〈凍結〉TALES of ARISE 〜繋ぐ花〜   作:雨漏り

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どうも雨漏りです。今話と次話で原作のアルフェンが目覚めるまでの一週間になると思います。


シスロディア編
第五話


 

 カラグリアでの戦いから撤退した私は、炎の剣によって崩壊した炎の門を通りシスロディアへと続く道を駆けて行く。

 

 カラグリアとシスロディアの間では輸送列車による物資の遣り取りはあったため線路の整備はされているらしいが、こちらの道は使われていないようで随分と荒れ果てている。そんな事を思いながらしばらく進み洞窟の中へと入って行く。

 

ーー人工物?ダナ人達の遺跡か?

 

 洞窟の中は所々崩れていたりするが壁や地面に角石が使われている為、人為的な物だと分かる。それを横目に見ながら先を急ぐ。途中に野生化したズーグルがいた。

 

 本来、ズーグルは私たちレナ人に使役されているはずなのだが、三〇〇年の間に制御を離れ野生化してしまった個体が多く今ではダナの生態系の一部になっていまっている。なので、

 

「エアスラスト」

 

 星霊術を唱え風の刃でキノコに触手が生えた様なズーグルを切り裂く。

 

ーーすまないな、元々は私たちの所為なのに……

 

 全てのズーグルは元々ダナに生息していた生物を改造して創り出した物なのだ。私達の身勝手で創り出した物を自らの手で殺す。その事に罪悪感を感じながら進んでいく。

 

 途中道が崩れていた為、少し遠回りをする事になったが道が繋がっていただけでも御の字だと思う。

 

 出口に近づいて行くと寒さを感じるようになる。シスロディアは光の主霊石を持つ領将ガナベルト・ファルキリスの治める国だ。光の主霊石を持つ為、レナ人の中で唯一光の星霊術を使うことができる。

 

 シスロディアでは光の星霊力を収集している為、常に暗い。その時に光が持つ熱も奪っているのか気温も低く雪が降り続いている。首府シスロデンの収霊器とその周囲にある投光器の光がこの国で最も大きな光源だ。

 

 洞窟から外へと出るとそこには一面を雪で覆われた銀世界が広がっていた。レネギスでは気温などが一定に保たれ環境が変わる事は無かった為、雪という物を見るのは初めてだった。

 

「綺麗な景色だな……が、些か寒いな」

 

 ため息を吐くと息が白む。そして自らの体を見下ろす。気温の高いカラグリアでは特に気にはしなかったが、動きを阻害しないように最低限の装甲と薄い生地で出来た服。このまま進むには不安しかない格好だ。

 

「虚空に防寒具はあっただろうか……」

 

 独り言を言いながら虚空の中を確認してみるが……、この寒さを防ぐ程の物は無さそうだ。

 

ーー仕方がない、街か休める所まで急ぐか

 

 肌を刺すような寒さが身に沁みる。幸いな事に、兵士達の足跡がまだ残っている為合流する事は出来そうだ。と足跡を辿り走り出す。

 しばらく走っていると街が見えてきた。おそらくだが、兵士達はあの街にいるのだろう。街に着くと予想通りに兵士達がいた。

 

「リアン様、ご無事でしたか」

「あぁ、ジルファ達も追撃するつもりは無かったようだ。すまない、何か食べ物を貰えるか?」

 

 ダナに降りてからまともに食べていなかった為流石に限界だった。

 

「スープがありますので、一先ず中へ」

「助かる」

 

 兵士の案内で宿と思われる家屋の中へ入っていく。中に入ると宿の従業員の女性から視線に違和感を覚える。此方を観察する様な視線を感じた。外でも同じ視線を感じたが……。これは蛇の眼というやつか。シスロディアではダナ人同士を監視させ合い密告者には報酬が出ると資料にはあった。

 

「おい、先程と同じ食事を」

「は、はい。お待ちください」

 

 兵士がそう言うと女性が奥の厨房へと急いでいく。

 

「そんなに威圧するものじゃない」

「そこまで威圧していましたか?」

 

