「お、なんだこれ......」
モレッリ邸の向こう三軒の地取り捜査を終わらせた私は、ホーバート
「これは......
拾い上げたそれは、黄色っぽい紙で折られた鶴だった。日系には見慣れたものだけど、なんでこんなところに?
「フブちゃん、どした?」
「お、ポルちゃん」
階段で立ち止まってたからか、ポルカちゃんがお庭からこっちに歩いてきていた。そのポルカちゃんに折り鶴を見せる。
「これ、ここに落ちてたんだけど」
「なんだそれ、折り鶴?」
「みたいだね」
ポルカちゃんは私から折り鶴を受け取ると、しばらく眺めてからおもむろに開き始めた。正方形の紙に戻ってしまった折り鶴を眺めて、ポルカちゃんは目を細めた。
「おーおーおー......」
「ポルちゃん?」
ポルカちゃんが黙ってこっちに向けた紙面には、笑顔を浮かべたリーランド・モンロー社長が大写しになっていた。
「これって......エリシアン・フィールズのチラシかな?」
「たぶんな。ここの下のところに切り取り線みたいなのがあるし」
二人でビラを眺めていると、家の中から男性が一人出てきた。片手になにかのチラシを持ってこっちに歩み寄ってくると、ポルカちゃんの手の中にあるビラを見て声を上げた。
「なんだ、もう持ってるじゃないか」
「え? ああ、フォーマンさん」
考え事をしていてその男性に気付いてなかったらしいポルカちゃんがそう言って、チラシを受け取った。
私も肩越しに覗き込むと、それはさっきの折り鶴とおなじエリシアン・フィールズ
ポルカちゃんは二枚のビラを見比べながら、呟くように言った。
「なるほどね、このビラか。どうもありがとうございました、フォーマンさん」
ポルカちゃんに、お隣さんのお庭にあった足痕と吸殻を見せてもらってから捜査用車に戻ると、無線機が雑音交じりに喚き立てていた。
「KGPLから各局、群衆整理の警察官が応援を要請しています。メルローズ・ヒル近い局、
私は助手席に乗り込むと、送話器を取って応答した。
「3キング11です、
「3キング11、群衆整理の警察官に合流してください。現場、ファウンテン通り5642番地、ファウンテン5642、ランチョ・エスコンディードです。
「3K11了解。ホーバート
「KGPL了解。以上KGPL」
無線と話してる間にポルカちゃんはハドソンのエンジンをかけると、路肩から離れてホーバート
「ランチョ・エスコンディードって言うとあれだな、確か今朝全焼したやつだな」
「白上も朝刊で読んだよ」
今朝のロサンゼルス・タイムズの記事を思い出しながら続ける。
「あれも郊外再開発基金が関わってるやつだよね」
「そうだな」
ポルカちゃんはちょっと間を置いてから、困惑しきった声で続けた。
「でもこれは関係なさそうな気もするけどな。ヴァーレイみたいなやつらに袖の下を払って、手抜き施工までして工期を守ったのに、完成間近の住宅街を焼き払う理由はねえだろ......」
「それはそう」
実際これが意図的な放火だとすれば、余計にわけがわかんなくなってきてしまう。住宅地を造るために既存の家を焼いて、そうしてまで造り上げた宅地を焼き払っちゃう? わけがわからない。
「とにかく、群衆整理の応援には行こう。頭数は多いに越したことはないでしょ」
緑のハドソンは群衆が詰めかけてるらしい住宅地に向かって、ウェスタン通りを北に驀進して行った。
「ポルちゃん、大丈夫?」
「あー......なんかデジャヴ」
思った通り、怒り狂った
「なんか......前もこんな感じでぶん殴られた気がする」
「そりゃードンマイ」
助け起こすと、ポルカちゃんはスカートをぱたぱたはたいてから言った。
「さーて、どうせここまで来たんだし、ちょっと焼け跡見て行くかあ」
「え、なんで......」
「フブちゃん、エリシアン・フィールズに突撃かましたいんでしょ?」
「うん、まあ」
「正直他に行くアテもねえしな。この焼け跡からヴァーレイが言ったような手抜き施工の痕跡が見つかったら、とりあえずモンローに投げつけるレンガが増えるだろ。この火事も案外、手抜き施工が原因かもしれねえし」
「それはそうだけど」
ポルカちゃんはなんだかウキウキした様子で焼け落ちた家に近寄ると、ちょうどそばに落ちてた煉瓦を手に取った。
「ほら、レンガが増えたぞ......お?」
「どしたの?」
明らかにふざけてその煉瓦を手に取ったらしいポルカちゃんは、一転して顔を曇らせるとしげしげと煉瓦を見つめた。
「これってモルタル・レンガだよな。それにしちゃ軽いような......」
「見して見して」
ポルカちゃんから煉瓦を受け取る。確かに軽い。それどころか、表面にセメントの粉が吹き出していた。
「このレンガ、粉吹いちゃってるね。火事でこんなことになるのって、よくあるの?」
「古い家なら、ままあるな」
手をはたいてセメント粉を落とそうとしながら、ポルカちゃんは続けた。
「でもここは新築の住宅地だからな。明らかに市の耐火基準を満たしちゃいないな」
そう言いながらポルカちゃんは、燃え落ちた家の一つの基部に歩み寄った。これと同じっぽいモルタル煉瓦を積んで造られたものだけど、ポルカちゃんが一発蹴りを入れると簡単にがらがら崩れてしまった。
「しかも壁繋ぎされてねえ。耐火基準だけじゃなくて、建築基準にも反してやがる」
「......手抜きってレベルじゃなくない?」
「この火事がなかったとしても地震が来たり、場合によっちゃちょっと強い風が吹いただけで、何軒か倒壊してたかもな。ひょっとして......」
ポルカちゃんはその先を言わなかったけど、私も同じことを考えた。手抜きどころじゃない家モドキを建てて予算をピンハネして、その証拠は落成の直前に焼いてしまう。そういう算段なのかもしれない。
「それなら一つ、腑に落ちることがあるな」
捜査用車に戻ると、ポルカちゃんはエンジンをかけながらそう言った。
「なあに?」
「放火の動機。住宅用地を確保するためなら、訴訟沙汰のリスクを回避するために金がかかってむしろ赤字だと思ってたけど、そもそも住宅を引き渡す気がないとしたら?」
「土地改良工事もおざなりで、ピンハネの対象かもね」
放火の動機ができてしまった。
「ただ、問題はあの怒れる
「それは......確かに」
とはいえ、これだけ状況証拠があれば十分だ。私たちが下手を踏まない限り、エリシアン・フィールズ
私は
「えっと......北オックスフォード通り478番地」
「よっしゃ」