〖東方短編物語〗   作:@maika52

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*本作品は〖悠月 風華〗名義pixivに投稿していた過去作です。
*pixiv版から加筆修正したものになります。
*カップリング有りです。
タイトル通りゆかれいむになっています。
苦手な方はそっ閉じしてください。


episode1 「秋の気配」/ゆかれいむ

博麗神社に住まう紅白の巫女。

博麗霊夢は、縁側に座ってお茶を飲んでいた。

 

「はぁ……涼しくなったわね」

 

つい最近までは暑さに参っていたというのに、

急激に冷え込んだ気温に霊夢は

寒さを覚え、両肩に手を添え、

震えながらぽつりと静かに呟いた。

 

「あら、寒そうね」

 

すると、〖スキマ〗と呼ばれる空間から

チラッと顔を出してきたのは妖怪の賢者

──八雲紫だった。

 

「あら、紫。最近良く来るわね。」

 

ここ最近博麗神社に来るようになった妖怪の賢者の

姿を視界の片隅に入れた霊夢は

よく毎度飽きないものだ、と

少し呆れを含ませてスキマから覗き込む

紫にそう告げた。

 

「まぁ、良いじゃないの。

私は貴方が何よりも大事なんですもの」

 

霊夢のそんな素っ気ない態度が面白くなかったのか

紫はスキマから身体を前のめりにし、

霊夢に抱きつきながら頬を緩ませてそう言った。

 

「あぁ、もう!!苦しいってば!」

 

突然後ろから抱きしめられて、身動きが

取れなくなった霊夢は

抱きつく紫の腕をペシペシっと叩く。

 

「あらまぁ…。」

 

そんな霊夢の反応に紫は少し悲しげに眉を下げて、

そっと、霊夢を抱き締めていた両腕を離した。

 

「全く…。はい、お茶」

 

悲しげではあるものの、やっと腕を話してくれた

紫に、予め用意しておいた湯呑みに

温かいお茶を入れて霊夢は紫に淹れたお茶を渡す。

 

「あら、ありがとね」

 

事前に用意してくれていたということは、

態度は素っ気なくとも自分が来てくれることが

霊夢にとって密かな楽しみになっていることに

気が付いた紫はクスっ、と微笑みながら

霊夢から差し出された湯呑みを手に取り、一口飲んだ。

 

「寒くなってきたわね…。

そう言えば、もうそろそろ

あんたは冬眠の時期に入るんだっけ?」

 

霊夢はいつの間にかスキマから出てきて、

霊夢の隣に座る紫を見ながらそう言った。

 

「えぇ…そうね。」

 

もうそんな時期か、と思いながら

紫は少し遠くを見るような

悲しそうな声でそうつぶやく。

 

「そっか…。」

 

霊夢はその悲しげな紫の表情に

気づいていたが、すぐ様顔を動かして

霊夢は呟きながら満天の青空を見上げた。

 

「……寂しいわね。」

 

そんな霊夢の見えない優しさに気付いたのか

どうかは分からないが、紫ははっきりと

普段なら絶対に言わないであろう

言葉を隣にいる霊夢には聞こえるくらいの声音で

小さく、そっと囁いた。

 

「へ?」

 

その囁きが聞こえた霊夢は

驚愕のあまり視線を空から、

有り得ない発言をした紫に向けた。

 

「だって、一番大切な貴方の顔を

しばらく見れなくなってしまうもの」

 

霊夢が驚いていることには気付いているだろう。

しかし既に紫の冬眠の時期は近付いているからこそ、

普段なら発することなど有り得ない弱音を

紫は瞳を細めて、悲しげな目で、

湯呑みの中の自分を見つめながらそう言った。

 

「……そうね。

でも、仕方ないんでしょ?

それはあんたが決めたことなんだから。

私だって人間だもの、いつかは老いて……

あんたの前から居なくなるでしょうけどね」

 

自分の顔が見れなくなる。

それだけであまりにも悲しげな表情を浮かべる

紫に霊夢はいつか来る己の未来の姿を思って、

苦笑しながらそう告げる。

 

「……」

 

いつかは別れる時がくる。

妖怪と人間の間にある寿命の差。

二人ともとうの昔に分かりきっていたことだ。

いずれは老いる自分の姿を思い浮かべ、

苦笑する霊夢の姿を紫はそんな様子を、

見ていられないとでもいうかのような、

悲しそうな目で隣に座る霊夢に抱きついた。

 

「紫?」

 

悲しげに自分の手元を見つめていたはずの

紫が当然強く抱きついてきて、

驚きに目を見開きながら紫の方に視線を向ける。

 

 

「酷いわね、そんなことを言うなんて。」

 

自分の未来など知ったことでもないと、

気にも止めていないと思っていた

霊夢からの言葉に紫はムッと

拗ねながら自分の腕の中にいる霊夢の顔を見つめる。

 

「酷いって言われても……当たり前のことじゃない。

私は人間でアンタは妖怪なんだから仕方ないでしょ」

 

秋の寒さを感じたのか

霊夢はどこかその暖かさに縋るようにして、

サラリと言ってのける。

 

「ずるいわ、やっぱり。」

 

紫はいつか来る霊夢がいない未来を

想像して、鳥肌が立つ。

今じゃこうしていつでも傍に愛しいこの子が

いるというのに、いずれはいなくなる。

 

もしかしたら、この子ではない

博麗の巫女が紫の隣にいるのかもしれないと。

 

 

「はぁ……。そうでもないと思うけど?」

 

