強くて逃亡者   作:闇谷 紅

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第四百五十八話「マリクの屋敷にむかいたい」

「とにかく、俺にその気はない」

 

 意思表示というものは大切だと思う。と言うか、ここで拒否しなかったら目の前にいるおばちゃんの娘は嬉々として俺を押し倒そうとするんじゃないだろうか。

 

「本当に良いのか? まぁ、ママンには劣るが、安産型だし胸もこの通り大きいぞ? 小さい方が好みなら、乳袋を付け直しても良い」

 

「……で、全てはアンに孫の顔を見せて喜ばれたいが為、か」

 

「無論だ! そうだな、身体に魅力を感じないというなら権力はどうだ? 今の私はバラモス軍総参謀長にして軍師の座を預かっている。人間の男を一匹飼うぐら……いや夫を持つぐらい許される立場にある。だからもうその頭を掴んで握りつぶそうとするのはやめ、ぎゃぁぁぁ」

 

「……はぁ」

 

 何だかもの凄い爆弾発言をされたのに、ぶっ飛んだ言動と変態性のせいで驚かずさらりと流してしまえた自分に少し嘆息する。

 

(つまり、エピちゃんのお姉さんと割とあっさり死んだあのエビルマージの後釜、かぁ)

 

 バラモス軍の軍師は変態とか残念が必須条件として盛り込まれてるのだろうか。

 

(ここで出会っていなかったら、本当にバラモス城で立ち塞がっていたんだろうな)

 

 そう考えると、ここで出会えたのは。

 

(幸いだっ……いや、そうでもないか)

 

 けっかてき に ずつう の たね を いっこ ひろったようなもの でも あるのだから。

 

(スタイルも良いし、とんでもない効果のアイテムを作る頭脳もある)

 

 わざわざイシスまで来ていたのも母親を捜してのことだとすれば、行動力だって評価出来る。

 

(それら全てを限界突破したマザコンが台無しにしてるというか、本当に残念な美女だよな、うん)

 

 むしろ、それに救われた感もあるのだけれど。

 

(孫がどうのこうのではなく純粋な好意で迫られていたら、八つ当たりのはけ――ここまで邪険に出来たかどうか、怪しいよなぁ)

 

 それはさておき、割と重要な情報さえあっさり零してくれたこの残念アークマージには最優先で聞いておかないと行けないことがある。

 

「ところで、お前の兄弟はどうしている? まだアレフガルドか?」

 

 そう、おばちゃんには息子もいるのだ。このマザコン変態娘をバラモス軍から引っこ抜いても、もう一人がバラモス軍に加わっていれば、城へ乗り込んだ俺達の前に立ち塞がることが考えられる。

 

「そうか、しまった。貴様ホモか! なら私が迫ってもそんな態、ま、待て、解った、私が悪かった。だからもう、それはやめ、あ゛ーっ」

 

「……人が真剣に考えているというのに、まったく」

 

 言うに事欠いて、ホモとか。

 

(堪忍袋の緒が切れても仕方ないよね)

 

 ほんとう に どうしてくれようか この まざこん。

 

(普通ならアンの所に引き摺っていって、保護者責任を問うところだけれど……ん?)

 

 おばちゃんの名を胸中であげてふと思いついたことがある。

 

(エピちゃんのお姉さんとジャンル違いとはいえ同系統だし、おばちゃんのパンツとかあげれば絶対の忠誠を誓うんじゃ)

 

 うん、狂った発想だとは思う。

 

(だいたいどうやっておばちゃんのパンツを貰うかって問題もあるし)

 

 だが、これがうまく行けば、とりあえずこの変態娘を制御することも可能だろう。

 

(誰かに知られたら俺終了だけどね)

 

 いや、知られなくてもそんな酷いミッション出来ればこなしたくはない。

 

「……とは言え、こんな変態を野放しにするのもな」

 

「ん? どうした? やっぱりやる気に……ほほう、ロープに目隠し猿ぐつわとわ、お前、中々にマニアックだな。だが、良いだろう。ふふふ、これでママンに喜んでもんぐ、ん、んんーっ」

 

「……はぁ」

 

 その手のプレイだと思ったのか、抵抗されずローブを脱がせ、猿ぐつわを出来たのは楽で良かった。

 

(良かったついでにこのまま梱包して遺棄したいとこだけど)

 

 そうも言っていられない。俺は更にトロワへ目隠しをし、手足を縛った上で栓を耳にねじ込む。

 

「ん゛? んんぅ?」

 

 耳栓までは想定外だったのか、足下で変態娘がもがくも、縛られた状態では何も出来ず。

 

「手を汚す、か。それが最短ルートなのはわかっている。だからこそ、ここまでしたんだ」

 

 じっと自分の手を見た俺は呪文を唱えた。

 

「モシャス」

 

 俺がおばちゃんのパンツを求めるのが問題なら、一番求めてもおかしくない人物に変身すればいい。

 

(ついでに何がどうして「これ」が「こうなったか」も聞き出したいところだけど)

 

 おばちゃんの勘の良さ、察しの良さは侮れない。だから欲張りすぎてはいけない。

 

(狙うはおばちゃんのパンツのみ)

 

 同性だし、予備の下着がないから貸して欲しいとかそう言う流れで話を持っていけば、すんなり借りられるだろう。

 

(それで、後は手に入れたパンツでこのマザコン娘と交渉すればいい)

 

 変態でマザコンで残念だが、御せればそれなりの戦力ではあるし、ホモ扱いされてちょっと頭に来たために中断してしまったが、おばちゃんの息子の情報だって欲しい。

 

(だから、仕方ないんだ)

 

 ちょっと変態のまねごとをしてパンツを貰ってくるのは。

 

(だから、ちょっとだけ……)

 

 マザコンに、変態になってみよう。俺は脱がせたローブを身につけると、声を出してみる。

 

「んー、あー、あー、あー、す、凄いよママン、今日も最高だよ! ……くっ、ちょっとやってみただけなのに精神的なダメージがっ」

 

 だが、ここで挫ける訳にはいかない。

 

「時間もないもんな。こんな事になるとは思わなかったからシャルロットに伝言頼んじゃったし」

 

 無事パンツを入手出来たとしても、交渉が終わる前にシャルロットがこの部屋に到着してもアウトだ。

 

(この変態、何を口走るか解らないし)

 

 口止めするにはやはり、忠誠を誓わせるしかない。

 

「早くマリクの屋敷に向かいたかったんだけどな」

 

 変態を縛ったところでもう賽は投げられたのだ。

 

「虚しいけど、これ必要なのよね」

 

 悲壮な覚悟でドアを開けると俺はおばちゃんの部屋に向かったのだった。

 

 




悲壮な決意でマザコンに扮した主人公。

果たしておばちゃんのパンツをゲットすることは出来るのか。

安心しろ主人公、シャルロットには内緒にしておくつもりだからと作者は言う。

ただし、つもりだけどね?

次回、第四百五十九話「主人公が変態するお話」

「主人公が変態してパンツを貰ってくる話」にしようかなと思いましたが、ネタバレしちゃうので自重しました。

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