「KGPLから各局、サムナー巡査が
ポルカちゃんからの電話を受けて、雨水渠の放流路に向かうためにハドソンの捜査用車に乗り込むと、早くもKGPLが緊迫した声で指令を飛ばしていた。署の電話交換室か、電話会社の誰かがあの電話を聴いていたらしい。
雨の降りはじめた3番街を東に飛ばす間にも、警察無線が喋り続けている。
「被疑者は現在、自動車でサンセット
「くそ、早くポっちゃんのところに行かないと......」
市警の
そんなわけで、今の市警察官たちは汚職への関与の有無にかかわらず、ポルカちゃんを捕まえようとするだろう。いや、捕まえるどころじゃすまないかも。
「白人の名士に牙を剥いた獣人......"殺処分"されても全然おかしくない状況だ」
「KGPLから各局、6A86号車が追跡中の187PC被疑者について、銃火器の発砲を報告。対処各局にあっては受傷事故防止に最大限配慮するとともに、被疑者を可及的速やかに制圧されたい。
「それはまずいよ、ポルカ......」
思わず私はそう呟いた。いや、本当にポルカちゃんが発砲したのかはわからないけど、いまの指令で警官たちの引き鉄が一段と軽くなったのは間違いない。
緊急走行でウェストレイクを駆け抜ける間に、雨が降り出した。今から向かう先を考えれば、いい兆候とはお世辞にも言えない。
ハドソンのお尻を振ってフィグエロア通りに曲がったところで、警察無線が再び喋り出した。
「KGPLから各局、6A86号車が追跡中の187PC被疑者について、警察局長が射殺許可を発令。被疑者は銃器による抵抗を行っており、非常に危険。反復、非常に危険。対処各局にあっては、被疑者の可及的速やかな拘束または射殺にあたられたい。以上KGPL」
目の前、フィグエロア通りとサンセット
「見つけた!」
私はハドソンを右折させると、アクセル・ペダルを思いっきり踏み込んで急加速させて、追跡集団の中にしれっと紛れ込んだ。
どの車両にも二人以上の警官が乗っていて、助手席で箱乗りしている警官たちが、逃げるキャデラックに拳銃弾を浴びせている。一方でポルカちゃんからの反撃はなかった。たぶん、運転に精いっぱいで反撃する余裕なんかないんだろう。
私はパトカーの間を縫って位置を上げると、集団の二台目に着いていた護送トラックに並んだ。
「よーしよし......ここだぁ!」
サンセット
これでキャデラックを追うのは、ビュイック・スーパーの捜査用車一台になった。
「KGPLから各局、ロッシ刑事が148被疑車両を報告。187PC被疑者ポルカ・オマルの追跡を妨害しています。被疑車両は48年式ハドソン・コモドール、色は緑。登録番号が、3-
「うわっ!」
さっそくビュイックの箱乗り刑事から、こっちにも拳銃弾が飛んできた。
「こんにゃろう!」
助手席に置いておいた
「KGPLから1アダム66、並びに1アダム77。1番とアラメダの角に急行せよ。KGPLから1ウィリアム19、1番とビンズの角に急行せよ。受令各局にあっては現着後、速やかに道路封鎖にあたられたい。
アラメダ通りとブルックリン通りの角には、すでに道路封鎖が敷かれていた。木製のバリケードの向こうから、制服巡査たちが
巡査たちは文字通りトミーガンを乱射していて、私のハドソンどころかビュイックにまで銃弾を浴びせていた。ビュイックの運転者は運が悪かったらしく、捜査用車はスピンして濡れた路面を横滑りすると、封鎖に使われてた護送トラックに激突して大破した。
私と私のハドソンは、ポルカちゃんとキャデラックが無理矢理押し広げて通り抜け、ビュイックの衝突でさらに広がった護送車の隙間から、封鎖を抜けてアラメダ通りを下ると、キャデラックの後を追ってテンプル通りへと左折した。
「KGPLから各局、逃走中の車両、黒のキャデラック、並びに緑のハドソンについて、警察局長が射殺を命令。反復、射殺を命令。該車両群はいずれも、公共の秩序と警察官の安全に著しい脅威を与えており、直ちに制圧する必要がある。本指令傍受各局は、これらの車両の運転者及び同乗者を直ちに射殺し、速やかに状況を収拾されたい。これは警察局長命令である。以上KGPL」
まるで銃口を突き付けられながらしゃべっているような、切迫した指令員の無線指令をよそに、テンプル通りを走る私たちの自動車を邪魔するものはもう無かった。
ポルカちゃんは何らかの手段で警察無線を聞いているのか、道路封鎖が準備されてるビンズ通りを避けて一本先のセンター通りに向かうと、1番街橋の下の放流路を目指し始めた。目的地はもう、すぐそこだ。