東方翔霊録ーЯe:bootー   作:来翔

3 / 9
お久しぶりです、来翔です。
遅れてすいません、第3話更新です。
今回は、幻想郷においてのルールです。

では、お楽しみください


ルール

「さて、翔聖。住むとなればそれなりのルールを遵守してもらうわ。幻想郷でルールを守らないものには死しかないわ。特にあんたのような何の能力も持たない人間はね」

「ルール‥‥‥ですか。そんなに危険な世界なんですね。ここって‥‥‥」

 

翔聖は先程の返答に少しだけ後悔した。そんなに危険なところとは思ってもいなかったからだ。だが、そんな場所でも少しの後悔で済んでいるのは、死よりも恐ろしいものが翔聖にはあるからだ。

 

「なにせここは妖怪が上位の世界だからね。弱肉強食で言えば人間は食われる側よ。そんな世界だからこそルールを守れば比較的安全には過ごせるわ。無論ルールを守ってもそれを破る奴らもいるけれど」

「そうなんですね……。それで守るルールって言うのは?」

「ひとまず夜間は外に出ないこと。夜は妖怪の時間、人間が出ていい時間ではないわ。夜間に外に出てたらまず死ぬことを覚悟した方がいいわ。どうしてもという時は私を呼びなさい。面倒臭いけど、アンタになにかあってから小言を言われるのがもっと面倒臭いから」

「分かりました。あと何かありますか?」

「後は……妖怪を恐れること」

 

霊夢の出したルールに翔聖は思わず首を傾げてしまう。妖怪が恐ろしい存在なのは非科学的な物を信じない翔聖でもわかっている事だ。それを怖がることに何の意味があるのだろうか、怖がることで幻想郷を生き抜く術に繋がるのだろうかと疑問は絶えることはなかった。

 

「外の世界のアンタには分からなくて当然よ。妖怪は人間に怖がれないと姿を、力を保てないの。それが意味することはわかるかしら?」

「ん〜……幻想郷は妖怪の世界だからバランスが崩れる?」

 

翔聖の答えに霊夢は頷く。

 

「幻想郷は妖怪を救うために作られた場所と言ってもいいわ。人間は言わば妖怪に食べられる為の家畜。でも、家畜を食べすぎると食糧難になるでしょう?妖怪側のルールはテリトリーを守ること。テリトリーに入ってきた人間は食われる。ルール違反には当然の結末よね?」

「えっと……つまり、人間である僕は妖怪に食われる弱者の立場で妖怪のテリトリーに入らないこと。そして妖怪はテリトリーを守り、食料でもあり恐れられる存在である人間の数を保つということですか?」

「まぁ、そんなところね。アンタは妖怪に襲われないようにルールを守れば問題ないわ。妖怪のテリトリーは妖怪によって異なるから変にうろつくことはしないこと。さっきも言ったけど夜も妖怪のテリトリーだから出かける時は声かけなさい」

 

翔聖は全てを理解できた訳では無いが、ひとまず外出をする際は霊夢に聞けばいいなと判断した。

対する霊夢は翔聖が全部理解出来てはいない事を悟るものの、1日で詰め込んでも覚えられるのは大変だろうから後で覚えさせればいいかなと思い何も言わなかった。

 

「さて、ここからは生活する上でのルールよ。これを守らないのなら……これよ」

「これ?」

 

翔聖の問いかけに霊夢は、ニコッと優しく微笑んだと思うと力強く右の拳を突き出す。

翔聖はすぐさま理解した。拳が飛んでくる、しかも生半可な力のではないものがくると。

 

「わかりました。全身全霊で守ります」

 

下手すれば妖怪より怖いんじゃないかと翔聖は思ってしまうが、口にそれを出したり表情に出したりすれば無事では済まないと思い、それを我慢した。

 

「ひとまず社殿の中を案内するわね。着いてきて」

「あ、はい。ってその前に……少し待ってください!」

 

