先にエピちゃんの名前が決まって、姉の名前どうしようってなった時に、エピがつく何かでライバルとか兄弟とかいそうなモノ無かったかな、と考えた結果、ガン○ムエピオンを思い出し、それに引っ張られる形で今の名前に決まったという経緯があったり。
「どうしたぴょん?」
カナメさんからすれば、訝しんでも当然だろう。
「い、いや……何でもない」
俺にとっては開けるのが怖いドアでもカナメさん達にとっては何処にでもあるただのドアなのだから。
(そもそも、ここで立ち止まっていたって何の意味もないんだよな)
エリザに伝言を頼んだのだって知恵と力を借りてこのダーマに蔓延するがーたーべるとと諸悪の根源を何とかする為だったはず。
(今為すべきは、エピちゃんのお姉さんの知恵を借りて、事態を収束させること)
黒幕らしき人物が元バニーさんの知り合いであった為に、若干意味合いは変わってきているがこのまま捨て置くことが出来ないという一点は変わらない。
(ここで足踏みなんてしてられないんだ。時間をかければ、バラモスがまた何かを企むことだってあり得るし)
病の身である竜の女王のこともある。
「スー様?」
「あぁ、すまん」
何より二人に任せて部屋を後にしたのは、俺なのだ。なら、ドアの向こうにどんな光景が待っていようとも、開けるのは俺の役目だ。
「……シャルロット、入るぞ?」
流石に着替え中だったりすると拙いことになるので、ドアを軽くノックしてから中に声をかけ。
「えっ、あ、ちょ、ちょっと待って下さい! ど、どうしようミリー、お師匠様戻ってきちゃった」
「え」
応じた声に俺は固まった。
(えーと、とりあえず応じられる程度には無事だったと安心すべきなのかな、これ?)
何だかテンパっていたというか、明らかに取り込み中の様子だったようにも思われる。
「……待て、と言われた訳だが」
ゆうき を だして どあ を あけよう と したら これですかい。
(説得というか変態を終了させる前に帰って来ちゃったとか、そう言うことかな)
冷静になって考えてみれば、十分あり得る事態である。
(結局の所、俺は有りもしない絶望を想像して一人で勝手に怖がってただけだったってことか)
何という独り相撲。
「どうしようミリー、こんなのお師匠様にとても見せられないよ」
「そ、そうですけど、ご、ご主人様をあまりお待たせする訳には」
なんだか どあ の むこう から ふおんな やりとり が きこえてくる ような き まで してきて しまった。
(我ながら度し難いなぁ)
ポカをやらかしたことをわざわざドアの向こうで事件が起こっているかのような幻聴まで聞かせて正当化させようと言うのだから。
「え、ええと……そうだ! このシーツで」
「だ、大丈夫でしょうか?」
しかし、妙にリアルな幻聴だとも思う。
(何とか取り繕おうとする流れに持って行こうと努力してるところとかなぁ)
芸が細かいというか、何というか。
「シャルロット、もう良いか?」
「んっ、ここをこう……あ、す、すみませんお師匠様もう少しだけ」
「……そうか、では終わったらそちらからドアを開けてくれ」
幻聴はドアを開けない、そう言う意味で我ながらナイスな考えだと思いつつ、壁にもたれてシャルロットが顔を出すのを待ち。
「お、お待たせしましたお師匠様」
「ど、どうぞ、こちらに」
「あ、あぁ。すまんなお前達に色々任せて置きなが」
ようやくドアを開けたシャルロット達に促され、部屋に入った俺は入り口で固まった。
「えっ、あ、み、ミリー! ウィンディさんの服、出しっぱなしに」
たぶん、俺の視線を追って気づいたのであろうシャルロットが声を上げて。
「す、すみません、すみません、今、片付けて――」
「ねー、スー様。あのこんもり積まれてたのって、あたしちゃんの記憶が確かならあの人が着てたモノだと思う」
元バニーさんがそれに駆け寄る中、スミレさんは耳元で囁く。
「……それにどうコメントしろと?」
ひと ひとりぶん こんもり もりあがってる べっど の なかみ が どうなって いるか かんがえない ように している おれ に なに を いえ と いう のですか。
「特に何も。 ただ、積まれてたモノの中にがーたーべるととぱんつが一枚足りなかった気がする」
「……それは、あの一瞬でよく見たと褒めるべき所か?」
「それ程でも」
なに このこ。ひにく が つうじない。
(さすが賢者……って、何か違うよなぁ)
ともあれ、そんな風に遊ばれていた時だった。
「……はぁ、はぁ、どうやら役者は揃ったようですね」
「っ」
ベッドが、と言うかシーツの中の多分変態一号がしゃべったのは。
「追加の事情は、んっ、お二人から聞きました。はぁ、皆さんがどういう、状況にあるのかも」
「……そうか。それで、口を開いたと言うことは、何か伝えたいことがあると見ていいのだな?」
相づちを打つべきかツッコミを入れるべきか迷ったが、俺はとりあえず前者を選び、問い。
「は、い……エピニアの香りのお陰でしょうね。情報を整理し、こうしてガーターベルトとエピニアのパンツだけ残したままベッドに縛り付けられ考えた結果……はぁはぁ、そちらの方の『おじさま』が考えていらしてることは、すぅぅぅぅっ、はぁ、おおよそ読み切りました」
「な」
変態さ全開で告げられた言葉に絶句した。
「読み……切った?」
知恵を借りようとは思っていた、だが、いきなり「相手が何を考えてるか読み切りました」は流石に想定外である。
「エピニア、はぁ……『流石お姉様』って言ってくれてもいいのですよ?」
まぁ、とある一点に関しては、驚きもしなかったけれど。
ウィンディさん、見抜く。
ひぃぃぃっ、フラグと伏線がぁ、今後の展開がぁぁぁ!
まさか、あんな変態さんに作中でネタバレの宣告をされるなんて。
次回、第三百三十三話「深謀遠慮」
尚、エピちゃんのお姉さんがパンツを吸引して頭が冴え渡るのは、某有名探偵が麻薬を常用してたのと同じ理屈です、たぶん。