ウマ娘 オルタナティブダービー   作:白兎のシロ

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第1章-3「憧れ」

「もう…余計な心配させないでくださいよ、組織長。」

格納庫に着くまでの時間、ずっとネイチャからカケルの机の下にいたことを問い詰められていたやよいさんは、疲れ果てた顔をしていた。最初の頃は、のらりくらり誤魔化そうとしていたが、ネイチャの圧に負けてしまい、すべてを喋ってしまった。

「うぅ…恥ずかしい……」

「そんなに恥ずかしいことじゃないですよ。それよりも任された仕事をしましょう。」

ネイチャがそう言うと、やよいさんは何かを諦めたようにため息を吐き、頬を軽くたたき、自分を鼓舞した。

「良し、やるぞ。……で何をすればいいんだっけ?」

そう言ったやよいさんに対してネイチャは呆れるように言った。

「移動手段の確保ですよ。」

「あぁそうだったな。…やっぱりスズカがいないとちゃんとできないな…。そろそろ怪我も治ってきたらしいからリハビリがてらついてきてもらおうかな…。」

そう言って保険医のタキオンに連絡を入れようとしているやよいさんを見て、後でまたスズカさんにアップルパイでも差し入れしようかな、と思ってしまうネイチャだった。

 

やよいさんがタキオンに連絡をし終わって少しした頃、全世界中の情報端末がハイジャックされ、大隊長の演説が始まった。

 

『全人類、全ウマ娘に告ぐ。私は、ウマ娘を保護するための非政府組織「TORESEN」に所属するウマ娘、シンボリルドルフだ。

私の指揮している第一小隊はこれより「TORESEN」から抜ける。第二から第五小隊は、人質として捕らえた。

「TORESEN」に残っているウマ娘は、第六小隊のみだ。

 

一週間後、私たちは人類を全て滅ぼす。

 

もう一度繰り返す。

 

私たちは一週間後、私たちは人類を全て滅ぼす。滅びたくなければ……

 

 

私を倒して見せろ!』

 

TORESENの施設内はもちろん、全世界中の人間、ウマ娘がその放送に意識を奪われた。しかし、TORESENの施設内には例外が2つ存在した。一つ目は、ファル子のライブステージ周辺だ。観客、スタッフの情報端末は誰1人としてハイジャックされていなかった。

二つ目は、TORESENにあるウマ娘用の寮の周辺とトウカイテイオー以外の部屋の情報端末だ。ファル子のライブステージとは対照的に、寮の周辺には4人のウマ娘しか存在していなかった。

 

そのうちの1人、キタサンブラックは3階にあるテイオーの部屋に向かうために廊下を全力疾走していた。

「階段はここを右っと…うわっ!」

角を曲がったところで、誰かにぶつかってしまい、弾き飛ばされてしまった。

「いてて……すみません、急いでいたもので……」

「おう、次からは気をつけろよ。」

「はい!では!」

暗くて顔は見えなかったのと、テイオーのことが気になりすぎるばかりに相手が誰なのかを確認せずにキタサンブラックはテイオーの部屋の方へと行ってしまった。

ぶつかった相手はその後、上を見上げて笑いかけるように呟いた。

「ルドルフ、テイオーは大丈夫そうだぞ。あんなにいい後輩がいるんだからな。」

キタサンブラックを追いかけていたマチカネタンホイザが角を曲った時には、誰もいなかった。

 

「テイオーさん、出てきてください。招集がかかってますよ!」

三階まで駆け上がり、テイオーの部屋へと一直線に向かったキタサンブラックは、部屋の前に着くなり、部屋のドアを叩きながら、呼びかけ続けたが、返事はなかった。

「……それなら……武装顕現(スティーダムド、セットオン)!」

キタサンブラックの両腕にナックル型の武装が現れた。これは、TORESENが開発した武装転送技術だ。ウマ娘専用の武装である「スティーダムド」を任意の座標に転送することができる。技術の内容ついては一部のものしか知らない。略称として武装(スティー)と呼ばれている。

 

「……はぁ…はぁ…やっと追いついたぁ……ってキタちゃん!?なんで武装だしてるの!?」

「はぁぁぁぁぁ!!」

追いついたマチカネタンホイザに気づく前に、キタサンブラックは、右の拳でドアを思いっきり殴った。

「あ、マーちゃん!はやくテイオーさん連れて格納庫に行こ!」

そんなことを言い出すキタサンブラックにやれやれと思いながらも一緒にテイオーの部屋に入った。

 

