東方翔霊録ーЯe:bootー   作:来翔

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お久しぶりです。来翔です
英霊伝の方でも書きましたが、リアルの諸事情によって執筆が遅れてしまいました。
そのせいか、筆も上手くノってくれなかったので前編と後編に分かれてしまいました。

では、本編をどうぞ!


翔聖初仕事〜前編〜

「翔聖、今日はどうするの?」

 

霊夢は朝食を食べながら、翔聖に問いかける。

 

「秦羅のとこに行こうと思ってたよ。仕事は貰えないと思うけど、改めて挨拶にってね」

「わかったわ。ひとまず気をつけて帰ってきなさいね。そして、一緒にご飯を食べるわよ」

 

なんでご飯?と翔聖は思ったが特に反論する理由もないので頷いた。

霊夢は、それを見てニコッと微笑む。その笑顔に翔聖は再度ドキッとしてしまう。彼の心臓はいつか止まるかもしれない。

 

それから数分後

 

「ごちそうさまでした!美味しかったよ」

「ふふ、よかったわ。準備はしてあるの?」

「一応さっき済ませておいたよ。さて、皿でも洗お……あれ?」

 

翔聖が皿を洗おうと立ち上がった瞬間、彼の皿はあうんによって台所へと運ばれていた。

 

「皿洗いは私がしておくわ。アイツには伝えてあるから待っててくれてるはずよ。ほら」

 

霊夢が外に指をさしたのでそちらを見ると青い髪の少女改め秦羅が鳥居を背にして立っていた。

わざわざ迎えに来てくれたのだと翔聖は察した。

 

「人里へは安全だけど何があるか分からないから暫くは秦羅に迎えを頼んだわ。迎えは私が行くから店で待ってて」

「いいの……?ここまでしてもらって」

「アンタが自立するまでは助けるわ。だからその代わり、アンタは私や秦羅を助けなさい。持ちつ持たれつつよ」

「わかった!なら、何かあったら頼ってね。まぁ……できる範囲のことなら」

「ええ。ほら、さっさと行った行った。迎えに来てもらってる身だから待たせると幾らアイツでも迷惑がかかるわ」

 

翔聖は頷くと、霊夢とあうんに行ってきますの挨拶を告げると駆け足で秦羅の元に往く。

その後ろ姿をあうんは手を振って、霊夢はお茶を飲みつつそれぞれ見送った。

 

「お待たせ秦羅。わざわざ迎え来てくれてありがとうね」

「構わない。深夜に霊夢に叩き起された時は断ってやろうと思ったけどアイツに貸しを作っておくのも悪くないかなって。というか……お前は制服で仕事するのか?」

 

翔聖の服装は昨日から変わっていないので学ランである。きちんと乾かしたので匂いは消えているが少し翔聖は気になる。

 

「えっ……いやこれしか服なくて……」

 

翔聖の返答に秦羅は察した表情になる。

 

「そうだよな、外の世界から来て翌日だから服なくて当然か。霊夢の奴……せめて作業着でも買ってやればいいのに」

「そもそも今日は僕の仕事ってあるの?入って当日だからないと思ってたけど……」

「あるさ、仕事の数は少ないが人手は欲しいからな。ほかの奴を雇うとか思ったけどめんどくさいからな」

「そ、そうなんだ……」

「ま、なんでもいいさ。ひとまずお前の作業着を買いに行くぞ。さすがに制服じゃ動きにくいだろう?」

 

秦羅を先頭に2人は歩き出す。昨日2回ほど往復したが、まだこの道は翔聖に慣れていなかった。

だが、話す余裕はあった。

 

「ねぇ、深夜に霊夢に叩き起されたって言ってたけど……何時頃なの?」

「時間帯は知らないが……少なくとも日が昇る前なのは確かだな。驚いたよ……お前を迎えに来て欲しいって言われた時は。まあ、理にはかなってるな。人里への道は比較的安全だが、何があるか分からないからな」

 

秦羅はそう言うと翔聖の顔を見る。

 

(……霊夢が入れ込むほどの奴には見えないな)

 

秦羅は霊夢とのやり取りを思い出していた。

 

〜今から数時間前 日が昇る前の時間〜

 

蒼天屋の奥にある寝室で寝ていた秦羅だったが、ごく一部しか知らない寝室に繋がる扉が開かれた音で目が覚めた。

盗っ人かと思い、瞬時に起き上がると手元にある刀に手を伸ばすが月の光に照らされた人物を見てそれを抑える。

 

「霊夢か……なんだこんな時間帯に。依頼なら朝にしてくれ、夜間に仕事をする気は無い」

「仕事の頼みじゃないわ。一つ頼まれてくれないかしら?」

「……なんだ。夜間に叩き起しておいてろくでもない内容だったら流石のお前でも許さないぞ」

「多分明日から翔聖がアンタのところで世話になると思うんだけど、その際でいいの。博麗神社への迎えをして貰えないかしら。蒼天屋には私から迎えに行くから。翔聖がある程度慣れるまでの間でいいの」

「……」

 

秦羅は無言で霊夢を見る。対する霊夢も秦羅を無言で見つめる。いつものような気だるそうな表情ではなく真剣な表情で。

 

「お前がそこまで翔聖に入れ込むなんてな。何かあるのか?お前が同情するほどのことがあったのか?」

「入れ込んでも……同情している訳でもないわ。アイツにはアイツの苦しみがある。下手な同情は余計に傷つけるだけよ。ただ、アイツを1人にしちゃいけない気がするだけ」

 

すっかり入れ込んでいるじゃないかというツッコミを秦羅が喉まで出かけたが、霊夢に何されるか分からない以上それを抑えた。

 