翔聖は思い出したように、身を翻すと自身の後ろにいたあうんを見やる。

そのまま翔聖はしゃがみ、あうんと視線を合わせる。合わせられたあうんは不思議そうに翔聖を見つめる。

 

「そういえばちゃんと挨拶してなかったね。改めて僕は神代翔聖だよ。君は?」

「私は高麗野あうんです。博麗神社の狛犬をしています。何かありましたら頼ってください、翔聖さん」

「うん、よろしくね」

(へぇ、結構律儀なのね。いや、真面目なのかしら?何にせよ、嫌な奴じゃなくてよかったわ。これから暮らす奴がろくでもない奴だったら面倒だったし)

 

翔聖はあうんとの挨拶を終えると、霊夢の元に駆け出していく。

 

「用件は済んだのかしら?」

「すいません、待たせてしまって」

「いいのよ。あうんとはこれからも付き合う事があるだろうからね。挨拶くらいじゃどうってことないわよ」

 

霊夢はそのまま靴を脱いで、社殿の中に入る。翔聖もそれに続くように入っていくと和室が彼の目に飛び込み彼の目を輝かせる。

マンションのフローリング暮らしが当たり前であった、翔聖にとっては畳の床など幼い頃遊びに行った祖母の家位でしか見たことがない。

そんな様子に霊夢は呆れたような顔で翔聖を見ている。

 

「そんなに珍しいの?」

「はい……フローリング……ツルツルした床が僕の住んでる家ですし学校もこの床しかないので。畳の床は見かけないので」

「ふーん。まるで紅魔館みたいな所に住んでるのね。アンタって結構金持ちだったりする?」

「いえ……普通の家庭ですね。ほんの少しだけ余裕はありますけど」

 

霊夢は素っ気なくあっそと返答すると、厠 台所と彼を案内していく。その間翔聖は興味深そうに周囲をみている様子に、まるで初めてお婆さんの家に泊まる子供のように霊夢は見えて仕方がなかった。

初めて神社に遊びにきた人もこんな様子じゃないのと思いつつ。

 

「ひとまずこんなところね。迷子になる広さじゃないから頭に叩き込みなさいね」

「は、ハイ」

 

翔聖と霊夢が話しながら居間に戻ってくると

 

「あら、おかえりなさい」

 

紫がお茶を片手に座っていた。

 

「アンタ……また勝手に……」

「湧いているお湯があって近くにお茶っ葉がある。つまり……」

「はぁ……全く。いいわよ、いつもの事で慣れたわ」

 

霊夢は呆れつつ、紫の言葉を遮る。遮られた紫は返答がつまらなかったのか、それを示すような表情をするとお茶を飲み干す。

その後、一呼吸置いてから翔聖を見やる。

 

「さて、翔聖君。なんとかなりそうかしら?」

「ま、まぁ。女の子と暮らすなんて経験なくて不安しかないですけど……」

 

紫の問いかけに翔聖は苦笑いを浮かべ、返答する。

 

「まぁ、霊夢に変な事したら私が出てくるから大丈夫よ。霊夢、もし翔聖君の事で何か困ったら()()頼りなさい。きっと力になってくれるはずよ」

「アイツね……まぁ翔聖の事を1番理解できるのアイツだしね」

「彼って……?」

「後で紹介するわよ。どっちにしてもアンタはアイツに頼らないといけない時が来るはずだから。変な奴……いや、変な奴か。ちょっと変な奴だけど気難しい奴じゃないから気軽に接しても問題ないわ」

「霊夢さんや紫さんは、その人を信頼してるんですね」

「ま、信用に足る人物ではあるわね」

 

霊夢の返答に翔聖は、霊夢がここまで信頼するなんてどんな人なのだろうと考えた。

彼と言ったから男性である事に間違いなく、女性からも信頼されるのは同性とは言え自分とは大違いなため思わず羨望の感情を持ってしまう。

 

「さて、こんな所かしらね。何かあったら霊夢を通じて呼んでちょうだい」

 

紫は、さよならをウィンク越しに伝えると現れたように空間に切れ目を入れるとそこに入ったかと思えば姿を跡形もなく消した。

翔聖はどういう仕組みなのか考えたが、自分の脳では足りないと判断し思考を放棄した。

 