テイオーは部屋の右側にある机の前で膝立ちしていた。

「テイオーさん、はやく行きますよ!」

そう言いながら、テイオーの腕を掴むために武装を解除しようとした時、テイオーが振り返ってこちらを向いた。

「……ッ!?」

その顔は、子供がおもちゃを見つけたような無邪気な笑いのようだが明らかな殺意を感じられた。

「丁度いいや、誰だか知らないけど、今ボクめっちゃイライラしてるんだよね。だ・か・ら、サンドバックになってよ。」

そう言いながら、殴りかかってきたテイオーに対し、キタサンブラックは、対応ができなかった。

「…キタちゃん!」

マチカネタンホイザがキタサンブラックの手を引っ張り、なんとかテイオーの初撃は避けることができた。

「……ありがとう、マーちゃん!」

「うん、だってキタちゃんは私が守るってダイヤちゃんと約束したもん!」

ダイヤちゃんと言うのは、サトノダイヤモンドのことだ。

 

今から半年前、幼馴染だったキタサンブラック、マチカネタンホイザ、サトノダイヤモンドの3人は世界最強の軍事力を誇る「ミリタリカ」という国の軍に所属させられていた。彼女たちを助けるためにTORESENはミリタリカと全面戦争を繰り広げていた。そんな中、3人は軍から逃げ出し、TORESENへと向かおうとしていた。しかし、それがあと一歩のところで軍に見つかってしまう。サトノダイヤモンドは、二人を逃がすために一人で残り、軍の足止めをした。

 

「私は、ダイヤちゃんのおかげで助かった。そして、ダイヤちゃんと別れた後、落ち込んでいた所を助けてくれたのはテイオーさんだ。私、テイオーさんに恩返しがしたい!」

「その調子だよ、キタちゃん。私も協力するよ。武装顕現(スティーダムド、セットオン)!」

マチカネタンホイザの武装は大きな盾と小さな光学拳銃だ。

「テイオーさん。私たちはテイオーさんの味方です!辛いことがあれば話を聞k___」

「うるさい、うるさい、うるさぁぁぁい!ボクのことを認めてくれるのはタイチョーだけでいいんだ!武装顕現(スティーダムド、セットオン)!」

テイオーの右手には、テイオー専用の剣である「シースト・カイザー」が現れた。いつも左手にあるはずの小さめの盾はなく、何も持っていなかった。

「ボクは…ボクはぁぁぁぁ!!」

テイオーの突進に対し、マチカネタンホイザが盾で防ぐ。その隙にキタサンブラックが後ろに回り込み、当て身をしようとした。しかし、テイオーの左手にはあるはずのない2本目の剣によって防がれてしまった。

「く、黒い…シースト・カイザー……?」

2本目の剣の形状は、シースト・カイザーと酷似しており、元の白と青のカラーリングが、黒と赤に変わっていた。

「…モット…モットダ…モットチカラガアレバ…タイチョーダッテボクヲミトメテクレルンダ……!」

テイオーの目の色が青から徐々に赤色へと変化していた。キタサンブラックとマチカネタンホイザも大変なことが起ころうとしていることはとてもよくわかった。

「キタちゃん、もうなりふり構ってられないよ!『アレ』使うよ!」

「…わかった。できれば使いたくなかったけど…もうそんなことも言ってられないね。」

キタサンブラックは、テイオーの意識を自分に向けるため、テイオーに突進した。マチカネタンホイザは、自分の盾を床に置き、腰ベルトにつるされていたポーチの中から光学拳銃用の紫色のカートリッジを取り出した。

「あと何秒!?」

テイオーの二刀流の攻撃をナックルで受け流しながらキタサンブラックが聞いた。

「あと5秒!」

マチカネタンホイザが答えると、キタサンブラックは、テイオーに突進するふりをして後ろに回り込み、羽交い締めにした。

「…ハ…ハナセ…」

「4…3…」

カウントダウンをしながらマチカネタンホイザは、光学拳銃のカートリッジを紫色へと交換した。

「2…」

変形(チェンジ)拘束(レストリクション)!」

キタサンブラックがそう言うと、ナックル型の武器がキタサンブラックの手から外れ、テイオーを拘束した。

「タイチョー…ボクハ…ボクハぁぁぁ!!!」

「1…」

「今度は本気で戦いましょう。」

そう言い残し、キタサンブラックはテイオーから離れた。

「タイチョータイチョータイチョータイチョータイチョータイチョータイチョータイチョータイチョータイチョータイc___」

 

「0!」

 

電子麻痺弾(エレカリニシス・ブラスト)!」

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

マチカネタンホイザの放った麻痺弾が当たったテイオーは、悲鳴を上げた後、パタリと動かなくなった。この麻痺弾は殺傷能力はほとんど0で相手の気絶だけを狙うためにマチカネタンホイザが自分で作ったものだ。

 

「……格納庫…行こっか…」

静かになった部屋でキタサンブラックが落ち込んだように言った。

 

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