少し書く内容とリアルの事情で遅くなってしまいました。
そろそろバトル描きたいなと思うこの頃です。
では、本編をお楽しみください
「……ふぅふぅ……」
人里で買い物を終えてから博麗神社に帰宅する頃には翔聖は息切れを起こしていた。
重い物は自分が持つと意気込んだはいいものの、普段重い物を担ぐ時はエレベーターなど文明の利器を利用していたがここにそんなものはあるはずも無く自分の足で階段を登るしかない。
そのため、慣れない事をした翔聖の体力が無くなるのは至極当然と言える。
そんな彼の様子に霊夢は、ため息をつくしかなかった。
「本当にだらしないわねぇ……。そこら辺の子供よりも体力ないんじゃない?」
「……そ、そうかもしれないね……っ」
反論する余裕すら彼にはなかった。
そんな彼を癒すかのように
「おかえりなさい、霊夢さん。翔聖さん」
あうんが笑顔を浮かべつつ、2人を出迎えてきた。まるで幼い頃友人の家に遊びに行った時に、出迎えに来てくれた犬に見えて仕方なかった。
そんな翔聖はあうんに対して、無意識のうちに頭に手を置いてしまう。
「あ」
彼の行動に思考が追いついたのは、掌に髪の毛のふんわりとした感触が伝わってきてからだ。
見た目こそは確かに幼子かつ犬っ子のように見えるが、れっきとした女性である。
女性に対して、彼は無断で触れてしまった。セクハラと訴えられたら確実に負けてしまう。と彼は思ったが、1番怖いのは背後にいる霊夢である。
(やっっっばいっ!霊夢の同居人にセクハラしてしまった!こ、殺される……絶対に殺される……!)
翔聖は恐る恐る後ろを向き、霊夢の顔を見るが特に何もない真顔であった。
「なに?翔聖、私の顔になにかついてる?」
「い、いや……女の子に無断で触ってしまったから……その」
「あうんが嫌がるなら否が応でも止めるわ。でも、彼女を見て見なさい?」
翔聖は彼女に言われるがままに手を置いてしまったあうんを改めて見る。彼女の表情は嫌そうなものではなく、逆に目を閉じて心地よさそうにしていた。
本当に犬のように翔聖は見えて仕方がなかった。
「あうんは元々狛犬よ。まぁ、簡単に撫でてはいけないけど彼女はそうされると嬉しいのよ。勿論、アンタに下心が無ければね。少なくともアンタからはそんなものは感じないわ」
「……どうしてそう思うの?」
「2人きりになった時アンタは私をちゃんと見てた、私の目を。男なら身体をつい見てしまうものだけどアンタはそれがなかった。それだけで少なくとも下心が無いのはわかるわ」
霊夢の言葉に翔聖は、耳まで暑くなったような気がした。女性に言われた事もあるが、久方ぶりに他人から褒められたからだ。
貶され、罵声が飛ぶことはあったが褒められる事は稀にしかなかった。
出会った時もかけられた言葉もあって、思わず泣きそうになってしまう。普通からすればこんな事は泣くようなことでは無いが、翔聖にとっては泣けることであった。
「翔聖?どうしたの?」
霊夢に声をかけられ、それを隠すようにハッとするとにこやかに振り向く。
「なんでもないよ、ありがとう」
「……え、ええ?」
お礼を言われるようなことをしてない霊夢は、不思議そうに首を傾げる。
「とりあえず荷物重いでしょ。そろそろ下ろしたらどうかしら?」
「それもそうだね……少しキツいしね」
「お手伝いしますよ!翔聖さん」
あうんは、翔聖が少し辛そうに持っていた荷物を軽々と持ち上げる。その様子を見て、尚更鍛えなければいけないと彼は固く誓った。
2人で協力して荷物を社殿内に運び込むと、翔聖はどっと疲れたようですぐに座り込んでしまう。
「大丈夫ですか?」
霊夢と違って心配してくれるあうんが天使に見えてしょうがなかった。
だが、数少ないプライドが邪魔をして
「大丈夫だよ、慣れればこのくらいへっちゃらになるよ!」
根拠も無い答えを出してしまう。
確かに慣れればこの位は平気になるだろうが、いつになるかは翔聖にも分からない。元々身体を動かすのが好きな自分ならと思ったのかもしれない。
「なら、期待してるわよ。ん……さっき昼食食べたばかりだから、夕食まで時間あるわね。夕食できるまで暇つぶしていて。どうせ料理とかしたことないでしょ?」
