これからこっちでも出して行こうと思います。今後ともヨロシクお願いします!!
「遥先輩…エネ…皆…アヤノ…」
何回でも見ていた。凶弾に殺される仲間。
嬲り殺しにされる誰か、
身を投げた少年、トラックに轢かれた少女。
ハサミで喉を切り刻んだ自分。
誰か彼が死んでいた。断片しか見えていなかったけれど。
それは確かに意味があった。
「なんだよ……これ……何なんだよ。」
ボロ臭くて何処か暖かったアジトは魑魅魍魎が跋扈する地獄と化していた。
床には血や誰かの内臓が転がっている。俺も床に倒れているのでべったり血がついているだろう。ソファーで隠れて見えないがおそらく誰かの死体も転がっている。
「?何って死体だよ?見てわかんないの理解力ないなぁ。」
端正な顔だがそれに見合わないツギハギ。服は一枚の布のような何かローブのようなものを着ている。少なくとも人間じゃない。
このアジトの惨状と比べても勝る圧倒的恐怖。
俺は腕や足を折られながらもなんとか生きている。
………いや言い方を変えよう。今なぜか生かされている。
だがこんな事をするのは一人しか思い当たらない
「……冴えるか?誰からだ?」
「?」
「……お前にここの情報を……教えた野郎のことだっ……よ」
「冴えるってのはよくわかんないけど…。まぁ俺の仲間かな。面白い魂があるからって言われてさ。」
「面白い魂?」
何いってんだこいつ?魂。よく中学生のときに妄想してそうな用語が飛び出していた。少なくとも冴えるじゃない?
どこまで行っても邪悪さがしかないと思っていたが…無邪気という感想が浮かんできた。
「驚いたよ。まさか目の中に魂があるなんて。俺生まれたばっかだからかな?そんなに人間見てこなかったけどここまで魂の比重が傾いてる奴ら始めてみたよ。」
「!」
「どうやったのか気になるなー。でも流石に長く居座るとばれちゃうし。」
「君知ってる?」
首を振る。情報を喋っても殺されるだけだ。
「じゃあしょうがないかな。でもわかりそうな奴ら全員殺しちゃったし。」
「だったら……逃げたらどうだ?」
助かるのか?見逃して……
そう思った矢先こいつは俺の体に触れた。その時唐突に当たり前のことに気づいた。
俺はこいつに無邪気さを感じていた。がそれが間違いであったと確信する。
確かに無邪気は存在した。
だがそれは何処までも空虚で何処までもドス黒い。
それをこいつの愉悦の極まれりという顔が何よりの証明だった。
「なわけ無いじゃん。」
『無為転変』
それは何をされたか俺にはわからなかった。手で触れられただけ。確かにそれだけだ。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ ?」
痛い痛い痛イイタイイタイイタイイタイイタイイタイ
何か異物自分の中に入ってきたようだ。自分の体が全力で拒否している。
あいつが毒物でも入れたのか………
いや触れただけだ。触れただけで個々まで拒絶反応が起こるなんて一体何をしたんだ?
「俺の術式お前らと相性悪いんだよね。普通は即死なんだけど前言ったみたいに魂が特殊すぎるせいでさ。結構意識が残るんだよね。」
ベラベラを聞かされていないことを喋る。
「君はちっちゃくして実験したあとはそうだなぁ。ペットにでもして遊ぼうかな……。ねぇ君はどうしたい?」
「げぁ……あがぁ…」
「あっごめんごめん。もう喋れないか。」
死ぬ。そう感じた。
自分の意識が抜けていく。溶けていく。自分の頸動脈を掻っ切ったときと似たような感覚だ。
触れられた瞬間から朧げにしか見えていないがこの何かを全力で睨みつけた。こいつの姿を焼き付ける。俺にはそれだけのことしかできない。
「…いいねその目。人間の目だ。何もできやしない人間ゴミムシの。そういえば最初に殺した女もそんな目してたっけ?まぁいいや。」
「気に入った。」
『無為転変』
「君は殺さないであげるよ。」
「君達の目は本質的に人間の目とは違う。所謂、特級呪物みたいなものだよね。それによって命を得ている。どんな術式なのかはわかんないけど。」
「それを無理矢理複雑に混ぜ込めばどうなるのか。君の人格が死ぬか、君の人格が残ってこのあとの地獄を見ることになるのか。」
「精々俺たちを楽しませてよ。」
もう何を言っているのかも聞こえなかったが。
何処かで
「シンタローばっかりに苦労させてごめんね。」
と声がした気がした。
記録______2018年4月
千葉県柏市 ■■裏路地
107号
特級受肉体(名称不明)
受肉体発生地付近に結界が発生。
その結界は現場に駆けつけた補助監督と術師が目視で確認された。
二級の数名の術師が滅殺しようと試みるも撃退される。
これを重く見た上層部は特級術師五条悟を派遣し抹殺を命じた。
しかし特級受肉体は五条悟の独断によって滅殺されずに捕獲されることになる。
この後も五条悟による根回し交渉により特級受肉体は高専へと入学する。
シンタローくんはこれからたくさんの苦悩を背負っていきます。頑張れーー。