強くて逃亡者   作:闇谷 紅

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第九十六話「やりすぎちゅうい」

 

「むぅ……」

 

 再びドラゴラムの効果が切れれば、周囲に転がるのは炭化した魔物の骸、骸、骸。

 

(我ながら、これはひどい)

 

 はっきり言って虐殺レベルである。

 

(とは言え、変身中は自制利かないからなぁ)

 

 ただ炎を吐きまくって敵を殲滅するの繰り返し。第三者視点で見たら面白いことなど何もない、作業と認識したかもしれない。

 

(まぁ、レベル上げって実際にただの作業だし)

 

 食べると力が強くなったり素早くなる種が時々手に入るとか、レベルが上がる以外のメリットもあるにはある。

 

(そうそう、ドロップアイテムだって美味しいんだから間違ってはいなかった筈)

 

 そう、これで良かったのだ。

 

「始めるわよ? レミラーマっ」

 

「あ、あそことここと向こうの死体が光ったよ」

 

 盗賊のお姉さんが唱えた呪文で光った場所を監視していたクシナタ隊に所属する他のお姉さんが指さす。

 

「いきますっ、ピオリム!」

 

「……スクルト」

 

「バイキルトっ!」

 

「では、ライアス様、魔物への警戒はお願い致しまする」

 

「あ、あぁ」

 

 僧侶や魔法使いのお姉さんから支援の呪文で強化されたライアスが何とも言えない顔で頷くのを俺は横目で見ると、洞窟の天井を仰いだ。

 

(ははははは……)

 

 うっかり、クシナタ隊のみんなが一人前と目されるレベル20を突破してしまった事など、些細なことだ。

 

(この人達、もう確実にシャルロット達より強いよね)

 

 恐るべきは、灰色生き物からの獲得経験値か。

 

(そろそろダーマの神殿探しに行った方がいいかも)

 

 まだ全ての呪文を覚えた訳でない魔法使いと僧侶、それにアイテムを盗む確率がレベルに依存したと思う盗賊はともかく、他の面々はこれ以上育てるメリットがあまり無い。

 

「あったよー」

 

「あちゃー、この種焦げてる……」

 

(あっちのカタが付いたら、外に出て提案してみるかな)

 

 戦利品を発見したお姉さん達の声を聞きつつ、俺は決断し、仲間へ混じってアイテムを探していたクシナタさんへ声をかけた。

 

「大漁のようじゃのう」

 

「あ、スレ様。スレ様のお陰でする」

 

「いやいや、謙遜せんでもよい。アイテムを見つけたのはお前さん達じゃろうに」

 

 だいたい俺一人ではレミラーマの呪文で周辺を探索したり、光った場所を探すなどと言う手間をかけられたかどうか。

 

「いえ、これもスレ様が教えて下さったからに他ありませぬ」

 

「あれくらい教えずとも思いついたと思うんじゃがのぅ」

 

 一部のお姉さん達が必死にアイテムやゴールドを探す姿を見て、怪しい場所――主に調べるとアイテムの手に入る場所を光らせる呪文を使ってはどうじゃと提案したのは、確かに俺だ。

 

(ゲームじゃ戦闘中とかは使えなかった呪文だもんなぁ)

 

 魔物を倒した直後にレミラーマの呪文を唱えることを思いついたのは、盗賊のお姉さんが件の呪文を覚えて、俺に解説を求めたのが切欠だった。

 

(しかし、アイテムの入手確率が上昇したのは大きいよな)

 

 ゲームなら無限に出現した魔物だが、こちらの世界ではどうなっているのか、未だに結論が出ない。

 

(全てがゲームのままだったら、こんな事で悩む事も無かったんだろうけど)

 

 この世界では、ゲームの時と比べて、フィールドが広い。町やお城も広く、その人口もリアリティを追求しているかのように多い。

 

(魔物の数が、有限だったとしても相当の数が居なきゃこの人間側の人口に対応出来ないもんなぁ)

 

 だからこそ、判断がつきかねているのだ。

 

(「少なくても万、多ければそれ以上の単位で生息してるのか、ゲーム宜しくモンスターは無限に湧くのか」か)

 

 前者であれば数に限りがある為、尚のこと無駄なレベルアップは出来ない。

 

(とはいうものの、検証するのも面倒くさいし)

 

 やまたのおろちのような喋れる魔物に確認を取ることなら可能だが、今度は「正直に話してくれるか」という問題にぶち当たる。

 

(うん、当面は有限と見なして動くべきだろうな)

 

 敵が強くて進めなくなった時、成長出来る場所がなくなっていたら、最悪詰む。

 

(ボストロールは倒してるし、シャルロット達が最初にぶち当たる壁って言うと……おろちか)

 

 それは以前の約束があるからこそ、手の出せない唯一の相手。

 

(なら、尚のことここのメタルスライムは絶滅させないようにしないと不味いな)

 

 もう手遅れと言うことは、無いと思いたい。

 

「さてと、そろそろええかのぅ? 一度洞窟の外に出て話をしようと思うんじゃが」

 

「あっ、はぁい」

 

「はぁ、良かった……ここ暑くて。では、呪文唱え始めますね?」

 

「だよな、干からびるかとおもっちまった」

 

 アイテム捜索の終了を見計らって口にした提案は、賛成者多数のようで気の早い魔法使いのお姉さんはリレミト呪文の詠唱を始めていたりする。

 

(まぁ、暑いってのは同感だし)

 

 外に出たら残った精神力でヒャド系の呪文を使い、氷の固まりとかを出すのもいいかもしれない。

 

(俺の精神力が尽きても、商人のお姉さんいるもんなぁ)

 

 一連の行軍で成長したクシナタ隊の商人さんは、フィールド上で大声を上げ旅の商人やら宿屋やら神父を呼び寄せる呪文を覚えていたのだ。誰が呼ばれるかはランダムだが、宿屋と遭遇出来れば休憩も出来る。

 

(旅の宿屋って言うのは想像するとシュールだけど)

 

 客室が馬車か何かで移動するタイプなのか、テントの様なモノを持ち運ぶのか。ゲームでは台詞分のテキストだけだったので、その実態は気になるところだ。

 

「リレミトっ」

 

「むっ」

 

 呪文の詠唱が完了したのは、丁度俺がそんな割とどうでも良いことを考えていた時。

 

「っ、やっぱり外はええのぅ」

 

 溶岩煮えたぎる洞窟に長居したからだろう、外に出ただけだというのに肌を撫でる風は冷たく、心地よかった。

 

 




レベル20まではまだ楽。

パルプンテ使えないし、はぐれメタルと比べると効率は悪い筈なんですけどね。

次回、第九十七話「今度こそダーマへ」
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