「カップラーメンなら!」
霊夢の問いかけに翔聖は、即席ラーメンを自信満々に返答する。小学生でも作れるようなものを逆にそのような対応をすると情けなくなるが、翔聖にそこまでのプライドは無かった。女性に気を使われるプライドはあるというのに。
「拉麺なら知ってるけど……そんな料理は知らないわね。どんななの?」
「お湯を入れて数分待つだけ!」
「論外ね、暇つぶししてなさい。間違っても人里に出ようとはしないでね、そろそろ夜になるから妖怪達の時間になるわ。これだけは言っておくわ。ルールを破ったアンタを救う程私はお人好しじゃないからね」
「そのくらい分かってるよ。少し神社の周りを探索してくるよ、これから世話になると思うし」
「あうん、一応翔聖の監視お願い。出ようとしたら力強くで引き戻しなさい」
「分かりました!」
霊夢とあうんのやり取りに信頼されてないと翔聖は、内心泣きたくなった。男としてはある意味信頼されてはいるがそこを信頼されてないのだから。
「それじゃ、ちょっとぶらついてくるよ。料理こそはできないけど、準備とかは出来ると思うからその時は呼んでよ」
霊夢の頷きを確認すると、翔聖は靴を履くと外に出ていく。特にやることもないが、そのままぼんやりとするのも性には合わないのだ。
外に出た彼は有言実行をするかのように、神社の周りをうろつく。その後ろをついて行くあうん。まるで、翔聖が散歩されているように霊夢は見えた。
(まるで犬の散歩ね。いや、どこかに行かないように見守る親犬と子犬ね)
「……飽きた」
彼のぶらつきは数十分で飽きた。それも当然と言える、周囲に物珍しい物はほとんどないからだ。
かと言って社殿に戻ってもやることはないため、石段に座り博麗神社の下に広がる景色を見ることにした。
(本当に綺麗だな。昔田舎のおばあちゃんの家に泊まった事もあるけど、こんな景色は見れなかったよな。まぁ……今はもうないけどさ)
翔聖が座り込むのを見ると、あうんもその隣に座る。
数秒沈黙があったが、先に口を開いたのは翔聖。
「霊夢って誰にでもあんな風に優しいの?」
「誰でもじゃないですけど、優しいですよ!確かにサバサバしてる所はありますけど嘘とかつかないでありのままで当たってくれるので、皆さん霊夢さんの事は好きですよ。翔聖さんもですか?」
「……優しくされたのが久しぶり過ぎて泣きそうになったよ」
「そうなんですか?何かあったんですか?」
「……色々とね」
あうんはその先が気になったが、翔聖の顔を見ては聞くのを辞めた。
それ以降2人の間に会話は無かった。翔聖の人里を見つめる目の何とも言えない目にあうんは何を感じ取り、ゆっくりと立ち上がると社殿に戻っていく。
翔聖はあうんに声をかけることも無く、そのままボッーと人里を見ていた。
それから暫くした後
「翔聖。翔聖!起きなさい!」
自分の名を呼ぶ霊夢の声が聞こえた。色々と理解出来ないような出来事が繰り返された疲れから、いつの間にか眠りに落ちていたようだ。
それを示すように、声をかけられてもまだ意識が帰ってきていなかった。
ぼんやりとしたままゆっくりと空を見上げると、青かった空が夕焼けに紅く染まっていたので本当に寝ていたのだなと実感させられた。
「いくら夏でも、夕方まで外で寝ると風邪ひくわよ。夕食の準備出来たからお皿とか出してくれる?」
「あ……うん」
翔聖はまだ曖昧なままの意識の中小さな声で返事すると、目を擦りながらゆっくりと立ち上がるとゆっくりとした足取りで社殿に霊夢と共に戻っていく。
〜少年お手伝い中〜
「ありがとう、翔聖」
「いや……お礼を言われることはしてないよ。僕は皿を並べたりしただけだし、霊夢しか夕食の準備はしてないよ」
「あら、そうでも無いわよ。アンタがお皿を準備したり並べてくれるだけで私は別の作業ができるから。さ、あうんも呼んで食べましょ」
霊夢は、外で見張っていたあうんを呼ぶと3人で食卓を囲む。
食卓に並んだ料理は白米に焼き魚と味噌汁、そしておひたしといった質素なものであった。和食派である翔聖からすれば、ご馳走に見えた。
「それじゃいただきます」
「いただきまーす!」
