〈凍結〉TALES of ARISE 〜繋ぐ花〜   作:雨漏り

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 どうも、雨漏りです。今後の展開を考えながら書いてたら遅くなってしまいました。戦闘シーンが難しいですね。何かのっぺりした感じになってしまいました。


第四話

 

 ふと気がつくと暗い、先の見えない空間にただ一人佇んでいた。辺りを見渡しても何処までも続く闇があるだけのようだ。何故か、足元のみは僅かに光っているが。

 

ーーここは一体?

 

 不思議に思いながらも歩き出す。歩いていると少し先に僅かに白い光が見えた。その光に近づくとその光広がり形を作り出した。

 

『初めまして、No.一七二。私は貴方のお世話をする事になったアンナ・ルファリスよ、これからよろしくね』

『No.一七二……、いつまでもこの呼び方だと良くないかしら。そうね、……リアン、リアンってどうかしら、貴方はどう?そっか、改めてよろしくね、リアン』

 

 それは、まだ小さい頃の自分と出会ったばかりの頃のアンナの姿だった。

 

ーー随分、懐かしいな

 

 そう思いながらその光景を見続ける。だが、先程までは闇しかなかった空間が明るくなってきていることに気づく。

 

『えっ、名前の意味?リアンって言葉に…ね………て言……意………』

 

 明るくなるにつれて会話の内容が聞こえづらくなってくる。そして、視界の全てが光に包まれた。

 

 

 

 

 目を開ける。

 

「夢か……、ここは?」

 

 体を起こし辺りを見回す。ここは兵士たちの宿舎か?……あぁそうか。昨夜の戦闘の後、私は気を失ったのか。自分の状況を確認していると一人の兵士が此方に話しかけてきた。

 

「リアン様、目を覚まされましたか」

「ああ、私はどれくらいの間眠っていた?」

「およそ半日といったところでしょうか」

 

 半日、随分長い間眠っていたものだ。

 

「すまない、迷惑をかけてしまった」

「いえ、リアン様が星霊術によって迫る炎を防いでくださった為、私と後二人生き残ることが出来ました。この程度のことであれば当然のことです」

 

 三人だけとは言え、あの炎から守ることが出来たと思い安堵する。

 

「私が眠っている間に何かあったか?」

「はい、ビエゾ様より命が下り"モスガル周辺のダナ人を始末せよ"、と」

「始末?どう言うことだ」

「おそらく見せしめとして。シオンが連れ去られたのもモスガル近辺での事でしたので。

 ただ、仮面の男達が現れ此方に被害が出た為、既に撤退しております」

「当然だろうな。彼らが同胞を見捨てるとは思えない。それに、無闇にダナ人達を殺せば星霊力の収集量が減るだけだ。何故そこまで……。

 いや、主霊石が奪われているのだ。ビエゾ様が焦るのは当然か」

 

 星霊力は今も集霊器に溜まり続けているが主霊石が無ければ意味はない。昨夜の戦闘で取り戻せていたのならば少なくとも無関係なダナ人が殺されることはなかった……。

 いや、私の落ち度か。彼らを殺さないように立ち回った結果、より多くのダナ人が死ぬことになるとはな……。皮肉な事だと自嘲する。

 

「敵襲ーーー‼︎」

 

「っ⁉︎敵襲だと!」

 

 考え込んでいると城内に敵襲を知らせる兵の声が響いた。間違いなく紅の鴉達だろう。寝ていたベットから降り宿舎から出る。

 

「状況はどうなっている‼︎」

「申し訳ありません、自分も何が起こっているのかは」

「そうか、すまない」

 

 近くにいた兵に問いかけたが私と同じで状況を掴めていないようだ。その時城門の方から兵が走ってきた。

 

「リアン様!」

「状況は分かるか?」

「はい、現在城門前、及び炎の門前にてダナ人共と戦闘を行なっています。城門前には奴らのリーダーであるジルファの姿が‼︎」

「分かった。私は城門へと向かう。」

 

 そう伝え城門へと駆けて行く。

 

 城門に着くと十人程の兵達と二十人は超えるダナ人達が既に戦闘をしていた。その中の一人、此方の兵達を圧倒しているジルファに向かって駆け出す。

 

「はぁぁぁあ‼︎」

「⁉︎くっ‼︎」

 