「ようやく静かになったわね。幻想郷のルールはさっきの通り。ここからは暮らすためのルールよ。初めのうちは破っても制裁で済ますけど……2度目は分かってるね?」

 

霊夢の表情は笑顔だった。だが、その笑顔が逆に怖かった。幻想郷のルールを破っても死、博麗霊夢のルールを破って死。

結局の所、ルールを守るしか自分には生きる道は無いと判断せざるを得ない。だが当然と言えば当然ではあるので、反論の余地すらない。

 

「それで守るべきルールって……?」

「勝手に飲み食いしない。アンタが自分で買ったものならいいけど、私達共同のものは勝手に使用しない。寝る時は一緒に居間で寝るけど境界線を作るわ。境界線を超えた瞬間まずアンタを殴る。故意でも偶然でもね」

 

常識の範囲内で翔聖は安心した。特に後者に至っては健全な男女の関係たと言える。出会って間もない相手に寝る瞬間まで気を抜かないのは当たり前である。

翔聖もこんな美少女と寝れるのは、一線を超えそうになる。無論先程の笑顔を見たあとではそのような一線を超える気はない。

 

「分かりました、ごく普通のルールですね。なんなら押し入れでも構いませんよ?」

「一人一人寝られる位の広さは無いし、万が一寝相の悪さで戸を壊したり棚を突き破ったらどうするのよ。怪我もだし修繕だってしないといけないのよ。それを考えたら、多少のリスクを背負っても居間で寝るわ。それにアンタは多分そんな事しないと思う」

「……ありがとうございます」

 

こんな自分でも信じてくれてるのだなと思うと、翔聖は照れくさくなってしまい霊夢の顔を見れなくなってしまう。

霊夢自身は、そんな気などなく思っていることを言ったのだから翔聖の反応には理解出来なかった。だが、下衆なことを考えている訳では無いとは彼の様子から理解できる。

 

「さて、最後のルールよ。こればかりは慣れて貰うしかないから多少のミスなら見逃すわ」

「最後のルール……ですか?」

 

翔聖は最後のルールと聞いて、つい身構えてしまう。霊夢の口から出たのは

 

「敬語と私の事をさん付けで呼ぶのはやめなさい。見たところ歳も近いし、同年代の男性から敬語なんて使われるのはくすぐったいわ。アンタもその方が楽でしょ?この三つを最低限守りなさい。何か言いたいことはあるかしら?」

 

拍子抜けなルールだった。もっとキツいルールかと思いきや、たったのそれだけなのかと。

彼からすればそんな事でいいのかなと思うほどであったが霊夢自身にとっては、ルールを作るほどの事でそれが耐えられる様なののは伝わって来る。

翔聖にとっても霊夢ほどではないが、同い年と思われる相手と敬語で話すのは得意ではない。壁があるように感じてしまうからだ。

そんな事から霊夢の問いに関する翔聖の答えは決まっていた。

 

「何もないよ。僕は衣食住をさせてもらう、養ってもらう立場だからね。霊夢の決めたルールに従うまでだよ」

「そう、分かったわ」

 

霊夢は翔聖の出した答えに納得したように頷くと

 

「ようこそ、幻想郷へ。神代翔聖、貴方を歓迎するわ。帰れるまでの間だけどよろしくお願いするわね」

「うん。僕の方こそよろしく、霊夢!」

 

霊夢の言葉に翔聖は笑って返す。

2人の奇妙な生活が今始まる。

 

これが、運命の始まりとは2人は知る由もない。

 

To be continued




ご愛読ありがとうございます。
今回はルールの回でした。幻想郷には細かいルールがありますが、それを全部説明しても現時点での翔聖君には意味ないので彼が生き残れる最低限のルールでした。
旧作とは流れを変えて書いていきますの、初見の方でも旧作を見直さなくても安心して読める様に心掛けます。

では、次回の更新をお待ちくださいませ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。