 無自覚なのか。いや、この態度で接するのが当たり前になっているのか。少しすると女性がスープの入った皿を持ってきた。

 

「お待たせして申し訳ありません」

「ありがとう。助かるよ」

 

 女性に礼を言うと驚いていた。礼を言われる事さえ無いのか……。そう思いながらスープを飲む。

 

ーー美味しいな……

 

 久方ぶりの食事は外の寒さで冷えた体を暖めていく。

 

「ふぅ。すまない、先に休ませてもらう」

 

 そう伝え(とこ)に就く。

 

 

 

 朝を迎えた。外を見ても常に暗いため朝という感覚は薄いが。首府シスロデンに向けて歩き出す。途中野生のズーグル達が襲ってきたがそれぞれ連携して対処したため特に問題なくシスロデンへと到着した。

 

 シスロディアの領将ガナベルト・ファルキリスに挨拶をするために私と部隊長はシスロディアの兵士に案内され執務室へと向かう。

 

「失礼いたします。カラグリアよりリアン様とカラグリア隊隊長が来ております」

「ふむ、入りたまえ」

 

 入室の許可が降りた様なので執務室へと入る。奥にある執務机ではガナベルト様が職務をしながら此方に視線送ってくる。

 

「話は聞いているとも。大変だった様だな」

「いえ、我々がしっかりしていればビエゾ様が亡くなる事はありませんでした。不甲斐ない話です」

 

 と伝えるとガナベルト様は笑みを浮かべる。

 

「なに、主霊石を奪われていたのだ。仕方があるまい。それより、兵士達も疲労が溜まっているだろう。ゆっくり休むとよい。案内して上げなさい。あぁ、リアンといったかな?君は残りたまえ」

 

 此処までの案内してくれた兵士が指示され、それに続いて執務室から出ようとすると呼び止められた。

 

「何用ですか?」

「カラグリアでの戦闘、及び反抗組織について聞いておきたくてね。それと私に敬語を使う必要はないぞ。その方が君も楽なようだからな」

「……わかった」

 

 奇しくもその言葉は、私がダナに降りてから最初に兵士に伝えた言葉と同じだった。

 

ーー偶然……では無いな。カラグリアにも蛇の眼はあったと考えるべきか……

 

 ガナベルトへの警戒を高めながら自らが知り得ている事を話していく。シオンの裏切り、炎の剣、そして反抗組織紅の鴉などの話をしていく。

 

「成る程、なかなか興味深い話だった。あぁ、最後に一つ。ジルファと言う男は此方に来ると思うかね?」

「彼は紅の鴉のリーダーであり、解放されたカラグリアを纏める為に必要な筈だ。

 此方に来る事は無いと思う……が、それと同時に彼はカラグリアが解放されて終わりとは考えていないだろう。確率は半々といったところか」

 

 考えをガナベルトに伝えると愉快そうに笑っていた。

 

「十分だとも、情報というのは全てにおいて優先されるべき物だ。参考になった。そのうち君に仕事を頼むと思うがそれまでは休むといい」

「わかった、失礼する」

 

 そう言って執務室から退室する。しかし、話をしてみると何やら胡散臭い男だと感じた。

 

「一体何をするつもりなのか……」

 

 そう呟いて宿舎へと向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 sideガナベルト?

 

「わかった、失礼する」

 

 カラグリアから来たリアンという女が部屋から出て行く。

 

「ふむ、領将補佐……か。一先ず報告をするとしよう」

 

 そう言ってとある人物に通信を入れる。

 

「失礼、先程件の女が此方に参りました。情報に間違いは無いようです。はい……彼女も想定通りに動くかと、はい……承知いたしました。では当初の予定通りに事を進めます」

 

 通信が切れるのを待ち兵士を呼ぶ。

 

「メザイ一九八から二二四へと第三執行隊を順次向かわせたまえ」

 

 メザイ一九八から二二四、それらは全てカラグリアから首府シスロデンへの道中にある町だった。そして、第三執行隊の中には何処かジルファに似た青年がいた。

 

 

 

 

 

   

 

 

 




 シスロディア編は多分短めになる気がしますね。

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