Justice中章Ⅱ:蠢き轟く脅威と去り逝く者達   作:斬刄

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4話敵襲[前](正輝ルート)

なのはとフェイトは、平穏に学校生活を暮らしている。

 

二人はジュエルシード事件から正輝達と、嶺達と出会い、その後も色んな事が起きたことは今も忘れていない。フェイトは正輝の暗い過去を知ったことも、高町なのはは洗脳されていたとはいえ自分の犯した罪を、少女達の胸には今でも深く刻まれている。

 

正輝達と嶺達と別れ、もう半年以上が経つ。

 

正輝が未来日記の世界に旅立ち、高町なのとフェイトは嶺が留まるまでの間は日々鍛錬を重ねていた。

 

正輝の試練編をきっかけで、既に二人とも洗脳に耐性をつけるよう嶺に頼んでいる。

デバイスを彼女に預け、グランディによってレイジングハート・バルディッシュの性能は強化済み。

自分の身を守るためにも魔法を練習し、二度とあんな悲劇を繰り返さないよう頑張っていた。

既に、グランディと嶺からデバイスにも上乗せして強化が施されている。

 

《お疲れ様です、マスター》

「うん」

 

嶺も別世界は移動するまでには家にも姉の改造が施され、なのは達には護身用として呪符とタロット等のアイテムを持たせている。

何も知らない正輝が嶺が何をやっていたのか(魔改造)を知るのは、少し先の未来となる。

 

*****

 

12/2 夜

 

なのはとユーノは、フェイト達と念話で通話している。

フェイトとアリシアの二人が学校へ行くことになってからは、なのはが学校のこととすずか達も魔法について知ってることで楽しく話していた。

ジュエルシードのような事件が起きることなく、二人は平凡に暮らしている。

 

 

『そう言えば…管理局のみんな、誤解してるのかな。

正輝さんのこと』

『…そうだろうね』

 

試練編で起きた事件を、まだ管理局は引きずっている。

管理局に関与し、その一週間後にリンディからもう一度話をしましょうと約束したものも、試練編での事件が起きて以降からは碌に話すことが結局出来ないままだった。

管理局はジュエルシード集めの最中に正輝似せた差別者に襲撃され、正輝本人は濡れ衣を着せられる始末。

 

 

本当ならユーノも増えたジュエルシードを回収し終えた次第、故郷に帰ることになったはずなのにもう戻れなくなっている。管理局には敵視され、なのは達で増えたジュエルシードを回収せざる負えなくなってしまった。

 

『その……ユーノ君、ごめんね』

『こればっかりは仕方ないよ。

僕も、気づくまでは誘導されたから』

 

二人も、正輝を責める事はできなかった。

 

反逆者がなのはとレイジングハートは洗脳し、フェイトに殺傷設定のスターライトブレイカーを撃ってしまったことも。ユーノもその影響を受け、なのはと共に騙されたまま動いた事を悔やんでいる。

 

 

『なのははレイジングハートは自衛の為に持っておかないと、もし前みたいに嶺さんがいない間に襲われたりでもしたら』

『うん…そうだよね。

今のところ何もないなら安心してる』

 

前の時と同様に、なのはと家族全員が襲われる可能性だって十分にあった。だが、正輝が追い払って以降全く接触しようとはしなかった。

 

『それに管理局も下手に手を出したところで、戦力を削ぎたく無いと思うんだ。

ただでさえ、人手不足なのに…上条さんみたいな異能を消す力でデバイスを何度も壊されるのは絶対嫌だと思うから』

『あ、そっか。手出しできないんだったっけ』

『うん…直接は無理だと思う』

 

一度目に襲撃された時は死亡者もいたが、正輝達を直接襲った時はデバイスのみしか壊していなかった。

リンディもこの違和感に、気づいてほしいのを望んでいる。ジュエルシード回収を邪魔し、管理局の敵になっても不利益なことを。

寧ろ、その戦闘中に乱入してきた敵は遠慮なく殺す気で襲ってきている。

 

 

