H.L. Noire   作:Marshal. K

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Reefer Madness #3 ~Interval~

 

 

 獅白を納屋から追い出した後、あたしは空き缶を開けて確認する作業を続けてたけど、だんだん面倒臭くなってきた。いいか、面倒臭くなってきただけで寂しくなってきたわけじゃないからな。絶対に。

 

「とはいえ、空しい気分になってきたのは確かだな。こうも収穫がねえと......ん?」

 

 空き缶の一つをつかんで持ち上げようとすると、缶に抵抗された。

 

「貼り付けてあんのか、これ?......わっ」

 

 手前に引いてみると、缶はそのままぱたりと倒れた。それと同時に掛け金が外れる音がして、滑車を軋ませながら戸棚の一つが奥に向かって開いたんだ。

 

「すっげ、隠し扉だ......」

 

 仕掛け自体は単純だった。おもりとロープ、滑車、掛け金。それこそ、納屋にある部品と工具で作れそうなものだった。

 

「......んで、またスープ缶と」

 

 隠し部屋になにかあるかと期待してたんだけど、そこの棚に並んでたのは相変わらずパーネルズ・スープの缶詰だった。違いは、こっちは未開封だってことぐらい。

 

「やれやれ、こりゃ本当にスープ中毒者に当たっちまったかな......あれ?」

 

 戯れに缶の一つを持ち上げてみて、変な違和感を感じた。なんだこの感覚。

 缶をまじまじと見つめる。

 

「......内容量15オンス(420グラム)、か。でもこれはどう考えても」

 

 ぽんっと放り投げて、もう一回キャッチする。

 

「15オンスも入ってねえなあ。といって、空き缶じゃないのも確かだし」

 

 缶の封印部分をこつこつ叩く。間違いなく、工場で密閉されたままだ。一回切り開けたような様子もないし、どこかに穴が開いて中身が流れ出ちゃったような形跡もない。

 どうやって中身を確認しようか考えて、あたしはふと思い当たることがあって一旦納屋を出た。

 

 

 

 

 

「で、この缶を開ければいいの?」

「おう。お前のことだから、缶切りくらいもってんじゃねえかと思ってさ」

 

 そんなわけで、獅白を連れ戻してきた。

 

「おまるん、あたしのことなんだと思ってるの?」

「ん? いつでも頼りになる獅白ぼたんだと思ってるぞ」

 

 獅白は大げさに肩をすくめると、ウェストコートのポケットから万能ナイフを取り出した。

 

「まあ、持ってんだけどね」

「やっぱりな」

 

 獅白はナイフの刃の中から缶切りを選ぶと、キコキコ音を立てて封印を切りだした。刃をぐるっと一周させて、ちょっと残した部分を蝶番のようにして蓋を開ける。

 

「へっへえ、おまるん大正解だね」

 

 そう言って相勤がつまみ出したのは、ちょっと茶色っぽくなった麻の花穂だった。乾燥大麻(マリファナ)だ。

 

「缶一杯に詰まってるね......半ポンド(220グラム)くらいかな?」

「なら......末端で20ドルくらいか」

 

 あたしがそう推定すると、獅白はつまみ出した花穂の匂いをくんくん嗅いでから言った。

 

「これなら三十ぐらい出す人もいるかも......少なくとも、定価の12セントじゃ買えないのは確実だね」

 

 獅白はいま開けた缶をそこらに置くと、棚の中から適当にもう一つ取ってキコキコ開けた。

 

「よっと......これも大麻の缶詰だね。一缶しかないアタリをおまるんがたまたま引いただけ、ってことはなさそうだ」

「おい、どういう意味だよ」

「そのまんまの意味だけど? なんせこんだけ缶があればね......のこりは巡査の誰かに確認してもらおっか」

「ポルカもそうしようかと思ってたんだ。で、気になるのはもう一つあって」

「なに?」

「そこの台帳」

 

 隠し部屋の奥には、納屋には不釣り合いな書き物机が置いてあった。その上に、青い表紙の台帳が置いてある。

 獅白がその机に歩み寄って、台帳の箔押しの題字を読み上げた。

 

「"パーネルズ・スープ会社 配送台帳"か。缶の封印といい、この会社もグルかな?」

 

 獅白が表紙をめくった台帳のなかを、あたしも横から首を延ばして覗き込んだ。

 

 

――パーネルズ・スープ会社 ハリウッド、ファウンテン通り6310番地

 

  日付:1月3日  重量:50ポンド 価格:2000ドル 生産地:ティフアナ 備考:E.J.

  日付:1月18日 重量:50ポンド 価格:2000ドル 生産地:ティフアナ 備考:E.J.――

 

 

「他にもちょろちょろ取引はあるけどこのE.J.って人――備考欄だけど、たぶん取引相手のイニシャルだよ――、マジで週に50ポンドも持ち込んでるみたいだね」

「だな。サン・イシドロの税関に知らせとくか?」

「どうかな......」

 

 難しい顔をして台帳を閉じながら、獅白が言った。

 

「これだけ頻繁に、これだけたくさん密輸できてるなら、抱き込まれてる監視官がいっぱいいそうだ」

「じゃあ保留で。そこから連中に警告が飛んでもまずいしな」

 

 あたしは腕を振って、外に出るように獅白に促しながら続けた。

 

「スープ工場に行ってパーネル社長がどう弁解するか、聴いてみようじゃん」

 

 

 

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