「そうか……世話をかける」
何だかんだで結局カンダタをカナメさん達に押しつけてしまった、と言うのは正しくないだろう。
(だよな。途中からはクシナタ隊に頼ること前提だった訳だし……)
借り分ばかり増えているというのに、どこかアテにしている自分が嫌になる。
「任されたぴょん。さて、それじゃあ見張りを交代してくるぴょんね?」
そんな俺の内心を知ってか知らずか、口元を綻ばせ大仰な礼をし戯けて見せたたカナメさんは首を傾げると、こちらの答えも待たずドアへと歩き出し。
「あ」
「良かったら一緒に行くぴょん?」
かける言葉を探しながらも見つからず、短い音だけを発した俺へ振り返り、問う。
「……そうだな。シャルロットなら大丈夫だとは思うが、カンダタをどうするかについては話しておく必要もある」
ランシールまでの航海には連れて行けないし、ロマリアに収監するのは元部下と一緒にすることになってよろしくない。だから、他国への護送をカナメさんに任せたと説明すれば、シャルロットも納得してくれると思う。
(バラモスに時間を与えては拙いことは承知してるはず)
ここから最速でバラモス撃破を狙うとしたら、カナメさん達の協力はどうしても必要になる。
(俺達が地球のへそに挑んでいる間にジパングへ飛んでパープルオーブを回収し、ランシールに戻って合流。全部のオーブが揃うなりランシールから船で西進し、ラーミアの卵が安置されてる島で、ラーミアを復活させ、ラーミアの背に乗ってバラモス城へ……と言うのが一番短いルートな訳だけど)
イシスの三人が完全に置いてけぼりだし、マリクを含め面々の修行効率アップの話もほぼ無視した形だ。
(一応軍人口調のお姉さんにポルトガで世界樹の葉を確保出来たらイシスに送ってくれとは言ってあるけれど望み薄だし、そもそも元バニーさん達と合流せずにバラモス城に乗り込むのが論外だよな)
合流だけ何とかするならラーミアを復活させてからイシスに寄り道して拾ってこれば良いだけだが、疑問は残る。合流した三人の内転職を経た賢者二名が戦力になるレベルまで強くなっているのかという疑問が。
(強くならないといけない人員が三人も居るのに、相手になる発泡型潰れ灰色生き物の数が足りないってのは拙い)
世界樹の葉についても何らかの手は打つべきだろう。
(で、一番手っ取り早いのはクシナタ隊のお姉さん達と元親衛隊に協力を仰ぐパターンと)
わかっては居た。そもそも少し考えればすぐに思い至ることでもある。
(……結局、それか)
効率的ならば、個人のメンツや心情、それに感傷で消してしまって良い選択肢でないことを含めて、理解は出来ていた。だいたい、世界樹の葉は一人につき一枚しか摘めない。複数枚集めるには、他者に頼ることが不可欠なのだ。
「カナメ……さん」
頼むなら、シャルロットと変態が居る部屋へ着く前にすべき。気づけば俺は、足を止めて名を呼んでいた。
「どうしたぴょん?」
すぐ後を追う形で歩いていたから、カナメさんはすぐに振り返り。
「ああ、さっき頼み事をしたばかりでこん」
申し訳なさを感じつつも、切り出そうとした時だった。
「あ、お師匠様。お話はおわりましたか?」
「な」
現れたのは、部屋で
「シャルロット、見張りはどうした?」
いくら縛ってあるとは言え、一人にして良い相手ではないが、何よりシャルロットが役目を放棄したことが信じられず半ば呆然としつつ問えば、シャルロットの口から出たのは、代わって貰いましたと言う答え。
「代わる?」
「あ、はい。さっき、エリザさん達が尋ねてきて」
「エリザが?」
正直に言って、俺は更に混乱した。
(確か、イシスに行ってた筈、何でこのタイミングで……)
わからないことだらけだった。
「はい、それでお師匠様達は別のお部屋でしたから、部屋がわかってるボクがあの人の見張りを代わって貰って、お師匠様達を呼びに来たんです」
「呼びに来た、と言うことは何か話があるぴょんね?」
「……まぁ、何にしても呼ばれたなら行ってみるしかないか」
それでもいくらか冷静さの戻ってきた俺は、自分にも言い聞かせるように呟くと、向かうはずだった部屋へ向け、再び歩き始めた。
(悪い知らせじゃないと良いけど)
わざわざ会いに来るぐらいだ、どうでも良い用件でないことだけは確かだろう。
「……ん?」
ただ、歩く中、ふと疑問が浮かび。
「どうしたぴょん?」
「いや、一つ気になってな……シャルロット、先程お前はエリザ達、と言ったな?」
カナメさんに頭を振ると、俺は先頭を行くシャルロットに尋ねた。
次回、第三百八十七話「予期せぬ知らせ」