「KGPLから各局、警察官から応援要請。発砲あり。サウス・パーク地区近い局、
その無線が入った時、ちょうどあたしはユニバーシティ警察署からランパート警察署に向かっているところだった。助手席のダッシュ・ボードに手を伸ばして送話器を取り、応答する。
「5キング44です、
「5キング44、警察官から応援要請です。発砲あり。現場、フィグエロア通りのヴェニス
「5K44了解。ヒル通りの30番と31番の間から急行します」
「KGPL了解。以上KGPL」
送話器を戻しざま赤色
現着したときのあたしの気持ちを想像してみて欲しい。心臓がきゅうっと縮まって頭からざあっと血がひいて行くような、そんな感覚に見舞われた。それというのも、ヴェニス
おまるんのすぐ傍らでは制服巡査が、誰かに覆いかぶさっているのが見える。そいつを捕まえようとしてるみたいだ。
あたしは捜査用車から飛び降りると、おまるんに駆け寄りながら巡査の方に叫んだ。
「獅白刑事、
「了解です、刑事!」
「おまるん! おまるん、大丈夫?」
傷はそう深くなさそうだ。ただ出血が割とひどい。誰かが布切れで止血しようとした形跡があるけど、その仕事は未完了で止血できていない。
「し......しし、ろ......」
失血して紫色から白になりつつある唇を開いて、おまるんが声を出した。
「黙ってて!」
誰かの止血作業の続きをしながら、あたしはおまるんにぴしゃりと言った。おまるんが喋ろうとするたび、腕の傷口から血が流れるからだ。それにも関わらず、おまるんは続けた。
「あめりあ、を......に、がして......」
「何? 誰をって?」
「私! 私よ!」
巡査に取り押さえられている女が声を上げた。後ろ手に手錠をかけられて、巡査の下でもがいている。
「黙れ! 刑事、こいつは適当言ってるだけですよ」
女を立たせようとしながら、巡査がそう言った。その顔は見知った顔だった。ウィルシェア
「違うわ、私がアメリアよ。離して!」
「黙れ!」
テイトが喚く女を、横向きに駐まっていたデソートの側面に叩き付けた。女の茶色いコートがはためいて、ブラウスの左袖が無くなっているのが目に入った。
おっけい。
「テイト巡査、そいつはあたしが面倒みるから、あっちの巡査連の加勢に行って」
「え......いや、しかし」
それで充分だった。
そのこめかみにすばやく一発叩き込むと、テイトはひゅっと息を吐いて崩れ落ちた。
「あ、ありがと......」
「そのまま待ってて。すぐ戻るから」
周りに他の警官はいなさそうだ。巡査たちに抵抗を続けている最後の一人を、さくっと片付けてしまおう。
「う......あ?」
昏睡の底からゆっくりと浮かび上がってきた時、あたしは自分が舗道の上じゃなくて、シーツの上に寝ていることに気が付いた。
視界が像を結んで、清潔そうだけど見覚えのない部屋が浮かび上がった。
「お、気が付いた?」
「......フレア?」
脳味噌の回転はまだ遅くて、フレアをフレアと認識するのに時間がかかった。
ベッドの脇の椅子で書類を読んでいたらしいハーフ・エルフに、手を上げて挨拶をしようとした瞬間、左腕から稲妻のような痛みが走って、あたしは悲鳴を上げた。
「あぁっ!」
「まだ動かしちゃダメ!」
フレアがぴしゃりと言う一方で、あたしの脳は痛みをきっかけとしてようやく回転を始めた。
「フレア......アメリアは、アメリアはどうなった?」
「落ち着いて、ワトソンさんは生きてるから」
興奮して上体を起こしたあたしをなだめるようにそう言って、フレアはあたしの背を枕に戻させた。
「獅白刑事が事務所まで送って行ったよ。ここに置いておくのは危険だし」
「ここって......ここどこ?」
「ランパート救急病院」
「ああ」
ランパート警察署に隣接する救急病院だ。
「そっか......テイトがあんな行動をとった以上、警察署はもう危険か」
「たぶんね」
「お、おまるん起きた?」
病室の入り口を振り向くと、そこに獅白が立っていた。
「獅白。アメリアは?」
「事務所まで送ってきた」
「そうじゃなくてな、あいつ狙われてんだぞ」
あたしとしては、獅白に張り付いていて欲しいところだった。そう言おうとしたのを遮って、獅白は病室に入ってきながら続けた。
「あたし初対面だし、まだおまるんほど信頼されてないみたいよ? 腕っぷしの強いお隣さんがいるからって、帰されちゃった」
「でも......」
「それにおまるん、自覚ないみたいだけど、狙われてるのはおまるんもだよ?」
「え?」
実のところ、自分も狙われてるってのはなぜか盲点だった。すでに襲われて脅されてる以上、向こうが躊躇する理由なんて何一つないのに。
それに気付いて動揺してるあたしを意に介さず、獅白は廊下の方を指して続けた。
「何にしても、おまるんに電話がかかってるんだって。
タイミングが良すぎて、嫌な予感しかしなかった。