H.L. Noire   作:Marshal. K

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Manifest Destiny #9

 

 

「KGPLから5K11。5キング11、どうぞ(カム・イン)

 

 マイケル・ドリスコール軍曹とウォルター・ベケット軍曹から話を聴くために、ハリウッド郵便局に向かう道中だった。ガリガリ、ザリザリとノイズ混じりの無線が私たちを呼び出した。

 助手席のミオが、送話器を取って応答する。

 

「5キング11です、どうぞ(ゴー・アヘッド)

「5K11、射撃事件入電中。現場、南サンセット大通り(ブールバード)6780番地、南サンセット6780。ロバーツ軽食堂(ダイナー)です。通報者によれば、被害者は先手配のクリス・マジョウスキーとのこと。5K11、対処識別符号は3(コード・スリー)

「5K11了解。サンタ・モニカとバインの角から向かいます」

「KGPL了解、以上KGPL」

「手が早いね」

 

 送話器を置いたミオに、そう端的に感想を言うと、ミオも赤色投光器(スポットライト)とサイレンのトグル・スイッチを弾きながら頷き返してきた。

 

「アルヴァロを襲ってから、まだ3時間くらいしか経ってない。コーエンはだいぶ急いてるみたいだね」

「危ないなあ......この分だと、今日中にあの入港表の全員が襲撃されてもおかしくないよ」

 

 サイレンの威光を使って、クライスラー・サラトガをサンセット大通り(ブールバード)に乱暴に曲がらせると、無線がハウリング音を鳴らして続報を伝えた。

 

「KGPLから5キング11宛、先指令の射撃事案の続報です。通報者によると、被疑者は自動車で逃走した模様。反復、自動車で逃走した模様。判明している車種は4ドアのパッカード、色は緑とのこと。現場よりセルマ通り方面に向かった模様。以上KGPL」

「セルマ通り。一本上か!」

 

 再び急ハンドルを切って、捜査用車をカシル(プレイス)の並木道に乗り入れさせると、助手席のミオがうっとかぐっとか言う感じの音を、喉の奥で立てた。短い通りを一気に走り抜けて、セルマ通りをさらに西に驀進する。

 

「あれだフブキ!」

 

 ラス・パルマス通りとの交差点に達したところで、ミオがそう叫んだ。セルマ通りの向こうからやってきたパッカードが警察の自動車に気付いたらしく、赤信号を無視してラス・パルマス通りへと無理矢理北上していった。すぐに捜査用車を右折させて、アクセルを踏み込んでパッカードのお尻に迫っていく。

 ミオは送話器を取って、応援を要請し始めた。

 

「5キング11からKGPL」

「5キング11、どうぞ」

「5K11、応援を要請します。先指令、射撃事案の被疑車両を追跡中。対象、47年式パッカード・クリッパーエイト、色は緑、登録番号8-B(ベイカー)-8-3-2-0です。現在、ラス・パルマスとハリウッドの角から東へ逃走中」

「KGPL了解。KGPLからハリウッド管内各局......」

 

 そうこうしているうちに、パッカードはチェロキー通りを抜けてセルマ通りに戻った。さらにカシル(プレイス)に入ってサンセット大通り(ブールバード)の方に南下していく。

 

「なんか、ぐるっと一周してない?」

 

 カシル(プレイス)からサンセット大通り(ブールバード)に右折すると、ミオがそう言った。確かに、さっきまで私たちがいた場所に戻ってきた形だ。

 

「白上たちはね。向こうは単に、ぐるぐる回って撒こうとしてるだけだと思うけど」

 

 パッカードの後を追って再びチェロキー通りに入ると、交差点のすぐ南をパトカー二台が封鎖していた。パッカードがそれを避けようとしてスリップして、裏路地につっこんでいく。

 すぐにガシャーンと破壊的な音が聞こえた。

 

 

 

 

 

「封鎖が完了しました、刑事」

「わかった。じゃあ検屍官が来たら、ここに案内してきて」

「了解です」

 

 チェロキー通りの路地の奥。緑色のパッカードが、頑丈そうなコンクリートの壁に頭から突っ込んでいた。ひび割れた風防ガラスに飛び散った大量の血からわかるように、乗っていた二人は自動車が停まった後も、あの世へとドライブを続けて行ってしまった。

 私は運転席側のドアを開けると、ハンドルに突っ伏して死んだ男の懐を探った。

 

「お、手帳がある......」

 

 手帳はすでに血でべとべとで、開けないページも多かった。幸いにも一番新しい書き込みのあるページは開いて、中身も十分読み取ることができたけど。

 

「"ミッキーの会合、今日午後九時、ニュースビュー・ビル。シェルドンは二十代、5フィート10、黒っぽい髪"......シェルドンは、今日またコーエンに会うつもりみたいだね」

「そっか......フブキ、ちょっとこれ見て」

 

 ミオが大きなライフル銃を片手に、こっちに回ってきた。

 

「助手席の足元に落ちてたんだよ」

ブローニング自動小銃(BAR)だね。どれどれ」

 

 機関部の側面に刻印された製造番号を確認する。

 

「ちょっと待ってね、メモで確認するから」

 

 ミオにBARを返すと、私は自分の手帳を取り出してめくった。荷役簿から書き写した盗品の一覧に目を走らせる。

 

「......うん、これも盗品の一丁だよ」

「やっぱり」

 

 ミオは巡査の一人を呼んでBARを回収させると、ため息を吐きながら言った。

 

「シェルドンの護送、急がせた方がいいかもねえ」

「そうだね。ウェスト・ロサンゼルス(ディビジョン)をせっついてみよっか」

 

 そう言いながら捜査用車まで戻ったところで、無線機がキューンと音を立てながら呼び出しを始めた。

 

「KGPLから各局、ハリウッド郵便局にて自動緊急通報装置発報中。事案概要は不明なるも、211事案等に発展する惧れがあります。ハリウッド管内の移動局、どうぞ(アイデンティファイ)

「5キング11です、どうぞ(ゴー・アヘッド)

 

 ミオがそのまま、助手席の窓越しに送話器を取って応答した。その間に私は運転席に回り込んで、エンジンをかける。

 

「5キング11、自動緊急通報装置が発報しています。現場、ウィルコックス大通り(ブールバード)1615番地、ウィルコックス1615、ハリウッド郵便局です。現時点で事案概要は不明なるも、211事案等に発展する惧れがあります。受傷事故防止に最大限配意しつつ、臨場次第現場概要を報告してください。5K11、対処識別符号は3(コード・スリー)

「5K11了解。チェロキー通りのサンセットとデ・ロングパーの間から急行します」

「KGPL了解。以上KGPL」

「先を越された。これはたぶん、強盗なんかじゃないよ」

「そうだね」

 

 ミオは苦い顔で送話器をダッシュ・ボードに戻しながら応じた。

 そう、ハリウッド郵便局。最初に私たちが目的地にしていた、ベケットとドリスコールの勤務先だ。

 先に郵便局に回っていたら、って後悔の念はひとまず脇に置いて、私はクライスラーの運転操作に集中することにした。

 

 

 

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