「……と、まぁそう言った事情があった訳だが」
小舟に乗り込んだ俺は、操船の邪魔にならない範囲内で、まず向かえに来てくれた船員にことの経緯を説明した。勿論伏せるところは伏せ、ハルナさんについてはスレッジの弟子という設定を崩さぬまま都合良く捏造もしている。
「成る程、そんな強敵を相手によく御無事で」
「まぁ、盗賊は逃げ隠れに特化した職業だからな。相手がいかに強かろうと遭遇しなければ良いだけの話だ。遭遇は想定外であったし、今回は正体も雑魚だったことに救われた部分もあるが」
最初のあやしいかげの正体がおどるほうせきだったのは、今思い返しても運が良かったと思う他無い。
(やけつく息を吐いてくる魔物とか、慢心出来ないような魔物は結構居るし、先に発見出来たのだって結局は運が良かっただけ)
結果オーライではあっても、反省すべき点は多い。
「ともあれ、ハルナの話からするとシャルロットがランシールに辿り着いたのは、ほぼ間違い無かろう」
故に俺もハルナさんと一緒にシャルロットを追う形で、ランシールに向かう旨を告げ。
「シャルロットと合流して地球のへそを攻略後、また世話になると思うのだが、こちらの船に戻ってくる際必要な物資を買い込んで持ってこようと思ってな……船に上がったら必要な物資について船長と話をする必要がある」
「そ、それはありがてぇ。ですが、大丈夫なんですかい? 結構な量になると思いやすぜ?」
「ふ、案ずるな。輸送手段の腹案は一つではないし、駄目であれば、時間はロスするが、ルーラで何処かの港に戻るという手もある」
実行するつもりはないが、ルーラを使った転進と補給は船員や船長を納得させる理由としては申し分ない。
(船の船長がルーラ使えるんだもんな)
利点については熟知しているだろうし、似たようなことをやったことがあると言われても驚きはしない。
「た、確かに。あの呪文なら港まではひとっ飛び。凶悪な魔物がうようよしてる草原を抜けて物を運ぶよりゃ……へい、お見それしやした」
「もっとも、こちらの策が全て立ちゆかなくなった場合の最終手段だがな」
とりあえず、船員の反応を見る限り、船長にも同じ流れで話を持って行けば、反対されず話を進められるだろう。
(魔物については、小舟を扱うこの人にもきちんと話をしとかなかったら、拙かったからなぁ)
別に、船長へ説明する練習に使っただけではない。
「さて、今の話をお前から船長に伝えて貰ってもいい訳だが、ランシールで補充する筈だった品についてはまだ聞いていないのだろう?」
「へい、一旦あっしが向こうに到着して無事行き来が出来ることを確認してからって話でしたし」
「なら、船長に直接話すのは必須だな。場合によっては備蓄担当の船員も交えて話をする必要もあるかもしれん」
場合によっては備蓄量の確認とかに付き合わされたりして時間を食いそうな気すらして、こういう時だろうなと思う。
(現実に面倒なシーンをスキップする機能が付いたらなぁ、とか思ってしまうのって)
所謂ゲーム脳だが、めんどくさい事って言うのは、どこまで言ってもめんどくさいと感じてしまう俺が居る。
「船のことは全て船長やお前達に任せて、ただ冒険と任務を果たせばいいと言うのも違うだろうからな」
言っていることは思ってることと違って割とまともだったりするのだけれど。
「旦那ぁ……あ、そろそろ船に着きやす。おーい、戻ったぞ! ロープをおろせ」
「へーい」
「よし。さ、旦那、どうぞ」
声を張り上げれば、応じた声を追う形でロープが降ってきて、掴んだそれを船員は俺へと差し出した。
「あ、あぁ」
順番からすれば、これは正しい。ハルナさんが先ではスカートの中が見えてしまうのだから。
(さっき みた という つっこみ は いらない ですよ?)
うん、俺は誰に対して心の中で話しているのやら。
「では、一足先に登らせて貰うな?」
「あ、はい」
一言お姉さんに声をかけてからロープを登り。
「私が船長です」
登った先に、そいつは、居た。
「いや、出迎えての第一声がそれなのは色々とどうかと思うのだが……」
「……わかっては居るのですが、こっちの帽子だと船長らしくないというか、こうして主張でもしないと船付きの魔法使いと間違えられることがけっこうありましてな」
「あー」
この場合、俺は労えばいいのか、それとも二角帽はどうしたんだよとツッコミを入れるべきなのか。
「あ、帽子でしたら波を被ってしまいましてな、今陰干しの真っ最中なのです」
「……スー様」
「言うな。さて、戻ってきた理由についてまずは話したいのだが――」
ハルナさんの物言いたげな目とぶつかった俺は頭を振ると気力を振り絞り、話を始める。
(いや、本当にかくかくしかじかで説明が済んだら楽なのになぁ)
説明の前から、ひたすらに疲れた俺だった。
ひぃっ、話だけで一話終わっちゃった。
次回、第四百六話「フィールドのBGM、結構好きです」