強くて逃亡者   作:闇谷 紅

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第三百五十話(仮)「乱入者+α」

 

「……と言う訳です」

 

 何がと言う訳だとか言うツッコミはなしに願いたい。

 

「そうか、それで逃げ出したという貴族達は?」

「アッサラームにルーラで先回りし、国境を抜けた者の殆どを押えました。ただ、捕らえた貴族の頼る先がダーマにあるスー様や勇者様、隊長に敵意を持つ組織と聞いておりましたので、念のためとご報告にこのダーマまで足を運んだ次第です」

 

 義理堅いというか、何と言うか。

 

「なるほどな。だが、それなら使者の一人に手紙でも託してくれればよかったのだぞ?」

 

 王様になったばかりでは多忙を極めていたに違いない。そんな時に国を開けさせてしまったのは、心苦しく。

 

「それは我々も申したのですが、ルーラの呪文で異国に飛べる宮廷魔法使いが居らず」

 

「ああ、そう言う理由か……」

 

 ただ、伝令や使者を出すより自分で飛んだ方が早かったという事態に気付かされれば、何も言えなかった。

 

「すまんな」

 

 否、口から出るのは謝罪か感謝の言葉だけだった。

 

「いえ。私も国王となったからには、こうした遠出もきっとこれが最後になると思います。ですから、きちんとご挨拶しておきたくて」

 

 まぁ、一国の長となれば確かにそうそう国をあけてはいられないだろう。

 

「そうか、遅きに逸した感があるが、これだけは言っておく……即位おめでとうございます、女王陛下」

 

「え」

 

 生き返らせることができたという時点で新しいロマリアの王、女王はかつての仲間で、事情説明の中で今まで通り接してくれればよいとは言われたものの、こういう時はキチっとするものだと思う。

 

(親しき仲にも何とやらってね。まぁ、お師匠様モードだとやりづらいんだけど)

 

 いくらなんでも即位を祝うのに敬語なしというのは微妙に違う気がしたのだ。それと同時に、一つの区切りをつけたわけでもあるのだけれど。

 

「俺やクシナタ達のことを考えてくれるのは嬉しいが、国王となった以上、最優先で考えるべきは国と臣民だ。もちろん、そんなこと言われるまでもないと思うが」

 

 支援してくれるのはありがたいと思うし、できれば心意気にも応じたいと思う。

 

(けどね)

 

 俺たちへの支援の比率が高くなれば、私利私欲とベクトルが違うだけで逃げ出したという貴族たちと同じところに行ってしまうかのうせいが、ホンの僅かながらに存在する。

 

(このお姉さんなら、そんな風に道を誤ることなんてないと思うけど)

 

 何より。

 

「もっと、自分のことを考えてもいいと思う。お前やクシナタ達にはさんざん苦労をさせている、俺がしたことを帳消しにしてむしろこちらが今では借り分が多いと思っている程にな」

 

「スー様?」

 

「あなたと、ロマリアの未来に栄光あらんことを。幸せにおなり下さい、女王陛下」

 

 いくらなんでも女王に囮なんてやらせられない。そもそも、自らの人生を代償に女王となってまで俺達を支援してくれる相手にそんな役目を頼めるほど俺は腐ってはいない。

 

「ウィンディ。前言を撤回するのは気に入らんが、先の策、俺自らやらせて貰おう」

 

 女装は嫌だ。嫌だが、女王となったクシナタ隊のお姉さんの覚悟を前に、女装は嫌だから誰か変わってくださいと言う方がよほど恥ずかしい、もっとも。

 

「スー様、話は聞かせてもらった。と言うか、女装すると聞いて」

 

「スミレ?!」

 

「ちょっ」

 

「んーと、お久しぶり? で、女王陛下に置かれましてはご機嫌麗しく?」

 

 俺とロマリアの新女王様の前にスミレさんが現れた時、驚きつつもちょっとだけ後悔した。

 

(あれぇ? おれ、はやまった?)

 

 完璧な礼儀作法でお姉さんこと女王に礼をして見せたところは流石賢者と言ったところだが、視線の半分以上はこっちに注がれていた気がする。

 

(なぜ だろう。 あたらしい おもちゃ を まえ に した こども と いうか、うん、ほら)

 

 嫌な予感しかしない。

 

「大丈夫、スー様。その内楽しくなるから」

 

「ならない、と言うかなってたまるか」

 

 いつも通りの表情で手招きするスミレさんへ脊髄反射レベルでツッコみ。

 

「あ、あの、スー様? 今からでも私が変わった方が」

 

「お待ちください、陛下! そのようなことを陛下にさせる訳には! ここは私が」

 

 女王が申し出れば、お供の人が前に出てくる始末。

 

(なに、この かおす)

 

 八割がた乱入してきたスミレさんのせいの様な気もするが。

 

(ある意味俺のエゴで再びこの世界に引き戻しちゃった人達だからなぁ)

 

 責任もとれない立場である以上、生きる目的を見つけてクシナタ隊から巣立って行くのは喜ばしいと思いこそすれ、悪く思う筈がない。

 

(新たな門出をカッコよく祝福して幸せになってくれればいいなと思ったのに)

 

 色々と台無しになってしまった気がする。

 

「とりあえず、スミレは自重しろ。……話を整理しよう」

 

 何とか気力を振り絞り、俺は状況を整理しようとした。

 

「囮に関しては、もともと俺が頼まれたものだった。……だから、こちらで引き受ける」

 

「……スー様」

 

 わずかに生じた間は気にしないでもらえると助かる。

 

「代わりと言っては何だが、これから引っかける連中がロマリアの貴族とかかわりがあるなら、陛下にはその点から連中の処分を頼みたい」

 

「え?」

 

「実はこちらにもいろいろ事情があってな」

 

 そこからは俺による状況説明のターンだった。

 




私にいい考えがある。

キュピーン! パリィ!

どっちも違うといいなぁ、うん。

次回、第三百五十一話(仮)「主人公、ひらめく」
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