強くて逃亡者   作:闇谷 紅

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第二百十一話「主人公の逆襲?(閲覧注意にならないと良いなぁ)」

「シャルロット、最初に聞いておく。先に話をするか、それとも後に話をするか?」

 

 格闘場に着きおろちと対面する前にしたことは、シャルロットに問うことだった。勿論これにも理由はある。どちらにするかと選択肢を与えているように見えるが、俺からすると一番ありがたくないのは二人一緒におろちと対面して会話するパターンをなくす為、選択権をシャルロットに委ねたふりをして、最悪のケースになるのを防いだ訳だ。

 

「ええと、じゃあ先にボクがおろちちゃんと話していいですか?」

 

「ああ、構わん」

 

 シャルロットの答えにあっさり頷きを返せるのも、選んだ選択肢が想定通りだからに他ならない。シャルロットからすれば俺に話したことでおろちに負い目を感じているはずだ。ならば、話してしまったことを謝るか説明するかするには、俺の前に話すという選択をせざるを得ない。

 

(シャルロットをペテンにかけるようで心は痛むけど、やっておかなきゃいけないことがもう一つあるからなぁ)

 

 俺が苦労して手に入れた性格を変える本をぱぁにしてくれたという私怨はさておき、クシナタ隊のお姉さん達とおろちの間にある微妙な関係を些少なりとも何とかしておきたいと思っていたのだ。

 

「そうか、ならば俺は格闘場の外に出ていよう」

 

「え?」

 

「俺が側にいては拙い話とてあるかもしれんだろう? 同性同士でしか出来ぬはなしとかな」

 

 振り返ったシャルロットにそちらを気遣って席を外すのですよ的なことを言うが、実のところ戦いも終わり町中で自由行動している隊のお姉さんと接触し、伝言をお願いする為というのが、目的である。

 

「す、すみません」

 

「気にするな」

 

 気を遣われたと思い頭を下げるシャルロットに頭を振り、踵を返す。

 

(上手く行くと良いけど……)

 

 自分を殺した相手を簡単に許せるはずはない。だが、苦手意識を持ったままだと今後に支障をきたす。

 

(このままにしておけないもんなぁ)

 

 やまたのおろちに似た形状の魔物は何体か居るし、竜に分類されるモンスターは更に多いのに、生き返らせて間もなかった頃は、ドラゴラムで俺が変身した竜にさえ怯えてしまう人も居たぐらいなのだから。

 

(あのせくしーぎゃるっぷりをみせられれば、苦手意識とかそう言うモノは消せると思うし)

 

 縛られて身動きとれないところに自分の殺した相手が現れたら、絶対怖いと思う。お姉さん達の恐怖の一万分の一でも味わって反省して貰おうと思ったのだ。

 

(それにいくらあんなんでも、人の姿とってる時は女の人だしなぁ)

 

 やりすぎたらいろんな意味で問題になりそうだし、逆に俺の中のジェントルマンがストップをかけてしまうことも考えられる。

 

「だったら女性陣に任せてしまうのもアリじゃね?」

 

 とか思ったっておかしくないと思う。別に昨晩味わったぢごくがあまりに過酷で俺が手を下すよりよっぽど効果があるとか思っちゃった訳ではないので、どうか俺の記憶力、昨晩の光景を思い出させるのは止めて下さい。

 

「っ、こんな所で予期せぬ精神ダメージが」

 

 おのれ、おろちめ。

 

「とにかく……誰か見つけよう」

 

 格闘場の外の通りはお城へ向かう直線に伸びた道でもある。通行人が居ればすぐ解る道でもあるのだ。

 

「向こうも旅立ちの準備があるし、何人かは外に出てるはず……」

 

 物資不足からの脱却こそなっていないが、このイシスの城下町にだって店はある。攻防戦で魔物から手に入れた戦利品を売りに行って旅の資金を確保していても不思議はない。何せモノが不足しているのだ、ぶっちゃけ普通に売るより高く売れる状況である。流石にまた商人が襲われることを恐れてか、お店には城の兵士が配備されてちょっと物々しかったけれど。

 

「……やはり、来たか。……そこの娘、少しいいか?」

 

 通りの向こうからこっちへやって来る人影を見つけた俺は、歩み寄って声をかけた。

 

「あれ? スー様? 勇者様と一緒じゃないの?」

 

「ああ、今そこの格闘場でおろちと話の真っ最中だ」

 

 おろちと言う単語にお姉さんの顔が一瞬強ばるが、敢えて気づかないふりをしつつ更に近寄ると、耳元で囁く。

 

「それでだ、勇者とおろちの話が終わった後、今度は俺がおろちと話すことになるのだが、お前達の力が借りたい」

 

「力?」

 

「あぁ、実はな――」

 

 準備もいるので、何をするのかの詳細まで説明し、伝言と道具の手配まで頼んでから別れる。

 

「これで、準備の半分は終了だな」

 

 シャルロットに関しては、路銀調達の為に話をしている間お使いをしてきてくれと頼んでも良いし、侵攻軍の魔女の死体からカナメさんがきえさりそうを拾ったそうなので、それを使ってシャルロットをやり過ごして貰っても良い。

 

(おそらく話すのはモンスターの檻の中か前、悲鳴とかを上げられてもきっと聞こえないとは思うけど)

 

 念のため猿ぐつわも手配しておいたので、問題はない。

 

「くくく。では、準備が調い次第始めようか……断罪と復讐と裁きを」

 

 口元をつり上げつつ、俺は格闘場の入り口へ目をやる。シャルロットはまだ出てくる様子がなかった。

 




・ほんじつのNGシーン
 念のため猿ぐつわも手配しておいたので、問題はない。
「くくく。では、準備が調い次第始めようか……断罪と復讐と裁きを」
「ままー、あのおじちゃん何やってるのー?」
「しっ、見ちゃ行けません」
 口元をつり上げつつ、俺は格闘場の入り口へ目をやる。シャルロット間浜出てくる様子がなかった。



短くてごめんなさい。

ついにクシナタ隊、おろちへ逆襲か?

次回、第二百十二話「季節外れの怪談(閲覧注意だと思う)」
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