 ジルファへと飛び掛かり上段から槍を振り下ろす。他の兵達の相手をしていたためか避けずに右腕の籠手で受け止められた。ジルファの左の拳が迫るがその拳を踏みつけその勢いのまま距離を取る。

 

「リアンか」

「ああ、そうだジルファ。」

 

 ジルファも私だと認識したようだ。互いに構える。

 

「あの時の続きと行こう。だがあの時のようにはいかんぞ」

「……そうかい、悪いがまた勝たせてもらう」

 

 ジルファが言い終わると同時に自らに星霊術をかける。

 

「テールウィンド」

 

 唱えると風の膜が体を包みこむ。そのまま姿勢を低く構えジルファへと駆け出す。ジルファとの間合いを瞬く間に詰め槍で一閃。

 

「ふっ」

「っ⁉︎」

 

 ジルファは予想外の速度に驚きながらも籠手で防いでくる。そのままジルファを通り過ぎ間合いを取り反転、同じようにジルファへと駆け出し一閃。槍と籠手がぶつかり合い甲高い音が辺りに響く。

 

「はぁっ、ふっ、はぁあっ‼︎」

 

 その後もジルファを囲うように移動しながら一撃離脱を主としてジルファの動きを封じる。流石のジルファも四方八方から攻撃されては碌に反撃は出来ないようだ。だが、

 

「うおぉぉぉおぉぉ‼︎」

「っ⁉︎」

 

 此方が間合いを取って反転しようとしたその時、ジルファが雄叫びと共に拳を地面へと叩きつける。するとジルファを中心として地面に亀裂が入り小さな石が辺りへと飛び散る。

 

ーーなっ⁉︎

 

 慌てて距離を取り反射的に左の籠手を顔の前に掲げ目を守る。

 バイザーを着けている事を思い出し左腕を戻すとジルファが間合いを詰めて来ていた。ジルファの拳を槍の柄で受け止める。が、以前に比べ拳が軽いと感じた。間合いを取るために後ろへと下がろうとするがジルファも此方へと詰め寄り距離を離せずにいる。

 

「ロックブレイク‼︎」

 

 星霊術を唱え()()の足元から岩を隆起させその上に乗りジルファと距離を取る。ジルファも星霊術を警戒してか後ろへと下がっている。

 

「はぁっ、はぁっ、ふぅー」

 

 一度呼吸を整える。そして眼下に見えるジルファの元へと降りる。

 

「ジルファ、貴方に聞きたいことがある」

「……なんだ?」

 

 構えを解きジルファへと問いかける。ジルファは構えたままだが此方の話を聞いてくれるようだ。

 

「貴方は何の為に戦っている。レナへの復讐か?奴隷達の解放か?」

「……俺たちの目的はレナの支配からの解放だ。当たり前だが、レナ人達への憎しみはあるさ」

「……」

「だがな、殺されたから殺して、殺したから殺される。そんな負の連鎖を繋げる気もないさ。お前もそうなんだろ?ジオーネ廃坑道で俺の仲間達を殺してはいなかった。それに、モスガル周辺での虐殺にもお前はいなかった」

「……私はレナ人だ。ダナ人を殺せば星霊力の収集量が減る。……だから殺さなかった、それだけだ。」

「……そうかい」

 

 心身ともに強い男だ……。そんな男だからこそダナ人達は彼について行くのだろうと、そう思った。

 

「もう一つ聞きたい。レナと戦うと言うことは三百年続く今の体制を相手にすると言うことだ。勝てると思っているのか?」

「……難しいだろうな。お前達が本気で潰そうと思えば俺たちは簡単に負けるだろう。だがな、今を逃せばこれ以上の機会はないだろう」

「あの炎の剣か……。ジルファ、貴方は強い。肉体的にも、精神的にも。だからこそ言っておく。貴方を失えば彼らのまとまりは崩れる可能性がある。気をつけておけ」

「あいつらはそんなに弱くはないさ。が、気をつけておくとしよう」

 

 そう言い合いお互いに構える。その時、グラニード城の屋上から獣の如き咆哮が聞こえてきた。

 

「っ今のは⁉︎」

 

 振り返り屋上の方を見るが、この位置からでは確認することは出来そうにない。だが、この状況。ジルファが無策で襲撃をしてくるとは思えない。

 

ーーまさか!

