(改訂漏れがあったらコッソリ教えていただけるとありがたいです)
「よいしょ」
助手席のドアが開いて、捜査用車にフブキ先輩が戻ってきた。
「
「ヴィクター・ホセ・ラメズかオーナーで間違いないみたいだよ」
フブキ先輩はドアを閉めて、メモ帳をぱらぱらめくりながら答えた。
「えーっと......ラメズ
「わかりました」
ウィルトン
ファーンウッド通り側から回っても、ラメズ
交差点を北に入ってすぐの路肩に捜査用車を寄せると、フブキ先輩はさっと助手席から降りて、社屋の前の駐車場に入って行った。どうやら
あたしも手早くエンジンを切り、
「
前方から早くも、フブキ先輩が紙ばさみの男に声をかけるのが聞こえてきた。
「ホセ・ラメズに話を聴きに来ました」
「何の御用でしょう? お巡りさん」
「手続的な質問です」
ブルンブルンとエンジンがかかる音がして、駐車場に並ぶ特大サイズの配達トラックの一つが動き出した。さっき紙ばさみが指示を出していた男たちが、今から配達に出るらしい。
「彼はどこに? いま会えますか?」
「......無理ですね」
ちょっと間を置いてから、ヒスパニック系らしい男はにやっと嗤って続けた。
「いま出て行きましたよ」
ギクリと振り向くと、例の配達トラックがキュルキュルとタイヤを擦りながら、赤信号を無視してサンセット
「ぼたんちゃん!」
「わかってます!」
言われた時にはすでに、あたしもフブキ先輩も捜査用車の方に駆け戻っていた。
あたしがエンジンをかける間に、フブキ先輩が赤色
フブキ先輩が片手でドアの安全バーを握ったまま、もう片方の手で送話器を取ってKGPLを呼び出す。
「至急至急、5キング44からKGPL」
「至急至急、5キング44、
「5K44、麻薬取引事案の被疑者を追跡中。応援を要請します。被疑車両はGMCトラックAC型、色は緑、商用登録番号が、
「KGPL了解。KGPLから各局、5K44号車から応援要請......」
「あぶねっ!」
あたしは叫んで急ハンドルを切ると、捜査用車を対向車線に飛び出させた。
――バキッ!
「にゃっ!?」
助手席のすぐ横の路面で、トラックから投げ出された椅子が粉々に砕けて、フブキ先輩がかわいい悲鳴を上げた。猫っぽいな、それ。
「あー、びっくりした! こんにゃろう......」
フブキ先輩がぶつぶつ文句を言う中で、ブロンソン通りの南北からパトカーが一台ずつ、野太いサイレンとともに現れて道路を塞いだ。
「騎兵隊が早いね」
「麻薬取引事案ですからね。ちょっとでも関わって、おこぼれに与りたいんですよ」
あたしがそう言い終わらないうちに、トラックはパトカーのバリケードに突っ込み......そのまま二台とも弾き飛ばしてサンセット
「あぶねぇ!」
再びあたしは叫んで、キャデラックを元の車線に戻した。飛び出してた対向車線に、弾き飛ばされたパトカーの一台がスピンしながら割り込んできたんだ。炎上し始めたパトカーからは、乗務員の巡査が這う這うの体で逃げ出そうとしている。
「わあ、こりゃまともにぶつかって行ったら、このキャディもオシャカじゃない?」
フブキ先輩が振り返って、ぐしゃぐしゃの鉄塊になって燃え上がるパトカーを眺めながら言った。
「そっすね。ところでフブキ先輩、銃の腕前に自信はあります?」
「任して」
フブキ先輩がレギュレーター・ハンドルを廻して窓を開ける間に、あたしは捜査用車を急加速させてトラックの左側面後方に着けた。このトラックはスパッツ・デザインを採用していて後輪がほとんど隠れてるから、真後ろから撃ってもまず当たんないだろう。
「ありがと、ぼたんちゃん!」
フブキ先輩がそう叫んで、45口径
銃声に続いてバスンと破裂音がして、他のタイヤたちが路面を擦る甲高い音が何重にも上がり始めた。
「おっと」
キャデラックのブレーキを踏んで減速させると、トラックはスピンから立て直せずに横向きになり――減速しなかったら巻き込まれてたな、これ――当然、そのまま横転した。ボディが舗道で擦れるイヤな音が鳴り響いて、トラックはガワー通りとエル・セントロ通りの間でようやく止まった。
フブキ先輩はあたしが捜査用車を停めるのを待たずにぱっと飛び降りると、拳銃を構えたまま
通りには何重にもサイレンが鳴り響いて、パトカーが続々と集まりつつあった。護送車には困らなそうだ。
運転台の方からフブキ先輩の声が響いてくる。
「ホセ・ラメズ!?」
「ああ、ああ、そうだ」
「違法麻薬取引の容疑、並びに逮捕抵抗と、重大警察資機材損壊の現行犯で逮捕します!」
あたしは開きっぱなしのテールゲートを見ながらちょっと唇を噛んだ。荷台の中は積まれていた家具が崩れてぐしゃぐしゃになっている。テールゲートからは血がボタボタ垂れていて、だらりと下がった手はピクリとも動かない。
後ろに駆け寄ってきた巡査に検屍官を呼ぶように言いつけると、あたしは運転台の方に回って行った。
「......俺が売り買いしてるのは、薬じゃなくて家具さね。それ以外のことも、言わば事故さね」
ラメズが言い訳をしているようだ。その口吻は何と言うか、人の神経を逆なでする響きがあった。オッティーの言っていた、"自分を大物だと思い込んでる小物"感が、その口調一つ一つからにじみ出ている。
「さあ。それはあんたの倉庫を見てから決めようか」
あたしは、これまた苛つく感じのニヤニヤ笑いを浮かべているラメズにそう言うと、背後の巡査の一人に叫んだ。
「巡査! そう、そこのあんた。ダルビー巡査だっけ?」
「
「このアホをハリウッド署に勾引して、留置場にぶち込んどいて。それから、サンセットとウィルトンの角にラメズ
「了解です」
「それと、」
あたしはサンセット
「これ、検屍が終わるまでどかせないから、交通主任にも一報しといてくれる?」