『私やなのは…その関係者に手を出せば正輝達も黙ってないし。やり過ぎたら、その分の仕返しを恐れてるんだ。

でも…本当に手が出せないのはそれだけじゃないのかもしれない。正輝と嶺さん達以外にも管理局にここを襲われるのは、都合が悪い人もいる可能性があるってことなのかな』

『でも…正輝さんと嶺さん達以外に私達を守ってるのって誰なんだろ?』

『私も、思い当たる節がない』

正輝が襲撃者として襲った結果、男子高校生に複数ものデバイスを素手で破壊されるわ、横から第三者の襲撃を受けるわと、時空管理局は正輝を捕らえに行くたびに手酷く返り討ちにされたことは幾度かあった。

リンディ達以外の他の管理局がやってくるかもしれなかった。しかし、あの事件以来は何事もなくこれまで通り学校に行き、こうして平和な暮らしをしている。

 

《警告、緊急事態です》

 

なのはが夜にフェイトと電話している間、その日の夜に事件は起きた。誰かの特殊な結界が貼られてはいるものの、姉の改造(グランディの強化)によって念話が遮断されることもない。

 

『……誰か分からないけど結界が張ってるの。嶺さんのお陰で、念話が遮断されてなくて良かったけど…』

『分かった。私も、アルフを連れてなのはのところに駆けつけるから』

 

念話の通話を遮断し、なのはは直ぐに出かける準備をする。

 

「ユーノ君は隠れながら、相手の出方を見て」

「なのはも気をつけて!」

「うん!」

 

なのははビルの屋上へ、ユーノはなのはがいる建物の近くへと別々に行動していく。一つの鉄球が浮遊し、なのはの方へ勢いよく飛んで来た。

 

《誘導弾です》

 

魔法弾を防いでるところを、今度は赤毛の少女が後ろから手に持っているハンマーで叩きつけていく。

 

「テートリヒ・スラーケン‼︎」

 

攻撃を防御しても衝撃で吹き飛ばされてしまい、そのままビルから落下していく。

 

「レイジングハート!」

《stand by ready》

 

なのはは、咄嗟にデバイスを取り出して変身する。魔法で空を飛び、ハンマーを所持した赤い子に杖を構えた。

 

「いきなり襲いかかる覚えはないんだけど、どこの子!なんで襲って来るの!」

 

話しかけても、赤い子は全く返事をしようとしない。なのはの声に耳を傾けようとはせず、ハンマーを振り回していく。

 

「話を…」

(⁉︎んだこれっ…)

〈canon mord〉

まずなのははポケットにある吊り男のタロットを隠しながら使用し、相手を痺れさせる。

杖を砲撃モードに変えて、攻撃する。

 

「聞いてってば!」

〈divain baster〉

 

その攻撃を防ごうとしても、麻痺されたことで防御できないまま直撃した。

思っていた以上に生々しい音が聞こえ、逆になのはは襲ってきた相手を心配した。落ちて行く様子もなければ、かといって近づこうにも掴まれて防御できなくされるのも困っている。

 

(えっと、やりすぎちゃったかな…?)

 

牽制のつもりで撃ったはずが、大打撃を食らったような音で帰って心配する。煙の中にいたままで、無事かどうかよく見えていない。

 

〈ラケーテンフォーム〉

 

デバイスの音声が聞こえると煙の中から現れ、なのはは咄嗟の判断で防御魔法を展開する。先程の砲撃で帽子を失い、怒りの表情になりつつハンマーを上に翳していく。

 

「ラケーテン…ハンマァァァァッ‼︎」

「⁉︎レイジングハートっ…!」

〈Protection〉

 

カードリッジを二つ使用する大技は膨大な魔力を込めて、確実に仕留めようとしていた。

特攻を仕掛け、

 

「ぶち抜けぇぇぇぇっ!」

 

しかし、身体が痺れていたことでバランスを大きく崩し、防御魔法は傷がついただけだった。先程の砲撃で赤い子は息切れをしており、ハンマーを振り上げようにも腕の力がそこまで入っていない。

 

(やべぇっ…さっきのダメージで力が)

最初は勢いがあったものの、先程受けたダメージのせいで段々と弱くなって行く。

 

〈Flash move〉

(なっ⁉︎)

「…ごめんね」

 

体力が落ち、麻痺でよろめているのを見過ごさなかった。ハンマーの力が弱まったところで、なのははすぐに防御から攻撃に転じ、高速で背後に回り込む。

 

初発で撃った砲撃魔法は三割弱程度のもので、掌に温存してある魔力弾は小さくさせ、本人の意思で一気に膨張。

そのままゼロ距離で爆発させた。

 

