<クシナタ隊、商人お姉さん他>
アリアハン経由でポルトガへ→船でスーのある大陸の東海岸へ
<スミレさん&カナメさん及び元親衛隊アークマージ組+元バニーさん>
バハラタからダーマの探索へ→ダーマの一件収拾後、ジパングへ行く者とバハラタでランシールに向かう勇者一行の支援にまわる面々に別れる。
元バニーさんも一端はジパング組に同行(その後修行の為イシスへ移動予定)
<クシナタさん他>
アッサラームからロマリア方面へ→ノアニールへ(今ここ)
<エリザ+サラ&アラン>
はぐれメタルとの模擬戦修行の為、イシスへ。現在マリクと交替で修行していると思われる
先日の遅刻のお詫びと言うことで、現在はこんな感じになっております。
好評なら2があるかもしれません。
「隊長、本当にこっちで良いんでしょうか?」
右を向いても木、左を向いても木、ひたすら木が茂る森の中、私は前を進む隊長に問いました。
「気持ちはわかりまする。されど、先程開けた場所に出た時の太陽の位置からすれば問題はありませぬ」
「あ、あの時空を見上げていたのはそう言うことだったんですね。……はぁ」
隊長の言葉に当時、空からの敵を警戒してるだけだと思っていたことが少し恥ずかしいです。
(魔物の襲撃への警戒だけでなくちゃんと他のことも考えていらしたのに、私ったら……)
後ろからついて行くだけという楽な立場だというのに、不安を訴えてしまった。
「気持ちはわかるわ。けど、エルフの隠れ里があの村の西にあることはスー様も言ってらしたもの」
「……と言うことは、エルフの女王様に謁見したら、次は洞窟の探索ですね」
「まず、間違いなくそうなりましょう」
仲間の声にスー様が教えて下さった事件解決の流れを口にした私を肯定したのは、クシナタ隊長。
「駆け落ちしたエルフの娘と村の若者……」
駆け落ちと言うところまではロマンチックな話だと思って聞いていた話も、結末を聞かされた時は何とも言えない気持ちになったものです。
「隊長、問題のお二人を……救うことは出来ないんでしょうか?」
思わず訪ねてしまった理由は、叶わぬ恋路の先に命を絶った二人への同情だけではありませんでした。
「私達もこうして生きているのですから、スー様のお力でしたら――」
そう、それはきっと後ろめたさ。スー様が蘇らせて下さらなければ、私も仲間達もあの溶岩煮え立つ洞窟に骸として転がっていたはずなのですから。
「おそらくですが、それは叶いませぬ」
ただ、私の言葉に返ってきたのは、隊長の否定。
「やっぱり、駄目……ですか?」
理由は解っています。
「蘇生呪文は、現世に戻りたいという……蘇りたいという思いがあって初めて成功しまする」
生きながらえても、連れ戻されて愛しい相手と引き離される思い命を絶ったお二人が、こちらの呼びかけに応じるとは思えないと言うことなのでしょう。
「皆様の時とは、そこが違いまする」
「……たしかに、何人生け贄に捧げられても、おろちと魔物の被害は出るばかり……自分が最後なら、最後で終わるなら諦めていたかも知れないけれど」
「……凄いですね、私はただ死にたくないと。助けて欲しいとしか」
あの魔物に命を奪われたのは同じでも、思っていたことは違う。私はまた少し情けなくなって視線を逸らし。
「ふふ、それならまだ殊勝な方よ? あの子……名前は伏せるけど、『いい男と夫婦が一緒の布団でするようなことをしたかったのに、何でこんな所で』とかだいたいそんなことを考えてた子もいたみたいだから」
「な」
笑いを漏らして応じた仲間の暴露話に、私は耳を疑いました。
「そ、それ……本当ですか?」
「ええ。それじゃ、ヒントをあげましょうか。アッサラームでスー様に性格が変わる装飾品をかけた子が居たわよね?」
「あ、あー」
確かにそんな仲間が居たと聞いた気がします。
「たしか、隊長にその……お、お尻ペン……」
「そうそう。後で知ったんだけど、あの子、性格がせくしーぎゃるだったらしいのよね」
「せ、せくしーぎゃると言いますと」
「そう、良識とか恥じらいとか何処かに置き忘れて来ちゃったみたいな、あれね」
それは、なんとも難儀なといいますか。
「ああ言う子こそ、一緒になる相手を見つけて落ち着けば良いと思うのだけれど。今のところそう言う相手が出来たのって、アイナぐらいでしょう? ライアス様と言ったかしら、あの戦士様」
「あぁ、そう言えばアイナさんはお元気なのでしょうか?」
「んー、まぁ幾つかの班に分かれてバラバラになってしまうと……そう言うところ解らないわよねぇ。けど、やっぱり気になるでしょう? こう、別の意味でお元気、かとかも?」
「ちょ、ちょっと止めて下さい」
お元気かどうかとは言いましたけれど、同じ境遇の仲間です。確かに、二人の仲が上手く言っているかは気になります、気になりますけど。
「た、隊長が――」
「お・ふ・た・か・た?」
笑顔の中に言いしれぬ迫力を持った隊長がこちらを振り返った時、私は心の中で叫びました。
「だから無難な方向でおはなしをおわれせようと思っていたのに」
と。
「ひっ、た、隊長?!」
「魔物の襲撃が考えられると言うのに私語とは余裕でありまするな?」
「すみません、これには――」
仲間は、慌てて弁解しておりましたが、時既に遅し。
(そう言えばこの方、ロマリアでもモンスター格闘場に入り浸って隊長に大目玉食らっていらしたような)
ひょっとしたら、話をする相手が拙かったのかもしれません。
「なら、ここから暫く前を担当して頂きまする」
「た、隊長?! そんな、魔法使いと僧侶が前衛なんて聞いたことが、あ、わ、わかりました。わかりましたから、お尻ペンペンだけはっ」
「……はぁ、バギマっ」
隊長に睨まれて悲鳴をあげる話し相手に嘆息した私は声に出さず唱えていた呪文を完成させ。
「「ギャァァァァッ」」
「……空を飛ぶ相手って、こういうのが厄介ですよね」
降り注ぐカラスの様な魔物の残骸を手で払い落としつつ同意を求めたのでした。
「そ、そうでありまするな」
「そ、そうね」
「……それにしても、何度目の襲撃でしょう」
そろそろエルフの隠れ里と言うところに着いて欲しい、と思って前を見るもやはり先に見えるのは木々ばかりでした。
と、言う訳でクシナタ隊長と愉快な仲間達は順調に攻略中の模様です。
次回、第三百七十話「泥棒と俺」