「はい、サラが一緒に来ているんです」
「なっ」
確認に返ってきた言葉の想定外さに絶句してしまったのは仕方ないと思う。
(魔法使いのお姉さんはイシスで元僧侶のオッサンと一緒に居たはず)
発泡型潰れ灰色生き物の数からすれば、修行が終わったと言うことは考えにくい。
(とは言え、バラモスがまたイシスに進行しようとした、とかだったらシャルロットもこんな明かし方はしないよなぁ)
腑に落ちなくてポーカーフェイスが崩れたのか、無意識に首でも傾げてしまったのか。
「ええと、サラは転職してないから直接修行に関係ないですし、はぐれメタルの数が少ないと修行の効率があまり良くないですから、その状況を打開したいと言うことらしいですよ?」
「成る程な」
こちらを見て始めたシャルロットの説明で、ようやく得心がいった。
「確かに効率を考えるなら、修行と直接関係ない者が動くのは理にかなっているな。しかし、何故ここに?」
「あ、それは世界樹の葉を取りに行くのに、あの竜の女王様のお城に行く時通った集落の人達にも協力して貰ったら、葉も沢山集められるかも知れないって思ったそうです」
「……そうか、あの集落にはルーラで飛べなかったな」
オリビアの岬を魔物に跨って空を飛び、ようやく辿り着いた気もする。
(これは魔法使いのお姉さんを見くびっていたな)
エリザが一緒なのは、箒に二人乗りさせて貰って岬を越えるつもりか、それとも。
「話は概ね理解したが、よく世界樹の葉の在処がわかったな」
「お師匠様のおかげだそうですよ? ほら、ポルトガで託されたんですよね、伝言?」
「あ、あれか」
そう言えば、軍人口調な魔法使いのお姉さんに世界樹の葉の件で幾人かに伝言を頼んだんだった。
「しかし、伝言を頼んだ日付を考えるとよく、ここまで来たな」
逆算すると、魔法使いのお姉さん達が伝言を受け取ったのは、俺達がピチピチ男になっていたカンダタを捕らえていた頃の筈だ。
「……それなんでつけど、サラ、打開策を求めてボク達がサイモンさんに会いに行った日、ポルトガに来てたらしくて」
「は?」
なんですか、それ。
「ボク達には会わなかったものの、あの魔法使いの人には会ったみたいで、そこで伝言を」
「……港が整備され、各地と交易しているポルトガなら求めるモノがあっても不思議はないと踏んだ訳か」
気づかずニアミスしていたとは想定外も良いところである。
(そして、イシスに渡ることなくこちらに来た、と)
来ただけならまたニアミスしてしまっても不思議はないが、今度はすれ違わなかった。
「怪我の功名と言うべきか。俺達がここに居ると知ったのは、あの騒ぎのせいだろう?」
「あ……たぶん」
ロープで縛った変態をぶら下げて歩いた事がこんな形で味方するとは。
(結果的に助けられた、と言うことでもあるのかな)
カナメさん達に頼らざるを得ないところを。
「まぁ、何にしても話はせねばなるまい。向こうも望んでいると言うなら尚のこと」
伝言という形になった世界樹の情報は補完しておきたいし、今後のこちらの予定も話しておきたい。
「世界樹の葉を回収後は、イシスに戻ってアランと合流するのなら、アランへの伝言も託せるからな」
「そうでつね。竜の女王様のこともありますし」
「ああ、修行にもあまり時間はかけられん……さて、と」
相づちを打つシャルロットに頷きを返すと、足を止めた。目的の部屋に着いたのだ。
「シャルロット、世界樹の葉についてはこのままサラに任せようと思う。俺達には残りのオーブを入手するという役目も残っているからな」
「この部屋に居るって犯罪者はあたし達が牢まで護送するぴょん」
俺の言葉をカナメさんが継ぎ。
「すまんな」
もう一度頭を下げたのは、結局カンダタのことに関してはカナメさん達を頼らざるを得なかったからだと思う。
「気にしないでいいぴょん。それよりも」
「ああ」
促されて、ドアをノックし、カナメさんとのやりとりはそこで終わった。
「どうぞ。シャル、早かったみたいですわね。今、ドアを開けますわ」
ドアの向こうから聞こえてきた声のシャルロットに向けた部分が勇者様でないのは、ある程度事情を知らされていたのだろう。
「……お久しぶり、と言う程ではありませんわね」
「見張りの交代に来たぴょん。積もる話は向こうの部屋でするといいぴょん」
「あら、それはありがとうございますわ」
ドアを開けてこちらに挨拶すると、最後尾のカナメさんがかけた声へ礼の言葉を述べ魔法使いのお姉さんは、ちらりと後方を振り返る。
「あなた方の捕まえた男は、あの調子ですわね」
「まぁ、大人しいなら良いことだ。もっとも、縄が弛んでいるのを隠す為にことさら大人しくしている可能性は捨てきれんが」
カナメさんが後れを取ると疑う気はないが、逃げようと抵抗して部屋を傷つけられでもしたら事だ。
「無いとは言い切れないぴょんね。調べてみるぴょん」
「ああ。俺達が見ている前でいきなりロープを解いて飛びかかってくるような真似はしないと思うが」
用心に越したことはない、ただ。
「ところでさっちゃん、その人のお尻についてる靴の痕は」
「えっ」
しゃるろっと、みんな するー してるんだから そこ には ふれないで あげてください と そう おもった。
大人しい×
ヒールで何度もグリグリされて悶絶し、その結果グッタリ○
「主人公以外の動き1」で記載した<エリザ+サラ&アラン>の部分、「思われる」と最後断言していなかったのは、今回の伏線だったりします。
次回、第三百八十八話「出航」