霊夢とあうんが挨拶を済ませて食べ始める中、翔聖はまだ箸を持ってすらいなかった。何やら落ち着かない様子に見えた。
「翔聖、どうしたの?もしかして食べれない物とかあった?それとも食欲とか無いのかしら?」
「いや……どれも僕の好きなものだけど……その誰かと食卓を囲むなんてなんて久しぶりでさ。ちょっと落ち着かない……」
「なら、早く慣れてもらわないと困るわね。暫くはこんな風な食事だから。孤食にはさせないわ」
「うん……ありがとう。いただきます」
翔聖は焼き魚を解しながら、1口食べてみる。口の中には、優しい味が広がり、今まで食べた中で1番美味しく感じた。
「どうかしら?」
「うん、美味しい!自然の味?ってのがする気がするよ。ここまで新鮮なの食べたことがないよ。おひたしもそうだし」
「ふふ、よかったわ。沢山食べなさいね、余すのは勿体ないわ」
2人のやり取りを見てあうんは
(まるで夫婦みたい)
と思っていた。
それから数十分後、3人は食事を終えた。
その後は、翔聖が自ら皿洗いを買って出たので霊夢とあうんはのんびりとお茶を飲んでいた。
「ふぅ、終わったよ〜手が冷たい……」
「お疲れ様。お茶あるわよ、座って休みなさい」
「ありがとう」
その後、3人はお茶を飲みながら他愛のない話で盛り上がった。
だが、会話で霊夢はある疑問が浮かんだような気がした。
彼は何故……と。
「ふぁぁ……眠くなってきたわね。そろそろ夜も更けるわね……そろそろ寝るかしら?」
「うん、寝ようかな。昼寝したとは言ってもやっぱり疲れてるみたいだし」
2人は、布団を敷いて寝る準備を済ませる。霊夢と翔聖の間にあうんが入り、まるで親子のように川の字で寝ることになった。
翔聖は欠伸をしながら、普段ベットに寝ている翔聖にとっては床で寝るのは久々で眠いと思いながらもワクワクしてしまっていた。
「一応朝ごはんには起こすけど……次第に自分で起きなさいね。私が寝てても気にせずに起きなさい。それじゃおやすみ」
霊夢は灯りを消すと、そのまま布団に潜っていく。
「うん、おやすみ」
翔聖も同様に布団に潜ると、ふかふかの布団の心地良さにすぐに瞼が重くなっていくのが分かった。
次第に彼の意識は遠くへと飛んでいった。
〜数時間後〜
それから何時間経ったかは分からないが、翔聖は目を覚ました。
寝ぼけ眼を擦りながら横を見ると、あうんと霊夢が寝息を立てて眠っていた。あうんは、霊夢にくっついてまるで親子ないし姉妹に見えた。霊夢はと言うと可愛らしい寝顔でいた為直視はできなかった。
(……変な時間に起きたせいか眠くないな。起こしちゃ悪いし、夜風にでも当たろうかな)
翔聖は2人を起こさないように、物音を立てずに外に出ていく。
石段まで行こうと思ったが、そこまで出ていって妖怪に襲われるという想像をしてしまい縁側で座る事にした。
「……ふぅ」
普段感じられない夜風に、斬新な気持ちを味わいながら座っていると横に気配を感じた。
「眠れないのかしら?翔聖君」
「っ……ゆ、紫さん。はい、変な時間に起きたせいか目が覚めちゃって。眠くなるまで夜風に当たろうかなと思ったので座ってました。普段ならスマホ……別のやつで眠れるまで時間潰すんですけどね」
「そう。霊夢とはやって行けそうかしら?あの子、サバサバしてるでしょ?翔聖君苦手そうだなって」
「そんなことないですよ。優しい人だと思いますよ、布団だって買ってくれましたし」
「ふふ、そうなのね」
紫は微笑んで彼の話を聞いていたが、突然真顔になる。それを見て翔聖は思わず身構えてしまう。
「翔聖君に聞きたいことあるのだけどいいかしら?勿論、答える答えないは貴方次第。どうして外の世界に帰りたくないのかしら?外の世界からしたら幻想郷は死と隣り合わせのような世界よ。博麗神社もずっと居られるわけでもないでしょ」
「どうして……それを?」
「霊夢の前なら絶対に言わないと思ったからよ。簡単でいいわ、教えてくれる?」
紫の言葉に翔聖は
「……僕は」
ゆっくりと口を開いていく。
どうでしたか?
少し早いですが、次回で翔聖の過去が明かされます。何故幻想郷での暮らしを望むか、次回で分かります。
では、次回の更新をお待ちくださいませ