強くて逃亡者   作:闇谷 紅

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第百八十五話「おじゃまします、もしくは蹂躙します?」

 

「ウォォォン」

 

 吼エナガラ石像崩レル。

 

「相変わらずというか流石スーさ、エロジジイ様というか」

 

「さて、何か持ってないか探さないとね。ゴールドは――」

 

「はいっ、解ってますよっ」

 

 崩レタ石像、仲間近寄ル。

 

「何だ、何があっ」

 

「うげっ、何だこの馬鹿でかいドラ」

 

「グオオォォッ」

 

 敵、出タ。燃ヤス。

 

「「ぎゃぁぁあああっ」」

 

 黄緑の敵、燃エタ。仲間モ黄緑、面倒。

 

「グル?」

 

「あ、あぁ……」

 

 物陰、震エル黄緑イタ。胸大キイ、多分仲間。

 

「えっ、エロジジイ様あそこにも敵が」

 

「グルル?」

 

 言ウコト変、敵、イナイ。

 

「ええっと……多分ですけど、エロジジイ様私達もこんな格好だから、胸の大きさで敵と味方識別してるんじゃ?」

 

「……何故でしょう、否定出来ないような」

 

「これは、葉っぱみたいだけど何か解る?」

 

 後ロ、騒ガシイ。

 

「グルルル」

 

「はぅっ」

 

「あ」

 

 物陰モウ一度ミタ、黄緑寝タ。攻撃ナイ、ヤッパリ仲間。

 

「……気絶したみたいですねっ」

 

「ま、まぁ、あの状態のす、エロジジイ様に睨まれたらね。私だってああなってもおかしくないわ」

 

「けど、どうします?」

 

 後ロ、マタ五月蠅イ。

 

「とりあえず猿ぐつわ噛ませて縛っておきましょ、捕虜にしておけば情報聞き出せるかも知れないし」

 

「それもそうですねぇ」

 

「あったっ、ゴールドありましたっ」

 

 マダ騒イデル。

 

「今の悲鳴は何だ?」

 

「寝ぼけた奴がスノードラゴン共の尻尾でも踏んづけて噛まれたんじゃねぇのか」

 

 ソウ思ッタラ、前モガシャガシャ音五月蠅クナッタ。

 

「エロジジイ様、前から敵来てる。炎宜しく。燃やしちゃったらあたしちゃん口笛吹くから」

 

 敵、ナラ燃ヤス。

 

「はっ、何だこのこ」

 

「ま、まさか敵しゅ」

 

「グルオオオオオッ」

 

 剣沢山持った腕多い骨来タ、炎吐ク。

 

「「ぎえええええっ」」

 

 骨、燃エタ。

 

「ええっ、ちょ早すぎますっ、まだこっちの魔物のゴールドがっ」

 

「解ってたことじゃない、こうなることなんて」

 

「カナメさん達っ、ピオリムまだ大丈夫ですかっ?」

 

 後ロ、騒ガシイ、変ワラナイ。

 

「じゃ、行くよエロジジイ様?」

 

「ああ、待って下さいスミレちゃんっ、今口笛吹かれたら、漁る死体がっ」

 

 音響イタ、敵呼ブ音。

 

「「グルオオオオオオオッ」」

 

 足ノ多イ獅子、来ル。奥ニ変ナ影。

 

「グオオォォッ」

 

 ドッチモ燃ヤス。

 

「グォォォォン」

 

 敵、燃ヤス。全部燃ヤス。

 

「……と、まぁそれなりにはっちゃけたようじゃがの、エロジジイ」

 

 それから、どれだけ暴れただろうか。

 

「ん゛、ん゛んぅーっ」

 

「どうしてこうなったんじゃ、エロジジイ」

 

 猿ぐつわを噛まされ怯えた瞳でこっちを見ながら縛られた身体で何とか後ずさろうとする黄緑ローブの魔物ことおそらく女性のエビルマージを前に俺は頭を抱えていた。

 

「わ、私達と間違えたのはす、エロジジイ様ですし」

 

「いや、多分そうなんじゃがの、エロジジイ」

 

 女性というのが始末に困る。いや、何処かの魔女を殴り殺した人間が何を言っていると言われるかもしれないが、状況も違えば相手も違う。

 

(思いっきり抵抗出来ない状態だしなぁ)

 

 このエビルマージがどんな相手かもまだ解らないのだ。そも、情報収集目的という名目でクシナタ隊のお姉さん達は捕縛したようなので、どっちにしろ話を聞く必要があるのだが。

 

「とりあえず、この状態でやることと言ったら一つじゃの、エロジジイ」

 

「ん゛ぅーっ」

 

 せっかく抵抗出来ない状態なのだから、ここはあれをやらねばなるまい。

 

「エロジジイ様?」

 

「なぁに、痛いことはせんエロジジイ」

 

 それどころか、何故かお姉さんの視線が俺に痛いが、こんな語尾使っていれば仕方のない気もする。そう、ここはもうエロジジイならエロジジイと割り切ってしまおう。

 

「済まぬの、エロジジイ」

 

「ん゛ーっ」

 

 謝ったのが返って悪かったか。首を左右に振りながら俺からとにかく逃れようとする女エビルマージに向けて手を伸ばし、この状況であれば誰でもやるであろう、アレをした。

 

「マホトラ、マホトラエロジジイ」

 

「ん゛ーっ」

 

「「え?」」

 

 そう、精神力を吸い取ったのだ。って、何で意外そうな声を上げるんですかお姉さん方。

 

「猿ぐつわを外して呪文を唱えられたら厄介じゃろ、エロジジイ」

 

 明らかに呪文使いタイプの敵だったエビルマージを尋問するならMPは0になるまで吸い尽くさないと、こっちが危険なのだ。

 

「確かブレス攻撃も出来た筈じゃが、そっちは口から吐くことが解りきっておるからの、エロジジイ」

 

 後ろに回った上、頭を手で固定してしまえば、自分を縛る縄に息を吹きかけて自由を取り戻すことだって能わない。

 

「ともあれ、精神力まで補充出来て一石二鳥という訳じゃエロジジイ」

 

 そもそもお姉さん達の前で良からぬことなんてする訳無いじゃないですか、やだー。と言うか、お姉さん達の前でなくてもやらない。チキンと呼びたければ呼べ、だが俺は外道になる気などさらさら無い。

 

「では、続けるとしようかの、エロジジイ。マホトラ、マホトラ、エロジジイ」

 

 ただ、この時俺は忘れていたのだ、とある重要なことを。

 

 




エロ展開だと思った? 残念、マホトラでした。

さて、主人公の忘れていたこととは、いったい?

そして、捕虜のエビルマージはこのあとどうなってしまうのか。

次回、第百八十六話「失敗」


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