強くて逃亡者   作:闇谷 紅

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第四百五十三話「とりあえずイシスへ」

「ようやく効果が切れたか」

 

 現れた自分の手に透明化呪文の効果が切れた事を確認した俺は、意を決すとおばちゃんへと歩み寄った。

 

「アン」

 

「あら? まぁまぁ、こんな所で会うなんて……ひょっとして村の人達の蘇生に?」

 

 覆面越しに一瞬驚きを浮かべたおばちゃんがすぐさま蘇生に思い至ったのは、まぁ無理もない。

 

(既に滅んでいる上、もうここにはオーブないもんなぁ)

 

 魔王討伐だけを考えるならもう立ち寄る必要もない場所なのだから、消去法で村人の救済に来たと考えるのは何もおかしくない。

 

「いや、シャルロットならともかく、俺は『蘇生呪文を使えない』からな。目的地まで向かう途中にこの廃村があったからたまたま立ち寄っただけだ。まさか、ここで再会出来るとは思っていなかったが」

 

 そも、蘇生検証に使えそうな死体があるからと言う理由でおばちゃんがテドンに来ているなど、俺は予想もしていなかった。

 

(別れた時のことを思い出すと、まだほこらの牢獄の方に居ると思ったぐらいだし)

 

 もっとも直接ここに来た理由を聞けるような面の厚さも持ち合わせていないからこそ先の発言になった訳だけれど。

 

「そうねぇ、おばちゃんもここでお会い出来るなんて思わなかったわ。それよりおばちゃんに御用事があるのでしょう?」

 

「ほぅ、察しが良いな」

 

 おそらくは再会出来るとは思わなかったと言う言い回しから察したのだろうが、相変わらず侮れない人だと思う。

 

「実はランシールで『あやしいかげ』に遭遇してな。捕獲して尋問したところ、気になることを口にしたことがあってお前を捜していた。何でも、『アークマージが一人派遣されて来るかも知れない』らしくてな。しかもそいつは『母親がこっちにで行方不明になったとかで、どの地域でもいいから派遣してくれと上に掛け合って』のことらしい」

 

「っ」

 

 流石におばちゃんもこの話には息を呑んだ。そしてこちらの言わんとすることも理解したのだろう。

 

「あの子ったら……親思いのいい子だったけれど、そう言うところあの人に似たのかしらねぇ」

 

 覆面の内で瞑目したおばちゃんは一つため息をつくと、お話は解りましたと答えた。

 

「あの子とあなたたちを戦わせるわけにはいかないものね。おばちゃん、またご一緒させて頂くわ」

 

 原作だったら「アン が なかま に くわわった」とかテロップが流れそうな展開だが、それはさておき。

 

「そうしてくれると俺も助かるが、問題はラーミアだな」

 

「ラーミア?」

 

「ああ、伝説の不死鳥で心正しき者しか背に乗せてく……あ゛」

 

 そこまで考えて、ふと気づく。

 

(これって らーみあ が また きょひしたら むちむち の みぼうじん くくりつけて そら の たび ですか?)

 

 油断していた、元バニーさんはイシスだし、シャルロットは鎧を付けているから大丈夫だと。

 

「あら、何か問題でも?」

 

「あ、いや、何でもない」

 

 訝しんだおばちゃんにとりあえず首を横に振って見せたが、問題というかかなりの大問題である。

 

(どうするよ、身体の線が出てるってことはあのローブそんなに厚手のモノじゃないだろうし)

 

 だいたい、俺が三人分の体重を支えられるかという問題もあった。

 

(おばちゃんをくくりつけた場合、起こりうる最悪の事態は……おばちゃんの子供にくくりつけてるところを見られて誤解されるパターンかな?)

 

 自分の母親をロープで身体にくくりつける変態男、抵抗しない母親はきっと弱みを握られているんだろうとか誤解した上で、母親を取り戻すと宣言。

 

(母親の身柄がこっちに有れば普通に襲いかかってくるなんてことは無いと思うけれど)

 

 イシスの城下町に現れ、大衆の前で「あの男が母親をロープで縛り付けてとても口に出来ないようなことを」とか吹聴されたら、社会的に俺が殺される。

 

(一応、アッサラームを呪いから解放した人間って認知されてるから、おばちゃんの子供の言うことを信じないパターンも考えられるものの、その場合子供の方が悪者になって群衆からフルボッコにされそうだしなぁ)

 

 群衆VSおばちゃんの子供と言う図式になっておばちゃんの子供が反撃に攻撃呪文でもぶっ放そうものなら、大惨事になりかねない。

 

(うーむ、最悪ラーミアを説得しておばちゃんを特例にして貰えるよう掛け合って見るか)

 

 もしくはラーミアに併飛して貰う形をとり、ルーラでイシスに向かうか。

 

「……そこの所は、実際に話してみるしかないか」

 

 少し悩んだものの、直接話をしてみないことには意味がないと気づいた俺は、おばちゃんを連れてシャルロットの元に戻り。

 

「お帰りなさい、お師」

 

 出迎えようとして何故か固まったシャルロットに首を傾げつつも、ここからはおばちゃんが同行する旨を伝えた。

 

「そう言う訳で、このアークマージもお前の背に乗せて貰いたい訳だが……」

 

 シャルロットにばらせない事情は心の声として説明しつつラーミアに尋ねれば、かえってきたのは仕方ありませんねと言うテレパシーもどき。

 

(あれを見る限り、シャルロットにも許可を出した方が良さそうですが)

 

(えっ、あれ? え゛っ)

 

 言われて振り返ると何故かシャルロットが鎧を脱ぎだしていて、俺は固まった。

 

「……二人ともしっかりと掴まっていろ。いや、シャルロット掴まるのは俺じゃなくて、な?」

 

「あらあらまぁまぁ」

 

 その後、飛び立つ直前におばちゃんの生温かい視線を受けつつも羽ばたき、浮き上がったラーミアは俺を乗せてイシスへと飛び立つのだった。

 




シャル「お師匠様にあんな格好で……っ、ボクだって」

主人公「え゛っ、なにこれぇ?」

次回、第四百五十四話「再会、出来たらいいなぁ」
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