なのはの方が、一枚上手だった。

 

(アタシ、いつの間に背後を取られたのか。

それに体が痺れて動きづれぇ…)

 

カードリッジで爆発的に魔力を高めたのに全く歯が立たなかった。デバイスは破損されなかったが、身体へのダメージが酷く思うように動けない。

 

『あ、フェイトちゃん。

今さっき一人捕まえたけど…』

『もう少しで着くから、拘束魔法で抑えてもらってもいい?』

『うん、分かった』

 

両手両足で押さえていたバインドを、首、腹部、両手、両足まで念入りに拘束していく。フェイトが来るまで反抗できないよう徹底して身動きが取れないようにした。

 

「て、テメェっ…ここまでやるか普通」

「これ以上話せないなら、暫くはじっとしててね?」

(畜生っ…もう終わりなのかよ。

シャマル、ザフィーラ、シグナム…はやてっ!)

 

ヴィータを逃さないようにじっと眺めていたなのはだが、彼女の真上にはピンク色の髪をした女騎士が剣を振り下ろしていた。

 

レイジングハートとなのははそれを察知し、素早く避ける。

 

「勘がいいな、先程の攻撃を防ぐとは」

(仲間…一人だけじゃない)

 

女の騎士は、なのはがかけたバインドを魔法で破壊していく。ヴィータは拘束が外れても麻痺状態のまま体の痺れが取れず、戦闘を続行させることはできなかった。

 

「助かった。

でも畜生っ…思うように動けねぇ」

「そうか、ならお前は引け。今の状態で戦えば、また返り討ちにされてしまうぞ」

「カードリッチでぶち込んでやったのに全くびくともしない。気をつけろシグナム、あの白いの…傷一つつけねられねぇ。

魔法以外にも何かしてきやがった」

 

2対1の状況に追い込まれるも、なのはは諦めるつもりはなかった。ヴィータは後退し、今度はシグナムとザフィーラが囲むようにする。

 

「多勢に無勢だが…悪く思うな」

「…3人かな」

 

なのはは既に助けが到着し、機会を伺っていることも。3人の目はなのはだけに向けられており、ユーノが隠れていることに全く気づいていない。

 

「はぁぁぁっ‼︎」

 

間を挟みつつ二人同時で、なのはを攻撃しようとしたその時、

 

『もういいよ、ユーノ君』

「何っ⁉︎」

 

密かに隠れていたユーノがシグナムに急接近し、刃のような何かを振り下ろす。そのタイミング良くなのはは、シグナムの右腕をバインドで動けなくした。

 

シグナムはレヴァンティンで防ごうにも、腕はバインドで固定されており、すぐに曲げることができない。咄嗟の判断で左手に鞘を出現させ、防御に転じた。

 

「くっ…もう一人いたのか」

「なのは、大丈夫?」

「私は平気。ユーノ君はあの紫の人をお願い」

 

ザフィーラが攻撃してくるのをなのはは予見しており、振り向くことをせずに手を突き出しつつ物理防御の魔法を展開して防いだ。

 

シグナムは右腕のバインドを、左拳で叩きつけて破壊する。

 

「白いのだけじゃねぇ…気配を消して隠れてやがったのか」

「間合いのタイミングも完璧だった。利腕を阻害し、防げないようフォローしている。

…….判断が遅かったら、確実に斬られていた」

 

ユーノの持っていた武器を凝視すると、持っていた武器がデバイスでないことに気づく。

 

「……その刀、模擬刀か。

魔力を纏わせているようだが」

「あ、うん。誤って殺すのはちょっと…ね」

助けに来たのは、ユーノだけではない。

ザフィーラが攻撃している最中に、頭上から黒い鎌が振り下ろされていく。察知した彼は鎌を回避し、すぐさまシグナムのいる方へ移動する。

 

「ごめんねなのは…遅くなった」

「あ、フェイトちゃんにアルフさん。

来てくれたんだ」

 

フェイトとアルフも駆けつけ、これでまた人数差の形勢が逆転される。お互いの睨み合いの状態になり、それぞれの武器を構える。

 

