Repair! ~TS転生して奴隷になったけど、日本に戻れました~   作:豊科奈義(旧名:焼ききゅうり)

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エピローグ

 十二年が経った。

 安積県から遠く離れた所にある刑務所を、一人の男が敷地外へと出た。樹であった。映画やドラマで見るような、「戻ってくるなよ」の声がかけられるのかと思いきや実際にはかからなかったが落胆するほどのことでもない。

 そもそもの話、樹はこんな余計なことを考えている余裕などなかった。

 樹が逮捕されてからも月二回程度はヘムカからの手紙が届いたのだが、最近は手紙が来ず最期に来たのは三ヶ月も前。

 

「ヘムカ、来てくれるのかな……」

 

 思い出すのは、樹がヘムカに自分自身の過去を全て打ち明けた時にした約束。出所したら迎えに来るというものだった。

 期待半分不安半分で塀の外へと出たものの、近くに人の姿は見当たらない。

 大きくため息をつき、仕方なく握りしめている作業賞与金で帰路に就こうと歩き始めた。

 しかし、突如として黒い高級車が反対側から走ってきた。そして、樹の近くの路肩に停車する。

 何事かと思い樹はその車を不審そうに見るが、その中からフードを深く被った人物が現れる。身長は百五十センチ後半。薄っすらとフードの隙間から見えた顔も、黒いサングラスにマスクでよく見えない。怪しさ満点だ。

 

「誰ですかあなた……?」

 

 樹は思わず声をかけた。

 

「大丈夫?」

 

 樹が警戒態勢をとっているのは全て目の前の人物が原因だ。そんな事言われる筋合いなどない。

 しかし、その声は聞き覚えがあった。

 

「まさか……?」

 

 樹がとある可能性を思い描くと、マスクの上からでもわかるような笑みを浮かべる。

 

「ああ、そうだよ」

 

 フードの人物がそう言うと、サングラスを取り、マスクを取り、最後にフードを取った。

 

「待ってたよ。佐藤さん」

 

 フードの人物、ヘムカは樹の顔を下から覗き込み小悪魔的な笑みを浮かべる。そして、首元には枷はない。

 

「ヘムカ……ヘムカなのか……?」

 

 樹は涙を浮かべ嬉々としながら確認する。

 

「そうだよ。ずっと待ってたんだよ。とりあえず、車に乗って」

 

 ヘムカは樹の腕を掴むと強引に高級車の助手席に乗せた。

 

「この車、ヘムカの?」

 

 樹からしてみれば、あのヘムカがこんな高級車を乗り回しているとは思えなかった。

 

「レンタカーだよ。さすがにそんなお金はないからね。じゃ、シートベルトしてね。じゃないと、道交法違反だから」

 

「ヘムカ、それは僕に対する嫌味かい?」

 

 おとなしく樹はシートベルトをつける。

 

「……何年待たされたと思ってるの? いいでしょ、そのくらい」

 

 ヘムカは十二年間、ずっと待っていたのだ。

 その思いを考慮すれば、樹も何も言えなかった。

 

「そうだったな。ところで免許いつ取ったんだ?」

 

「この前取ったよ。ほら」

 

 ヘムカは財布の中から自動車運転免許証を取り出し、樹へと渡す。

 ヘムカの言った通り、免許証の左下にある取得日時には先日の日付が書かれていた。

 

「証明写真も狐耳なんだな……。旗峰?」

 

 樹がヘムカの免許証を感慨深く眺めているが、氏名欄を見て思わず声を出してしまう。

 そこには、氏名:旗峰ヘムカと書かれていた。

 

「旗峰ヘムカか……。名字はどうやって?」

 

 どのように名字が決まったのか。そんな思いから樹はヘムカに聞いてみる。

 

「旗峰家に養子に入ったんだ。元県知事の」

 

 その言葉を受けて、ヘムカと以前交わした約束を思い出す。そう、結婚の約束であった。

 結婚をするためには、元県知事に対して直談判しなければならない。そう思うと、愕然として震える他なかった。

 

「……そうか。そういえば、今からどこに行くんだ?」

 

 とりあえず元県知事のことを忘れようと、話を帰る。

 

「どこってそりゃ、私の家。つまり、旗峰家だよ?」

 

「……元県知事と会うのか」

 

 樹は軽く絶望しながら頭を抱える。

 

「大丈夫だって、私が養子になってすぐに選挙で落ちやがったからね。その影響でだいぶ謙虚になってるから大丈夫だよ」

 

 養子とはいえ親の落選を笑いながらヘムカ。そこまでいうのであればそうなのだろうと、樹の気はだいぶ楽になった。

 

「ヘムカがそういうなら」

 

 樹が了承すると、ヘムカの車は勢いよく走り出した。

 

 

「あれから十二年ですか……」

 

 同時刻、ヘムカが元いた世界。

 ライベの邸宅に一人の男がいた。もちろんライベである。

 机の上には、読み尽くされた医学書が置かれておりその隣には訳された文章が綺麗に置かれていた。

 

「それにしても、まさか前回の実験は失敗でした。なにせ、世界に歪みが生じてしまうとはね。おかげで奴隷を失ってしまいました。今度は歪を生じない程度に実験しませんとね……」

 

 十二年前に発生した歪の原因、言わずもがなライベの実験が原因だったのだ。多少後悔はしているものの、それほど後悔はしていないライベは独り言を呟きながら別の部屋へと移動する。そこには、狐耳としっぽのある亜人が拘束されており、亜人は必死に抵抗するも拘束が固く微動だにしない。

 

「さて、実験を開始しましょうか」




 今回を以て完結です。
 いろいろと言いたいことはあると思います。
 妹いらなくね? とか。作者も書いてて思いました。

 作者は長編が苦手で、これでも作者が書いてきた小説の中では最大の文字数です。至らない点はあったかと思いますが、次回作以降に反省点を活かしていく所存です。

 本作は元々、異世界から帰ってきたTSっ娘が男と延々とイチャコラしまくる糖分たっぷりのあまあまな小説を書こうと思って書き始めました。
 しかし、道を間違えるどころか道なき道を走り始めてしまい全体に渡って暗澹たるファンタジーミステリー作品となってしまいました。
 さすがにこれでは構想と大きく違うと思い、大幅に書き直しあれでも頑張って糖分を増やしたのです。
 次回作については、無駄なミステリー要素を排除し人間関係に重きを置いた作品を作りたいと考えています。
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