強くて逃亡者   作:闇谷 紅

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第四百九十五話「エピローグ(前編)」

「これは一体……」

 

 戸惑いを言語の形でポツリと漏らしたのは、アランの元オッサン。

 

(まぁ、無理もないか)

 

 いきなり視界が歪んだかと思えば別の場所に居たのだから。

 

(原作でも勇者に語りかける感じだったからなぁ、アリアハンへ戻してくれる前の声)

 

 シャルロット以外のほぼ全員が戸惑いを隠せぬ中、俺だけは動じることなくシャルロット達とこの身体の故郷を眺めていた。

 

(しかし、こっちの労を労うためだとは思うけどアリアハンまでのワープはありがた迷惑だよなぁ)

 

 魔法使いのお姉さん達が死体殴りに近いことをやったとは言え、バラモスの死体を再利用不可能なレベルまで損壊させることも別の場所に移すことも出来ずじまいなのだ。

 

(そもそも、アリアハンのすぐ外にいるけどさ、トロワ達の服装をこんな屋外でどうしろって言うんだよ)

 

 これが独力での凱旋だったら、ルーラで即座に戻ろうとする者を説得し、寄り道することも出来た。

 

(けど、大役を果たしてようやく故郷に戻れるところで「その前に別の場所に行くぞ」とかさ)

 

 むちゃくちゃ いいづらいんですが、おれ。

 

「はぁ……シャルロット、皆。これからジパングへ向かうぞ?」

 

 だが、どうしても寄り道をせざるを得ぬ理由があって、嘆息すると空気の読めない発言を敢えてする。

 

「「えっ」」

 

 上がった驚きの声はある意味当然だと思う。非難の色を帯びたモノが混じることさえ覚悟していた俺としては、驚きで済んでくれて良かったとも思ったぐらいだ。

 

「何でここまで来て、と思うのは解る。だがな、流石にトロワの格好は着替えさせねば拙いし、そこのエビルマージ三人に至っては、身の置き場がなかろう?」

 

「あっ」

 

「確かに」

 

 俺の指摘で幾人かの目が理解の色を帯びたことに安心しつつ、続ける。

 

「バラモス軍の残党が居るとすれば三人は裏切り者、あの城に返すことは出来んし、着いて来るにしてもバラモス軍の格好のままは拙すぎる。血塗れのトロワ共々何処かでアリアハンの城下を歩いても問題ない格好にせねばなるまい」

 

 着替えに関しては、全員で予備の服を持ち合えばここで何とかすることも出来るだろうが、それでは屋外で着替えをさせることになるし。

 

「何より、そこの三人にこれからどうするかを俺はまだ聞いてお」

 

「ついて行きます、お側に置いて下さい」

 

 聞いていないけどどうするのと問いの形に持って行こうとした俺の言葉が終わらぬうちに、叫んだ者が居た。

 

(うん、わかってた)

 

 しがみついてきたのは、あの時仲間になりたそうにこっちを見ていた女エビルマージ。

 

「他の二人はどうする? ジパングはバラモス軍から離反した魔物が平穏に暮らすことが出来る国だ、あの国ならお前達の居場所も用意出来るだろうが」

 

「ご厚意、感謝します。捕虜としてどのようにされても文句は言えぬ所に寛大な処置を」

 

「このご恩は忘れません」

 

「……そうか」

 

 言外にジパングで生きて行くと答えた二人へ密かに俺は胸をなで下ろし。

 

「「サンドラのこと、よろしくお願いします」」

 

「あ、あぁ」

 

 同僚を気遣う旨を見せる二人に俺は頷きを返す。と言うか、初めて聞く名前だが、話の流れからして、それが即答した女エビルマージの名前なのだろう。

 

「お師匠様?」

 

「ご、ご主人様?」

 

 何故かシャルロット達が衝撃を受けている様子だが、ここはこうでもしないと話が拗れるのだから是非もない、是非もないと思う。

 

「マイ・ロード……」

 

「あらあらまぁまぁ、トロワも大変ねぇ」

 

 だからさ、そういうのはやめてくれませんかね、おばちゃん。

 

「英雄色を好むですか、解りましたマイ・ロード」

 

 いや、解らなくて良いから、変態娘。

 

(そもそもコイツの解ったってどう解ったか聞くのが怖すぎるし)

 

 問うたが最後、お子様やシャルロット達には聞かせられないような変態発言が飛び出すのは目に見えている。

 

「ともあれ、最低でもそこの二人をジパングに送り届けねばならん。まぁ、それだけならジパングへ行ったことのある者が一人いれば良いだけだが――」

 

「でしたら、お任せ頂ける?」

 

「アン、か。……シャルロット」

 

 挙手したおばちゃんに目をやった俺は、弟子の名を呼ぶ。

 

「は、はい、お師匠様」

 

「袋を借りる。アンの為にキメラの翼を貰うぞ。それから、予備の服を使ってトロワ達の着替えを見繕って貰えるか?」

 

 ジパングに行く必要が消失すれば、残る問題は屋外での着替えのみ。

 

「それはどういう」

 

「こういう目的で用意した訳ではないがな」

 

 言いつつ俺は鞄から布を取り出すと、近くにあった木の枝に布の端を結びつけ、もう一方も別の木に結んで衝立を作る。

 

「あと二枚有る。これを使えば着替えスペースぐらいは作れよう? 流石に男が一緒にいては衝立があっても安心して着替えが出来ん。アラン、俺達は一足先にアリアハンに入るぞ?」

 

「成る程、承知しました」

 

「ま、マイ・ロード。ですが、そ」

 

「トロワ、着替える必要があると俺は見なした。故に今回は、例外だ」

 

 と いうか、これ いじょう しゃるろっとたち から の OHANASI の げんいん を つくられても こまるんですよ、とろわさん。

 

「まぁ、凱旋に魔物が加わるのも問題だろうからな。着替えが終わればルイーダの酒場で待っていてくれればいい。場所は城下町の人間に聞けば教えて貰えるだろう。ではな、シャルロット、ミリー」

 

「「あ、はい」」

 

 二人に別れを告げると、アランの元オッサンを伴って、俺は歩き出した。

 




やっぱり一話で終わらせられなかった、ごめんなさい。


と言う訳で、次回、第四百九十六話「エピローグ(後編)」
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