「……多勢に無勢だけど悪く思うな、だっけ。

その言葉、そのまま返すよ」

「貴方達がなのはを襲った目的を、教えてもらう」

「シグナム、やっぱ引くのは無しだ。

いくら増えようが、全員ぶっ潰せば良いだけの話だろ!」

 

人数差で負けても、シグナム達は引こうとしない。それほどまでに勝てる自信があるのかと、なのは達は警戒しつつも互いに正面きっての戦闘が始まった。

 

結界の中、魔力の光が激しくぶつかり合う。

 

なのはとユーノの二人はヴィータ・ザフィーラを相手しているが、ヴィータは麻痺の効果によってあまり動けず、ザフィーラは攻撃してもなのはの防御魔法が硬く、守りに入る体制のまま攻撃に転ずることができない。

 

本当ならヴィータが攻撃の役目をするべきだが、今の不調では十分に力を発揮させることができない。

 

「くっ、防御が硬いかっ…長引けばこちらが不利になるぞ!」

「わーってるよ!くそッ…やっと身体の痺れが治ってきてるのに」

なのはの方はまず砲撃魔法を撃ち、ザフィーラが防御魔法で阻止していく。そこから、ユーノが前に出てザフィーラの懐に入り、模擬刀で穿とうとする。

 

が、防いでいる間にヴィータが魔力弾を別に飛ばし、なのはと同じように遠くからの遠隔操作でザフィーラを守る。

『今ここでヴィータが脱落したら、戦況が覆されてしまう』

 

互いに攻防が激しいが、手負いを庇っている分にはザフィーラ達の方が不利になっている。嶺からもらったアイテムで一気に攻め込むことも可能だったが、

 

『……どうする?今なら二人を撃墜させることもできるけど』

『うーん…そうしたいのは山々なんだけど。

何か引っかかることがあるんだ。

それが気になってて』

(ヴィータって子がアイテムを警戒してるのもあるけど、他にも何か……)

 

このまま一気に攻めるのも、嫌な予感がしていた。

一対一での実力や、人数差でもなのは側が勝っているのに一向に引こうとしない。それどころか勝機があるという気力で、二人とも襲ってきている。

 

相手の目論見はまだ分からないが、その勘は当たっていた。もう一人の守護騎士こと、シャマルが旅の鏡を使ってなのはのリンカーコアを狙っていることに。

 

*****

 

「はぁぁっ‼︎」

「ふっ‼︎」

 

一方のフェイト・アルフは守護騎士の将であるシグナムを相手している。アルフはバリアブレイクで破壊しようと、出方を見ている。

まだ相手に手の内は知られていないが、下手に横から割って入ろうとすればフェイトの邪魔になってしまう。

 

『アルフ…私に合わせて同時攻撃。

できる?』

『うん。

分かった、やってみるよ』

 

〈size form〉

 

デバイスフォームからサイズフォームへと変形させて、構える。

手を出さなかったアルフも、タイミングを合わせようと右手の拳を握る。

 

〈Arc Saber〉

 

シグナムの方へ振り下ろすと、鎌から光刃を飛ばした。

 

〈Sonic Move〉

「何っ…⁉︎」

 

飛ばした3秒後に、高速移動でシグナムの背後へ回り込んでいく。

 

「チェーンバインド!」

「ハーケンセイバーっ‼︎」

 

振り向いたと同時にアルフが左手でチェーンバインドで動きを封じ、フェイトがまた更に強度の高い光刃を飛ばしていく。

 

二方向なら光刃が迫っていき、防御するにも鎖のバインドを素早く壊さない限り攻撃は免れない。

 

「つっ…レヴァンティン、カードリッジロード!甲冑と焔を‼︎」

〈Panzergeist〉

「バルディッシュ!」

〈Saber explomed〉

 

カードリッジを使って魔力を一気に増大させる。まずチェーンバインドを破壊、レヴァンティンに炎を纏わせ、至近距離で光刃を爆発させる前に斬り裂いた。

 

真っ二つになった光刃は、落下して爆発していく。

 

「バリアブレイクっ!」

(この人…攻撃を受けてでも)

 

アルフのバリアブレイクによって魔力で強化させた甲冑を破壊したが、フェイト達の同時攻撃をカードリッジを何個か消耗し、凌ぎ切ったことで疲弊している。

 

(この場を切り抜けたとはいえカードリッジを使い過ぎた…数も残り少ない。連中も逃す気もないのなら、まだ効果を得ている時間内に一気に決めるしかないか)

「聞かせて下さい、どうして私達を襲ったのか。貴方達と戦うつもりは」

「事情を話すつもりも、引くつもりもない。

我らには為さねばならないことがある」

 

フェイトには、かつて自分がこの地球に来た時と同じように、彼女達がこの街を脅かすような悪意を以ってやっているわけではないと思っていた。

 

直感ではあるが、彼女の曇りのない眼と信念で伝わっていた。

 

「為さねばならないこと?

