H.L. Noire   作:Marshal. K

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A Polite Invitation #6

 

 

「KGPLから各局、警察官から応援要請。発砲あり。サウス・パーク地区近い局、どうぞ(アイデンティファイ)

 

 その無線が入った時、ちょうどあたしはユニバーシティ警察署からランパート警察署に向かっているところだった。助手席のダッシュ・ボードに手を伸ばして送話器を取り、応答する。

 

「5キング44です、どうぞ(ゴー・アヘッド)

「5キング44、警察官から応援要請です。発砲あり。現場、フィグエロア通りのヴェニス大通り(ブールバード)と17番街の間、ヴェニスと17番の間。被疑者は二名でいずれも武装しており、一名が民間人に対して継続して銃撃を加え、もう一名が警察官に抵抗しているとのこと。5K44、対処識別符号は3(コード・スリー)

「5K44了解。ヒル通りの30番と31番の間から急行します」

「KGPL了解。以上KGPL」

 

 送話器を戻しざま赤色投光器(スポットライト)とサイレンのスイッチを入れると、抗議の警笛(ホーン)の嵐を受けながら交差点を東に曲がって、30番街をフィグエロア通りの方へ驀進して行った。

 

 

 

 

 

 現着したときのあたしの気持ちを想像してみて欲しい。心臓がきゅうっと縮まって頭からざあっと血がひいて行くような、そんな感覚に見舞われた。それというのも、ヴェニス大通り(ブールバード)との交差点に近いフィグエロア通りの路上に、おまるんが血を流して倒れているのが目に入ったからだ。

 おまるんのすぐ傍らでは制服巡査が、誰かに覆いかぶさっているのが見える。そいつを捕まえようとしてるみたいだ。

 あたしは捜査用車から飛び降りると、おまるんに駆け寄りながら巡査の方に叫んだ。

 

「獅白刑事、保安風紀課(アド・ヴァイス)! そのまま続けて!」

「了解です、刑事!」

「おまるん! おまるん、大丈夫?」

 

 傷はそう深くなさそうだ。ただ出血が割とひどい。誰かが布切れで止血しようとした形跡があるけど、その仕事は未完了で止血できていない。

 

「し......しし、ろ......」

 

 失血して紫色から白になりつつある唇を開いて、おまるんが声を出した。

 

「黙ってて!」

 

 誰かの止血作業の続きをしながら、あたしはおまるんにぴしゃりと言った。おまるんが喋ろうとするたび、腕の傷口から血が流れるからだ。それにも関わらず、おまるんは続けた。

 

「あめりあ、を......に、がして......」

「何? 誰をって?」

「私! 私よ!」

 

 巡査に取り押さえられている女が声を上げた。後ろ手に手錠をかけられて、巡査の下でもがいている。

 

「黙れ! 刑事、こいつは適当言ってるだけですよ」

 

 女を立たせようとしながら、巡査がそう言った。その顔は見知った顔だった。ウィルシェア(ディビジョン)のレオン・テイト巡査。

 

「違うわ、私がアメリアよ。離して!」

「黙れ!」

 

 テイトが喚く女を、横向きに駐まっていたデソートの側面に叩き付けた。女の茶色いコートがはためいて、ブラウスの左袖が無くなっているのが目に入った。

 

 おっけい。

 

「テイト巡査、そいつはあたしが面倒みるから、あっちの巡査連の加勢に行って」

「え......いや、しかし」

 

 それで充分だった。

 そのこめかみにすばやく一発叩き込むと、テイトはひゅっと息を吐いて崩れ落ちた。

 

「あ、ありがと......」

「そのまま待ってて。すぐ戻るから」

 

 周りに他の警官はいなさそうだ。巡査たちに抵抗を続けている最後の一人を、さくっと片付けてしまおう。

 

 

 

 

 

「う......あ?」

 

 昏睡の底からゆっくりと浮かび上がってきた時、あたしは自分が舗道の上じゃなくて、シーツの上に寝ていることに気が付いた。

 視界が像を結んで、清潔そうだけど見覚えのない部屋が浮かび上がった。

 

「お、気が付いた?」

「......フレア?」

 

 脳味噌の回転はまだ遅くて、フレアをフレアと認識するのに時間がかかった。

 ベッドの脇の椅子で書類を読んでいたらしいハーフ・エルフに、手を上げて挨拶をしようとした瞬間、左腕から稲妻のような痛みが走って、あたしは悲鳴を上げた。

 

「あぁっ!」

「まだ動かしちゃダメ!」

 

 フレアがぴしゃりと言う一方で、あたしの脳は痛みをきっかけとしてようやく回転を始めた。

 

「フレア......アメリアは、アメリアはどうなった?」

「落ち着いて、ワトソンさんは生きてるから」

 

 興奮して上体を起こしたあたしをなだめるようにそう言って、フレアはあたしの背を枕に戻させた。

 

「獅白刑事が事務所まで送って行ったよ。ここに置いておくのは危険だし」

「ここって......ここどこ?」

「ランパート救急病院」

「ああ」

 

 ランパート警察署に隣接する救急病院だ。

 

「そっか......テイトがあんな行動をとった以上、警察署はもう危険か」

「たぶんね」

「お、おまるん起きた?」

 

 病室の入り口を振り向くと、そこに獅白が立っていた。

 

「獅白。アメリアは?」

「事務所まで送ってきた」

「そうじゃなくてな、あいつ狙われてんだぞ」

 

 あたしとしては、獅白に張り付いていて欲しいところだった。そう言おうとしたのを遮って、獅白は病室に入ってきながら続けた。

 

「あたし初対面だし、まだおまるんほど信頼されてないみたいよ? 腕っぷしの強いお隣さんがいるからって、帰されちゃった」

「でも......」

「それにおまるん、自覚ないみたいだけど、狙われてるのはおまるんもだよ?」

「え?」

 

 実のところ、自分も狙われてるってのはなぜか盲点だった。すでに襲われて脅されてる以上、向こうが躊躇する理由なんて何一つないのに。

 それに気付いて動揺してるあたしを意に介さず、獅白は廊下の方を指して続けた。

 

「何にしても、おまるんに電話がかかってるんだって。昇降機(エレベーター)ホールの公衆電話で取るようにって、衛生主任から伝言」

 

 タイミングが良すぎて、嫌な予感しかしなかった。

 

 

 

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