いつも飄々として自分をからかってくるはずの

紫の尋常ではない拗ね具合に

霊夢は反応に困るしかない。

 

「……決めたわ。」

 

どういった反応をしたら良かったのか

悩んでいる間にスっと紫は意を決し、顔を上げた。

突然俯いていたはずの紫が顔を上げたことに

驚いて目を見開いている霊夢にそう呟く。

 

「へ?」

 

案の定霊夢は『何が?』と言わんばかりに

疑問符をその目に宿して聞き返した。

 

「今年も来年も、それから先も。

私は此処で冬眠するわ。」

 

紫は決断したような既に決めた、と

言わんばかりの顔で霊夢を見下ろしながら

そう言葉にする。

 

「はい?」

 

一瞬紫の言った言葉が理解できなかった。

紫は何を言ってるんだ、と驚きを隠せず

霊夢は再度聞き返さずにはいられなかった。

 

「決めたのよ、私は今年から此処で冬眠するって。」

 

既に紫の中で決定事項となってしまったようで

詳しい説明をすることもなく立ち上がり、

霊夢の頭にポンッと手を置いてにっこりと微笑む紫。

 

「え?いや、あのね………。

普通に家で寝てた方が安全だし、

うるさくもないからゆっくり寝れるんじゃ…」

 

霊夢はこれから先を想像すると、

魔理沙や萃香などがこの神社に遊びに来るため、

必ず静かだとは言いきれないと。

どう考えても眠るには最適ではないだろうと

既にその気でいる紫にそう言った

 

「もう!分かってないわね。

うん……?いや、逆に霊夢を私が冬眠期間に

入る前に家に招いてしまえば良いわね!」

 

むす、と拗ねてしまった紫だったが、

満面の笑みを浮かべて、『これだ!』と

言わんばかりにニコニコと微笑んでいる。

 

「え?ちょっと待って紫!

それだとアンタが寝てる間の

結界の管理とか異変解決とかが…!」

 

妙案だ、と瞳を輝かせている紫に

霊夢はしどろもどろになりながら

去年もそうであったように今後の事を想像する。

 

「もう、そんなものは藍と魔理沙達に

任せてしまえば良いでしょう…?

さて!早速行きましょう?」

 

驚きのあまり身動きが取れずにいる霊夢に

紫はニッコリと笑って有無を言わさないように

さっ、と霊夢の手を取り、スキマを開く。

 

「ま、待って紫!それはそれでダメなんだってば!

元々博麗の巫女が神社を長期間

離れたら結界が大変なことに…!」

 

本当に実行する気なんだと手を取られた瞬間に

やっと実感して、霊夢はアワアワと慌てながら

連れていく気しかない紫にそう言った

 

「何よぉ……そんなことばかり考えて。

結界の方は大丈夫よ。

異変解決は……魔理沙達が勝手に動くわ」

 

頑なに一緒には行けないと言う霊夢に

紫はムスッと頬を膨らましながら

未だ困惑を隠せない霊夢にそう言った。

 

「……な…なら、良い…かな?」

 

それから数秒の間、何か考えるように沈黙していた

霊夢は恥ずかしそうに耳を澄ましていなければ

聞こえないくらいの小さな声でそう呟いた。

 

「うふふ!なら、決まりね!

ほらほら~行きましょう霊夢」

 

その囁きが聞こえた紫は頬を緩ませながら

突っ立ったままの霊夢の手を引っ張る。

 

「ちょっと!で…でも…。」

 

霊夢はやはり通年では有り得ない事を

してしまうと不安そうに唸りながら

考え直そうと思考を回す。

 

「大丈夫よ!ね?行きましょう」

 

小さく囁いた霊夢の返事を聞いていた

紫としては、同意してもらえたと思っているので

霊夢が何を言おうと紫は決定を覆す気はない。

話している間に少しだけ

開けていたスキマを完全に開く。

 

「わ……分かったわ。」

 

その紫の考えを見抜いた霊夢は

『これは逃げれないわね』と悟り、

はぁ……溜息を吐きながら大人しくスキマに入った。

 

 

──霊夢と一緒に過ごせることが

とても嬉しいのか紫はニコニコと微笑みながら

屋敷に戻り、帰りを待っていた藍に事を説明し、

霊夢を紫の寝室へと連れてきた。

 

「うーん……眠たくなってきた」

 

紫の自室に連れてきた途端、

霊夢は眠たそうに目を細めてそっとつぶやいた。

 

「あら、今は昼間よ。お昼寝にはぴったしね。

──寝てなさいな。」

 

眠たそうに目を擦る霊夢の姿に

紫はまるで幼少期の霊夢に戻ったような

錯覚を覚えながら、苦笑して霊夢を寝かせてやる。

 

「うん……しばらく寝とくわ。おやすみ、紫」

 

睡魔が勝っているのか、

霊夢は大人しく用意されたベットに入り、

様子を見ていた紫に一声かけて眠りについた。

 

「あらあら……。

私よりも早く寝てしまうだなんて」

 

すぅすぅと寝息の聞こえ始める頃。

紫はベットに腰掛け、眠る霊夢の頬に触れた。

 

──私の大切な大切なもの…。

絶対に捕まえることなど出来ない自由な蝶々──。

 

──そしていつか、

私から去ってしまう儚き存在────。

 

だからこそ、今を大切に楽しまなくちゃね。

お休みなさい、霊夢。

 

───私の愛する人。また、会いましょう?

 

紫は心の中でそう想いを告げて、

眠る霊夢の隣に横たわり紫もまた眠りについた……。

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