頼む」
『了解致しました』
人がいないなら、この街以外に何処か異様なところがないか探せるか、人がいなくなった原因があるかもしれないともう一度散策させる。
「ところで、3人とも繋がったか?」
「電話しましたが、いいえ全く繋がりませんでした…」
「もしかしたら四人全員…回線が入らないから連絡できねーんだろうな」
「俺の携帯は船内の確認は可能だったが…連絡は3人と同じく無理ってことか」
それから、数分が経つ。
電波の届かない上に正輝達以外誰もいないこの海鳴市で、シャドーの連絡をずっと待っていた。
『探索、完了しました』
「ご苦労。じゃ、戻って良いぞ」
散っていったシャドー達が正輝の影に戻っていく。
情報収集していた情報が正輝の中に入っていき、他の3人は遠くを探していた。
「さて、ここまで調べて分かったことは…っと」
・正輝と仲間が身につけている時計以外が全て止まっていた。
・月がないため、辺りが真っ暗。
温度は地球とほぼ同じ。
・民間人だけではなく、動物等の生き物すらいない。
・バス・車・トラック等の乗り物が置かれていが、ガソリンは積まれてないから乗っても意味がない。
・食べ物といった腐っていくものは置かれていない。
得た情報を携帯のメモ機能を利用しつつ、入力していく。
なぜこの不可解な場所に転移されたのか、もしこの場所がまた今後関わることにならここで調べた情報は絶対必要になる。
強制転移とはいえ、何の意味もなくここに転移させたとは正輝には思えなかった。
「それで…公園の方は隈なく探したか?」
「ええ、気になるところがあります」
「公園付近の電柱です」
帰ってきた四人が目を向けていた方向は、電柱だった。
懐中電灯のライトを公園付近の電柱に当てると、複数ものバーコードのシールがびっしりと貼られている。
「こりゃ凄いな…誰がこんなに貼ったんだよ」
「他の電柱にもたくさん貼られてます。
でも、貼られてるのは公園周りだけで遠くの電柱には何もされて無かったですね」
「なるほどな、シャドー…」
シャドーを使用し、再度リーダーを呼び出す。
詮索した中に柱と同じようなものは貼られてないから確認する。もし他にもあるのだとしたら、何かしら深い関係があるのかと思っていたが
「遠くにある電柱に、バーコードらしきものは貼られてなかったか?」
『この公園の電柱以外にバーコードが貼られるところは見当たりませんでした』
「てことはここ以外他には貼られてないってわけ?」
『はい。これ以外にバーコードらしき物は何処にもありません』
「あーうん。
分かった、ありがとな」
結局、異様な所があるのは電柱のみで、え調べる以外他になかった。
「でも、こんなあからさまに貼ってるのも、罠って可能性もあるよなぁ…うーん」
長々と考えつつも、ここに止まっても仕方のないことだった。仲間も離れ離れになっているのなら、燻っている間にも命の危険に晒されている。
「…考えても仕方ないか。
ちょっと試しにかざしてみるぞ、みんな構えとけ」
「はい!」
「分かりました」
響とクリスはシンフォギアのペンダントを、浜風は大砲を出現させて戦闘態勢に入る。バーコードの読み取り機能の画面に変え、電柱に近づきつつ、照合させる。
『確認しました。これより転送します』
「…は⁉︎えっちょっ」
すると画面には認証が確認され、機械音声が鳴った。転移陣が四人の立っている場所に出現し、カウントダウンもないまま音声が終えたと同時に転移される。
******
バーコードによって転移された場所は、前に強制転移された公園へと戻っていった。場所も風景も前来た場所と変わっていないものの、強制転移された時とは比較して空気が違っている。
前よりも辺りが明るかったことと、建物やマンションの灯りもちらほらついていること。
「えっと…また、公園に戻っちゃいましたね。
でも」
「あぁ。同じに見えるようで、明らかに前来た時とは違う」
転移を終えると、正輝の携帯からメールの着信音が鳴り、メール画面には登録完了との件名が入っていた。
(バーコードの登録?
