H.L. Noire   作:Marshal. K

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Armed and Dangerous ~Interval~

 

 

「KGPLから各局、ウェストレイクで211事案発生。発砲の報告あり。対処識別符号は3(コード・スリー)。ウェストレイク近い局、どうぞ」

「そんなに離れてないね」

 

 フブキがそう言って、無線電話の送話器に手を伸ばした。

 

「無線14号車は6番とウィットマーの角から」

「KGPL了解。場所、西3番街1450番地、西3番1450。ウェストレイク貯蓄融資銀行です。無線14は対処識別符号3(コード・スリー)、他の局は対処識別符号2(コード・ツー)で対処してください」

「無線14了解」

「無線14、被疑者は武装しており危険(Armed and Dangerous)です。受傷事故防止に努めてください。以上KGPL」

 

 フブキが送話器を置きながらスイッチを弾いてサイレンを鳴らす。

 ウチは一気にアクセルを踏み込んで、ウィットマー通りを北に驀進した。とろとろ走るクライスラーを回り込んで追い越し、3番街との角を右折する。

 ちょっと走ると、くだんの銀行の前に自動車が何台も駐まっているのが見えた。

 

 バギャン!

 

「うわあ!」

「うひゃあ!」

 

 フブキと一緒に、頭をダッシュボードの下にさげる。銃弾が飛んできてボンネットに着弾したんだ。

 エンジンのどこかに当たったらしく、もともとポンコツなエンジン音が一気に悲鳴のように高くなる。

 

「ミオ、そこのピックアップの後ろに!」

「わかってる!」

 

 銀行の正面の反対車線に放置された、シボレーのピックアップトラックを盾にするように走らせる。

 強盗達はオンボロフォードがピックアップの陰に走り込むまでに、さらに二発の命中弾を出した。うちの一発がフブキの側のサイドウィンドウを粉々にして、フブキに滅多にしない舌打ちをさせた。

 

「いくよミオ!」

 

 パトカーが停まるなり、フブキはすぐに飛び出してピックアップのエンジン部を盾にするように隠れた。

 

「ちょっと待って!」

 

 ウチもパトカーを飛び出すと後ろに回ってトランクを引き開ける。中には折りたたまれた現場保存バリケードや救急箱なんかが入っているけど、それを押しのけて一丁の銃を手に取った。

 イサカM37、12(ゲージ)のポンプ式速射散弾銃(ショットガン)

 00(ダブルオー)鹿撃ち散弾(バックショット)の薬包を目いっぱい装填して、さらにひとつかみ分をポケットに突っ込む。

 ピックアップの運転台を盾にフブキに近づくと、フブキは耳の先をちょっとボンネットから出した。銃声がするとすぐに引っ込めて、相手が撃ち止んだスキをついてコルトの38口径警察標準リボルバーをボンネットの上に突き出して三、四発撃つ。

 悲鳴と悪態、人が倒れる音が聞こえて、フブキが見事に一人撃ち倒したことがわかった。

 ウチも負けてられない。

 

「くそっ!」

 

 もう一人がマグナムの再装填のために屈みこむのを音で確認すると、フブキに合図してからぱっと飛び上がってピックアップの運転台の上に乗った。さらに大きく跳んで、そいつが盾にしてるビュイックのクーペを跳び越す。

 そいつが影に気付いて顔を上げた瞬間、ウチは至近距離から一発お見舞いした。顔面と肩に散弾(ペレット)をたっぷり喰らったそいつは悲鳴も上げずに倒れ込んだ。

 フブキが脇から回り込んで、銀行の窓からウチの着地を狙っていた一人を拳銃で撃ち倒す。

 

「いいなー、白上ショットガンにしとけばよかった」

「そうだねえ、ウチもうあんなの至近距離で見たくないよ」

 

 玄関脇の柱に二人で左右に分かれて隠れると、軽口をたたいた。

 ズタズタになった銀行強盗の顔面を努めて忘れるようにして、声を張り上げる。

 

ロス市警(LAPD)だ、武器を置いて投降しろ!」

 

 タイヤを鳴らしてもう一台のパトカーが停まるのを確認して、フブキが付け加える。

 

「この銀行は包囲されている! 投降するなら......」

「ポリ公に投降なんかするもんか!」

 

 フブキが言い終わるより先に、銀行の奥から答えが返ってきた。

 

「ちょっとでもこっちに近づいてみろ、これで真っ二つにしてやるぞ!」

 

 言うなり大きな銃声がして、柱のコンクリートが大きくえぐれた。さらに連続した銃声が響いて、ウチたちの周りの窓ガラスが次々と割れていく。

 

「トミーガンかな」

「ショットガン持ちも一人いるみたいだねえ」

 

 簡単に近づけなくなったね、と顔を顰めたフブキに言う。

 

「それでも、これくらいなら」

 

 言うなりフブキが角度をつけて拳銃を突き出し、行内に二発撃った。

 ギャーッという悲鳴とショットガンの大きな音がして、照明が粉々に砕けた。音だけでショットガン持ちを撃ち倒したらしい。

 

「あとはトミーガンなんだけど、どうも奥の方にいるみたいで......」

 

 フブキの声を遮って連続した銃声が鳴り渡って、ウチたちの周りにコンクリートの破片や火花がたくさん舞い散った。

 

「......リボルバーじゃしんどいかな」

「ショットガンも遠そうだねえ」

 

 手をこまねいていると、巡査の一人が窓の下を這ってやってきた。

 

「さっき逃げてた行員に聞いたんだが、裏口を開けっぱなしにして出てきたらしい。二人で裏に回ってくれるか。こっちは俺たちが気を引いてるから」

「わかった」

 

 相手が装填のために撃ち止んだ瞬間を見計らって、ウチとフブキは後から来た巡査に場所を譲った。

 横手の路地に入って裏口を目指す。巡査たちが撃ち始めて、トンプソンが応射する銃声が聞こえてくるとフブキが言った。

 

「派手にやってんねえ」

「急がないと、さっきの人たちもやられちゃいそうだよ」

 

 裏口は確かに、大きく開け放たれていた。あのトミーガン持ちが最後の一人らしく、見張りらしい人影もない。

 姿勢を低くしたウチの後ろから、拳銃を構えてフブキが続く。

 

(いた)

(いたね)

 

 最後の男がカウンターの下に隠れていた。こちらからは丸見えなんだけど正面玄関の巡査たちに気を取られているようで、こっちには目もくれない。

 手早くフブキと合図を交わすと、フブキが天井に向けて一発発砲した。

 

ロス市警(LAPD)だ! すぐに銃をお......」

 

 銃声とフブキの声で男が咄嗟にトミーガンの銃口をこちらに向けようとする。

 その動きを見るなりウチはギリギリまで引いていた引き鉄を、一気に引き絞った。

 

 

 

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