H.L. Noire   作:Marshal. K

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A Different Kind of War #7

 

 

 ロサンゼルス川の河川敷を走って行くと、1番街橋の下、放流路のところに二台の自動車が停まっているのが見えた。片方は青いリンカーン・コンチネンタル、もう片方はフォードのパトカーだ。そのそばで市警の婦人用制服に身を包んだ巡査が、背広姿の男に拳銃を向けていた。

 パトカーの前照灯(ヘッドライト)に照らされたその様子を見て、あたしはキャデラックに急ブレーキをかけて止めると、慌てて飛び出して叫んだ。

 

「待ったラミィ、撃つな、撃つな! そいつは味方だ!」

 

 あたしの同期でハリウッド署保安巡査の雪花ラミィは、雨に濡れた制帽の庇の下からあたしに目を向けて、拳銃はまだ下ろさずに訊いてきた。

 

「味方? この人は大丈夫な人なの?」

「そうだ、とりあえずは。こいつがいないと、ポルカたちはどうやっても八方塞がりだ。来てくれてありがとうございます、地方検事補」

 

 濃紺の背広姿のピーターセン検事補は、特に気分を害した様子もなく手を下ろした。

 

「なに、状況が状況ゆえに構わんよ。とはいえ何と言うか......君に嵌められたような気分だがね」

「間違ってませんよ、ポルカはあんたを嵌めましたから」

「ポっちゃん!」

 

 キャデラックの後ろに停まったハドソンから、フブちゃんが降りてこっちに走ってきた。

 

「フブちゃん、こっちだ。この地図を、放火犯の家で見つけたんだ」

 

 書き込みのびっしり入った雨水渠の設計図を見せて続ける。

 

「この奥にいるのは間違いないと思う。ポルカとフブちゃんでこっから入ろう。こっちの出口はラミィに塞いどいてもらう。ヤツが逃げるなら、ここからしかないからな。ラミィ、獅白は?」

「アパートでねねちゃんと一緒にいるよ」

「よかった」

 

 それを聞いて安心した。

 コーエン・ギャングは契約を守る。あたしがそれで止まろうが止まるまいが、この状況なら確実に、ねねを殺すって脅しを実行しようとするはずだ。つよつよライオンがこの場にいないのはちょっぴり不安だけど――本人には絶対言わねえぞ、くそ――、ねねのことを心配する必要が無いのはいい。

 

「じゃあラミィ、出口の方は頼んだ。センターとジャクソンの角辺りだと思う」

「わかった......おまるん、死なないでよ」

「ポルカより獅白の心配してろよ、あいつは単独なんだから」

「そっちは言われなくてもしてますぅー。おまるんはオマケよ」

 

 ラミィは冗談めかしてそう返すと、最後に真剣なまなざしを一瞬だけ投げて、パトカーに乗って走り去って行った。

 

「よし、行くぞフブちゃん。ピーターセン、ここは任せましたよ。地方検事になりたいんでしょ?」

「その場を動くな!」

 

 フブちゃんが乗り捨てたハドソンの後ろに、47年式ビュイック・ロードマスターの警察公用車が停まり、降りてきた男たちが口々に制止の言葉を発し始めた。あの公用車を使える警官は数えるほどしかいない。

 

「ここがあんたの、政治手腕の見せ所ですよ。それじゃ」

 

 追っかけ回されることはわかりきっていた。だからこいつを呼んどいたんだ。地方検事になりたいピーターセンは、ここを生きて出なけりゃいけない。危険だけど、代わりにあたしたちの存在を強力なカードとして使うこともできる。

 あたしたちと違ってピーターセンは有名人だし名士だから、そう簡単に射殺して葬り去ることもできない。これがまあ、言ってしまえばあたしの保険だ。

 

 

 

 

 

「つまり? 彼女たちは君の部下と、そう言うわけかねピーターセン?」

 

 ビュイック・ロードマスターの公用車から降りた男たちの内、市警の幹部用制服に身を包んだ初老の一人が、前照灯(ヘッドライト)の光を遮るように立ってピーターセンに声をかけた。後ろから射す光を受けて、両肩の三ツ星が銀色に光る。

 

「ええそうです、ウォーレル局長」

「君はこの件について、どこまで追及するつもりかな?」

「もちろん、行き着くところまでです」

 

 M1短機関銃(トミーガン)M37速射散弾銃(イサカ)の銃口を向けられているとは思えないほど自信に満ち溢れた笑顔を向けて、ピーターセンは朗々と答えた。

 

「とことんまで追及しますよ。巻き込まれないといいですな、ウォーレル局長」

「可能だと思うかね? 言うまでもないが、雨水渠の放流路はここだけではないぞ。そして彼女らを追う警官も、後ろにいる二人だけではないのだ」

 

 ビュイック・スーパーの捜査用車が二台、サイレン音も高々にブルックリン橋へと向かっていくのを、ピーターセンは土砂降りになった雨越しに見た。そちらの放流路へと向かうのだろう。

 

「彼女たちが生きて戻ってくると、本気で思っているのかね?」

「ええ、思っていますよ。彼女たちはヘタなタフ・ガイ気取りよりも、よっぽどタフでしょう」

「よろしい、ピーターセン」

 

 ウォーレルが合図すると、後ろに控えていた二人の私服刑事が銃を下ろした。彼は腕を組み、ゆったりとピーターセンに歩み寄って言った。

 

「話を聴こうじゃないか。君の条件は、何かな?」

 

 

 

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