もしもテニプリに女子テニス部があったなら〜対決編〜 作:ハネ太郎
導入だけでその後は書く予定はなし。四話やって次に書くのは本命の本編になりますのであしからず。
越前リョーマ。若干12歳にして「テニスの王子様」の異名を持つ、美少年。青春学園中等部の男子テニス部に所属しており、一年生ながらその実力でレギュラーの座に収まる。無愛想で始終、人を睨みつけるような目つき、基本的に口も悪いと、人付き合いは得意なほうではないが独特のカリスマがあり、周囲に自然と人が集まるタイプ。次期部長の呼び声も高く、日本全国の学生テニス選手から注目されている・・・。
挙げていくとキリがない。要はそんな「テニスの申し子」のような彼が、ある日こんなことを言い出した。
「俺、しばらくテニスから離れて、自分を見つめ直したいと思います」
たまたまテレビで見たドキュメンタリーで、幼い頃からやり続けていたスポーツを病気で断念、道を踏み外した少年の再起の話を目にした彼。
「俺からテニスを取ったら、何が残るんだろ・・・」
多感で揺れ動く思春期の少年の心に、今まで考えたこともない疑問と不安が生じる。
そして、彼は行動を起こした。テニスプレイヤーとしての無期限休業宣言をするや否や、ウェアにラケット、自室にあるグッズなどなど、身の回りのテニスにまつわるあらゆる物を段ボール箱にぶちこみ、封印したのだ。
彼の突然の変心に対し、周囲の友人たちの反応は、意外と悪くなかった。むしろテニスバカと言われるほど打ち込んでいた彼を、前から心配していたという声がほうぼうから聞こえたほど。
仲間たちは、リョーマが新たな自分を見つけるのに協力を惜しまないと申し出た・・・。最悪、例えテニスをやめたとしても、自分たちは変わらず仲間だとも。その言葉が何より彼にはうれしかった。
ここは越前家。主なき寺を棲家にしている。
「おい、リョーマ! 本気なのか!? 考え直せ!」
「うるせえ、俺はやるといったらやるんだ!」
「まあまあ、リョーマさんは完全にやめちゃうわけじゃなくて、いっとき離れてみるだけで・・・」
息子をテニスプレイヤーとして手塩にかけ育ててきた父親・南次郎は、リョーマの行動にショックを受けた。止めようとする父、耳を貸さない息子、それをなだめるは同居するイトコの奈々子さん。
「母さ〜ん、お前からも、何とか言ってやってくれ〜!(泣)」
「うろたえるんじゃないの、みっともない!(汗)」
「やべー、予想以上の破壊力だ・・・(汗)」
今度は自宅のパソコンからリモートで、外国にいる妻(すなわちリョーマの母親)倫子に呼びかける南次郎。そんな夫を画面越しに一喝する妻。普段の飄々とした態度からは想像もつかない父の狼狽ぶりに、いよいよ自らの行動の責任を感じ始めるリョーマ。
「母さんは、反対しないの?」
今度はリョーマが、画面の母に呼びかける。
「いつかこういうことが起きるんじゃないかって、ずっと思ってたのよ。貴方の長い人生だもの、納得がいくまでとことんやりなさい」
「・・・ありがとう、母さん!」
「リョーマさん、オジサマはどうしましょう?」
奈々子さんの後ろで、父は放心状態。
「ほっとけよ。俺は自分探しの旅に出る」
母のお墨付きを得て、少年は旅立つ。と言っても行き先は友人のところだ。
ガールフレンドの桜乃と朋香をお供に、校内の各部活動を見学してまわるリョーマ。まずは野球、サッカー、ラグビー、バスケ・・・およそ思いつく限りの運動部を訪ね、どこでも歓迎された。
そして体験入部の結果は。
「流石リョーマ様というべきか、その卓越した運動神経は、どのスポーツでも遺憾なく発揮されました」
ここは教室。リョーマの体験記録をつけていた小坂田朋香が、しみじみ語る。すっかり彼の秘書気取りだ。
「でも、どれもそつなくこなすけど、ノレては、いな、い?」
「ああ。まあな」
竜崎桜乃の指摘に、頬杖ついて憮然と遠くを見るリョーマは答える。
「どこ行っても活躍できると思いますけどね〜。きっとこれから助っ人依頼がじゃんじゃん来ますよ」
「・・・やめとくよ。こんなポット出の助っ人が大活躍しちゃ、その競技をずっとやってきた連中に失礼だ」
「・・・そうだね。流石リョーマくん! ところで、相撲部やレスリング部、ボクシング部に空手部からも入部のお誘いが・・・」
「格闘技系は、性に合わないからパス」
即却下された。
「茶道部、文芸部、演劇部などの文化系は・・・」
「・・・見るだけ見てみるか」
しかし、リョーマがノレる部活はなかったようであった。
