「全員配置に着きました、刑事!」
パーネルズ・スープ会社のエントランスに突入すると、二階の方から巡査の誰かが叫んだ。一階の工場のドア脇には、
あたしは左腋の下の拳銃入れから38口径
「ポルカが破るから。その後から獅白、巡査たちと続いて。いい?」
「いいよ」
「
おまるんはほうっと一つ溜め息を吐いてから、錠前にイサカを向けるや一発ぶっ放した。
「刑事、お探しの物を見つけたと思います」
「わかった、今行く」
「おう。ポルカもすぐ行くから......いてて」
あたしはおまるんのところを離れると、声をかけてきたウィーラー巡査に付いて、まだ硝煙臭い工場の中を進んで行った。
おまるんは銃撃戦の最中に怪我をして、警察医の治療を受けてるところだった。
銃で撃たれた......わけではなくて、床に落ちてた缶を踏んづけて滑りこけ、おでこにたんこぶを作ったんだ。目下おまるんは、衛生巡査に氷袋をあてがわれていた。
それでもおまるんは幸運だった。ものすごく幸運だった。もし、チンピラがもう一人残っていたら。もし、あたしが気が付くのがもう少し遅かったら。もし、あのチンピラが
幸いにも、マルがお世話してるのはチンピラたちだけだ。
「こちらです。このダンボール箱です」
「どれどれ」
巻締機のところに積まれていた、段ボール箱の一つを開ける。中には
「わーお......他のも全部?」
「ええ、そうです」
「よいしょ......20ポンドか、25ポンドってところかな」
たぶん、二箱で50ポンドだ。でもここにはまだ何箱も積み上げられている。
「密輸に発送が追い付いてなかったのかな......で、こっちの人は?」
巻締機のところにぶっ倒れているヒスパニックの男は、なぜかマルに回収されずにそこに置きっぱなしだった。
「検屍官が、シシロ刑事が調べたがるだろうと」
「あたしが?......どれどれ」
まずシャツのポケットをまさぐる。指先に固いものが触れて、あたしはそれを引っ張り出した。
「......おっ、また
「うわっ、おまるん」
ぎょっとして振り返ると、仏頂面のおまるんがいつのまにか後ろに立っていた。
「へへ、今度は成功だな」
「おでこ、大丈夫?」
「あ? ああ、軟膏塗って湿布貼って、それだけだよ」
おまるんが前髪を掻き上げた。どでかい湿布が、おでこにテープで固定されている。
「ぷっ、あっはっは」
「こんの......で、刻印は?」
「あったね。"ALS"」
「んで、そっちは?」
おまるんが指したのは、男のズボンのポケットだった。中身が入っているのがわかりやすく、ふくらんでいる。
「こっちは財布だね。メキシコの
「名前は......お、こいつがアーネストか」
免許証の名前はフアレス、アーネスト・セシーリョとなってる。書いてある身体的特徴も一致してるから、たぶん本人だ。
「みたいだね。住所はティフアナ。
「だな」
「刑事!」
ウィーラー巡査が戻ってきて、またあたしたちに呼びかけた。
「クルーズって名前のやつもいましたよ」
「お、見に行く見に行く」
巡査の後に着いて行くと、案内されたのは一段高くなってる洗浄エリアだった。
「こいつです。免許証で確認しました」
「わかった」
それは例の、おまるんが目の前でずっこけた
「どれどれ、胸ポケットの中には......あった」
あたしがアーネストと同じように胸ポケットから引っ張り出したのは、
一方、おまるんは死体が握りしめていた札束を調べている。
「使い古した20ドル札だな......全部で1000ドルくらいか?」
「そんなもんだろうね」
「1000ドル、かあ。ロイならポケットに突っ込んじまうだろうな」
「あー、しそう」
しそうと言うか、たぶんする。じゃなきゃあたしたちに毛が生えたくらいのお給料で、200ドルの背広を着て2000ドルのキャディ――あたしのと違って最新の47年式――を乗り回せるわけがない。
「この現金はポルカが持っとく」
おまるんが札束を証拠品保管袋に入れながら言った。
「この札じゃ大した証拠品にはならねえだろうけど、金は金だからな。レイシー巡査部長か、当直の主任に直接渡す」
「じゃ、そうして」
身内を信じないわけじゃないけど、ハリウッド署の巡査たちは保安風紀課の悪い影響を受けてるのが無闇に多い。その意味では、おまるんはその悪影響から最も遠いところにいる刑事だって言える自信が、あたしにはある。
ここにいる他の誰よりも、おまるんに預けとけば一番安心だ。
「やあ、お二人さん。本日二つ目の血の海だな」
マルが、たぶんホヘ・クルーズの死体を回収するための部下と一緒にやって来て言った。鑑識技師のレイ・ピンカーも一緒に付いてきている。
「何を追っかけてこうなったんだ?」
「風紀課のいつものだよ、マル。クスリとカネ......カネと言えばレイ、あたしたち、また銀貨を見つけたんだけど」
「ああ、ウィーラー巡査から受け取ったよ」
レイはこっちに向かってちょいちょいと手招きして続けた。
「お前さんたちが見つけた順番に並べて置いた。最後の二つは入れ替えたが......まあ、見てみな」
あたしたちはレイと一緒に、昼にセルジオが仕事してた
その順番に刻印を読んでいくと......
「"MASANGKAYMETALS"......なんて読むんだ、これ?」
「マッサンケイ
おまるんの、そしてあたしも頭の中で浮かべていた質問に、レイが答えてくれた。
「随分昔に潰れた鋳造工場だ。住所はバイン通り1034番地。俺たちはここを片付けとく」
レイは、マルの部下たちが担架で運んできた死体の方を親指で指してから続けた。
「もう夜も遅い。あんた方は鋳造工場に行って、話を聴いてくるといい。話の分かる連中なら、だが」
「どうかなあ。ここの工場の連中よりも聞き分けが良いとは思えねえけどなあ」
おまるんが工場外に運び出されていく死体を眺めながら、ボヤくように言った。
「そん時はそん時だよ、おまるん。次は転ばないように、ね?」
おまるんはひょいっと肩をすくめて返した。
「ま、鋳造工場にスープ缶は転がってねえだろ。流石に」