こんな機能無かったと思うが…)
バーコードが表示され、いつでもあの場所へ転移できるようになっている。
こんな機能を神は何も話していない。
いつの間にか携帯に搭載されていた。
「正輝、アタシらまた同じところに戻らされてしまったのか?」
「…あの世界で動いてなかった公園の時計塔の針が、今じゃちゃんと動いている。
無かったはずの月もある」
正輝の言う通り、街にある時計の針は動いており、空を見上げると無かったはずの月が夜の街を照らしていた。
「人の声もする、道路も乗り物が滑走してる。
俺達は誰もいなかった海鳴市から、本来の海鳴市に戻ったんだ」
「ええ、以前転移された公園の電柱には何枚もバーコードを貼られてましたが、何も貼られてありません」
何枚ものバーコードを張られていた電柱だったはずが、何も張られていない。
全くの別物として、転移されていた。
「でも結局あれって…一体何だったんですかね」
「…俺にもさっぱりわからんが、その話はまた後にするぞ。
すぐにでも強制転移で分断された仲間と合流したいところだが、もうこんな時間だ。
まずはフェイトの家へと向かいつつ、各自連絡する。
家で休息を取って、それから作戦を立てよう」
(あの場所…最初は美遊達とのクラスカード回収の際に境面界っていう場所と似てるなーって思ってたけど、少し違うかもな。だって探索させたら海鳴市を…もう一つ丸々用意してたんだぞ?
幾らなんでも大規模過ぎるだろ)
そう言いつつも、正輝だけがあの空間のことで考えていた。
シャドーの散策結果は個人的になんとも信じれないものだったが、それを受け入れるしかなかった。
バーコードを貼られていたあの世界では、海鳴市全域を再現されてある。そこから先の市外に出ることはできず、何かしら見えない壁で塞がれていたことも。
水道水も、電力発電も自動的に作っている。
(いやいや、待て…用意するとしても一体何の為に使うんだよ。
誰がそこまでやるんだ?
実際にあったのは分かったけど、何であんなの用意した?
用意したとして、得する人物っているのか?
殺者の楽園か?俺以外の他の正義側?
それか、ロープ陣営の連中がまた何かしら絡んでいるとか?
そもそも人がいないはずなのに、どうして居住可能なこの仕組みにしたんだ?
でもバーコードで転移ってまるで…いや、幾らなんでもそれは考えすぎか?)
候補が多すぎて、心の中では気が動転している。自分達を強制転移された場所が何故あの作り物の海鳴市に転移されたのか、あの電柱のバーコードから元の世界に戻るとしてもどうして転移された場所の近くに用意されていたのか。
特に深い意味は無いのかもしれない。
が、どうにもタイミングが良すぎる。
まるで、あの場所へ誰かの意図的に転移させられたかのように。
「あっ、携帯の回線が回復しました!」
「これなら船に繋がりますね。
他の艦娘達の居場所も知りたいです」
「よし、おい正輝…何考え込んでんだよ。
今からでも船の方から連絡するのか?
どうするんだ?」
「ん…あぁそうだな。家まで移動しながらでも連絡」
さっきまでいた場所から転移されたことで、船との回線も繋がるようになる。
これで船の状況を確認しようとしたその時、今度は人も車も消え、広域結界に巻き込まれた。
爆発音が近くで聞こえ、セイバーが先にその音の方角に反応する。
「結界っ⁉︎それにこの音って…もう誰が戦っているのか⁉︎」
「魔力の気配が複数あります。
なのはの魔力も感知しました」
(あのバーコードのことも気になるが…考えるのはバラバラに転移された仲間と合流してからになるな)
なのは達だけを遅い結界を張っているということは、未だ敵対している綺羅と麻紀達か時空管理局がしつこく襲ってきたのかと考えられる。
いくら強くなってても多勢に襲って来ている可能性もあるため、すぐにでも助けに行かなくてはならない。
「セイバーと雪音、立花はなのは達と合流!
俺と浜風は裏から監視してる奴を探してボコってくる!
少なくとも、この戦闘を監視している奴がいるかもしれないからな。
船にいる仲間との連絡は、その後でやるぞ!
3人は先に行け!
いなかったらいなかったで、俺達は後から向かう!」
「分かりました!」
「正輝も、危険を感じたら令呪で呼んでください」
その声と同時に二手に分かれる。セイバーが前に出て魔力をたどり、クリスと響は歌で聖遺物を纏い、背後をついていく。
浜風は主砲の25mm三連装機銃と空を飛行する敵の索敵に用いる21号対空電探、爆弾用に使う61cm四連装魚雷装備一式を確認し、戦いに備えていく。
「…準備、整いました。いつでも行けます」
「よし、なら浜風は俺についてこい。
で、シャドー…この戦闘に乗じて、高みの見物を決め込んでるやつを探せ。
見つけ次第、俺に報告しろ」
『承知しました』
正輝は再度シャドーを呼び出し、この戦闘に乗じて隠れ見ている敵を探すよう指示する。浜風もレーダーを探知させ、隠れて潜んでいる敵を探していく。
こうして正輝達四人は二度の転移から早々、なのは達と一緒に戦いの争乱に巻き込まれることになった。
もう、闇の書の事件だけでは済まされない。
正義側絡みも含めた闇が絡んでいるのを、思い知ることになる。
これはまだ、その始まりに過ぎないのだから。