「KGPLから5K11。5キング11、
マイケル・ドリスコール軍曹とウォルター・ベケット軍曹から話を聴くために、ハリウッド郵便局に向かう道中だった。ガリガリ、ザリザリとノイズ混じりの無線が私たちを呼び出した。
助手席のミオが、送話器を取って応答する。
「5キング11です、
「5K11、射撃事件入電中。現場、南サンセット
「5K11了解。サンタ・モニカとバインの角から向かいます」
「KGPL了解、以上KGPL」
「手が早いね」
送話器を置いたミオに、そう端的に感想を言うと、ミオも赤色
「アルヴァロを襲ってから、まだ3時間くらいしか経ってない。コーエンはだいぶ急いてるみたいだね」
「危ないなあ......この分だと、今日中にあの入港表の全員が襲撃されてもおかしくないよ」
サイレンの威光を使って、クライスラー・サラトガをサンセット
「KGPLから5キング11宛、先指令の射撃事案の続報です。通報者によると、被疑者は自動車で逃走した模様。反復、自動車で逃走した模様。判明している車種は4ドアのパッカード、色は緑とのこと。現場よりセルマ通り方面に向かった模様。以上KGPL」
「セルマ通り。一本上か!」
再び急ハンドルを切って、捜査用車をカシル
「あれだフブキ!」
ラス・パルマス通りとの交差点に達したところで、ミオがそう叫んだ。セルマ通りの向こうからやってきたパッカードが警察の自動車に気付いたらしく、赤信号を無視してラス・パルマス通りへと無理矢理北上していった。すぐに捜査用車を右折させて、アクセルを踏み込んでパッカードのお尻に迫っていく。
ミオは送話器を取って、応援を要請し始めた。
「5キング11からKGPL」
「5キング11、どうぞ」
「5K11、応援を要請します。先指令、射撃事案の被疑車両を追跡中。対象、47年式パッカード・クリッパーエイト、色は緑、登録番号8-
「KGPL了解。KGPLからハリウッド管内各局......」
そうこうしているうちに、パッカードはチェロキー通りを抜けてセルマ通りに戻った。さらにカシル
「なんか、ぐるっと一周してない?」
カシル
「白上たちはね。向こうは単に、ぐるぐる回って撒こうとしてるだけだと思うけど」
パッカードの後を追って再びチェロキー通りに入ると、交差点のすぐ南をパトカー二台が封鎖していた。パッカードがそれを避けようとしてスリップして、裏路地につっこんでいく。
すぐにガシャーンと破壊的な音が聞こえた。
「封鎖が完了しました、刑事」
「わかった。じゃあ検屍官が来たら、ここに案内してきて」
「了解です」
チェロキー通りの路地の奥。緑色のパッカードが、頑丈そうなコンクリートの壁に頭から突っ込んでいた。ひび割れた風防ガラスに飛び散った大量の血からわかるように、乗っていた二人は自動車が停まった後も、あの世へとドライブを続けて行ってしまった。
私は運転席側のドアを開けると、ハンドルに突っ伏して死んだ男の懐を探った。
「お、手帳がある......」
手帳はすでに血でべとべとで、開けないページも多かった。幸いにも一番新しい書き込みのあるページは開いて、中身も十分読み取ることができたけど。
「"ミッキーの会合、今日午後九時、ニュースビュー・ビル。シェルドンは二十代、5フィート10、黒っぽい髪"......シェルドンは、今日またコーエンに会うつもりみたいだね」
「そっか......フブキ、ちょっとこれ見て」
ミオが大きなライフル銃を片手に、こっちに回ってきた。
「助手席の足元に落ちてたんだよ」
「
機関部の側面に刻印された製造番号を確認する。
「ちょっと待ってね、メモで確認するから」
ミオにBARを返すと、私は自分の手帳を取り出してめくった。荷役簿から書き写した盗品の一覧に目を走らせる。
「......うん、これも盗品の一丁だよ」
「やっぱり」
ミオは巡査の一人を呼んでBARを回収させると、ため息を吐きながら言った。
「シェルドンの護送、急がせた方がいいかもねえ」
「そうだね。ウェスト・ロサンゼルス
そう言いながら捜査用車まで戻ったところで、無線機がキューンと音を立てながら呼び出しを始めた。
「KGPLから各局、ハリウッド郵便局にて自動緊急通報装置発報中。事案概要は不明なるも、211事案等に発展する惧れがあります。ハリウッド管内の移動局、
「5キング11です、
ミオがそのまま、助手席の窓越しに送話器を取って応答した。その間に私は運転席に回り込んで、エンジンをかける。
「5キング11、自動緊急通報装置が発報しています。現場、ウィルコックス
「5K11了解。チェロキー通りのサンセットとデ・ロングパーの間から急行します」
「KGPL了解。以上KGPL」
「先を越された。これはたぶん、強盗なんかじゃないよ」
「そうだね」
ミオは苦い顔で送話器をダッシュ・ボードに戻しながら応じた。
そう、ハリウッド郵便局。最初に私たちが目的地にしていた、ベケットとドリスコールの勤務先だ。
先に郵便局に回っていたら、って後悔の念はひとまず脇に置いて、私はクライスラーの運転操作に集中することにした。