サラ「やりましたわ! ねんがんのガーターベルトを手に入れましたわ!」
うん、実は幽霊船にも一個あるんですよね、ガーターベルト。
「んー、んーっ」
聞いてみたが、口を塞がれていれば、話せない。道理である。
「とりあえずもう口を押さえるのは良いのでお前さんは元に戻ってくれんかの、エロジジイ」
「むぅ、注文が多いのぅ。まあ、よい」
とりあえず、目の毒でもあるのでおろちには元に戻って貰い、もう一度シャルロットに事情を聞く。ここまでは確定事項だ。もし、シャルロットが仲間にした灰色生き物の様に潰れ発泡式の灰色生き物も仲間に出来るのだとすると、それをシャルロットが望む可能性もあるのだ。
(ドラゴラムじゃ完全な黒こげになっちゃいそうだからなぁ)
ゲームの時はHPが10もなかったところを竜になって吐く炎は90ダメージも与えていた気がする。オーバーキルってレベルじゃない。かといって、理性に乏しいドラゴラムした竜の自分がはぐれメタルだけ器用に避けて魔物に攻撃出来るかというと、怪しい。シャルロットのペットな灰色生き物だけならこちらに攻撃しては来ないだろうからギリギリ何とかなりそうな気もするが、おそらくはそれが限界だ。
(魔物をてなづける仕組みを、それが無理でもどうやっててなづけることが出来るようになったかとこれからも仲間モンスターを増やすつもりかだけは聞いておかないとなぁ)
魔物を仲間に出来るのであれば、これまでのように「出来るだけ殺しておく」何て行動をせずに済むし、大魔王の戦力を味方に取り込めるのは大きい。エリザの様に敵側の拠点へルーラで移動出来るようになるかも知れないと言うのも大きいが、喋れる魔物であれば敵方の事を知る情報源にもなる。反面、連れて町にはいると騒ぎなるであろうというデメリットもあるのだけれど。
(まぁ、おろちが居るならおろちに管理して貰うと言う手もあるからなぁ)
ジパングがモンスター王国になってしまう可能性もあるが、現女王が魔物の時点で微妙に今更な気もしてしまうのは、俺が疲れてるからなのか。
「おそらくお前さんも欲しい情報があるじゃろ、エロジジイ。ここは情報交換といこうではないかの、エロジジイ」
俺としては、クシナタ隊のお姉さん達をシャルロットに会わせられない以上、こちらの対価情報として「バラモス城にお師匠様は来ていません」と言い、シャルロットにはいったん帰って貰った方が良いとも思っている。騙すのは心苦しいが、おろちと同行などクシナタ隊のお姉さん達にとってはまだ苦行以外の何物でも無いということもあるし。
(効率を考えれば一緒にレベル上げした方が良いんだろうけど、こればっかりはなぁ)
全ては事情と隊のお姉さん達を慮ってのことだ。別にせくしーぎゃるが天敵だから遠ざけようだとかそんなエゴな理由ではない。
「あ、うん。そうですね。じゃあ、お尋ねのことから。ボクがこの子を仲間に出来たのは――」
そうしてシャルロットが明かした、魔物使いの心得を得ることになった経緯は、俺にとって驚きであり、同時に忘れててごめんなさいロディさんとアリアハンに向けてDOGEZAしたくなるような話だった。
「なるほどの、エロジジイ。しかし、拙いことになっておるのエロジジイ」
「え、拙いこと?」
「うむ、エロジジイ」
オウム返しに問うてくるシャルロットへ俺はいかにもと頷く。
「実はイシスでも闘技場から魔物が逃げ出す騒ぎがあったらしくての、エロジジイ。そのサマンオサに魔物を侵入させた手口と同じことがイシスで起こっておる可能性があるのじゃよ、エロジジイ」
「そんな」
「しかも……そのサマンオサの話、ワシは初めて聞いた、エロジジイ。お前さんが探しておる人物はそのことを知っておったりするかの、エロジジイ」
当然知らないのだが、敢えて、俺は訊ねる。
「い、いいえ。お師、その人にもまだ話していないと言うか、話を聞いてからまだ会ってないから」
「ならば、誰かがイシスに行って忠告しておかねばならんの、エロジジイ」
このまま放置すれば、最悪外からの魔物の襲撃に呼応して城下町でも格闘場から脱走した魔物が暴れ回る何て事態になりかねない。
「ただのぅ、ワシらは増援を送らせぬ為にもちょっとここで騒ぎを起こす必要がある。となると、お前さんにイシスへ行って貰えるとありがたいのじゃが、エロジジイ」
「えっ、けどボクはイシスに行ったことなんて」
シャルロットの言うことはもっともだが、これについては考えがあった。
「それなら問題ないエロジジイ。エリザ、ちょっと来て貰えんか、エロジジイ」
「は、はいっ」
クシナタ隊のお姉さん達をおろちに同行させたり、シャルロットと会わせるのは問題だが、加入したばかりでおろちと何の因縁もないエリザならば――。
「キメラの翼があれば一度行った場所に飛ぶことが出来るのは知っておるなエロジジイ? お前さんにはこの二人をイシスまで送って行って欲しいのじゃエロジジイ」
身柄を預かると言っておきながら使いっ走りさせてしまうのは申し訳ないが、他に選択肢もない。
「それから、ちょっと耳を貸すのじゃエロジジイ」
「えっ、は、はい」
ただ、俺としてもこのまま使いっ走りにするだけと言う気はサラサラ無い。
「もし、イシスに勇者サイモン一行が到着しておったら、キメラの翼でこちらに連れてきて欲しい。これから送って行く二人も一緒にな。そして、かわりにクシナタ隊の皆にはイシスに戻って貰う。所謂ローテーションだ。あの五つ頭と一緒にいることが隊の皆には苦痛となる。イシスの防衛戦となれば流石に魔物である五つ頭は参戦しないだろうし、隊の皆の負担にもならないだろう。また、クシナタにこっちの状況を知らせる連絡員という意味合いでも誰かにイシスへ戻って貰わないと拙いのだ。お前の身柄を預かると言っておきながら、すまないが……」
「す、スーさん」
「ん?」
「あ、あたし……行きます」
内緒話故に頭を下げる訳にも行かなかった俺の願いをエリザは聞き届けてくれた。
「そうか、すまん」
シャルロット達に聞かせる訳にはいかないからこそ、感謝を言葉以外で表す訳にも行かず。
「すまん待たせてしまったかの、エロジジイ?」
声のトーンを戻すと俺はシャルロット達との会話に戻ったのだった。
あれ、シャルロットまた退場?
次回、第百八十四話「今度こそレベル上げを」
始まるか、エロジジイについて行くだけの簡単なお仕事。