「分かった、迎えくらいなら行ってやるよ。僕もアイツの事を知らないといけないからな。お前だけ知ってればいい気がするが部下を思わない上司はいないからな」

「ありがとう。それじゃ、邪魔したわね。おやすみなさい」

 

霊夢は感謝をするが謝罪はせずに扉を閉めて外に出ていく。ある意味霊夢らしいと思うと同時に翔聖という人間に俄然興味が湧いてきた。

危険を承知で内部の存在から招かれた存在。幻想郷から外の世界に帰る事を拒まれた存在。そして、あのドライな霊夢が入れ込む存在である翔聖に。

 

(ひとまず明日はどんな奴か知るとするか)

 

秦羅はそう思うと再び寝床に着いた。翔聖への興味もあったが、何よりも睡魔には勝てなかったようだ。

 

〜そして、今に至る〜

 

「僕の顔になにかついてる……?」

 

ずっと自分の顔を見ていたので翔聖はつい問いかけてしまう。

秦羅は無言で首を横に振り否定すると、再び先頭を歩いていく。

暫し無言の時間が続いたが、先に沈黙を破ったのは秦羅。

 

「お前はこれからどうしたい?仕事して金を稼いで自立したとして」

「まだ決めてないけど……帰られるまでは秦羅のところでお世話になるかな。霊夢の仕事手伝おうにも巫女の仕事とかわかんないし。あ、もちろん秦羅が良いのならね」

「別に俺はいいけど……。少なくとも未来のヴィジョンは明確にしておいた方がいい。ぼんやりとでもいい、曖昧でもいいから今みたいに思い浮かべろ。外の世界から来て幻想郷で生き抜くなら考えることを辞めるな」

「ありがとう……秦羅って優しいね。霊夢には変な奴とか言われてたからさ、少し怖い人なのかなと思ってたけど違った。霊夢と同じように手を差し伸べくれる優しい人だね」

 

翔聖は、その言葉に秦羅は一瞬不敵に笑ったように見えた。だがすぐに仏頂面に戻ってしまう。

 

「優しくなんてないさ。お前には俺の二の舞になって欲しくないだけだ」

「何かあったの?」

「別に大した事じゃない。単に若気の至りってやつだよ。だから気にしなくていい。今は自分の事だけ考えてればいい」

 

翔聖は更に好奇心をくすぐられたが、彼には彼なりの踏み込んで欲しくない領域というのがあるのを感じたためそれ以上問いかけることは無かった。

何よりも自分が何者かというのを半分も明かしてないのに相手だけ聞くのは不公平と翔聖は考えた。

 

「着いたぞ。金はやるから、好きなの買ってこい。ここでの金のことは後で教えるから価格の数字分だけコレを出せ」

 

秦羅は服屋に着くなり、懐からジャラジャラと音が鳴る袋を差し出す。翔聖はそれを受け取ると思わず袋の中身を見てみる。その中身は、教科書でしか見た事が無いような昔の硬貨だった。いつの時代のものかは翔聖には分からないが。

 

「これ……昔のお金だよね。使い方とか分からないよ」

「詳しい事は後で教えるから。今はさっき言った通り価格の数字分だけ他の硬貨を出せばいい」

「わかった。なら、少し待ってて」

「ああ、分からなくなったら俺を呼べよ」

 

翔聖はそのまま服屋に入っていった。

中には、本当に教科書でしか見た事がないような和服で溢れていた。中には洋服もあるが、特に翔聖の興味を引くものはなかった。

 

「えっと……作業着作業着……これかな?」

 

翔聖が止まったのは、ツナギの前。

作業着についてあまり詳しくない翔聖にとっては、工事現場等で働いている人が目の前にある物と同じような物を着ていたので、これを作業着と判断する。

 

(何色にしようかな……黒か青がいいな。待てよ……秦羅の服の色って青だよね。青にするってことは……)

 

翔聖は、暫しの思考をすると黒いツナギを手に取り、店主の元へと向かう。

 

「すいません、これください」

「あいよ。えっと……15銭だな。金はあるのかい?」

「はい、あります!えっと15……銭……こうかな……」

 

翔聖は秦羅に言われた価格分の枚数の硬貨を出す。店主はそれを見ると頷き、金銭を受け取るとツナギを翔聖に渡す。

 

「毎度あり。作業着なんて買ってこれからなにかすんのかい?蒼天屋といたのが見えたが」

「は、はい。ちょっと秦羅……君のお手伝いをするので」

「そうかい、頑張れよ。坊主。蒼天屋にはいつも助けて貰ってるからな、何かあったら言ってくれればまけてやるよ。蒼天屋にも伝えておいてくれ」

「はい、ありがとうございます!その時は是非!」

 

翔聖は笑顔で店主にお辞儀すると、店を後にする。

 

「お待たせ、秦羅」

「無事に買えたようでよかったよ。黒いツナギか……俺の色違いときたか、それは」

「……青いツナギにしなくてよかったよ。絶対君の服装的に青色だろうから……危うくペアルックになりかけたね。男同士でのペアルック程辛いもんはないけどさ。まぁ、秦羅程の男の娘なら……まだいいけどさ」

 

翔聖と秦羅は互いに苦笑いを浮かべた。秦羅も秦羅で男同士でのペアルックは避けたい。それと同時に気にしてることを言われて、カチンときたが悪気がないのは理解しているのでその怒りを静かに抑えた。

 

「っと……作業着ってことはなにか汚れる仕事だよね。何するの?畑仕事とか田んぼとか?」

「その通り、お前の初仕事は畑仕事だ」

 

To be continued




どうでしたか?
今回は翔聖の初仕事が決まりました。彼は都会っ子であるため土いじりなど経験はあまりありません。
そんな彼は無事に初仕事を終えることができるのか!

では、次回をお楽しみに!
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