 

 そう思いジルファへと向き直る。

 

「辿り着いたか」

 

 ジルファの様子を見るに、間違いはないようだ。

 

「自らを囮にするとはな……」

「これが一番確率の高い作戦だったんでな」 

 

 おそらく領将の元にはシオンとあの仮面の男がいるのだろう。レナの中でも星霊術の扱いに秀でた者が領将に選ばれる。

 星霊術を使えないダナ人相手ならば兎も角、同胞であるシオンがいる。それにあの炎の剣、その力は身をもって知っている。ビエゾ様が敗れることは無いと思うが援護には行かなくては。

 グラニード城へと戻ろうとした時、ジルファが攻撃を仕掛けてきた。

 

「行かせんぞ」

「厄介な‼︎」

 

 槍を構え柄で受けようとすると、ジルファは柄を掴みそのままグラニード城とは反対の方向へと投げ飛ばしてきた。空中で体勢を立て直し着地する。顔を上げるとジルファが城へと続く橋の上で立ち塞がっていた。

 

「お前を通す訳にはいかん」

「押し通させてもらう」

 

 そう言い、橋の傍を通ろうと駆け出す。

 

「はぁっ‼︎」

 

 ジルファも予想していたのか此方の進路上へと現れる。突きを繰り出すが籠手で晒され、ジルファの拳が鳩尾へと入り殴り飛ばされる。

 

「ぐぁ゛っ」

 

 そのまま後方へと飛ばされ地面を転がっていくが、槍を地面に突き立て止まる。

 

「ゴホッ、はぁっ、はあっ……ヒール」

 

 星霊術を唱え体力を回復する。ジルファをどうにかしない限り倒れそうにないようだ。

 

ーー仕方がないか

 

「エアスラスト」

 

 星霊術を唱え風の刃をジルファへと撃ちながら駆け出す。ダナ人に対して星霊術は使いたくはなかったが……彼を相手にそんな事は言っていられないな。

 ジルファが星霊術を避けると同時に突きを繰り出す。

 

「はぁっ!」

「ぐぅっ⁉︎」

 

ーーこれも防ぐか……

 

 再び籠手で防がれる。その後も薙ぎ払い等でジルファとの間合いを取りつつ詠唱が短い星霊術を唱える。だが、攻め切ることが出来ない。使っているのは下級の星霊術だが、ダナ人にとってはどれも対処に困る物のはず。後ろに下り距離を取る。

 

 その時、グラニード城の屋上から巨大な火柱が上がる。

 

ーーあれは炎の剣か。ビエゾ様が敗れたのか⁉︎

 

 下から見える火柱は先日ジオーネ廃坑道の時より数倍は太く、強く燃えていることがわかる。おそらく集霊器に溜まっていた星霊力を取り込んだのだろう。空高くへと上がる炎はそのまま炎の門へと倒れて行く。いや、振り下ろされていく。そして門を、岩山ごと赤い溶岩へと溶かしながら切り裂いた。

 

ーービエゾ様が敗れた以上ここでの戦闘に意味はないか……

 

「この場にいる全兵士に告げる‼︎おそらくビエゾ様は敗れた。動ける者は速やかにシスロディアへと向かえ!負傷兵も可能な限り連れて行け!殿は私が務める」

 

 兵士たちに命令を出しシスロディアへと向かわせる。撤退できない兵もいるだろうが、ジルファなら無下にはしないだろう。とは言え、他の者達は分からない。彼らもレナ人に対して怒りや憎しみはある。そう思いながらジルファ達の方へと向き構える。

 

「辞めておけ。カラグリアが解放された今、戦う意味はない」

「……追撃はしないのか?」

「言っただろう。憎しみを繋げる気はない。撤退できない装甲兵達はしばらく抵抗してくるだろうが不当は扱いはしないさ。そんな事をすれば今までのレナと同じになっちまうからな」

「……そうか、感謝する。この礼はいつか」

「律儀な奴だな……」

 

 ジルファにそう伝え炎の門へと駆け出す。

 

 ダナの地に降りて僅か2日。激動の物語が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 今回でカラグリア編終了です。
 二週目休息イベ以外休まずにやってたら僅か2日でカラグリア編終了とは。
 OP1アニメーション綺麗で曲もかっこいい。最高ですね。ビエゾ様だけ出番無かったですが……
 

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