これまではテニスに費やしてきた時間を、今度は友人たちと過ごす。様々な体験が彼を待っていた。
「ど、どうしたの、リョーマくん!?」
教室の机に突っ伏して脱力状態のリョーマ、驚く桜乃。
「このボードゲームだと、どうやっても堀尾に勝てない・・・」
「江戸の仇を長崎で討つたあ、この事か。テニスでは勝てなくてもこいつでは無敵だぜ!」
リョーマの友人にしてテニス部の補欠、堀尾はここぞとばかりに勝ち誇る。
またある日の放課後、とある一室にて。リョーマと、桃城と、不二が遊んでいた。それは・・・。
「え〜と、今度は、その。ロボットの、おもちゃ?(汗)」
「おお、それはポリレンジャー! うちの弟たちもハマってました、宇宙警察と宇宙暴力団が戦うやつ!」
斜め上を行く展開に戸惑う桜乃、ドヤ顔で解説する朋香。
「よく考えたら、こーいうので遊んだことなかったなぁ、って言ったら先輩たちがわざわざ用意してくれて」
宇宙船(の玩具)を手で持って「ぶーん」しながらリョーマは答えた。不二は二足歩行恐竜型の怪獣ロボットを、リモコンで操る。ふたりとも童心に還ったかのよう。
「よし、越前! 合体だ!」
「が、合体!?」
「ここを開くんだよ」
「ああ・・・」
機関車型のメカを持ってる桃城の突拍子も無い申し出に、咄嗟にリアクションが取れないリョーマ、それをフォローする不二。
不二先輩の指示通りに、宇宙船のパーツに仕込まれたスイッチを押すとボディが展開。そこに桃城の機関車が突っ込む。ジョイントするとギミック発動、たちまち各パーツがパタパタと変形して、一台の巨大ロボットが完成した。
「わー、すご~い!」
「ふえ〜、こんな仕掛けだったのか〜! ごきげんじゃん」
こういうものをほぼ初めて見たリョーマ&桜乃、目の前で行われた合体ショーに素直に感嘆の声を漏らす。
「今日は俺が海釣りのイロハを教えてやる」
「よろしくおねがいします」
この機会に釣り仲間を増やさんとする手塚部長。
「釣った獲物は、うちに持ってこい。包丁の扱い方を教えてやるよ」
「釣れれば、の話ですけどね・・・」
寿司屋の息子、タカさんこと河村隆も便乗する。
大きな池の周囲にランニングコースを備えた、都会の公園の芝生に寝転ぶ三人。
「ここ二週間ばかり、ずっとラケットを握ってない。こんなの、多分生まれてはじめてだ・・・」
利き手の左手を天にかざし、リョーマはしみじみとつぶやく。
「・・・なんだかずいぶんリラックスした、いつになく穏やかなお顔で」
リョーマの横顔を見つめる朋香。
「・・・そうだね、優しくなったっていうか。あ、いや、今までが優しくなかったわけじゃ・・・!」
「いいよ、フォローしなくても。自分でも分かってるから」
慌てる桜乃に対し、気の抜けた表情のリョーマは応えた。
「勝負ごとから離れると、人間ここまで優しくなれるのか。ほんと〜に、穏やかな気分だ」
いつになく、優しく微笑む。
「リョーマ様・・・しゃべり方まで変わっちゃって・・・」
ついこの前までは、常に周囲を睨み付け、無愛想でぶっきらぼうな男だった。それがこの有様である。
と、リョーマは一冊の本を取り出した。旅行雑誌のようだ。「この夏のデートスポット100!」と書かれている。
「リョーマ様、さっきゴミ箱で何を拾われたのかと思ったら・・・」
「ってこれ去年の日付だ・・・まあいいや。お前ら・・・もし、もしもの話だけど・・・。行くとしたら、どういうとこがいい?」
「!!」
驚くサクトモ。こんなデートの話をすることも、従来の彼からは考えられないことだった。
「女子が喜ぶデートスポットなんて俺は知らない。今後のために、よかったら教えてくれ」
「!・・・じ、じゃあ、私は、花火大会かな。浴衣着てさ・・・一緒に、見に行きたい、です」
桜乃が提案すると、
「私、海に行きたいです! 水着で追いかけっことかロマンでしょう!」
朋香がさらに力強く提案。しばしノリノリでデート談議に花を咲かせる三人。と言っても発言は主に女子ふたりで、その間に挟まれたリョーマはもっぱらうなずいているだけ。
いつしかリョーマは疲れて眠ってしまった。
「・・・今のうちに、私らは用足しに」
「賛成」
芝生で眠るリョーマを残し、トイレに向かうサクトモ。しかし・・・彼女たちは気付いていなかった。三人に向けられた、悪意のある視線に・・・!
つづく
リョーマたち三人に襲い来る意外な敵! 戦うことをためらうリョーマに思わぬ救いの手が! 次回「コートの武人と麗人」お楽しみに!