それってどういう…っ⁉︎」

 

質問している最中に、シグナムのデバイスにカードリッジがまた装填されていく。人数差で押されているなら、まず一人を確実に撃破して形勢を崩そうと勝負を仕掛ける。

 

話すことはないと忠告し、それでも話をしようと試みている隙を狙った。

 

「紫電…いっせ、⁉︎」

 

この一撃で、確実に一人を落とす。

レヴァンティンに炎を纏わせつつ、そのままフェイトに斬り込もうと斬り込むはずだった。

 

「つっ、もう一人いたのか⁉︎」

 

横から魔力を込めた剣圧を飛ばしたことで止められ、シグナムは飛ばした方向を見る。

そこには、青い騎士の甲冑を身につけた金髪の女性が立っていた。

 

「「セイバーさん‼︎」」

「お久しぶりですね。

二人とも、お元気で何よりです」

 

シグナムは、セイバーのいるビルの屋上へと着地する。風を纏わせた不視界の剣を持ち、魔力を放出させる。

 

「また新手か…」

「貴方達の目的は知りませんが、再起不能にさせてから教えてもらいますよ」

「クソッ、何でこうも敵が溢れてんだよ!」

 

シグナムの視線はセイバーに向けられた。

魔力量も、剣圧を飛ばしてきた技量も相当危険だと判断し、浮遊をやめて地に降り立つ。

 

(…並の騎士では勝てない程の実力を兼ね備えている。

 

私でなければ、落ちていた)

 

ヴィータの張った封鎖結界だけではなく、セイバーの接近に対して、二人が持つデバイスの探知に全く引っ掛からない。

 

「あの、セイバーさんが来たってことは…正輝さんも来てますか?」

「正輝は後から向かいます。現場で隠れつつ覗き見てる奴をちょっとボコってくると言ってました」

「目の前にいる3人以外は見当たらないけど…他にもいるの?」

 

なのはとフェイトが魔力で探知しようとしても、目の前の3人以外は誰もいない。守護騎士達は彼らの会話を聞いて、ヴィータ以外は平静を保ちつつ念話で会話する。

 

『おい…まさか。

シャマルのこと、とっくにバレてるんじゃ。

こんなに仲間が来てるなら連絡だって』

『ヴィータ、シャマルのところに行け。

ここはザフィーラと私で食い止める』

『で、でも…』

『表情を隠せ。もう一人こちらにいることを感づかれたら不味い』

シグナム達は青い騎士が奇襲してきてからようやっと気づいた。だとするならば、何も聞かされてないシャマルにも仕掛けてきている。

 

そもそもセイバーのような援軍が近づいて来てるなら、シャマルが感づいて三人に念話で連絡している。

 

しかし、シャマルからの通信が来ていない。

 

『お、おうっ…悪い』

「⁉︎下がれヴィータ!」

 

しかも、正輝の仲間達は彼らに考えてる暇を与えない。セイバーだけではなく、今度はヴィータにめがけてもう一人が特攻を仕掛けていく。

 

「はぁぁぁっ‼︎」

 

感づいたザフィーラが拳を止めても、勢いは止まることなくそのまま建物の壁に激突。

 

(この女の拳…一撃が重くっ)

「ザフィーラっ‼︎」

「よそ見してる暇があんのかよ!」

 

ザフィーラが吹き飛ばされたと同時に、クリスが響同様、既に装者に変身してヴィータに乱れ撃つ。

今度は真下からガトリングによる弾丸の嵐が放たれる。

 

「なっ…んの野郎っ!」

 

ヴィータは物理防御で弾丸を防ぎ、その場から動けないように足止めされてしまう。シャマルを助けに行きたくても、もう2人も乱入し、こうして妨害されている。

 

『おい、シャマル!

