強くて逃亡者   作:闇谷 紅

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第三百三十六話「マジカルスカート? そんなのありましたっけ?」

「いや、別にあの商人に頼らなくともジパングの刀鍛冶を当たるという手があるか」

 

 部屋を出て廊下で呼ばれるのを待ちながら、俺はポツリと呟いた。

 

(そんなことよりあの商人をどうやって救出するかとかの方がよっぽど重要かも知れないけど、あっちはみんなの知恵だって借りられるからなぁ)

 

 もっとも、せくしーぎゃるられると困るからと理由付けした上でならせくしーぎゃる封じの贈り物については、シャルロットや元バニーさんの意見を聞くと言うことも出来はする。

 

(と言うか、女性の服を選ぶなら同性の意見があった方が無難かな)

 

 餅は餅屋という。一応、女の子になったことはあるのだが、呪文で肉体だけ変身したところで、感性に理解が及ぶかと疑問が残るし、イシスのあの夜のことを思い出してダメージになりかねない。

 

(まぁ、相手に内緒で服を買うには便利な呪文なんだけどね、モシャス)

 

 指輪のサイズに足の大きさ、スリーサイズに至るまで当人の気づかない間に知ることが出来ると言う意味では、酷い呪文でもあるとも思う。

 

(クシナタさん達はあの時、その辺どうだったんだろ? 考えていたのかな……)

 

 こちらも精神的ダメージを受けた強制一人痴女大会だが、あれで俺が知ってしまったこともたくさんあるのだ。

 

(実質的に自分が同じポーズしてるのを見られたようなものだし、もし俺がお姉さん達の立場だったら、あんなの……って、ぎゃぁぁぁぁっ、思い出しちゃったぁぁぁぁぁっ)

 

 きになった のは わかる が、なぜ おもいだしたし、おれ。

 

(わすれようわすれようわすれようわすれようわすれようわすれようわすれようわすれようわすれようわすれようわすれようわすれようわすれようわすれよう)

 

 記憶の奥に封印していたのに、本当に何故発掘した。

 

(いや、気づかなくて後でそのことにクシナタ隊のお姉さん達が思い至った場合のことが気になったからだけどさ)

 

 自分のツッコミに自分で弁解しつつ俺は考える。

 

(責任はとれないって説明してはあるけどなぁ)

 

 責任とってねと言われるのに十分だと思う。

 

(カナメさんのあそこにあるホクロのこととか、スミレさんの……いや、止そう。ここ最近のスミレさんの察しの良さを鑑みると迂闊なことは出来ない)

 

 と いうか、かいそうする と その かっこう を したとき の じぶん を おもいだして おれ にも せいしんてき な だめーじ に なる。

 

「……と いうか、なぜ こんな ほうこう に それた」

 

 自分からとうに塞がった古傷をこじ開けて剔るような真似をする必要はあったのか。

 

(これなら、まだ商人のオッサン救出について考えていた方がマシだったかも)

 

 何だかんだで少しは時間つぶしになったと思うが、代償が枕に顔を埋めてじたばたしたくなるこの気持ちだとすると、割に合わない。

 

「お師匠様、お待たせしました」

 

「ん? あ、あぁ、解った」

 

 ドアが開いて顔を出したシャルロットにろくでもない時間の終了を知って、少しだけ安堵しつつ応じると、俺は部屋に戻り。

 

「「ん゛んんんんんーっ」」

 

「あ」

 

 顔を枕に埋めてじたばたしてる元変態さん達を見つけ、少しだけ親近感を覚えた。

 

(と言うか、まぁ……そうなるよな)

 

 せくしーぎゃるった者なら大抵の者は通る道である。基本の性格そのものを変えられてしまったどこかの女戦士と、ジパングの駄蛇は例外だった気もするけど。

 

「まぁ、さっきの今だからな」

 

 着替えと立ち直れるまでの精神ケアの両方をやってたら、俺が精神的自傷行為に走っていた時間だけではとうてい足りまい。

 

「とりあえず、あの子の方は後で慰めておくぴょん」

 

「……そうしてくれ」

 

 カナメさんには大変なことを頼んでしまうが、とりあえずエピちゃんの方に立ち直って貰わなくては、お姉さんを立ち上がらせる要員が足りない。

 

(や、まぁ、おれ が もしゃす するって て も あるんだけどね)

 

 もっとも、シャルロット達の目と耳があるこの場では俺がモシャスの呪文を使えることを知ってるスミレさん達が気づいたとしても言及してこないだろうし、MP以外の精神的な何かまでゴリゴリ削られる気がするので、言われたところでやるつもりもない。

 

「ふむ……とりあえず、作戦会議はもう暫しお預けか」

 

 周囲を見回せば、エピちゃん達二人に着させるつもりで出したのであろう衣服のうち不採用だったらしきものがベッドの回りに散らばり。

 

(ん、スカート?)

 

 俺はその中の一つに目を留めた。何かが引っかかった気がしたのだ。

 

「どうしました、お師匠様?」

 

「ん、いや……そこのスカートが少し気になってな」

 

 だからシャルロットに問われ、普通に答えてしまい。

 

「え」

 

「あ」

 

 失敗に気づいた時には遅すぎた。

 

「スー様……」

 

 注がれるのは、スミレさんの生ぬるい眼差し。

 

(うん、解ってる)

 

 また、やらかしたのだ。

 

(けど、まだ今なら)

 

 まだ取り繕える可能性はある。万人を納得させる「スカートが気になった理由」さえあげられれば良いのだ。

 

「この、スカートですか?」

 

「あ、ああ」

 

 ただ、シャルロットは俺の言でスカートへ興味を覚えてしまったらしい。

 

(これって言葉選びを間違えたら、状況更に悪化するよなぁ)

 

 握った手の中が嫌な汗で湿った。

 

 




マジカルスカートのことを中途半端に思い出しかけた結果がこれだよ!

次回、第三百三十七話「あーあ」

ドーモ、やっちゃいましたね、主人公=サン。
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