強くて逃亡者   作:闇谷 紅

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第三百二十九話「事情を説明してみる」

 

「スー様が協力を求めてきたって話だったから、バハラタに残ってるのは連絡要員だけぴょん」

 

 カナメさん曰く、シャルロット達にはエリザのお仲間という立ち位置で接すつもりで居るのだとか。

 

「あの元エビルマージ、エリザにスー様が預けた話を聞いて、影ながらの支援と知恵を貸すだけでは危険だって言ったぴょん」

 

「元エビルマージと言うと……」

 

 カナメさんの語尾はもうこの際百歩譲ってスルーする。そして、俺が託した伝言と情報を元に判断を下したと者が居る、というところもまぁいい、ただ。

 

(いま その たんご を きく と さっき であった ばかり の へんたいさん みたい な き が して ならない のですが?)

 

 あれを見てしまった今、他の元エビルマージでありますようにと願ってしまった俺は、酷いだろうか。

 

「あの子の姉ぴょん」

 

「そうか。……そんな気はした」

 

 情け容赦なく確定してくれたカナメさんへ応じつつ。

 

「しかし、何がどうしてああなった?」

 

 気づけば問うていた。流石にその疑問を口にせずすませるのは、幾ら何でも無理だったのだ。

 

「そうぴょんね……それを話すには、指導官には悪いけど、一時的に元の口調で話させて貰うわ」

 

「え?」

 

 ついで に いきなり もと に もどった かなめさん への おどろき を かくす のも むりでした ごめんなさい。

 

「……元の口調?」

 

「ええ、精神修行と遊び人としてのキャラ作り……だから、やろうと思えばいつでも素の自分には戻れるのよ。まぁ、この『ガーターベルト』に若干引っ張られるところはあるけれど、意志を強く持ってれば大丈夫だし」

 

「待て、他の者は、他の女性陣はそんな生やさしいモノじゃなかったぞ?」

 

 いし を つよくもてば なんとかなる とか いわれたら、しゃるろっと や まほうつかい の おねえさん の たちば が ない のですが。

 

「……それは、『個人差がある』としか言いようがないわ。暗示とか催眠術にかかりやすい人とそうでない人が居るようなモノかしらね。純粋だったり単純な人程この『がーたーべると』には引っ張られるみたいだから」

 

「ああ、シャルロットとまほ……サラは純粋の方で引っかかった、と」

 

 ガーターベルトではないけど、女戦士とおろちは単純枠だろうか。

 

「いや、だとしてもウィンディ……エピニアの姉はどうなる?」

 

 今はああでも元々は智将と言う言葉がしっくり来る与しにくそうな相手だった筈だ。

 

(純粋とはほど遠い、どっちかと言うとカナメさんに近いタイプだと思うのだけど) 

 

 俺の印象通りの相手なら、カナメさんの説明とは齟齬が生じる。

 

「あぁ、あの元エビルマージは例外よ。いえ、例外なのは、当人じゃなくて『がーたーべると』の方かしらね」

 

「それは、どういう……」

 

「何度か突っかかってきたから、ちょっと取引をしたの。あの子――エピニアが丁度あたしの『がーたべると』を物欲しげに見てたから、『あなたのと交換してあげましょうか』と言って、あの子のつけてた『がーたーべると』を手に入れて、『これが欲しかったら、あたしに従いなさい』って取引を」

 

 ああ、つまりエピちゃんのお姉さんが、ああなったのは、えぴちゃんの使用済みがーたーべるとという付与効果が付いたせいで色々ブーストがかかっちゃってるのか。

 

「事情はわかった。だが、あれは流石にやばいだろ」

 

 と言うか、シャルロット大丈夫だろうか。エピちゃんのガーターベルトだとすると、あの限界突破変態才女って全力で抵抗しそうな気がするのだけど。

 

「スー様の言いたいことは解るし、あたしも後で失敗したって気が付いたわ。ただ、取引をしたのがそもそもバハラタでスー様と別れた後なのよ。あたしが見ていない間に隊の皆につるし上げられたらしくて、酷く落ち込んでたから……」

 

「慰める意味も含めて、がーたーべるとを交換し、それで取引をして、ああなった……と?」

 

 ああ、つるしあげ と いえば、ばはらた の やどや で さわいで ましたね、そういえば。

 

「ご明察。ちなみに、さっき口にした危険って判断を下した時は、まだ自前のがーたーべるとだったから、今程酷くはなかったわ」

 

「それは安心して良いと言うことなのだろうが……こう、何というか」

 

 じゃあ、今はアウトなのだろうか。

 

「それについては……まず心の準備をしておくことをオススメするわ」

 

「こ、心の準備?」

 

 せつめい の まえ に こころ の じゅんび が いるって どういう こと ですか。

 

「酷いことになってるけど……頭の方は前と同等、いえ、それ以上に冴えてるらしいのよ、当人曰く」

 

「は?」

 

 なにがどうして、そうなった。

 

「これを付けると呪文使いとして大成する、という謳い文句も強ち嘘ではないってことね。脱いで貰おうと思って説得した隊の面々、あたしを含む数名が論破されたわ」

 

「はい?」

 

 いや、もともとバラモス軍最高の智将であった訳だし、説得しに来たカナメさん達を返り討ちにしたとしてもおかしくはないような。

 

(いや、ちょっと待て……そんな相手に挑んで、シャルロット本当に大丈夫か?)

 

 嫌な予感がしてきた。流石に逆にやりこめられて部屋に戻ったらせくしーぎゃるが三人になっていた、なんてことはないと信じたいが。

 

「これは、さっさと話をすませて戻った方が良さそうだな」

 

 ぶっちゃけ、ここで引き返したとしても力ずく以外でどうにか出来る気がしない。

 

(おそらくあの変態さんにもっとも効果的なのは、エピちゃんだ)

 

 連絡要員以外が来ているというなら、最終兵器はエリザと一緒に居る。故に、俺がまずすべきと思ったのは、エピちゃんとの合流だった。

 

 




すごいや、かなめさん。

あの がーたーべると に うちかつ なんて。

次回、第三百三十話「変態には変態を」

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