そっちは大丈夫なのかよ⁉︎』

 

こうして弾丸を防ぎながらも、シャマルに念話をするしか方法がなかった。

安否だけでも確認し、目眩しの閃光弾か旅の鏡を展開してリンカーコアを奪えるが、

最悪闇の書のページが減っても

 

『ええ、大丈夫…でも』

『いるんなら、すぐに撤退の準備を』

『そうしたいのは山々なの。

でも…やられたわ』

「動いたら、貴方を再起不能にします」

 

想像した通り、ヴィータ達の考えうる最悪なケースは当たっていた。

裏で動いている正輝は既に用意したシャドーによる影分身を5体向かわせ、シャマルを取り押さえいる。

少しでも魔法を使ってシグナム達を助力しようと動けば、一斉にシャマルを襲うことになる。

 

『念話で知らせようと動く前に、黒い影のようなのがいきなり襲いかかってきて』

『嘘だろっ…アイツらシャマルにも』

 

彼女は手を出すことはできなかった。

全く身動きが取れず、少しでも何かしようものなら正輝のシャドー達はシャマルの意識を失わせる準備はできていた。

 

 

*****

 

守護騎士達が苦戦しているのを、眺めていた仮面の二人は焦っている。

早い時期にはやてと守護騎士達を監視していたが、

 

(クソっ…一体どうなっている⁉︎次から次へと…)

 

仮面の男は、彼女達守護騎士の監視をしていた。

本当なら徹底して動くのは管理局と接触して以降と考えていたはずなのに。きっかけは、仮面の男達とその背後に脅迫状が送られたことが全ての始まりだった。

 

【12月中に、八神はやて及び守護騎士を全力で守れ。約束を放棄した場合は、計画の全貌を守護騎士全員に暴露する】

 

この海鳴市には管理局の魔道士とは反して強大な連中達がこぞって集まっている。前の襲撃事件といい、殺人鬼の正輝を匿っているプレシアの拠点を攻め込むにも失敗した。

 

もし、彼まで闇の書に関わろうとしたら主人の凍結封印の計画が介入によってご破算になる。

その前に少し早めに行動し、出方を見るはずだったのに。

 

(奴らの仲間達の中心にいたリーダー、岩谷正輝が帰ってきているなら余計に不味い…連中がリンディ達を退けれるほどの戦力を持っているのは知っている。

 

そんな連中が、今度は闇の書事件にまで干渉しているのだとしたら…)

 

生半可な彼らの力では、彼ら相手に太刀打ちなどできるわけがない。

散々管理局の人を襲撃し、死人も出ている。誤解が解けてないどころか、彼への噂が局員内に広まっていた。

それもあってか、地球へ行ってでも迂闊に奴の首となのは達を狙おうなどと思う局員はいなかった。

 

デバイスは完全に壊され、良くて大怪我、運が悪ければ何もできないまま惨たらしく殺される。

最悪、その関係者にまで手を出を出そうとするなら死んだ方がマシなくらいの尋問と粛清を受けるなんて話もあった。

 

しかし、他の局員らの話は確証が無く、曖昧で信憑性が低い。

実際プレシアの家を突撃したリンディの部隊の殆どがデバイスを壊されているが、全員生きて還っている。

釈然としていない表情をしていたクロノも助かっている。

 

襲撃した犯人が正輝を似せた誰かが局員らを襲っているという線も兼ねてリンディ達は調査する必要があったが、既にその世界での介入にもジュエルシード事件のようなことが発生してない限りは極力干渉しないよう上から命じていたと聞いている。

 

正輝の調査をお願いする前に、別の局員らが地球に到着したが本部に戻ってきてないことにリンディ達は驚いていた。

 

ーーーこのことから、戻ってきてない局員達と正輝のことで『地球に到着し、正輝達のことで探ろうとすれば二度と戻って来られないという』という噂が広まってしまった。

 

 

そんな嘘か誠か不透明な噂をずっと考えていたら、そろりそろりと背後から誰かが迫っていることも知らずに。

 

 

「お前はお前で、なーに覗き見してんの?」

「なっ⁉︎気づかれ…」

 

正輝が取り押さえた。

偵察させたシャドーには気配遮断を発動させて、仮面の位置を既に確認している。正輝の元にその情報が入ると、裏取りしつつ敵が反射的に魔法を使って動こうとする前に急接近しつつ蹴り飛ばした。

