*こちらの作品は2019年5月25日に【悠月 風華】名義
pixivにて投稿していた過去作です。
*pixiv版から加筆修正したものになります。
いつも通りの退屈で変わらない日常を過ごすのかと覚えば、
今日は何故か、突然神社にやって来た紫に連れられて
わけも分からず外の世界へ来ていた。
紫の考えてることが、よく分からない。
本当になにがしたいのやら……。
「ねぇ、霊夢」
「……何よ」
海が見えるウッドハウス(?)とやらにやって来た
私たちはハンモックというものに揺られながら
幻想郷にはない広大な海原を見つめていた。
「折角、外の世界に来たのに
いつも通りゴロゴロしちゃうわけ~?」
「んー、良いじゃない。
ってかそれより、なんで外の世界に連れてきたのよ」
この世界にやって来たときから気になってはいたが、
何やらただならぬ様子の紫の姿を見て言えなかったのだが、
そろそろここへ私を連れてきた理由を知りたい。
そう思って、質問を問いかけると紫は考え始めた。
まさか……理由、なかったっていうの??
「……たまにわね。ゆっくりしたいじゃない」
ボソッと小さな声で呟いた紫の声。
この場には二人しか居ない、その上何の騒音もない。
だからこそ、どれほど小さな声であろうとよく聞こえた。
「ゆっくりしたい……ねぇ。
幻想郷でもゆっくりしてるじゃない」
正直なところ、そうだ。いつもゆっくりしている。
それが私にとってもきっとコイツにとっても当たり前のこと。
まぁ私の場合、異変解決と妖怪退治が仕事であるから、
何もすることが無い日の方が圧倒的に多い。
その分、幻想郷は昔よりは平和になった、
と実感することができる。
………まぁ、実際暇ではあるけど。
「幻想郷じゃ、貴方は”博麗の巫女”。
”普通の少女”として過ごせないじゃない?」
ふと、紫がこんなことを言う。
……私は幻想郷でも充分に
日々の生活を満喫しているというのに
紫は余計な考えをして、それを行動に移してしまう。
『普通の少女』なんてものはとうの昔に捨てたものだ。
何故それを今更紫が気にしているのか、私には理解できなかった。
「”普通の少女”、ね。私には無縁な話ね」
「悲しいこと言うのね……」
「そもそも、私を博麗の巫女にしたのはアンタじゃない。
一体、何の心境の変化があったのかは知らないけど、
今更何を考えてんのよ?」
「そう、ねぇ……今になって後悔してるわ」
そもそも私を博麗の巫女に選んだのは紛れもない
私の隣にいるスキマ妖怪だ。
それなのに何故かそんなことを言い出す。
そういえば最近の紫の様子は何処か可笑しい。
今まで、私に散々ちゃんと巫女の仕事をしろと
言ってきたコイツが……だ。
急に『後悔した』なんて言い出す。
そんな気持ちがコイツの中にあったことにも驚きはしたけど。
「よく分からないわ、アンタ」
「……ねぇ、霊夢」
「何よ」
「露骨に嫌な顔しないでちょうだい」
「はぁ…で、なに?」
「ここに、住んじゃいましょっか」
一瞬、紫が何を言ったのか理解できなかった。
これは私が見てる夢?それにしては風が靡いている。
海特有の匂いも、太陽の暖かさも感じる。
ということは夢ではない。ならば紫が変なのだ。
急にこんなこと言い出すだなんて
「アンタさ」
「何かしら?」
「頭でも打ったの?」
「……なにが言いたいのかしら」
ムッと怒り始めてしまった。
あー、もう紫の考えが分からない。
一体最近のアンタに何があったっていうのよ。
「今までアンタは、幻想郷が全てだったじゃない
それがなんで急にそうなるわけ?」
本当に、意味が分からない。
紫がいつも真っ先に考えていたことは、幻想郷のこと。
コイツほど幻想郷を愛してる者はいないだろうと言えるほど、
いつもいつも幻想郷のことばかり考えていたはずなのに。
どうして、そんなことを言い出すのか理解できない。
突然のことに、私の思考は止まりつつある。
そんな私が放った言葉に心做しか、紫の表情が悲しげに見えた。
「貴方は、考えたことはある?」
悲しげな表情を見せ、黙り込んだ紫が急にそう切りだした。
何かを考えたことはあるか、というこの問いは
きっと私の斜め上のことなんだろうと察知する。
「何を??」
「巫女としてずっと、人生を歩んで行くことは辛いとか」
またよく分からない話をする。
巫女として生きていくのが辛い?
何を言ってるのよ、紫は。
やっぱりよくわからないわ。
今日の紫の思考にはついていけない。
いや、まぁいつもそうなんだけど、今までの中で一番
理解できないからこそ、私は困惑する。
「ないわ。私は物心ついた時からもう巫女だったのよ。
それ以外の生き方なんて、
アンタにこう言われるまで考えた事ないわ」
「そう、よね。」
本当に悲しげに笑う。
そんな顔を見たことは今までにあっただろうか?
いや、胡散臭い表情なら嫌という程見てきた。
だから、分からない。なんなのよ、一体…‥。
■
「やっぱり今日の紫、可笑しいわ。
何を急にそんなこと言い出すのよ?」
霊夢が心配そうに顔を近付けて
私の顔を見つめてくる。あぁ、ダメだ。
この子のこんな表情を見ると甘えたくなってしまう。
可笑しいわね、千年以上生きた妖怪なのに。
この子の傍にいると、何だか不思議な感じがする。
「……紫??」
だから、だろうか。
私は気付かない内にこの子を抱き締めていた。
私自身、思いも知らない行動に驚きつつも、
伝わってくる体温に、気持ちが溢れ出す。
■
「ねぇ、霊夢。もう巫女なんて辞めて、
私と一緒に此処で暮らしましょう?
もう、怖いのよ。幾度も、博麗の巫女を失うのは」
紫は私を抱き締めたかと思えば
肩口に顔を埋めて私にそんなことを言った。
最近、紫が可笑しかったのは博麗の巫女を失う辛さ、怖さを
不意に予期せぬことで、思い出したからなんだろうか。
まだ推測でしかないけど
今まで紫のこんな表情は、見たことがなかった。
きっと、そうなんだろう。
「でも紫。もし仮に此処で暮らすとして
幻想郷はどうするのよ?
あそこには魔理沙やレミリア達が……」
幻想郷には多種多様な人妖がいる。
それらを纏めようとすることはかなり難しいことだろう。
何しろその全てが個性が強いヤツらばかりなのだ。
そして、私にとって過去の異変を通して知人となった
レミリア達がいると、言おうとした瞬間、
突然紫の手で口を塞がれてしまった。
■
「……??」
霊夢が魔理沙達のことを言い出した。
だから何故か霊夢のその口を
右手で塞いでしまった。
聞きたくなかった、そんなこと。
何が起きたのか理解できず、驚きに微かに目を見開いている
霊夢の言葉を遮るために塞いでいた口から右手を離した。
「紫…??」
本当に分からないという顔をしている。
突然のことに、理解が追いついていないのだろう。
この子は昔からそうだ。自分に向けられる好意には鈍感で、
悪意といった負の感情には鋭い。
その上、他人の感情にも敏いところがある。
なのに、私が向けるこの想いには気付いてはくれない。
いつも異変が起これば、その驚異的な勘で察することが
できるというのに、その勘で気付いてはくれない。
「やっぱり、鈍感ねアナタは。」
「はぁ??」
いつかきっと、きっとで良い。
この子に私のこの気持ちが届きますように……。
大好きよ、霊夢。───私の可愛い巫女。