壁に激突させ、法皇のタロットを使用しつつ、敵の魔法を一時的に使用不可にする。

 

ヴィータ達と同様に敵に考える隙を与えさせず、状態異常をかけて魔法も使わせない。

 

「が、はっ…」

「お前以外に協力者いるなら、さっさと居場所を吐け」

 

 

もう一人が、高速で助けに向かってきている。

片方が危機に瀕したのを察知したのか、正輝の背後からもう片方が砲撃魔法を仕掛けてくる。

が、この仮面の男がもう一人潜んでいることも事前に分かっていた。

 

(気づいてないと思っていたのか?馬鹿タレ)

 

屋上で待ち伏せしたシャドーが急降下し、真っ黒な槍状の武器を作り出して、それを一気に振り下ろす。

背後に気づいたのか、振り向いて物理防御の魔法を展開する。

が、判断が遅かったせいか防ぎきれなかった。

そのまま地面へ落下し、着地したシャドーが身体を掴んで地面を削りながら移動させ、待っていた浜風の砲弾に直撃する。

 

浜風にはサーチ機器を搭載させ、相手が透明であっても位置が丸わかりになっている。身体を魔法で守られているとはいえ、大砲で生じた高熱によって片腕に火傷を負っている。

 

(この女、一体どこから取り出した⁉︎)

「上手くいきましたね」

「ナイスだ、俺の指示通りよく動いてくれた。

 

それじゃ、二人ともじっくりと『お話し』させてもらおうか?」

「くっ…」

「こんなあっさりと…」

 

誰かが、なのはを襲撃した守護騎士達に助けが入ってくる事も分かっていた。正輝本人は仮面の男の正体をとっくに知ってはいるが、このタイミングで関与するとは思ってなどいない。

 

(でも、どうする?

正直、コイツらが早く動くとは思わなかった。

綺羅達が仕向けた刺客かと思っていたが…どうしたもんかなぁ)

 

殺人鬼だけではなく管理局員を捕虜にしたなんてことも聞かされたら、また更に悪評が広まってしまう。話は聞くけど、その後の二人の処遇に困っていた。

 

「やべぇ…このままだとあたしら」

 

全速力でシャマルを助けに向かっているヴィータは、青ざめた顔をしたまま一言呟く。

 

このままだと、全員逃げることができない。

 

仮にこの場から逃げ切れたとしても、必ず闇の書とその主の居場所も探られてしまう。支援のシャマルを押さえられ、守護騎士達は数の暴力で追い込まれ、仮面の男の二人も正輝に捕縛されている。

この散々な様子に、結界内に出現したドローンや監視カメラで様子を見ていた男がキレ気味に叫んだ。

 

『あーあーあーあっ、ダメだこりゃ‼︎

ほんと見てらんないよ‼︎

 

守護騎士もダメダメ‼︎仮面の二人が代わりにフォローしてくれるかと思ってたけど、甘かったわ‼︎』

 

彼らを激しく罵倒し、目立つように大声で叫んでいく。

街にある全てのサイレンから、轟き叫ぶ。その声に、戦場のいる全員がどこからの声なのか周囲を見渡す。

 

『まぁ良いさ、アイツらには引導を渡すつもりだったし。決戦編もいい加減、始まっちゃったわけだからさぁ!』

「おい…またテメーらの仲間かよ!

一体何人呼べば気が済むんだ!」

「違う、これは…⁉︎」

 

ヴィータは次々と増えていく増援に苛立っているものの、なのは達の味方ではない。彼の声はなのは達は聞き覚えがなく、動揺していた。

 

 

『守護騎士達、あと役立たずの仮面共!よく聞きやがれ!ここはさっさと引いて僕が何とかしておくからさ‼︎』

「見えないところからあたしらに命令してんじゃねぇ!そもそも何でアタシらのこと…なら、綺羅の言ってた協力者っていうのは」

『いいから黙って言うこと聞け‼︎…それとも君ら管理局に捕まって潰えるかい?』

 

反感はありつつも、この状況において最もなことを言われて止むを得ず引くしかない。シャマルを人質に取られている以上、蒐集を諦めるしかなかった。

 

「あ!おいお前らは逃げるんじゃ…つっ、今度は1stの野郎か‼︎」

 

仮面の男達も、蹴り飛ばされた箇所と、火傷した腕を押さえつつ逃げるように立ち去っていく。正輝の方はグラスゴー、無頼が道を塞ぎ、逃げた先には既に雷光が転移して出現し、正輝達に三式弾を放射してきた。

 

「やばっ…⁉︎」

 

散りばめた弾丸を防ぎ、仮面を追おうにも逃げられてしまった。シャマルの方にも動きが軽やかな白兜の機体が二機出現し、正輝の分身体をバリスで狙い撃ってくる。

 

『申し訳ありませんマスター。

敵機体を取り逃しました。

一機、敵機体がセイバーの方へ向かっております』

 

複数も剣を射出し、影縫いで足止めしていく。

白兜を一機破壊したものの、もう一機はセイバーの方へと向かっていく。1stの撹乱によってシャマルもこの機に乗じて逃げられてしまった。

 

『結局蒐集できなかった…一体何なんだよ次から次へと。

でも、叫んでたアイツのおかげで逃げれたんだよな』

『ごめんなさい…私も背後を取られたなんて。でも、機械が助けてくれたお陰で抜け出せたわ。

 

一旦散ってまたいつもの場所に集合しましょう』

『やむ終えん。奴の言うことには癪に触るかもしれないが、ここは引くぞ』

 

諦めた彼らを追おうとすれば、1stが用意した複数もの無人機が立ち塞がる。なのは達のところは空中にフライトユニットを搭載したサザーランド2機、ヴィンセント・ウォードを2機、地上にはグロースター2機が出現する。

シャマルも仮面の男達の方も、無人機が盾になったせいで逃げられてしまった。

 

(なのはとフェイトには絶対に撃たなかった。

二人の攻撃をちゃんと回避してる。

となるとこの場での狙いは俺達のみか)

「目的は仲間と合流させないつもりか…しかも、セイバーを」

 

残った白兜一機がセイバーの方へ向かい、支援させないよう襲う。近づかれることを恐れて距離をとりつつ、スラッシュハーケンとバリスで牽制していく。

 

「私を警戒しているのかっ…!」

『ま、サーヴァントは厄介だからね。

倒すのは難しいけど、少しの間だけ足止めしてもらおうか?』

 

1stはサーヴァントを動かせまいと白兜以外にも無人機を手配し、セイバーを囲んでいく。

 

「浜風、ついてこい!

まずは響達のいる方へ戻るぞ!」

「はい!」

 

一方の正輝、浜風の二人は久野のせいで仮面の二人組を取り逃したものの、雷光とグラスゴー、無頼の3機は既に撃破している。

機体の残骸が散らばっていた。

 

セイバーの方はシャドーが撃破した相手なら、問題なく対処できるだろうと信じ、なのは達のいる方向へと移動していく。

 

クリスの方は突如現れた無人機が、盾になったせいでヴィータを逃してしまった。

 

「させっかよ…っ⁉︎」

 

逃さまいと深追いしようとしたが、一発の銃弾が片方のガトリングを貫き、暴発する。

クリスが撃ってきた方向を見ると、そこにいたのはスナイパーのような武器を持つツインテールの少女が蒼い目を光らせていた。

 

(高層ビルから、誰か狙ってやがるっ…‼︎)

 

綺羅の仲間であるブラックロックシューターがクリスの足止めし、シグナム達の逃走を幇助する。黒いスナイパーライフルを構え、片方のマシンガンに一発撃ち抜いた。

 

「へぇ…随分と味なことしてくれるじゃねぇかよ!」

 

下手なことをすれば、いつでも頭上を狙うことができると黒い少女は警告を示し、今度は威嚇射撃で地面を二、三発と撃つ。動きを封じられたクリスとブラックロックシューターの視線がかち合い、

 

『お前も、セイバー同様拘束されとけ!』

「なっ⁉︎

どっから湧いて出てきやがったコイツら⁉︎」

 

今度は久野が手配したサザーランドの機体がクリスを囲んでいく。撃ってきたブラックロックシューターと決闘することもままならず、もう片方の武器で周囲の敵を蹴散らして行くしかない。

 

正義側の1st、2ndの陣営までこの戦いに乱入し、一斉に正輝達を襲撃してきた。

 

 

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